うますぎる話には裏がある?!
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■ショートシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:10 G 51 C
参加人数:4人
サポート参加人数:1人
冒険期間:08月02日〜08月09日
リプレイ公開日:2007年08月10日
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●オープニング
「まいど冒険者には世話になっとるが、今回もまた頼みたいことがあるのだ」
そうギルドの係員を呼び出して、傲慢に言い放ったのはでっぷりと太った男。
ギルドの係員を立たせたまま、自分は腰掛けて依頼を申し付けるこの男はどこからどうみても傲慢である。
彼の名前はボレウス・ユフコフ。
ユフコフ家は領地からの強引な取立てと、豊富な資金力を元に金貸しをこっそり営んでいるとか。
そのためか、キエフに程近い景勝地に立てられた住居は小さいが豪華な城。
景色が綺麗な湖の近くに構えられた城である。つまり、ユスコフ子爵は大金持ちの貴族なのであった。
彼は、以前なんどか冒険者に依頼を出していた。
それは、刺客からの護衛であり、報酬は高くもし依頼で本人が倒れた場合は蘇生までしてくれるとのこと。
かなりうまい話であったのだが、その代わり冒険者の私費を使っての蘇生という話であり。
ゆえに、ギルドからはかなり胡散臭がられている依頼人であった。
だが、今まで冒険者たちと真っ向からのトラブルも無く。
限りなく黒い灰色という感じで認識されているようである。
だが、今回はまたずいぶんと妙な依頼を彼は持ち込んできたのだった。
「いや、わしが買い集めた古地図とかがあるんだがな、最近その整理をしておったところ」
一枚の羊皮紙を、部下に命じて広げさせるボレウス。
するとそこにははっきりと地図と文字が描かれていた。
「どうやら、昔別の貴族が隠し財産を生めた場所のようでな。それの発掘に協力してもらいたいのだ」
まさしく冒険者向きの依頼。だがギルドの係員は長年の経験からなにかが引っかかるように感じた。
あまりにもうますぎる話と、そしてボレウス子爵の態度。
彼の目には一つも冒険者やギルドに対する信頼が見て取れない。
なのに、なぜこれほどまでに重要そうな話を持ちかけるのだろう、と。
しかし、彼がそれを子爵に問いただすのは彼の職務の本分を逸脱している。
「報酬は、手間賃とさらに見つかった財産の半分を冒険者全員とわしの折半ということで」
ギルド係員はそれらを書き留めると依頼を出すために、ギルドへと戻っていった。
しかし、彼は依頼を受けた冒険者に対して自己判断で注意を呼びかけることにした。
どこか、この依頼には裏があるような気がする、と。
もちろんそれは依頼書には直接かけないため、直接言うことになるだろうが。
さて、どうする?
●リプレイ本文
●絶体絶命の危機
「参ったねぇ、せっかく楽しめる依頼かと思ったのによ‥‥」
やれやれと髪をかきあげるゴールド・ストーム(ea3785)。
顔には不敵な笑みを浮かべつつ、彼は手に投擲武器を構えて。
その横で心配そうな顔をしてるのはフィニィ・フォルテン(ea9114)だ。
「‥‥どうしましょう。どこか怪しいとは思ってましたけど、こんなことになるなんて‥‥」
ぎゅっと手を握り締めながらファニィは心配げにゴールドを見やり。
そしてその横で、ゴールドともファニィとも知己の以心伝助(ea4744)が。
「こうなったら切り破るしかないでやす。‥‥覚悟はいいっすか?」
その言葉に最後の冒険者のマリオン・ブラッドレイ(ec1500)もこくりと頷くのだった。
彼らを囲むのは、案内役の騎士をはじめに武装した男たちの姿が。
数はおよそ20。たった4人の冒険者を押し包み、その命を奪うには十分な数だ。
目的の洞窟の入り口に立ち並ぶ冒険者たち。
そしてその場所を中心に敵がずらりと構えている。
まさしく絶体絶命の状況といわざるを得ないだろう。
冒険者としての道を歩むからには死線の一つや二つはくぐっているものも多い。
しかし、同じ人間からの罠にはめられたということは少ないだろう。
それも依頼人からというのは。
さすがの冒険者たちもその背中に冷たい汗が伝うのを感じる。
彼らはどうやってこの状況を打開するのか‥‥。
●事の起こり
話は半日ほど前に戻る。
