お屋敷の護衛を求む!

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月28日〜09月02日

リプレイ公開日:2007年09月05日

●オープニング

 冒険者、それは自由の職業。
 とはいえ、冒険者を志した理由は人それぞれだろう。
 親が冒険者だったから。
 騎士だが、修行のため。
 諸国漫遊の旅に出たいから。
 まだ見ぬ謎を求めて。
 しかし、冒険者のためのギルドがあり、依頼があるからと言って。
 冒険者という職業は甘くない。
 時にはモンスターと戦って命を落とすものもいるし。
 生活だって楽じゃない。
 ということで、性根が捻じ曲がる奴もいるのは、事実である。
 そして、ここにも数人。

「へっ、冒険者なんてばかばかしくてやってられねぇや」
「貴族から金を盗んで何が悪い! あるところから少しぐらい盗んでも良いだろうが」
「金をためてる悪徳な貴族から金を盗むんだ、俺たちはむしろ正義じゃないか?」
「じゃ、盗みに行こうぜ!」

 ということで、強盗計画を立てたやつら。
 とある貴族のお屋敷に強盗予告をしたという。

 ●貴族へ
  おまえは、金をたくさんもってるからすこしわけてください。
  じゃなくて、すこしもらっていくので覚悟しろ。
  たくさん金を持ってるやつは悪い奴でうらやましいので成敗する。
  正義の強盗団が惨状するぞ。

 そんなこんなで、ギルド受付にて。
 今回依頼を持ってきたのは、キエフの下級貴族、キリーロ・ガブリロフ。
 確かに彼は、商才があるため材木業で財を成している。
 彼は、先日投げ込まれたこの予告文を見て、とりあえず冒険者に依頼を出しに来たようだが。
「‥‥なんというかまぁ、ずいぶんとアホっぽい予告ですね」
「うむ、スペルも間違ってるいし、正直頭が痛くなったぞ、これは」
「でも、やはり対応しないとまずいわけですよね?」
「ああ、なので数日間護衛として泊り込んでくれる冒険者が必要なのだが‥‥」
「了解しました。それでは依頼を出しておきますので」

 ということで、冒険者に向けて出された護衛依頼。
 食事と泊まるところは、屋敷内に用意されるとかで、心配は要らず。
 首尾よく強盗団を撃退できた場合は、打ち上げもやってくれるとか。
 そんな至れり尽くせりなのはキリーロが冒険者好きというのもあるようだが、それはまた別の話。
 ということで、どこか抜けているとはいえ強盗団の撃退依頼である。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea3090 リリアーヌ・ボワモルティエ(21歳・♀・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 eb3232 シャリン・シャラン(24歳・♀・志士・シフール・エジプト)
 eb5623 アデム・レオ(59歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・ロシア王国)
 eb7693 フォン・イエツェラー(20歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec1876 イリューシャ・グリフ(33歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec1983 コンスタンツェ・フォン・ヴィルケ(24歳・♀・クレリック・エルフ・フランク王国)
 ec2700 フローネ・ラングフォード(21歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ec3664 玖琉 藍(25歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)

●リプレイ本文

●貴族は頼む
「ああ、これはこれは冒険者の方々、良くぞ依頼を受けてくださった」
 屋敷に到着した冒険者を暖かく迎えるのは依頼人のキリーロである。
 冒険者には良いイメージを持っているので、今回もこの歓迎っぷり。
 冒険者は暖かく迎えられ、それぞれ部屋に案内されるのだった。
 しかし。
 冒険者とは千差万別なもので、個性的な者も。
 というか、個性だからこそ冒険者をやっているのかもしれないが、それはさておき。
 キリーロへとこそっと視線を送るリリアーヌ・ボワモルティエ(ea3090)。
 なにかな? とキリーロが尋ねると、すっと差し出される羊皮紙の切れ端。
 そこには材木片を用立てて欲しいことや、客室の用意が必要ないことが書かれており。
「‥‥頼みとあらば、いくらでも用意しますよ」
 ということで、たくさんの木片などが届けられたりしたという。

 さて、リリアーヌはその人見知りゆえに交流は無かったが、逆のタイプも。
「はじめまして、わたくしはコンスタンツェと申しまして‥‥」
「ああ、これはこれはご丁寧にどうも」
 コンスタンツェ・フォン・ヴィルケ(ec1983)はキリーロに挨拶してる様子であった。
 が、挨拶はとにかく長かった。
「わたくし、聖なる母の教えのすばらしさに感銘を受けまして‥‥」
 信仰告白から始まり。
「そういうわけでわたくしは修道女としての道を歩むことにしまして‥‥」
 生い立ちなんかを感動的に語られたり。
「‥‥というわけで、よろしくおねがいいたしますね」
「は、ははぁ、こ、こちらこそよろしく‥‥」
 さすがのキリーロも面食らったようである。

