●リプレイ本文
●ひとまず調査開始
「かなり深刻な問題のようですわね‥‥」
詐欺の被害にあった学生たちをすこし唖然としながら見つめて、そう言ったのはルナ・ローレライ(ea6832)だ。
「でもわたくし達も同じ学生として犯人を捕まえませんとね」
そしてルナはそっと目を伏せながら、決意の言葉を口にする。
「騙す方も悪いが、騙される方もなさけないと思うがな?」
被害を受けた学生たちを不甲斐無いと思ったのか、そう呟いたのはリュイス・クラウディオス(ea8765)。
しかしたとえ本人の不注意が、実際に被害を受けた人間がいることは事実である。
「あ〜面倒だが、やるしかないか? 騙された人悲惨だしな〜」
文句を言いながらも、しっかりと被害者たちから、情報を聞き出しているリュイス。
いうことはきついが、これでなかなか優しいところがあるようだ。
「大変でしたね。でも事件はあたしたちがちゃんと解決しますからね」
真摯な態度で被害者たちに言葉をかけているのはメルゥ・セリクファン(ea8767)だ。
身振り手振りを交えて、元気を出すように励ましている。
たとえハーフエルフでも学園都市ケンブリッジの中ではそれほど差別などは存在しない。
もちろん個人の思想にもよるだろうが、今回被害にあった人間の中には、誰一人としてそんな人間はいなかったようだ。
被害者たちは、依頼を受けた冒険者たちに頭を下げて、感謝したのだった。
●そして詐欺集団に接触
依頼を受けた一行は、被害者たちが被害にあった場所を教えてもらい、ひとまずすぐにそこに向かった。
詐欺集団は露天のように、街頭で商売をしたらしく、すでにそこからは引き払ったためそこには何もない。
昨日まではここで商売をしていたはずなのだが、跡形もなく消える手際のよさに、改めて詐欺集団への嫌悪が募った。
「私に任せてください。パーストをかけてどういう風にあの人達が被害にあったか調べてみますから」
ルナがそういってリュイスとメルゥが見守る中呪文を唱える。
「‥‥刻を見守る月よ。見守りし、刻の流れを今我に示せ‥‥パースト!」
前日の昼間に頭が良くなる羽ペンの被害にあった学生の様子を垣間見るルナ。
残念なことに直接被害者から話を聞いた以上の情報は得られず、さらには一日前の情報しか得られなかった。
しかし、何度も学生を食い物にする詐欺集団の手口を見聞きすることで、怒りはいや増すのである。
次なる作戦は、客として詐欺集団に接触すること。
一緒の依頼を受けた他の一名の冒険者から現在詐欺集団が何処にいるのかを聞き、一同は行動を開始するのだった。
詐欺集団がいる場所へとやってきた一同、幸い客の影はない。
そこの場所には三人の人影、話に聞いたリーダー格の中年の男以外の三人が見える。
「最近困ったことが多くて、何か解決する手立てはありませんか?」
そう詐欺集団の老人に語りかけるルナ。
すると老人は満面の笑みを浮かべて語りかけてくる。
一見人の良さそうな笑顔だが、ルナにはその笑顔が獲物が来たことを喜ぶ下品な笑顔に見えるのだった。
「む、お嬢さんは学生さんだな? ならば困ったことを解決するためにこの羽ペンとかはいかがかな?」
滔々と商品の説明を始める老人。
ルナは愛想良く、老人に他にも買いたい人がいるといって、別の場所へと誘導する。
「‥‥残念ですけど、ちょっと眠っててくださいね‥‥」
シャドゥフィールドで隙をつき、後ろからごつんと仲間が一閃。
老人はあっさりと罠にかかって、戦闘不能になったのだった。
一方老人が縛り上げられてる間に他のメンバーは‥‥
「‥‥ほんとにこの商品にそんな力があるとは思えません。詐欺じゃないんですか?」
真正面から女と大男に問いかけたのは、メルゥだ。
とたんに殺気立つ大男と女。だが戦闘力があるのはどうやら男の方だけらしい。
「お客さま‥‥他の人の前で迷惑なことを言ってもらっては困りますわ‥‥ちょっと痛い目でもみて頂戴」
女がそう言うと大男がじりじりと近づいてくる。
「‥‥ちっこい女がいきがるんじゃねぇ!」
回りに客がいないのをいいことに襲い掛かってくる大男。
「あたしをあんまり甘く見ないほうがいいですよ」
そして言葉の通り細身の少女であるメルゥを甘く見た大男の方が痛い目を見ることになったのだった。
拳を振りかぶった大男が攻撃するより早く、メルゥは相手の間合いへと踏み込んで、ロングソードを鞘から抜かずに一閃。
脇腹をしたたかに打たれた大男がよろめくと、息もつかせず脳天へもう一撃。
ふらふらの大男の必死の反撃を剣の柄で軽く受け流して、さらにみぞおちへと鞘ごと剣を突きこむメルゥ。
敵わぬと見た大男は、うずくまって参ったと降参するのであった。
それを見た女はきびすを返して逃げ出そうとする。
しかし、突然女は自分の体をばたばたたたきながら悲鳴を上げたのだった。
リュイスの放ったイリュージョンの魔法によって炎の幻影を見せられているのだった。
こうして、パニックに陥った女はあっさりと捕まったのである。
そうして、残るはリーダーであろう中年の男ただ一人。
「‥‥隠れてるのはわかってるんだよ!」
優れた聴覚によって、近くの草むらに隠れていた男を見つけたのはリュイスだ。
どうやら、ギルドに依頼が出たことを知っていたらしく、さっさと一人だけ逃げる隙をうかがっていたらしい。
隠れているのがばれた男は、慌てて逃げようとする。
「逃さねぇよ! 喰らえ、シャドゥボム!」
呪文の声とともに、男の足元の影が爆発する。
突然の魔法攻撃にビックリして腰を抜かしたのかへたり込む男を一同は軽々と縛り上げたのだった。
●被害者と加害者
「だ〜重い!! 力仕事は、苦手なんだが、女に重いもの持たせるわけには、いかないからな〜」
ぶちぶち文句を言いながら、一人だけ気絶した老人を担いで運んでいるのはリュイス。
他の3人は縛られたまま、被害者たちの前につれてこられたのだった。
「それで、どうしますか?」
優しく問いかけたのはルナである。
「復讐するの?」
好奇心から問いかけるメルゥだが、その言葉に詐欺を働いた4人はびくりと身をすくませる。
血気盛んな者のなかには、とりあえず暴力に訴えようとする者もいるらしく、一触即発の雰囲気である。
しかし、そこでリュイスがこんなことを言った。
「すげ〜殺気だな。タコ殴りか? 恐ろしいな‥‥」
飄々とした言葉に一同はリュイスを見る。
「でもなぁ、お前等もなさけないぞ? 人に頼ってよ‥‥甘い話には、必ず裏があるんだぜ? 努力しろよ‥‥少しはよ!!」
そうきっぱりと説教されて、被害にあった学生たちも唇を噛んで言葉に詰まるのだった。
結局一人として復讐をしようとするものは出ず、結局犯人たちはしっかりと引っ立てられていったのだった。
少ない人数で依頼を無事解決した冒険者たちは、学生たちに非常に感謝された。
お礼にもらったインチキなアイテムの数々はそのまま捨てるほかなかったそうだが。