今回の冒険の目的は、単純な宝探し、とある館跡の影に作られた隠し財産の回収。
しかし、資料も地図も見つかっていないのは依頼人が情報を出さなかったことからわかる。
だが、ギルドで出された依頼は明らかに高レベルの冒険者に対してのものである。
それが意味するものは‥‥。
依頼人は、難易度を知らないはずなのに熟練の冒険者に依頼を受けて欲しかったということだ。
確かに謎だが、ある程度の推測は可能だ。
資金の豊富な依頼人は最上級の冒険者で依頼を固めたかったのではないか。
しかし、逆に最悪の想像も成り立つ。
依頼人の本当の狙いは、熟練冒険者そのものなのではないだろうか‥‥。
「宝探しって、なんだか好奇心をくすぐられる響きですよね」
「ああ、やっぱ浪漫だよな。めんどくせぇ事もあったりするがなんだかんだでおもしれぇんだよなぁ」
知己のフィニィとゴールドはそんなに会話をしながら目的の洞窟へとやってくる。
ゴールドの方はあまりなにか裏があるとか考えていなかったようだが、フィニィは別だ。
彼女はギルドで依頼に合った屋敷についての情報の裏を取ったのである。
その結果、依頼人が語った内容に嘘は無く、屋敷は誰の持ち物でもないそうであった。
さらに、その屋敷はずいぶんと昔から誰も住んでないぼろ屋敷として知られており。
今まで財宝があるなんて噂は一度たりとも流れていなかったのである。
「じゃ、あっしらが宝探しをしてもなにも問題ないわけっすね」
伝助が言うように、探索自体には問題は内容である。
では、それですべての疑問が氷解したのかといえば、その答えは否。
何かと黒い噂の多い依頼人、その依頼人につけた騎士には冒険者たちも警戒しているようだ。
「わざわざ冒険者を使う理由があるのかしら?」
たとえば守護者がいるとか、罠があるとか、生贄がいるとか、とマリオンは指折り数えながら。
「さぁな? ま、裏があろうが関係ねぇ、俺はおもしれぇ様にやるだけだしな」
とゴールドはきっぱりと先に進む。
そしてフィニィは何とか騎士から話を聞こうとするのだが。
「では、特に何をしろとは‥‥」
「いえ、私は案内役ですから」
と騎士は言うだけで、なにもしらないという話らしい。
そんな様子を見て伝助は一人呟く。
「財宝山分けで手伝いまであるって、待遇良すぎっすよねぇ」
そして彼らの目前にぽっかりとその姿を見せた洞窟を見やりさらに呟いた。
「もしも財宝が見つかって、かつ山分け相手がいなくなれば丸儲けなわけですが‥‥」
流石にそれはない‥‥と思いたい所っす、と飲み込んだ言葉は誰にも聞こえなかったのだった。
●洞窟にて
そして洞窟の中では、予想は裏切られた。
最悪の形で。
その第一歩は洞窟には行って早々、騎士の姿が消えたことである。
どこか罠にはまったのかとも思えるのだが、綺麗さっぱり彼の姿は消えていた。
「いったいどこに消えてしまったのでしょう‥‥」
「ま、心配しても仕方ねぇさ。とりあえず先に進もうぜ」
心配げなフィニィとその頭をぽむっと叩いて先へ促すゴールド。
そして洞窟を進むのだが。
勿論その洞窟には罠が、仕掛けられていた。
床に見づらいよう偽装されたロープが渡されそれに引っかかれば矢が飛び出す仕掛け。
自然石に見せかけた床には落とし穴が仕掛けられていたり。
単純に、ロープに触れると上から石が降ってくるようになっていたり。
しかし、それらの罠をどれも回避する冒険者たち。
それは戦闘をゴールドと伝助が進み、出てくる罠をすべて無効化していくからであった。
一つも罠にかからず進む彼らは快調のように見える。しかし。
「どうかしたの? ずいぶんと険しい表情だけど」
マリオンがたずねるほど2人の表情は暗かった。その理由は一つ。
「なぁ、この罠‥‥やっぱりおかしいよな」
「あっしもそう思いやす。どれもこれも‥‥新しすぎるのでやすよ」
そして彼らの予感は的中する。
洞窟の最深部には、なにも置かれていなかったのだ。
遺跡自体が、単なるトラップ、しかもそこに冒険者を叩き込んだ理由はただ一つ。
依頼主は冒険者の命を狙っているということである。
そして物語は冒頭へとつながるのだ。
●命あっての物種
騎士を筆頭にした襲撃者たちの影を見た冒険者たちは戦慄した。
しかし彼らは絶望することはなかった。
偶然にも、重い荷物やペットを連れてきているものはいなかった。
大量の荷物を持っていたゴールドは手伝いのシャリン・シャランにすべて預けており。
貴重な一角獣をフィニィは預けてきていたのである。
でも、なぜ冒険者たちは狙われるのだ?
