道なき道を行く

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:4〜8lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 88 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月19日〜10月26日

リプレイ公開日:2006年10月27日

●オープニング

 ロシア王国の領土の3分の1はうっそうとした森である。
 これはロシアに住むものなら誰もが知っていることであろう。
 森は生活に欠かせない資源の宝庫であり、憩いの場であり‥‥そして恐怖の源でもある。

 その森の開発を進めるのは国王ウラジミール1世。
 人口の増加に伴い住む場所を拡大するために、また国力の強化をめざし精力的に開拓は進められている。
 しかしその障害となるのが、森に住まうモンスターたちだ。
 冒険者に求められているもの、それは開拓の尖兵となること。
 未踏の森を切り進み、道なき道を行き、暗黒の国と呼ばれる森を切り開く。
 開拓の原動力を担うのは冒険者たちなのである。

「幾度か依頼を出していますが、今回の依頼もまた開拓のための予備調査をするという依頼です」
 ギルドの受付はそういうと一枚の羊皮紙を示す。
 そこに描かれているのは開拓されている地区の地図だ。
「現時点ではここまで調査が進んでいますので、この地点より先の調査が依頼内容となっています」
 キエフから開拓されている街道を進むこと一日と半分の距離でその開拓地区は終わっていた。
 その先は、いまだ調査されず未踏の地。そこを冒険者たちがチェックするのである。
「寒くなってきたので、準備はしっかりとお願いしますね。ある程度の物資は融通しますが、自分たちで用意した方が快適かもしれませんね」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea2970 シシルフィアリス・ウィゼア(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb2205 メアリ・テューダー(31歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb5195 ルカ・インテリジェンス(37歳・♀・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5288 アシュレイ・クルースニク(32歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5634 磧 箭(29歳・♂・武道家・河童・華仙教大国)
 eb5690 アッシュ・ロシュタイン(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb5706 オリガ・アルトゥール(32歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5885 ルンルン・フレール(24歳・♀・忍者・ハーフエルフ・イスパニア王国)

●サポート参加者

リリーチェ・ディエゴ(eb5976)/ 鴻 蓬麟(eb7154

●リプレイ本文

●森を進む
 キエフから開拓の進められている街道を暫く進み、やってきたのは開拓の果て。
 早朝から出発して、地図の空白部分までたどり着いた時にはすでに一日と半分が経過していた。
「未開の森の探索か‥‥くぅ〜良いねぇ! 冒険者はやっぱこうじゃねぇとな」
 アッシュ・ロシュタイン(eb5690)がそういえば。
「そうですね、やっぱり未開の地を探検するのってとってもワクワクします」
 ルンルン・フレール(eb5885)も微笑を浮かべて同意したり。
 ロシアの森は鬱蒼と薄暗い、最近は寒さも厳しく冒険者たちは防寒具をきっちりと着こんで進んでいた。
 森の中を馬に乗って駆け抜けるのは難しいだろうが、荷物を載せて進むのには困らない。
 よって冒険者たちは徒歩で荷物を積んだ馬たちを引きながら進んでいる。
 少し進んでは地図を確認、周囲の事でなにか気付いたことがあればとまり、それを一日中くりかえす。
 ある意味単調な作業であるが、こういった仕事が開拓の礎を築くのである。
「まだ先は長いですし無理は出来ないですね。そろそろキエフの冬も牙を剥きますし」
 吹き抜ける冷たい風に防寒具の衿を合わせてそういったのはオリガ・アルトゥール(eb5706)。
「出来る範囲からコツコツとやっていくようにしましょう。小さな一歩が大きな一歩になるのですから」
 そういって、オリガは隣の女性の手元を覗き込んだ。
「それで、どんな感じかしら?」
「えぇっと‥‥とりあえずはこのまま直進しましょう、オリガおねーさま」
 シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)は手元の羊皮紙を手繰ってそう答える。
 この2人が、収集できる限りの情報を集めながら地図を埋めていっているのだ。
 そしてその声を聞いて、振り向いていた先頭の男はさらに脚を進める。
「この寒さはやはり厳しいでござるな‥‥」
 生まれのせいかは知らないが防寒具を着こんで進むのは磧箭(eb5634)だ。
 そして先頭で進む彼に前後するようにして足元を進む犬がいた。
「ヨーク! 戻ってきなさい。あまり先に行き過ぎるとはぐれてしまいますよ」
 絆も高い優秀な熊犬はヨーク、その相棒に声をかけたのはメアリ・テューダー(eb2205)。
 このような森では動物たちの方がその感覚を生かすことができる。
 犬の嗅覚を利用して周囲を警戒するのも非常にいい手であるようだ。
 そして一行の最後尾には。
「さて今回は、どんな珍しいものに出くわすことでしょうね」
 アシュレイ・クルースニク(eb5288)があたりを見回しながら足元の枝を拾って荷物に積み込む。
 枯れ枝は野営のときに使うので集めながら進んでいるのだ。そのアシュレイの隣には。
「寒い、寒い冬はもうそこまで来てる、か‥‥」
 少し眠そうにほぅと吐いた息は白く。ルカ・インテリジェンス(eb5195)は手袋を嵌めた手を擦り合わせてそういった。

