年の瀬の借金取り

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月06日〜12月11日

リプレイ公開日:2004年12月13日

●オープニング

「数人お手伝いしてくださる人をお願いしたいのですが‥‥」
 そう言って、ギルドを訪れたのは気の弱そうな青年。
 そして、恐る恐る依頼の詳細を告げたのだが―――――
「‥‥借金の取立てをしてもらえないでしょうか?」

 依頼人の名は、サイロック。金貸しの2代目なのだが、どうやら押しが弱い様子。
 そのせいか借金を返してもらえないまま、年の瀬を迎えてしまったようである。
 
 いまだ期限を迎えた借金を返してもらえないのはアンソニオ一家。
 乱暴者のオヤジと、ドケチの奥さんがいるらしい。

「新年を迎える前にどうにかして借金を返してもらいたいんです」
 困ったように頭を書くサイロック。
「別にお金に困った様子も無いですし、10Gくらい返せると思うんですけど、全然取り合ってくれないんです」
 肩を落としてため息をひとつ。

「ということで、どうにかして借金を回収してきてもらえませんか? でも乱暴ごとはちょっと‥‥」

 さて、どうする?
 

●今回の参加者

 ea1749 夜桜 翠漣(32歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2804 アルヴィス・スヴィバル(21歳・♂・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 ea5541 アルヴィン・アトウッド(56歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea7509 淋 麗(62歳・♀・クレリック・エルフ・華仙教大国)
 ea9286 セシリー・レイウイング(45歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●まずは情報収集
 金貸しサイロックの依頼を受けた冒険者たちはひとまず情報収集に乗り出したのだった。
「‥‥さて、とりあえずは証拠集めといったところか‥‥」
 そう言ってバデラスについての情報を集めているのはアルヴィン・アトウッド(ea5541)だ。
 バデラスを探すのはそう難しくなかった。
 アンソニオ一家の家の近くの酒場や賭場にはほとんど全部顔を出していたからである。
 そして、アルヴィンは今日も賭場でどれくらいの金をバデラスが使っているかをじっと観察しているのだった。
 どんな性格であるか、行動パターン、そして金の使い方。
 そして調べているうちにアルヴィンは、ふとあることに気づいたのである。
 どう見ても賭場では負け続けているのだが、全然気にしておらず、酒場でも金遣いが荒いのである。
 酒場の亭主に聞けばずいぶんとツケもたまっている様なのだが、一向に気にした様子はないのであった。
 アルヴィンは物怖じせずに直接本人に尋ねることにした。
 隣に腰をおろして、軽くグラスを掲げて会釈して、口を開くアルヴィン。
「‥‥あんた、なかなか羽振りがいいようだな?」
 急に年長のエルフから声をかけられて、少々面食らったようなバデラスだが、酒のせいか特に警戒はしていないようだ。
「ああ、まあな‥‥でも、おごったりはしねぇからな」
 やっぱりバデラスもケチな性分であるようである。
「いやぁ、もうすぐでかい仕事が終わって、がっぽり儲かる予定なんでな、前祝いみたいなもんだ」
 上機嫌にそう言うバデラス。
「そうか‥‥それはめでたいな」
 その後、二言三言言葉を交わし、アルヴィンは席を立つ。
 アルヴィンが手に入れた情報は、他の冒険者に伝えられ依頼の成功のために役立てられることとなった。

「わたくしの娘達や息子ですらもそのようなことは分かっておりますのに‥‥いい大人がそのようなこともお分かりにならないのでしょうか?」
 とある宝石商にて聞き込みをしながらそう考えているのはセシリー・レイウイング(ea9286)である。
 家族を大切にする母親として、自己中心的なアンソニオ一家の行動には忸怩たる想いがあるようだ。
 とりあえずは宝石商との何気ない会話をしながらアンソニオ一家には返済能力があるのかどうかを探るセシリー。
 宝石を手にとって、さまざまな会話を交わしながら、情報をすこしずつ引き出していくのである。
「そういえば、エイプリルさんから伺ったのですが、近々なにか大きな買い物をするとか‥‥」
 知り合いを装った会話から、カマをかけて見る。
 もし高価な宝石を買う予定があるのならば、その金を返済に当てることが出来るだろう。
「そうだねぇ‥‥そういえば、年末には金が入るから、この前は言った上物のブローチを買いたいとか言ってたねぇ」
 気の良さそうな宝石商はそう言って、かなりの値段のブローチをセシリーに見せる。
 商人として多少の才がある彼女は、うまく情報を聞き出しているようであった。
 この情報も、アンソニオ家が借金を返すことが出来るほどの収入が近々あることを裏付けたのだった。
 そして、セシリーは仲間の冒険者たちに自分の得た情報を伝えに行くのであった。
 
●子供と一緒に
 アンソニオ一家の家に程近い小さな路地で、子供たちがはしゃぐ声がする。
 そこに混じって子供たちの相手をしているのは夜桜翠漣(ea1749)だ。
 数人の子供たちと一緒におしゃべりをしたり、ちょっとした保護者のような感じである。
 子供たちの中にはアンソニオ家の息子が一人。7歳ぐらいの活発な少年である。
 情報収集の過程で子供が居ることを知った翠漣は、子供を通じて、借金を返すように訴える作戦を取ったのだった。
 しかし、唐突に借金のことを話しても、何のことだかわからないのは当たり前である。
 なので機会を探すうちに、子供たちと仲良くなって時間を忘れてしまう翠漣であった。
 そんなある日、色々なものを買ってくれとねだる子供たちに対して翠漣はこう言ったのだった。
「君たちは、人からお金を借りたらちゃんと返せるのかな? お金は借りたら返さなきゃいけないんだからね」
 そして、さらに付け加える。
「‥‥お金を借りて、返さない人が居たら『どうして返さないの?』と聞いてみてください」
 はたして、子供を通じて訴える作戦はうまくいくのだろうか?

