モンスター退治!+廃墟の片付け?

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月05日〜04月10日

リプレイ公開日:2007年04月13日

●オープニング

「ふっふっふ、ついに‥‥ついに手に入った!」
 にんまりと笑みを浮かべて、手にした写本を眺めるひょろっとした青年。
 彼はキリーロ・ガブリロフ。
 材木商でちょっとした財を成した小貴族の青年である。
 そしてもう一つ、彼は好事家つまりコレクターとして有名なのであった。
 彼がいま頬擦りしてるのは一冊の彩色写本。
 おそらくは修道会か、芸術家の手によって作られたものであろう。
 精緻な模様と、時折挟まれる美麗な挿絵。なにかも物語を綴った美しい一冊の本であった。
 羊皮紙には隙間無く、色とりどりの文様と優美さを損なわない文字の列。
 行頭には美麗な装飾頭文字、絢爛豪華に彩られて頁を引き締めながらも輝かせる縁取り。
「‥‥ああ、美しい」
 うっとりとするキリーロ青年であった。

 と、話はそこでは終わらない。
 彼がこれを手に入れたいきさつはというと、とある冒険者から買い取ったのである。
 その冒険者はある日ふらりと立ち寄った山中の崖にぽっかりと口を開けた洞窟と見つけたとか。
 休憩も兼ねてそこに乗り込むと、そこには人の住んだ形跡が。
 そしてさらに奥に進むと、なんとそこには洞窟を利用した住居があったのだという。
 その中を調べたところ、おそらくそこは世捨て人のような魔術師が住んでいたようで。
 積もった埃から、かなり長い間そこには人は入ってきていないよう。
 おそらく住人も随分と前にここを離れたようであった。
 そしてそこでその冒険者はお宝が無いかと物色していたのだが‥‥。
 ふと物音を感じて、洞窟の入り口の方に引き返してみると、入り口の天井に大きな影が。
 なんと洞窟の入り口の天井付近に、グランドスパイダが何匹もいるではないか。
 入ってくるときは気付かなかったものの、これに慌てて冒険者はその写本だけ掴んで帰って来たとか。

 ということでキリーロからの依頼は以下の通り。
 洞窟に巣食うグランドスパイダを退治して、その奥のお宝を持ってきてくれ、とのこと。
 見つけたお宝で好事家が好きそうなもの以外は自由に持って行っていいという条件だとか。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea2965 緋野 総兼(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea9563 チルレル・セゼル(29歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb3338 フェノセリア・ローアリノス(30歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 eb7693 フォン・イエツェラー(20歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec0819 イリューシャ・アルフェロフ(22歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec0854 ルイーザ・ベルディーニ(32歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 ec1051 ウォルター・ガーラント(34歳・♂・レンジャー・人間・ロシア王国)
 ec2055 イオタ・ファーレンハイト(33歳・♂・ナイト・人間・ロシア王国)

●リプレイ本文

●好事家の誘い
「見たまえ総兼殿、この飾り文字の優美さを! 繊細かつ大胆な色彩と精密な線、まさしく美の結晶だ!」
 依頼人の青年貴族キリーロにちょいと挨拶しに来ている緋野総兼(ea2965)。
 回収に値するような物の詳細を聞くためにやって来たのだが‥‥どうやら捕獲されたようで。
「あー、わたくしもうすぐお暇しなければ〜」
「なに、まだもう少し聞いていってくれたまえ! この写本はな、おそらく全部で数冊しか‥‥」
 ここに署名がだの、この特徴的な装丁がどうだの、かれこれ数時間続く自慢話というか濃い話。
 にこにこと笑みを浮かべつつ、総兼はとりあえずお茶菓子をもくもくとかじる。
 そしてさらに時間は経って、
「そ、それでは‥‥なんとか手に入れてくるので‥‥」
 へろへろと去っていく総兼をキリーロはにこにこと手を振って見送ったのであった。

「あら、総兼さんお帰りなさい‥‥なんだかお疲れですね」
「あははは‥‥んーむ、余計な自慢話や豆知識を延々と聞かされてしまって‥‥」
 友人のフェノセリア・ローアリノス(eb3338)にねぎらわれたりしているようで。
 ただ、苦労の甲斐あって予想される写本と珍品やその見分け方などの情報は手に入ったようである。
 情報はそろった。こうして、冒険者たちはその洞窟へ向けて出発するのであった。

