指揮官求む!? 模擬戦争の依頼
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■ショートシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:5人
サポート参加人数:2人
冒険期間:07月17日〜07月22日
リプレイ公開日:2007年07月26日
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●オープニング
キエフ郊外のとある小村。
そこの領主であるとある貴族のお屋敷には、ある種の貴族たちが集っていた。
若く、あまり家柄が高くなく。
そして何より、合戦が大好きという困った性根の持ち主ばっかりなのであった。
とはいえ、合戦が好きイコール血を見るのが大好きという困り者なわけではない。
単に、兵隊さんが好きな子供たちがそのまま大きくなってしまっただけなのである。
ゆえに、彼らは少ない私兵を集めて、合戦の真似事をして楽しむことにしている。
国家に対する版図ありと思われてはかなわないので、あくまでも模擬戦。
さらに、若手貴族や道楽貴族などを集めてのイベントとしてしまう念の入れようである。
ということで、今日も今日とてひっそりと模擬戦闘が行われていたのだが‥‥。
そんな中へ、あるとき冒険者に縁のある一人の若手貴族が紹介されてやってきた。
彼の名前はキリーロ・ガブリロフ。そこそこお金持ちの好事家、そして冒険者に好意的な貴族である。
彼は、なかなかおもしろいな、なんて感想を持ちつつ、のんびり話しに加わっていたのだが‥‥。
「ところで、キリーロ。お前さん冒険者と親しいんだろう?」
「ん‥‥私個人としてはそのつもりだが、突然なんだい?」
「いやな、今度東軍と西軍に分かれて、大規模な模擬戦をやる予定なんだが‥‥実は指揮官が不足しててな」
さもありなん、である。
そもそも貴族たちも戦時は剣を取って一軍を指揮する騎士たる者たちである。
しかし、彼ら若手や道楽貴族にその様な甲斐性があるわけでなし、彼らはほとんど実戦経験は無いのである。
キリーロももちろんその一人なのだが‥‥。
「ということで、最近負け続けの東軍は、貴殿を総指揮官として任命する」
言われて、思わず酒盃にむせるキリーロ。
「ななな、何を突然!? 第一私にはそんなこと‥‥」
とあわてて言い募るのだが、対してキリーロの友人である、この集まりの主催者の貴族が言う。
「なぁに、冒険者たちを指揮官として採用すればいいのだよ。今回は賞金付きの大イベントだしな!」
さて、どうする?
●レギュレーション
模擬戦のルール
・模擬戦闘は武器のすべての刃を潰し、染料をしみこませた布を攻撃部位に巻いて行う
・傷を受けたとするものは自己申告 一撃を受ければ軽い傷でも、戦闘不能とする
・魔法の使用は厳禁 武器の戦闘のみとする
・東軍西軍それぞれの人員は160名ずつ。両軍合わせて320名。
・騎兵が20、弓兵が40、歩兵が100で、東軍の指揮はすべて冒険者に任せられている。
・指揮官や部隊編成の数は自由、ただし兵種の転換は不可能。
・戦場は小高い丘を中心とする平原。
・両軍は、丘を中心に500メートル離れた位置に布陣してスタート。
・両軍の見通しは効かない。
・丘を中心に平原が続いているが、丘の東側は南北に膝丈の深さの小川が。
・小川の対岸は、急勾配の山が。騎兵での進入は不可能なほどの木が生えている。
・丘の西側には、木立がぱらぱらと。見通しは悪いが進行速度を騎兵での突破は可能。
・丘はすそが円状に広がる形で、その頂には大きな木が一本立っている。
・事故に備え、治癒魔法が使える者が待機しているので、模擬戦中の死者は過去出たことが無し。
・勝利した場合、報奨金が出る予定。
・総指揮官はキリーロとされているが、名前だけ。戦場には出ない予定。
●リプレイ本文
●戦略
「ご協力いただきまして感謝します。ま、模擬戦ですし気楽に行きましょう」
気楽に挨拶してるのは総大将のキリーロ・ガブリロフだ。
彼は、戦争の経験も無く、実家も私兵を抱えるわけでもない、いわばド素人だ。
ゆえに彼は今日、まるまる任せるつもりらしい。
「いろいろとお任せしますのでよろしくお願いしますね」
なんとも気の抜ける挨拶に冒険者たちは苦笑を浮かべつつ。
だがともかくも冒険者主導で軍議が始まる。
目的はただ一つ、勝利である。
