三竦み
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■ショートシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 4 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月16日〜05月21日
リプレイ公開日:2008年05月24日
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●オープニング
春もようよう、暖かくなってきているキエフ。
木々は芽吹き緑もまぶしく、朝夕の寒気も和らいで。
そんな季節、元気になるのは人だけではなく。
山野に住まう全ての存在が元気になるのである。
んで、ちょっと元気になりすぎたりすると、こういうことも。
ちょっと遅めに冬眠から眼を覚ましたのはどでかい熊。
彼は、この春無事にお嫁さんを発見しました。
彼女が出来ると良い格好を見せたくなるのが男、というかオスの常。
森を我が物顔で闊歩していると、おお、獲物発見。
なにやら物騒な装備をしているような気もしますが、彼女を前に怯えるわけにはいきません。
咆哮とともに低木をなぎ倒して、そいつらのまえに躍り出ると!!
やっと、森も歩きやすくなって着たこの季節。
森を行くのは3頭の異形の人影であります。
ぼろぼろの鎧に、古びたフレイル。
人より幾分小柄な体躯ながら獰猛そうな姿のそのオーガたちは、ゴブリン戦士です。
いつも人様に迷惑をかけては冒険者に成敗されたりする役どころの彼ら。
彼らは3人連れ立って今日のご飯を探していました。
幸か不幸か、周囲に人里はなく。というかすこし遭難気味の彼らは野生動物を探しています。
そんな彼らの前に咆哮とともに躍り出たのは2頭の巨大なクマ。
あわてて武器を構えて身構えると‥‥。
突然周囲が騒がしくなったのでむっくりと身を起こしたのは巨人。
身の丈は2メートル半を超し、青銅色の肌はいびつに隆起している。
冒険者たちにとっても強敵であるこのクリーチャーの名はトロル。
再生能力を持つ雑食性のモンスターである。
こいつは腹がすいてしばらく寝転んでいたところなのだが、どうやら近くに餌がいるようで。
ひょっこりと顔を出すと、そこには3匹のゴブリン戦士と2匹のグレイベア。
おなか一杯になるには十分な餌発見!
さて、このときこの三種類のモンスターが勝手に暴れ始めたのを偶然見ていたのは、木陰で休んでいた巡回司祭である。
これからキエフに戻ろうとしていた司祭。
偶然薬草を見つけたのでそれを採集していたところ、こんな現場に遭遇したのである。
グレイベアがゴブリン戦士に襲い掛かったかと思いきや、トロル登場。
ごちゃごちゃと小競り合いをした後に、なんだかそれぞれ一度は逃げていったようで。
周囲には人里がないところとはいえ、半日ほどまっすぐ森を突っ切れば街道筋。
いつ何時人様に迷惑をかけるか分からないとなれば、これは成敗する必要があるだろう。
結果、人手不足だったキエフ教会の名で冒険者に依頼が出ることとなったのである。
さて、どうする?