 こうして、冒険者たち一行は森の中を進む。
 それぞれの役割りをこなしながら一行はゆっくりと森を踏破していくのだった。

●束の間の休息
 日も落ちた森は暗闇に包まれる。
 ぱちぱちとはぜる焚き火の明かり。それを囲むようにして一行は休息を取っていた。
「お仕事ですけど、せっかくだから楽しめる所は楽しまなくっちゃ損ですよね」
 ルンルンはサーチウォーターで近くの川を探しあて、その近くでの野営となった初日の夜。
 まだそれほど疲れても居ないという事で、一行はのんびりと思い思いの休息を取っていた。
「さて、これで安心だわ‥‥みんな、罠を張ってきたので注意してね」
 ルカは野営地の周囲の木々の間に何本かロープを張ったり鳴る子をつけたり。
「ここにちいさな川が‥‥っと。今日はこんな感じですね」
「それじゃ、明日はこっちへ進んでみましょうか」
 シシルとオリガは地図の羊皮紙を眺めながらそんな話をしたり。
「そういえばさっき、川に行ったときに魚を捕まえたんですよ♪ ‥‥私だって料理ぐらい‥‥」
 焚き火にあぶられてちょっとコゲ気味の川魚をルンルンが振舞ったり。
 そんなゆっくりした夜。それぞれ保存食やちょっとした料理を食べながらのんびりしているときに。
「こういう依頼を積み重ねていけば、その内ウラル山脈までの探索なんて依頼もでるかも知れないしな‥‥」
「ふむ、噂に寄れば黄金の龍が住むという山々でござるか‥‥ところで、アッシュ殿」
「ん?」
「ミーの記憶が確かならそれは楽器だと。アッシュ殿は楽器を奏でるのでござるか?」
「ああ‥‥それじゃ、ちょっとやってみるかね」
 アッシュは箭との話の中でオカリナを取り出して、ゆっくりと吹き始める。
 ロシアで良く知られたゆっくりとした歌の旋律。
 するとそれにあわせて緩やかに歌いだすアシュレイ。彼は神聖騎士にして吟遊詩人として卓越した歌い手であった。
 するとアシュレイの連れてきた2人の小さな妖精がその歌にあわせてくるくると飛んで躍る。
 野営時のこうしたちょっとした時間。こうした小さな喜びが次の日に繋がるのであった。

 こうして一日目の行軍は無事過ぎ去った。一行はゆっくりと休み二日目の行軍を始める。
 しかし、森を進むのは単調な調査だけではない。
 時には危険と向き合うことも必要であり、危険が向こうからやってくることもあるのだった。

●危険との遭遇
「ルンルンさん、大丈夫ですか?」
「シシルさん、大丈夫ですよ。横から突然出てきてびっくりしただけですから‥‥」
「あ、アシュレイさん。ルンルンさんの怪我を‥‥」
「‥‥これで大丈夫でしょう」
 横合いから飛び出してきた狼へと矢を射ち、追い払ったルンルン。
 爪で浅く腕を引っかかれたらしいがそれはアシュレイのリカバーで治り。
「ほんとは、共存出来るのが一番なんですけどね。開拓する人たちが武器や魔法を使えるとも限りませんし」
 すこし寂しそうにルンルンはそういった。