一同は、羊皮紙に書いた簡単な地形図を見つめつつ、部隊を示す木版を動かして相談を進める。
「‥‥威力偵察を行い、そのまま敵の接近を許さず先手を打つという策で御座るよ〜」
磧箭(eb5634)が策の骨子を作り、一同に説明すると、それぞれが小部隊を率いての作戦が纏まっていく。
「騎兵は私が率いるのですね。では後で騎兵隊長と部隊を半分ずつに分けての行動案を詰めておきましょう」
騎兵を率いるはレドゥーク・ライヴェン(eb5617)。
騎士として馬を駆り戦場を行くのは戦の華と、愛馬スィレーブを撫でて。
「それでは、私は弓兵を率いてですね。お互い頑張りましょうね」
レドゥークに声をかけたのは彼の妻、カーシャ・ライヴェン(eb5662)。
この夫婦は常に並んで戦場に立つのが普通のようである。
「キリーロ殿。歩兵の指揮は俺がしてもいいのか?」
「ええ、私には出来ませんしお願いしますよ。兵たちもその方が良いでしょうし」
その言葉を聞いてうなずく篁光夜(eb9547)。
すぐさま彼は外で、兵隊たちに命令の言葉を教えて練習開始。
錬度はそこまで高くは無いものの、すぐさま彼の言葉に答えて動くようになる兵隊たちに光夜も満足げであった。
「では、私は奇襲部隊の指揮ですね。歩兵から身軽な人を10人ほど見繕ってもらいましょうか」
まだ幼さの残る容姿のメイ・ホン(ec1027)。
クレリックが奇襲とは、と思われるかも知れないが、それはそれ。
あくまでも彼女は練習に付き合うだけという立場であり、やましいところは何一つとしてないのだ。
むしろ、国民を守る騎士を尊敬し、鍛錬をしている彼らの姿に好意的で。
それには、練習に参加してる一般兵士も悪い気持ちはしないようであった。
「皆さん、頑張りましょうね」
にっこりとメイ・ホンが言えば、奇襲部隊の面々はえいえいおーと声を挙げ。
まぁ、いろんな思惑があるようで、ともかく準備は進む。
そしていよいよ模擬戦の日。
遠くには見物の貴族たちの姿、各々160名の兵士たちも準備を済ませ。
いよいよ戦いの始まりを告げる大きな鐘の音が遠くの教会から聞こえてくる。
●戦闘開始!?
さて、まずはこの模擬戦闘に参加してる兵士たちの出自について述べておこう。
彼らは全員が騎士というわけではなく、歩兵の中には傭兵や私兵に近い身分のものたちが多い。
さすがに馬を持ってきている騎兵はほとんどが騎士身分だが、彼らも零細貴族の次男三男だ。
女性兵士の姿はやはり少なく、何とはなしに男くさいそんな160人の集団。
そしていくら刃を潰して安全な武器で、さらに怪我を治してもらえるという状況においても。
戦場の空気はどこか人を怯えさせるものである。
あるものは、大きな声を上げて恐怖を払い、あるものは祈りの言葉を呟いている。
両軍の陣営はそのような状況であった。
そして敵軍はというと。
敵軍の指揮官や部隊長たちは皆戦好きの貴族たち。
と言っても皆若く、戦好きというよりは戦物語が好きというような感じだ。
ゆえに彼らが取った戦術は非常に古典的であった。
まず主戦力である歩兵は横列に戦列を組んで漸進。
騎兵は、予備兵力として突破力を使うために、川側の平坦な部分で縦列、歩兵に並行。
そして弓兵は横列の歩兵背後に控え、接近してきた敵兵を迎え撃つという形であった。
しごく単純である。
真正面から物量でぶつかる場合、戦術の差がほとんど出ない基本戦術とってもいいだろう。
せいぜい騎兵を投入する場所、タイミングが問題になる程度だ。
しかしどうやら、冒険者率いるキリーロ側は独創的な戦術を取ってきたようだ。
敵軍と接触することで彼我の戦闘力を測る威力偵察、少数による回り込み奇襲。
ある意味奇策を主とした戦闘方法といえるだろう。
「た、隊長!!」
「なんだね?! 敵軍が全軍突撃でもしてきたのか?」
自分の冗談に呵呵大笑する敵軍指揮官、だがその冗談もあながちはずれではなかった。
「騎兵と弓兵を先行させて、坂を下りてきます!!」
なぁにぃっ! という隊長の声が響く。
こうして、先手を打った冒険者サイドから戦端は開かれたのだった。
「戦力の逐次投入は下策のはずなのに!!」
吼える敵軍の作戦担当らしき貴族の言葉に、指揮官たちも首をひねる。
そうすると疑うのは、何らかの手段で脆い弓兵を守りきる手段があるのか。
それとも歩兵を騎兵並みの速度で移動させる手段を持っているのか。
にわかに沸き立つ敵軍司令部。そのときなんと川を挟んだ森の影から人影が!