●偽商人大作戦
 商人に扮して、アンソニオ家の訪ねたのはアルヴィス・スヴィバル(ea2804)である。
 礼服を着込み、手には見た目だけは高価そうな宝石類を手にして準備は万端。
 残念ながら短期間で高価な宝石は手に入れることは出来なかったようではあるが、そこは交渉のしどころである。
 バデラスが仕事に出かけている間を狙って、エイプリルとの交渉を始めようとするのだが、なかなかケチで有名なエイプリルに商品を売りつけることは出来ない。
 若いエルフという外見のせいもあるのか、すこし警戒しているようでなかなか交渉は進まず、残念ながら商品を餌に借金を返済させることはできなかった。
「実は私金融業の取立人もやっておりまして‥‥お客様が借金を返していないとという噂を耳にしましてね。」
 去り際にふと思い出したかのようにそういうアルヴィス。そして、急にがらりと口調を変えて一言。
「どうなっても知らないよ? 此処で生きていけると良いね」
 クスっと笑いながら放たれた言葉に、エイプリルはぞっとしたかのように顔をしかめるのだった。

「僕は”言葉使い士”例え話術が拙くとも、語りも騙りもカタります、ってね‥‥とは言っても、なかなかうまくいかないもんだね」
 やれやれとばかりに肩をすくめて、アルヴィスはため息をつくと他の策に取り掛かる。
 依頼自体の成功率を上げるための噂を流すこと。それがアルヴィスの第2の策であった。
 生業が情報屋であることを最大限に生かしてさまざまな噂を流す。
「金貸し達が一家に金を返さないのなら金輪際貸さないと息巻いている。いざと言う時は然るべき手段を取るらしい」
 他の冒険者が風聞を流すのにも協力しながら、精神的にアンソニオ一家を追い詰める上策である。
 策を複数用意しておく点は、若くともさすが実力者とされる冒険者であるといえるだろう。

●心に響く真摯な言葉
「すべての者が業を背負っています。私はそんな人々の心の支えになりたいです」
 優しく微笑んで、そう決意を他の冒険者に示したのは淋麗(ea7509)である。
 なんと、アンソニオ一家を真正面から説き伏せようとと考えているのだ。
 ケチで有名なアンソニオ一家が説法の一つや二つで変わるとは思えないのだが‥‥そこは腕の見せ所なのだろう。

 そして依頼の最終日、すでに下調べと噂などの策は十分整っている。
 そこで麗は自分は借金の回収を頼まれた冒険者である、と嘘偽り無く伝えて、夫婦と対峙するのであった。
 付き添いとして翠漣とセシリーが麗と行動をともにしていた。
 まずは夫のバデラスに語りかける麗。
「約束とは人と人の繋がりを示すものです。博打が悪いことであるとは思いませんが、博打にルールがあるように、約束にもルールがあります。博打もルールがあるから楽しいのではないのですか」
 リードシンキングを拘束詠唱で使おうにも成功率が高い初級では相手に触れなければ相手の考えていることを読み取ることは出来ない。
 なので、魔法の成功率が極端に低いため、まったく魔法に頼ることはできなかったのだが、卓越した話術はしっかりとバデラスの痛いところをついたようで、バデラスは言葉に窮する。
 続けて、妻のエイプリルに向けて麗は言葉を紡ぐ。
「美しさは着飾ることでもありますが、身につけるものの心も大切な要素でもあると思います。節約もいいですが、心を美しくするためにもお金をつかっても宜しいのではないでしょうか」
 返答に窮するエイプリル。
 そこで、初めてバデラスが怒りに任せて無理やり反論するのだった。
「だいたい、さっきから聞いてりゃ、部外者の冒険者が勝手なことを言いやがって! お前らは関係ないだろう!」
 そう言って、詰め寄るバデラスの前にすっと立ったのは翠漣だ。
 キャメロットの冒険者の中でも、有数の実力者とされる彼女の無言の迫力に、思わずバデラスはたじろぎ、再び言葉を失う。
 そして、ポツリと翠漣はバデラスとエイプリルに言い放つ。
「借金があるとわかったら賭場や酒場に入りづらくなってしまいますよねぇ。もちろん宝石商人さんも、そんな人に売ってくれるかわからないですし」

「‥‥子供に教える立場の親がこのような恥ずかしい真似をするのはよくありませんよ?」
 沈黙を破りそう言ったのは、今まで無言だったセシリーだ。
 その視線の先には、いつの間にか玄関先で言い争う声を聞いて、出てきた二人の息子である。
 息子は初め不安そうな顔をしていたのだが、はっとしたように両親の顔を見つめて問いかける。
「お父さん、お母さんお金を借りてるの? どうして返さないの?」
「‥‥いや、返さないなんてことは無いからな‥‥」
 苦々しげに、バデラスはそう言って、エイプリルに金を出してくるように言ったのだった。

 幾ら強情な親でも、子供の前ではさすがに道理を通さざるを得なかったようだ。
 こうして、無事に冒険者たちは借金を回収することが出来たのだった。