 そんな小事件があれば、大きな衝突もあったり。
「箭さん! 右の方向の木の陰に隠れてます!!」
「承知したっ!」
 ルンルンのブレスセンサーが見抜いたのは、隠れている隠れたゴブリンの場所だ。
 昼も過ぎ、小休止を終えた一行が遭遇したのは何匹ものゴブリンの集団。
 ゴブリンたちは飢えているのか、冒険者たちに襲い掛かってきて、乱戦となったのだ!
「一足先に、冬の嵐を受けなさい‥‥アイスブリザード!!」
「援護します! アイスブリザード!!」
 シシルとオリガが吹雪を放つ。
 木々の間を氷雪と轟風が吹き荒れ、たたらを踏むゴブリンたち。
 動きが鈍ったゴブリンたちの一部にルンルンの矢が命中しつぎつぎに打ち落とす。
「コアギュレイト!」
「スリープ!」
「よし、あとは任せな!!」
 アシュレイとルカの魔法で動きを止めたゴブリンたちをアッシュの太刀が次々に切り裂いた。
 ルカはスリープで次々に眠らせ、アシュレイとアッシュは前にたち次々にゴブリンたちを切り倒していく。
「地の精霊よ! 汝らの司りし数多の命に我が意思を伝えよ、プラントコントロール!」
 メアリの詠唱と共に、地中から突き出した木々の根がゴブリンに絡みつけば、そのゴブリンにヨークが噛み付く。
 主人のために働くヨーク、そしてその一撃は侮れないどころか致命的なものであった。
「地の精霊よ! 彼の者に枷を与えよ、アグラベイション!」
 今度はメアリがアグラベイションでゴブリンたちの動きを阻害する。
 ルンルンの弓の攻撃や箭、アッシュ、アシュレイの前衛の攻撃やペットたちの攻撃。
 ゴブリンたちも必死であったが、冒険者たちはそれ以上に圧倒的であった。
 そして、あっというまに最後の一匹。10数匹いたゴブリンはほとんどが退治されていた。
「最後の一匹であるな‥‥ミーと戦うでござるよ!!」
 そして最後の一匹も箭が倒し、ほとんどなんの被害なく冒険者たちはひとつの障害を切り抜けるのだった。

「まだ残っているかもしれないですから、書いておかないといけませんね」
 これから食料が少なくなる冬、ゴブリンたちは食料集めのためうろついていたのかもしれない。
 そんなことをシシルフィアリスは羊皮紙に書き付けた。そして冒険者たちは再び森の中を進み始めるのだった。

 大きな熊がうろついていれば大きな音を出して追い払ったり。
 はぐれたのか冬眠前なのか、うろついていた一匹のラージアントを退治したり。
 モンスター知識に優れるメアリが、人食い植物のガヴィッドウッドを見つけて、それを迂回して進んだり。

 そしてこの後、彼らはこの依頼の中で最大の発見をするのだった。

●発見と帰路
 それはとある崖ぞいに歩いていたとき、羊皮紙の地図も大分埋ったころだった。
 ちょっとした休憩をしていた一同、時刻は昼過ぎだ。
「みんな、いいブーツ履いてるんですね‥‥私のなんてエチゴヤさんの特売品です。でも、その分履き潰してもいいように、沢山持ってるんですよ」
「これからは保温性も考えないといけないですしね」
 とか話していたのはルンルンとメアリ、そんな時にちょっと周囲を見回っていたルカが戻ってくるなり声を上げた。
「ちょっと皆来てくれないかしら? 崖の方で面白いものをみつけたのよ」

 荷物を纏めて一行が移動すると、その崖には洞窟がぽっかりと口をあけていた。
 しかしその洞窟、良く見ると。
「あれは‥‥古代魔法語かしら?」
 洞窟の入り口にいくつか刻まれた文様。今回のメンバーに古代魔法語を修得しているものはいなかった。
 なので、解読することは出来なかったが、見たこともないような文字がたしかに刻まれていた。
「どうやら遺跡のようですね‥‥でも、もう余り時間はありませんね」
 シシルがそう言って地図を見やる。のこりは逆のルートで戻らないと期日までに帰れない。
「残念ですけど、この遺跡の調査は他の方に任せることになりますね」
 オリガはそういって、周りを見回せば仕方ないといった顔で他の面子も頷いている。
「でも、遺跡とは‥‥私たちが知っている世界などまだまだ一部なのですね」
 オリガが残念そうに呟く。
 そして一行はキエフへと帰るための行程につくのだった。
 地図の空白は埋められ、これから徐々に開拓は進むだろう。
 それに、今回見つけられたものに関してまた冒険者に対して依頼が出されることもあるかもしれない。
 無事、依頼は成功し、そして得たものは次へと繋がっていくのであった。