冒険者サイドの奇襲部隊がメイに率いられて躍り出たのだった。
とはいってもメイには戦闘力は無いので、ほとんど陽動なのだが。
これには司令部、もしや強行的に森から大部隊を迂回させたのか! と大いに戦慄した。
そしてときを同じくして騎兵の先頭が、敵軍の歩兵と接触。
本格的な戦闘が始まった。
●戦場にて
この戦場における不確定要素、その最大のものは冒険者だ。
実のところ、今回の冒険者の中には、一騎当千とは言わないまでも数十人は倒せる腕利きもいる。
だが、そこはこの戦場における特殊なルールがその行動を縛っていた。
それは、かすり傷でも戦線離脱。
いかに達人とは言えど、囲まれて攻撃されればカスリ程度はする。
それに見えない場所から攻撃されればかわすことすら出来ないのがどうりだ。
さすがの冒険者といえども、周囲全方向への視界は無く、それはつまり‥‥。
乱戦において、冒険者といえども無力。組織戦闘が勝敗を分けるということである。
ある意味、非常にシステマチックな戦闘といえるだろう。
戦力で勝る相手の場合、個々の戦闘力よりは戦術の優位が勝敗を決める。
ということで閑話休題、話を戻そう。
矢が降る戦場をそれぞれ進む兵士たち。
だが40名の弓兵の放つ弓は矢の雨とはならない。
ゆえに小集団であった冒険者サイドの騎兵はほとんど脱落者を出さずに、敵歩兵へと近づいていた。
だがここでひとつの誤算が。
戦力の集中による命令の伝達阻害を恐れて、レドゥークは部隊を二つに割ったのだ。
その結果騎兵は10騎ずつの小集団に分かれた。
それゆえに敵戦列に突っ込む楔の数は二つになり、突破力を激減させることになったのだ。
騎兵での突破はその突進力によって敵戦列に突き刺さる巨大な槍のようなものだ。
だがその槍が弱ければ、敵の盾である戦列で折れることもある。
今回の戦闘において、最大数なのは歩兵兵力だ。その分厚い盾に突き刺さりはしたのだが‥‥。
「くっ、しまっ‥‥」
まさに鬼神の如く戦列を突破していたレドゥークだったのだが、偶然兵士の突き出していた槍の穂先が胸元をかすめ。
本来ならばまだ戦闘は続くのだろうが、今回のルールでは彼はアウトである。
さて、騎兵は敵陣を突き崩すことも無く撃滅されてしまったのだが、意外に戦果は上げていた。
それは司令部に動揺があったからである。
奇襲部隊の登場に驚いて騎兵での迎撃が間に合わなかったのである。
だが、奇襲部隊の出てきた場所、そこは騎兵部隊のまん前だったのだ運の尽き。
兵力でも囮、河川での戦闘においては腰近くまで浸かる歩兵と馬だけが水に浸かる騎兵の戦闘力差が出た。
こうして騎兵部隊独自の迎撃戦闘によって奇襲部隊は撃滅され、再び戦場は中央へ。
現存兵力は、敵軍は騎兵が丸々に歩兵の損耗2割程度、弓兵の損耗無し。
冒険者側は騎兵がすべて損耗し、奇襲部隊に裂いた一割の歩兵が損耗。
また同時に弓兵の撤収が間に合わず冒険者側の弓兵の五割も損耗。
今度は、両陣営が真っ向からぶつかる歩兵による白兵戦へと突入したのであった。
「盾っ!」
光夜の号令によって盾を掲げる冒険者側。敵軍からの矢を防ぎきるとそのまま次の号令へ。
「槍っ!」
ざっと槍を構えて、古代から優秀と評される密集体型が如く戦列を組む歩兵。
「突撃っ!」
光夜の赤い髪はまさしく戦場の赤鬼がごとき威厳、戦意もますます高まる冒険者側。
うなり声を上げて、両陣営はそのまま接触、あっという間に戦線離脱者が増えていき、一気に決着へと進んでいく。
こうなれば弓兵たちも弓ではなく白兵武器を取り戦列に加わるが、歩兵と弓兵の合計数ではやはり冒険者側に分が。
さらに威力偵察の失敗で即座に引いた箭に、戦列の中心で戦う光夜。
彼らの活躍によって圧倒的に冒険者が有利かと思われたのだが。
ここで、敵司令部、損耗無しで残っていた騎兵を投入。
戦列に川側から回りこむようにして敵兵を刈り取っていく半挟撃戦術を選択。
この騎兵の戦列投入に、カーシャ率いる冒険者側の残存弓兵たちも対応したが、さしたる戦果を上げられず。
いくら冒険者が残っていようが、歩兵の数が減ってしまえば、それで終わり。
この騎兵投入によって、戦闘の趨勢は決まり、ついには冒険者サイドの敗北で模擬戦は幕を下ろしたのだった。
さすがに申し訳なさそうな顔をしている冒険者たちにキリーロは。
「いえいえ、今回は久々に見ごたえのある戦いでしたし」
とにこにこと笑顔を浮かべ。
「やはり冒険者の皆さんが加わると、新鮮な戦いが見れますね」
ということで、戦闘の結果は二の次らしい。
褒美は出なかったものの、この模擬戦闘はまた行われるとかいう噂が。
さて、冒険者たちはどうするのだろうか?