●リプレイ本文
●準備は徹底的に!
「とりあえずお掃除を手伝いましょう。御客様を迎えるのに散らかってたりしたら失礼ですしね」
エルフィーナ・モードレット(ea5996)の言葉の通り準備は入念な掃除から始まった。
「一生懸命お手伝いをさせて頂きます!」
きりっとサイモン先生の奥さんに決意表明して手伝っているのはキラ・リスティス(ea8367)。
2人で会場となるホールのテーブルに布を掛けたり、皿を運んだりしている。
「‥‥でもわたし、パーティーに出られるような服を持っていないんです‥‥ダイアナさんに借りないと‥‥」
「そうですね。貴族として、騎士として恥じないように私も衣装を貸していただきましょう」
そう話し合っているキラとエルフィーナの言葉を聞いたサイモン先生の奥さん。
「あら、それならせっかくだから全員分の礼服一式を用意しましょう♪」
こうして全員に、礼服が渡されることになったのだが‥‥。
「そうね‥‥キラちゃんには淡い碧がいいかしら?」
「ええ、それでいいです。私その色が好きなんです〜」
親しげにちゃん付けで呼ぶ奥さん。センスはなかなか悪くないようだ。
「エルフィーナさんには‥‥こんなのでどうかしら。私が昔着ていたので良ければ‥‥」
「ありがとうございます。これは素晴らしいですね」
上質の布で作られた淡い青の礼服を取り出して渡す奥さん。着せ替え人形気分である。
他の面々にも礼服は渡され、準備は整っていくのであった。
「うーん、こんな依頼とか面白いかも♪」
お料理の下ごしらえの合間に、ギルドに来ているのはシャルティナ・ルクスリーヴェ(ea7224)。
なにやら当日のために企んでいることがあるようだ。
「やっぱりパーティっていいわね。『人を楽しませる事』は、私の趣味だもの〜」
嬉しそうなシャルティナであった。
「‥‥‥‥」
もくもくと掃除しているのはエレナ・レイシス(ea8877)だ。
「裏方も大変ですよね‥‥」
まったく持ってそのとおり。
「‥‥炎の燃え移りと薪が燃え尽きる時間を考えるなら、この分量とこの組み方が適当でしょう」
なにやら難しげなこと考えながら暖炉に薪をくべるのはエリス・フェールディン(ea9520)。
錬金術に長けた彼女は換気にも気をつけるのであった。
「よく考えたら、わたしは今回、何もできないです。無難に裏方でもするとしましょう」
室内環境をてきぱき整えるエリスであった。
●動物と仲良くなるのも仕事のうち?
「私、家では犬と猫を飼ってたんです! 犬も猫も大好きです」
動物の世話を買って出たのは、システィーナ・ヴィント(ea7435)と劉蒼龍(ea6647)である。
当日依頼を受けた面々とともに、動物たちもお仕事である。故にそれまでにすこし仲良くなっておこうと思ったらしいのだが‥‥。
「一応動物知識は持ってるが、動物との付き合いは知識じゃね〜よな」
そうシスティーナに言う蒼龍。当日どういう風に動物と一緒にパーティの手伝いをするかを話し合っていたのだが‥‥。
「ばぅっ!」
やんちゃなカールがなにやら、ぱたぱた羽ばたく蒼龍の羽に興味を覚えたのか‥‥突進!!
「あー!! やっぱり! 俺じゃ抑えきれねぇって!!」
必死で逃げる蒼竜、追うカール。いつの間にやら犬が増えていたり。
とうとう、4匹の犬に追っかけられる蒼龍、とうとう押し倒されて、おもいっきり舐められたり。
「くすぐったいって! やっぱ大型犬が相手だと困る〜!!」
「‥‥ちゃんと目を見て話せば犬や猫だって分かってくれると思うわよー」
猫を膝に抱きかかえて声をかけるシスティーナ。ちゃっかり彼女は猫さんたちと仲良くなっているであった。
●そして当日!
「どんなお客様がいらっしゃるのか、ちょっとどきどきですね」
玄関先でお客様を待っているのは、正装に身を包んだキラとエルフィーナである。
まだお客さんが来るまですこしの時間がある。
エルフィーナがキラのわずかに曲がった襟を直してあげながら、おしゃべりである。
「会場まで失礼のないようにエスコートしないといけませんからね‥‥それはそうとキラさん、猫さんたちはどうしましょうか?」
見ればいつのまにか2人の足元には礼儀正しく座りながら2人を見上げる2匹の猫が。ヴィゴとビリーが玄関先でのお出迎え役を仰せつかったようである。
「‥‥礼儀正しくしてますし、一緒にエスコートしましょう♪」
猫をひょいと抱き上げるとキラはビリーをエルフィーナに預ける。
こうしてエスコート役は2人と2匹になったのであった。
にぅ、にゃぅと2匹もやる気十分のようだ‥‥多分。
そして、いよいよパーティが始まった!