 そして、話は他の冒険者も巻き込んで応接間で、今回の強盗たちに及んだり。
「わざわざ予告してくださるなんて、なんて律儀な強盗さんでしょう!」
 感動するコンスタンツェやら。
「ええ、たしかに律儀ですが‥‥まぁ、文章の拍子抜け具合はさておき、意外な実力がないとも限りませんしね」
 フローネ・ラングフォード(ec2700)のたおやかにお茶などをいただきつつ。
「ですが、強盗さんが本当に罪を犯してしまうのをお止めしませんとね」
 とコンスタンツェが言えば。
「そうですね、彼等が事に及ぶ前に止めないと!」
 とフローネはぐっと握りこぶしで気合であった。

●準備は進む
「よっと‥‥ふむ、鳴子もこの量になるとなかなか重いな」
 ロープに木片をくくりつけて作った大量の鳴子ロープを担ぐアデム・レオ(eb5623)はそう呟いた。
 その服装は庭師。すでに変装して準備に当たっているようだ。
「で、これは向こうに仕掛けておくんだったな。二重に仕掛けておくが問題ないか?」
 アデムが尋ねたのは、庭先で鳴子作りにせいをだしているリリアーヌで。
「‥‥これも、お願いします‥‥」
 キリーロに用意してもらった木っ端屑を尖らせて作った即席まきびしの袋を渡すリリアーヌ。
 うむ、とアデムは頷いて、のしのしと遠ざかっているのだった。

 一方屋敷内では。
「しふしふ〜☆ あたいはシャリン・シャランよ」
 ぱちりとウィンク一つで、ひらりと空を舞う姿はシフールのシャリン・シャラン(eb3232)だ。
 彼女は今、キリーロに金貨を貰って魔法を使うようであった。
 ということで、しばしの集中の後、彼女がとなえたのはサンワード。
 金を媒体に情報を得る魔法である。
「この手紙を書いた人、はどこ?」
 魔法の使い手としてはなかなかの実力を持っているシャリンである。
 しかし、この魔法の効果は、残念ながら太陽の届く範囲しか及ばないのであり‥‥。
 かえってきた答えは、残念ながら“わからない”というものだった。
「んー、残念。やっぱり盗賊さんたちは、部屋の中にでもいるのかしら?」
 手を尽くしても報われないことはある。
 ということで、彼女は見回りの手伝いをすることに決め、ふよふよと飛んでいくのであった。

●盗賊は来る
 昼間に交代で休みを取っている冒険者一行。
 夜間は全員で配置について警戒態勢である。
「ジャイアントの旦那は正面と裏庭どっちに行く?」
 イリューシャ・グリフ(ec1876)がアデムに尋ねれば。
「ふむ、わしはこの図体が図体であるから、裏に回らせてもらおうか」
 バルコニーには誘いの縄梯子もあるし、とアデムは答える。
「了解、んじゃ、俺は正面を見張らせて貰おうか。撃退撃退っと」
 剣を腰に佩き、篭手を装備したイリューシャは準備万端。
 さらに正面を固めているのは、フォン・イエツェラー(eb7693)だ。
「鳴子もしっかりと準備できましたし、あとは盗賊たちを待つばかり、ですね」
 屋敷正面の木陰にこっそりと座り込んで、のんびりとフォンは暗がりを見据えて。
 その懐からは、ぼんやりとわずかにあたりを照らす柔らかな赤い光が。
 ゆったりと光を放つその球体をぽんぽんと撫でるように叩きながらフォンはゆっくりと時を待つのだった。
「さあ、初仕事だ! 屋敷には、絶対! 指一本触れさせねぇぜ!」
 気合十分に握りこぶしを握っているのは玖琉藍(ec3664)。
 今は彼はシフールの小柄さを利用して、屋敷の外で警戒に当たっていた。
 進入経路になりそうな場所に身を隠して、ひっそりと待つ。
 盗賊らのアジトを突き止めることが出来なかったのが彼の唯一の心残り。
 しかし、だからこそ、しっかりとやってくるであろう強盗団への警戒を高めており‥‥。