●リプレイ本文
●意気揚々
件の通り三者三様の思惑で膠着しているモンスターであったが、これを解決し解きほぐす任に付いたのは5名の冒険者であった。
彼らは、報告にある場所へと赴くと拠点をさっさと作り準備を整える。
その様子は手馴れたものだ。
荷物を満載した背嚢から、必要な荷物を腰に付けたり。
野営のための仮設営をしつつ、愛馬を手近な木につなぎとめたり。
それもそのはず、名声で見れば、彼らはすでに一流の冒険者として名を上げているものばかりであるのだ。
冒険者の仕事は派手な戦闘だけではない、こうしたこまごましたことにおいても高い技能を誇るからこその冒険者なのである。
さて閑話休題。
5名の冒険者の思惑はほぼ一致していた。
一番厄介なトロルを最初に叩く、その間、漁夫の利を狙われないように、クマとゴブリンは両者を争わせておく。
こうした作戦に基づいて、彼らは行動を開始するのであった。
「さて、予測するにグレイベアの生態は‥‥」
もてる知識を駆使する。それもまた一つの技だ。
グレイベアの生活などから予測して、これから森の深いところへと踏み込もうとしている仲間にアドバイスを与えているのは
ヴィクトル・アルビレオ(ea6738)だ。
首に提げた十字架の端を弄えつつ、グレイベアの行動について予測を立てるのだが。
「グレイベアの繁殖期ですからね。つがいであるとの報告もありましたし、行動範囲は狭いかもしれません」
もう1人、深遠なモンスター知識をもって、助言をするのはメアリ・テューダー(eb2205)である。
知能を持つモンスターや、不可解な行動をするものに比べて、動物はその行動が推測しやすいのかもしれない。
こうして、ヴィクトルとメアリのアドバイスを受けたゼファー・ハノーヴァー(ea0664)と以心伝助(ea4744)は2人で分担して、森の中を探索するために出発するのであった。
●準備万端
道々に罠を仕掛けるのはゼファー。
彼女は優れた身のこなしで難なく森の中を踏破していき、そこかしこに残されたモンスターたちの小競り合いの後を探っていた。
要所要所に簡単な罠を。
大穴を掘ったりは出来ないが、軽い傷を負わせる程度の罠は、猟師としての技量を持つ彼女にとっては容易いことであった。
同時に、別方向を探索していたのは伝助だ。
その動きは、まるで野の獣のよう。
木々の枝を跳ね、高速で移動しているのは忍の技を使っているからこそであった。
この2人の仕事こそが、今回の依頼で一番肝要であった。
それが、ゴブリンとグレイベアを両者ぶつけ合うこと。
そして今回、この作戦の選び方は正しい選択であったと言うべきであろう。
一つは、トロルを最初の排除目標としたこと。
その戦闘力の高さもその理由足りえるが、なによりトロルは1体だけであり、また感覚器官が優れていない。
野生動物としての習性や、それなりの知性を持つゴブリンと違って、単純決戦を仕向けるにはとてもよい相手であろう。
こうしてゼファーは、グレイベアを追い、伝助はゴブリン戦士たちを追っていたのだが。
ヴィクトルやメアリのアドバイスに従えば、これらのモンスターをこっそりと捕捉するのは容易いことであった。
さて、一度捕らえてしまえば後は作戦の通り、この両者をぶつけてしまえば良いのである。
ゼファーは、小石を投げつけたりして、グレイベアを挑発し、伝助も同じように声真似などで、注意を引いて。
こうして両者は、見晴らしの良い森の一角で、鉢合わせられたのである。
逃げ場の無い場所で、両者がぶつかってしまえば、後はただ戦いが始まるのみ。
地の利を生かして立ち回るゴブリンたちと、パワーで押すグレイベア。
そんな戦いが始まった一方で、冒険者たちは次の行動を開始していた。
●巨人決戦
トロルは、物音で眼を覚ました、
動物のほえる声と、きいきいと五月蝿い小鬼の声。
それがにぶめの耳に聞こえたということは大分近くだということで。
とりあえずえさだとのっそり起き上がったトロルの前に、今まで見たことのないものがあった。
自分より2回りは小さいその影は、完全装備の鎧姿だった。
今まで、どっしりと構えていたカイザード・フォーリア(ea3693)である。
なんと彼は、身一つで、巨大なトロルの前に立ちふさがったのである。
咆哮をあげて威嚇するトロル。
普通の敵ならこれだけで、尻尾を巻いて逃げ出すのだが。