●洞窟で蜘蛛と大暴れ
「ふむ、無闇に入っては敵の思う壺ですからね‥‥」
 適正をかんがみて、偵察役を買って出たのはウォルター・ガーラント(ec1051)だ。
 敵の地の利を崩そうとおびき出せるかどうかの調査をしているのだが。
「‥‥動く気配なしと。やはりグランドスパイダはひたすら待つ性質のようですね」
 洞窟内は敵の巣窟だが、虎穴に入らなければ虎の子は得られない。
 最大限知略を尽くして洞窟内に入ることになるのだろう。
 そして同じ時刻、洞窟入り口が見える木立の影で、ほかの冒険者はウォルターを待っていた。
 なにかあればいつでも飛び出せるようにはしつつ、やっぱり基本的には暇である。
 ルイーザ・ベルディーニ(ec0854)は。
「‥‥蜘蛛、蜘蛛かぁ。あたしもそりゃ昔は女郎蜘蛛なんて呼ばれてちょっとは‥‥」
「あら、本当? ‥‥それはすごいわねぇ」
「‥‥うそですごめんなさい」
 イリューシャ・アルフェロフ(ec0819)に嫣然と微笑まれてカクカク前言撤回したり。
「これがただのグランドスパイダーの討伐なら、気兼ねなくファイヤーボムを撃ち込むんだけどねぇ」
 まったく、困ったもんだと肩をすくめるのはチルレル・セゼル(ea9563)。
「罪の無い命を奪ってしまうのは、心苦しいですが‥‥」
 静かに祈りをささげるフェノセリア。
 こうして冒険者たちは思い思いの会話を交わしているとウォルターが洞窟から出てきた。
 そして戻ってきたウォルターの報告を聞いて、一向は突入を決めたのであった。
「‥‥隊列はこのような感じです。俺とルイーザさんが先頭を勤めましょう」
 イオタ・ファーレンハイト(ec2055)が剣を手にとって一行を見回して。
 戦闘と末尾に前衛職を配し、中核の遠距離職を守る布陣を組む一行。
 お互いに場所を確認し、松明やランタンに火をともし。
「では、皆さん。行きましょうか」
 フォン・イエツェラー(eb7693)の言葉で皆、ゆっくりと洞窟の中へと踏み込んでいくのだった。

 洞窟の中は薄暗く、それを冒険者たちの持つ明かりがゆらゆらと照らす。
 空気は冷え、かつこつと響く足音がどこか不気味な印象を与えるのだが‥‥。
「足元には気をつけてくださいね」
「そうよー、たしかグランドスパイダは地面に穴を掘ってまちかまえてたりするらしいわよ」
 フェノセリアとイリューシャはモンスターに関しての知識でサポートしつつ。
 そして幾度か角を曲がって入り口からの光が見えなくなったときに。
 一行の中で聴力に優れた冒険者は彼らの足音とは別の異音を耳にした。
 がさがさという音、それは足音だ。
「ちかくにいるわ!」
 ルイーザの言葉で、明かりを持っている冒険者は一斉に手の明かりを四方に向けると。
 そこには一抱えもあるような大きな蜘蛛が数匹。
 蜘蛛が嫌いではない人間にとってもぞっとする光景だが、蜘蛛が嫌いならなおさらだ。
「く、蜘蛛っ!! は、排除せねば! あーうー‥‥‥燃やそう、跡形もなく、うん、燃やすしかない!」
 ばたばたとあわてる総兼と。
「総兼様、落ち着いて下さい‥‥えっと、あれを蜘蛛以外だと思ってみるとか‥‥」
 フェノセリアにたしなめられたりして。
「へ? あ、ああ落ち着こう‥‥取り敢えず、あれは木彫りの玩具だ、うん、玩具‥‥‥‥排除ーー!!」
 落ち着いたのか落ち着いてないのか。とりあえず戦闘開始を告げたのは高速詠唱のディストロイ!
 どかんと一撃されて落ちてきた蜘蛛は、前衛たちの餌食になったり。
「ま、やれることはやらないとね」
 飄々としつつ、ファイヤートラップを仕掛けて蜘蛛を一撃で燃やし倒すチルレルは冷静沈着に。
「近づかせませんよ。ホーリーフィールド!」
 フェノセリアの援護は効果的だったようで、的確に一向は蜘蛛の数を減らしていく。