「毎年こうなのですか?」
一緒に料理を運んでいたダイアナ嬢にたずねるエレナ。
招待されたお客は全員がそろい、エスコート役の2人もウエイトレスとして忙しい。
賑やかな会場を見やりながらひそひそと会話。
「こんなに賑やかで楽しいのは久しぶりです」
ダイアナ嬢も心なしか嬉しそうである。
「それでは僭越ながら私、『とある冒険者達の、ささやかな英雄譚』! 芝居も合わせて一曲演奏させていただきます〜♪」
宴会が盛り上がっているとき、そう言って笛を片手にホールの中央に進み出たのはシャルティナである。
「ケンブリッジの過去の依頼を題材にさせていただきました〜♪」
そうして一人芝居が始まったのだが‥‥途中から、手の空いてる冒険者たちと動物たちも巻き込んでの賑やかな即興劇になってしまう。
迷子の犬を捜しに行く先生の話。おばけが出るという校舎に冒険に出る女の子たちの話。
身近な冒険をたくみに音楽と縁起で軽快に表現するシャルティナ、その笛の腕前はすでに一流に近い。
良く慣れた動物たちは蒼龍とシスティーナの指示に従って、ちょこちょこと芸をしてシャルティナの笛をよりいっそう楽しく盛り上げる。
シャルティナの笛が終り、ホールは暖かい拍手に包まれたのだった。
「さて、これからは皆様の希望を聞いて演奏いたします〜。希望の曲調などがありましたら遠慮なくどうぞ〜♪」
即興の演奏を求める客たちのリクエストに答えるのがとても大変そうなシャルティナであった。
男性客にはサイコキネシスでグラスを手渡しているのは錬金術師のエリスである。
ところが、なにやらお客の中には錬金術に詳しい先生もいたらしく‥‥
「あら、その話もう少し詳しく聞かせていただける?」
つかつかと先生の方に歩いていき、なぜか議論を戦わせるエリス。
ある意味話し相手も、依頼のうち。彼女にとっても相手にとっても有意義な語らいの時間となったのだろう。
「でも、その化合の比率では‥‥それより水銀を‥‥」
なにやら難しそうである。
「大人しくしくね。ショーン伏せ!」
システィーナの声にしたがってぺたりと伏せる犬のショーン。
お客さんがつれてきた子供にショーンを撫でやすいようにさせたのである。
「わぁ〜! わんわんふかふか〜」
ちっちゃな女の子がショーンの体に抱きついてもショーンはじっとしている。
訓練の結果か、動物たちもちゃんとパーティの成功のために役立ったのである。
「おつかれさま、ショーン」
優しく頭を撫でると、その手をぺろりと舐めて応えるショーンであった。
「パーティの食べ物をつまみ食いしないように、ちゃんと別でご飯上げないとな」
ひっそり裏で犬と猫たちに餌をあげているのは蒼龍。やっぱり裏方が大変なのである。
「さぁ、食べたらもうひと仕事するぞ! 一緒に頑張ろうな」
蒼龍の言葉に、動物たちはわんっ! にゃう! と鳴いて応えたのだった。
●お疲れ様♪
そして、パーティが終わり‥‥
「楽しいパーティだったなぁ‥‥必殺技の出番がなかったのが悲しいけどよ」
眠そうなショーンにまたがりながら、ふさふさの毛を撫でて労っているのは蒼龍。
体の小さな蒼龍はふかふかの白い毛にうまリ気味。なかなか気持ちいいのである
「大変でしたが、無事責務を果たせました‥‥」
疲れた様子で椅子に座って休むエルフィーナ。膝の上には仔猫のビリーが丸くなっている。
丁寧にビリーの毛並みを撫でながら、今日のことに思いを馳せるエルフィーナであった。
「さすがにあんなにたくさん演奏させられると大変だったわぁ‥‥」
へとへとになっているのはシャルティナ。お疲れ様というように母猫のケイトが指先をざらりと舐める。
大変だったが、お客さん皆に楽しんでもらえたことがシャルティナにとっては何よりも嬉しかったのだった。
「みんな可愛かったよ〜。お疲れ様!」
犬2匹を纏めて抱きしめているのはシスティーナ。動物と一緒ならまだまだ元気そうだ。
犬もしっかりと世話を焼いてくれたシスティーナの頬を舐めて感謝を表すのだった。
「やっと休めますね‥‥しかし実りある会話でした」
大人しくミルクを舐めている猫たちと一緒に静かに食事をしているのはエリスだ。
思いははるか錬金術について。学者肌の彼女には有意義な一日になったことだろう。
「みなさんお疲れさま〜。どうもありがとうございました♪」
ダイアナ嬢が一家を代表してお礼を述べる。
そして、犬のイアンにもたれて、猫のヴィゴを抱えたまま眠ってしまったキラ。
イアンは自分の飼い主に、どうしましょうと上目遣いをする。
「‥‥寝かせといてあげましょう」
奥さんの言葉にくぅん、と一声小さく了承するイアンだった。