「‥‥ふむ、オーラは習得も大変だし、重装甲も効率に問題があるのだが‥‥」
と呟きながら、かぶとの面頬をがしゃりとおろし、その隙間から見えるのは左右で色の違う瞳のみ。
そして、がしゃりと剣と盾を構え。
「お前のような力押しの敵相手ならば、有効だろうな。ここは通さぬ」
オーラの輝きを帯びつつ、放たれるプレッシャーに、トロルは生まれて初めて恐怖を感じたのであった。
開始の一撃。トロルは何処で仕入れたのか、巨大な棍棒を振るうが、それは難なくカイザードの盾に阻まれ。
「‥‥むう、しかしトロルが小さく見えて仕方ないな」
それもそのはず、物陰からスクロールを使おうとしているゼファーは、最近開拓の地で、はるかに巨大な敵を相手にしてきた経験もあり、恐れるそぶりも見せずにシャドウバインディングのスクロールを行使し。
「何度か使えばおそらくかかるでしょう。私もサポートします‥‥地の精霊よ! 彼の者に枷を与えよ、アグラベイション!」
メアリが使ったのは、重圧の魔術。
とたんにトロルの動きが衰えて。そこに飛び出していったのは両方の手に刃を持った伝助だ。
「さて、あっしの仕事は、注意を引くことですな。あんたの相手はこっちっすよ!」
眼前でとんぼをきってまで注意を引いて、今まで岩のように硬いカイザードをたたくばかりであった、トロルは五月蝿いと思ったのか、伝助に棍棒を振るい、伝助は危ういところでそれを回避する。
しかし、時折叩き込まれるカイザードのカウンターや、伝助の攻撃も、見る見るうちに再生するトロルに対しては、少々時間が架かりそうと思われたのだが。
いつの間にか、こっそりとトロルの背後にはヴィクトルが。
そして、何度めかの挑戦で効果を示すシャドウバインディング。駄目押しのプラントコントロール。
身動きの取れなくなったトロルの背後でヴィクトルが。
「偉大なる父の御名において‥‥」
祈りとともに、メタボリズムからデスのコンボ。
いくら再生が可能とはいっても、死からは逃れられないもので、トロルはその魔力でもって、絶命したのであった。
最後の断末魔か、咆哮をあげて倒れるトロル。
その声に臆したのか、グレイベアとゴブリンたちの小競り合いが一瞬とまり、その意識が冒険者たちの方に向かったその刹那。
その隙を逃さず一気呵成に責めていったのは冒険者たちであった。
●残敵掃討
トロルは強力な敵であるが、1対5であった。
だが、グレイベアとて強力であり、魔法を行使する冒険者にとっては、ゴブリン戦士たちでも強敵となりうるのだが。
今回、その心配は無用そうであった。
「ふむ、熊ごときの一撃ではわが鎧には毛筋の傷も付かぬようだな」
一般の冒険者が聞いたら悶絶しそうなことを言っているのはカイザード。
なんと、グレイベアの一撃を盾で裁き鎧で受け流していた。
上手く掴まらないように立ちまわりながらゆえに反撃は難しいようだが、ジリ貧なのはグレイベアの方で。
「‥‥ほう。熊でも息があがるんだな。それならばこちらの番だ」
さすがに疲れたグレイベアの隙を逃さず、振るわれるジャイアントソードのカウンターが見事グレイベアを捕らえたのである。
「助、柴丸。いくっすよ!」
忍犬を連れ、もう一頭のグレイベアを翻弄しているのは伝助だ。
三つの相手から縦横無尽に攻撃を繰りだし、みるみるグレイベアを消耗させていって。
最後には忍犬の援護の元、グレイベアの急所に小太刀が突き刺さるのであった。
一方、ゴブリンたちはというと。
「地の精霊よ! 汝らの司りし数多の命に我が意思を伝えよ、プラントコントロール!!」
メアリのプラントコントロールによって、木々が突如として牙をむき。
足に絡みつく木の根に驚き、面白いほど転び倒れたそこに炸裂するのがヴィクトルのブラックホーリーで。
「悔い改めるのだな」
冷静に祈りを唱えながら、みるみるゴブリンたちを弱らせ、また愛犬もその意思に呼応して、ゴブリン戦士をけん制し。
「はい、これでおしまい」
距離を詰めたゼファーの小剣は、的確に残ったゴブリン戦士の急所をえぐったのだった。
こうして、なんと冒険者たちはその身に一刀の怪我も負わず、これらの敵を排除してしまったのである。
依頼は無事に成功。それも、完全排除という形でだ。
もしかすると、作戦が違えばこの結果は違ったのかもしれないが、冒険者にとって結果は命を左右する重要なものである。
冒険者たちは意気揚々と凱旋するのであった。