 フォンは的確に止めをさしながら。
「‥‥毒は怖いですが、油断しなければそれほど脅威ではありませんね」
 するとその言葉に、盾を使って蜘蛛の一撃を受け止めながら、イオタが答える。
「手が届かなければ多少つらいかもしれないが‥‥打ち落としてもらえれば楽なものですな」
 ロングソードで一撃、蜘蛛は岩陰に吹っ飛ばされるのであった。
「暗いところにも目が慣れてきたし‥‥そろそろ数も減ってきたようですね」
 ウォルターは軽快に蜘蛛の攻撃をよけながら遠めの蜘蛛を矢の一撃で天井から落としつつ。
「あんまり矢の値段も馬鹿にならないのよね。回収できるといいんだけど」
 同じく矢で蜘蛛を撃っているイリューシャ。十匹近く居たはずの蜘蛛たちもずいぶんと減ってきたようで。
「これでそろそろ終わりかなっ?!」
 蜘蛛の牙を舞うようによけたルイーザ。
 鉄扇ではじきながら放つショートソードの一撃で蜘蛛は脚を切り飛ばされつつ、逃げようとするが。
「は、はははは! 怖くないぞ〜!」
 ディストロイの一撃で粉砕される最後の一匹。
 なんだか泣き笑いの総兼をフェノセリアが撫でつつ励ましていたとか。

●後始末&宝探し
 一行はその後、蜘蛛たちが作ったであろう穴や、蜘蛛の巣を確認しながら洞窟内の調査に当たった。
 どうやら子蜘蛛がいるという最悪の展開は無いようで。
 蜘蛛が苦手ではないメンバーで倒した蜘蛛は洞窟の外にぽいされたとか。
 そうこうして、ようやっと調査の時間。
 洞窟内に居を構えるなぞという変人の魔法使いが住んでいたであろう住居へ、冒険者は踏み入るのだった。
「‥‥隠し部屋はなさそうですね。ふむ、洞窟を掘り進めば別でしょうが、そうも行かないようですね」
 壁やら棚の裏側を調べていたのはウォルター。
 棚に転がっていた古びたメダルを指先ではじきつつ、
 残念ながら隠し部屋は無いようで、どこか生活観漂う洞窟住居である。
「うーむ、やっぱりウィザードだったら武器とかは無いみたいね〜」
 刀剣類が無くて残念そうなのはルイーザ。代わりに見つけた天使の羽飾りを手にしつつ。
「やっぱり、依頼人がほしがるだけあってきれいねぇ。今のうちに目の保養っと」
 前回の依頼でアヤシゲなものをみたので今回は口直しと写本を見つめるイリューシャ。
 彼女はどこからか拾ったのか黒皮の首飾りを手に入れたようだ。
「いろいろとおかしなものを集める人もいるのですね‥‥これなんて何に使うのでしょう?」
 おいてあった不思議な置物をためつすがめつ、フォンは古代のメダルを手に片付けの手伝いを。
「お、酒発見‥‥これ、まだ飲めるのかなぁ? ‥‥まぁ、祝い酒に帰ったら飲んでみるかな」
 そう古くなっていないハーブワインを見つけたチルレルはうれしそうにハーブワインを手にし。
「とりあえず写本はそろったし、この絵と‥‥この飾り箱はなんだかわからないけど一応っと」
 総兼は教えてもらった写本や飾りを集めて荷造りしつつ、机にあった銀のスプーンをもらって。
「キリーロ様も不思議な趣味の持ち主ですね‥‥呪われてたりしないといいんですけど」
 フェノセリアはちょっと心配そうな表情を浮かべつつ、帽子を貰ったそうで。

 片づけを進める中で出てくるものもあれば、疑問も生まれる。
 なぜこうもちぐはぐなものばかり転がっているのか。
 そしてこの部屋の住人はどこに行ったのかという根本的な疑問。
 その答えはは意外なところで見つかったのである。
「‥‥この手記によれば、どうやら駆け落ちしたみたいだな‥‥道理でそのままなわけだ」
 イオタは棚からここの住人の手記を見つけたのである。
 そこによれば、数年前に遠くに恋人と一緒に旅に出ることを決意したとか。
 そのままで残していくことになってしまい心残りだが、勝手に処分してくれればいい。
 そんな文句が手記に書いてあり、一向は心置きなく残されたアイテムたちを持ち帰ることにするのであった。

「‥‥おお、君たちが帰ってくるのを首を長くして待っていたんだぞ!! さぁさぁ入ってくれ!!」
 冒険者一行は、荷物を持ち帰るなり屋敷に通された。
 持ってきた名品、そして奇品珍品を前にそれを眺めながら興奮して語る依頼人キリーロ。
 もちろん話は数時間続き、蜘蛛よりも強敵なのはキリーロなのでは、と思った冒険者もいたとかいないとか。
 ともかく依頼は成功。依頼人も大満足の結果となったのであった。