それは、彼ら本人にも覚えがあった。
冒険者とは命の危険がある職業だが、その代わり一攫千金である。
貴重な魔法のアイテムに触れる機会も多く。
ゆえにいくつもの死線をくぐり武勇を高めた冒険者はかなりの財産を築くのだ。
そして今回の依頼に参加した冒険者にも、多くの財を持つものも少なくなかった。
魔法の武具を持つことは冒険者としては普通かもしれない。
しかし彼らの持つ魔法の剣一振りで一家族が数年暮らせる額になるものも少なくないのだ。
そう、冒険者たちの財が狙われたことを、彼らは直感的に理解した。
そして彼らはここから逃げ出さない限り、命すら危ういことも肌で感じたのだった。
「右から抜けるぞ!」
ゴールドの掛け声とともに冒険者たちはいっせいに駆け出した。
呼応して放たれた牽制の魔法はマリオンのファイヤーボム。
まだ威力は十分ではないものの、密集した襲撃部隊の目前で爆裂し、爆風を撒き散らす。
そこに立ちはだかるのは騎士とそれをはじめとした武装兵たちなんだが。
そこに突っ込んだのは伝助。小太刀を構えたまま、突貫し騎士に肉薄する。
伝助の右腕の小太刀を盾で受ける騎士。その死角に放たれる左のこぶしをかろうじて兜でさえぎる。
しかし伝助の攻撃は三度目が潜んでいた。
兜ごと揺らす綺麗な右足の蹴りは騎士をスタンアタックで眠らせた。
そしてその部下と思しき武装兵士たちがひるんだ隙に、飛んできたのはゴールドのナイフ。
彼は接近した兵士たちの剣をすべてかわしながら、縄ひょうを投げては引き戻し。
接近する兵士たちを次々にダメージを与えていくのだった。
だが敵には弓使いがいたようで、飛んでくる矢を前に絶体絶命かと思いきや。
その前にはフィニィのムーンフィールドが。
いつの間にか日は落ちて夕闇のなか天には月が昇っていたのだ。
その防護で敵を阻みつつ、冒険者たちは命からがら逃げ出していく。
ゴールドは縄ひょうで追いすがる敵を排除し、伝助は前方に立ちはだかる強敵を一瞬で撃滅し。
ファイヤーボムでマリオンは時間を稼ぎ、フィニィはスリープとムーンフィールドで退路を。
こうして、なんとか冒険者たちは命をまもり逃げることが出来たのであった。
そして数日後、依頼は失敗だったとの報告と、あの洞窟が崩落したとの話が伝えられ。
さらには騎士がキエフ郊外で物言わぬ骸となってみつかったらしい。
ギルドは冒険者たちの報告を入れて、依頼人に正式に抗議した。
しかし依頼人のボレウス子爵は知らぬ存ぜぬの一点張り。
不幸なことに、真相を知る騎士は死に、洞窟という証拠も消え。
結局冒険者たちにとっては依頼を失敗したという事実だけが残った。
ままならぬことがたくさんあり、得るものは少なかった。
しかし、冒険者たちは幸運にも何も失うことは無かったのである。
ここでこの冒険は幕を下ろすことになる。
しかし、この冒険にまつわる新たな冒険がもたらされる事は想像に難くないのであった。