 そのころ、冒険者たちがしっかりとしっかりと警備していることも知らずに、強盗たちはすぐ近くまでやってきていた。
 実は彼らは警戒されてるかも! と戦々恐々としていた。
 もちろん、手紙を出したあとでそのことに気づいたのであり、彼らの馬鹿さ加減がしれるというものだが。
 ところが、近づいてみれば、騎士団が控えているわけでもなし。
 これはチャンス! とばかりに強盗たちは、屋敷の周囲に散らばり。
 こともあろうか、だれが一番に宝を奪えるか競争しようぜ、とのこと。
 そして彼らは、自分たちの栄光を信じて一歩を踏み出して‥‥。
 鳴子が鳴り響いたのだった。

 ひっそりと木陰に潜んでいたリリアーヌは、来た、と小さく呟いた。


●悪事を裁く
「やつらが来たぞ!!」「おいでになったようですね!」「待ってたぞ!!」
 イリューシャやフォン、そしてアデムの気合が響き、冒険者たちは迎撃に飛び出した。
 そんな様子に、ほうとため息をついてフローネは、
「簡単に見付かるような侵入方法の方だったみたいですね‥‥やっぱり浅はかでしたね」
 と呟けば、その横でシャリンがしふしふ〜と応援の踊りを踊っていたり。
 びっくりしたのは強盗団、なにごとか? と思ってるうちに‥‥。
「ふむ、しばらく寝ていてもらおうか!」
 にょきっと伸ばされた腕にがっしりつかまった泥棒。
 そのまま、アデムのスープレックスで石畳にどっかんと叩きつけられる!
 背中を強打して、今晩の第一の犠牲者はあっさりと気を失った。
 一方屋敷正面では数名の盗賊が、突然飛び出てきた冒険者に見つかっておろおろとしていたり。
 どうやら、見つかったときのことは考えていなかったよう。
 しかし、だからといって容赦する冒険者ではない。
 一応武器を抜いて構えようとしている泥棒に向かってイリューシャは。
「あー‥‥冒険者崩れか。金が欲しいんならな、働け、普通に」
 ときっぱり言い捨てて。
 その言葉に、まったくですね、とフォンが同意を示していたり。
 そしてイリューシャとフォンは同時に飛び出すと、あっという間に2人の盗賊を叩きふせる。
 それにびびって1人が逃亡すれば。
「甘いなっ!!」
 しゅぱっと、暗がりから伸びたのは藍の武器、ローズウィップだ。
 その一撃で足を絡め取られた盗賊、わたわたと膝を突いて立ち上がろうともがくのだが。
「善良な人を襲う奴らなんか最低だな、根性を叩き直してやるぜ!!」
 鞭を手放して一気に飛び込んだ藍の一撃、気合のこもった龍飛翔の一撃があごをかちあげる!
 これにて正面の盗賊は全滅、そして同じ頃、暗闇の中で最後の盗賊が降参の声を上げていた。
 リリアーヌがきりきりと矢を引き絞って放つ。
 すると、その矢は体ぎりぎりに突き立ちその男の服を木へと縫い付ける。
 すでに突き刺さっている矢の数は10本近くになりそうであり。
 もちろん男は無言で矢をしぱしぱ撃ってくるリリアーヌへと恐怖のためかごめんなさいを連呼していたという。

 こうして全ての盗賊はひっとらえられ、ロープで簀巻きにされ屋敷の正面に転がされていた。
 あとはしかるべきところに突き出すだけなのだが。

「‥‥いいですか? 教えにあるでしょう。汝盗むなかれ、と‥‥」
 彼らの正面で一生懸命に教えを説いているコンスタンツェ。
 教えを説けば正しい道に戻るはず、という鋼の意思による長い長いお説教が始まったのだ。
 その破壊力、もといお話の力は偉大なようで、盗賊の幾人かは滂沱と涙を流していたり。

 とにもかくにも、これにて一件落着であった。

●宴会は踊る
 そして、幕が下りた後は、もちろん宴会が開かれたのであった。
 アデムによる即席作曲を楽団が演奏したり。
 フォンが、キリーロの友人貴族からダンスを誘われてみたり。
 陽気な音楽にあわせて、くるくると踊っているのはシャリンだ。
 なかなかに大胆な踊り子の衣装で、参加者を楽しませているようで。
「あんた達、あたいの踊りを見られるなんて運がいいわよ♪」
 こんなこと言いながら、藍をダンスに誘ったり。
 もちろん他の冒険者たちも思い思いに依頼成功を祝って楽しんでいた。

 そして、にぎやかしい宴会は苦手、と先に帰路に着いたついたリリアーヌ。
 持たされた宴会料理の詰まったバスケットを手に、静かに屋敷を去っていく。
 その背中に届くのは、依頼を終えてくつろぐ冒険者たちの笑い声。
 こうして、冒険者たちは次なる依頼までの間の時間をそれぞれに楽しむのだった。