鳥たちの復讐?!

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:9人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月01日〜01月06日

リプレイ公開日:2005年01月11日

●オープニング

 新年を間近に控え、そわそわとわき立つキャメロット。
 そんな折、変な事件が立て続けに起こったのであった。

 一夜にして、パーティの食事を務めるはずであった食用の鳥たちが消えてしまったのだ。
 ありていに言うならば鳥泥棒にあっただけなのだが、不思議な点がいくつかあった。
 鳥を運ぶときにはだいたい鳥たちの鳴き声で結構騒がしいはずであるが、気づかれずに盗まれてしまうらしい。
 盗まれた鳥は、鶏、アヒル、ガチョウなど100羽以上。
 一刻も早く、鳥たちを取り返して欲しいという依頼である。

 現場にはもう一つの手がかりが残されていた。
 なんと犯行声明分である。
「傲慢な人間たちに裁きを! 我ら鳥たちの声を聞く者。 物言わぬ同胞たちの怒りを知るがいい!」

 ―――――

「くっくっくっく、傲慢な凡愚どもよ、我らの怒りを知るがいい‥‥」
 薄暗い部屋の中に満ちるのは鳥たちが放つ独特の臭気。
 広々とした空間のなかには鳥たちが放し飼いにされて、数人の男たちから餌を貰っている。
 中央に仁王立ちしているのは、ローブの男。
 傲然の腕を組んでたたずんでいる。そして、その肩には一羽のガチョウがとまっている。
「お前のような可愛い鳥たちを食べるなんぞ、なんたる野蛮! 許してはおけぬ‥‥」
 すると男の体がぼんやりと銀の光に包まれる。
「おお、そなたも嬉しいか‥‥ああ、まだまだ復讐は終わらんよ‥‥」
 男は肩にとまるガチョウに話しかけ、ガチョウも男を見て嬉しそうにがぁがぁと鳴くのだった。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea3357 ゼクウ・ランゼクウ(63歳・♂・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea6159 サクラ・キドウ(25歳・♀・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7623 ジャッド・カルスト(36歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea8773 ケヴィン・グレイヴ(28歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ea9027 ライル・フォレスト(28歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ea9515 コロス・ロフキシモ(32歳・♂・ファイター・ジャイアント・ロシア王国)
 ea9709 孫 紫竜(41歳・♂・僧兵・人間・華仙教大国)
 ea9910 シャーリー・チャダロ(32歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 eb0117 ヴルーロウ・ライヴェン(23歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

●おっ“とり”情報収集
「バードから鳥を取り戻す‥‥か。鳥尽くしだね」
 苦笑を浮かべながら街を行くのはジャッド・カルスト(ea7623)。
 隣にサクラ・キドウ(ea6159)を伴い、情報収集の最中である。
「今度こそまともな依頼だと思ったのに‥‥結局相手は変な人たちっぽい‥‥ふぅ‥‥」
 サクラの呟きは窃盗団に向けられたのだけではなく、仲間にも向いてる気がしないではない。
「あれだけ大量の鳥を盗んでいったのなら確実に何か情報があると思うんですけどね」
 確かにサクラの言うとおり、鳥を大量に確保しておくならば、餌も重要になるだろう。
 手がかりを求めてとりあえず鳥の餌に関わる情報を集めることにし、近郊の鳥を飼う農家へと向かう二人。
「最近鳥用の飼料を購入した者はいないか?」
「‥‥そういえば、破格の値段で鳥の餌を分けて欲しいって言われた人がいるとか‥‥」
 数軒目にして漸く手がかりとなる情報を得た。相手は農家のなかなか美人の娘さん。
「ほう! ならその者の住んでいる所はわかるか?」
「いえ。私も人に聞いただけですし、どこかの貴族の道楽だとか‥‥」
「そうか‥‥ところで話は変わるが、お嬢さん。私と一緒に食事でも? 貴方はこんな田舎に埋もれるには惜しい!」
「‥‥聞き込みといいつつナンパなんてしないでください」
 さりげなくナンパし始めるジャッドに思わずつっこみを入れるサクラ。レイピアでぷすりと。
 そして2人は礼を言い名残惜しげなジャッドを引きずって帰路に着くのだが‥‥。
「ふむ‥‥焼きもちかい?」
「違います!!」
 ジャッドにからかわれながら、ため息をつくサクラだった。

「全くこんなにも旨い物を逃がすために盗むとは、おかしな奴もいたものだ」
 焼いた鳥を売る屋台の前を通りながら呟いたのはヴルーロウ・ライヴェン(eb0117)である。
 彼は鳥にまつわる苦情の情報を集めていたのだが、なかなか収穫がない。
 それもそのはず、ハーフエルフであることを隠すこと無く自信満々で情報を聞き出そうとしているからである。
「まったく下賎な者は高貴なる者を見ると萎縮してしまうものだな‥‥まあ、ここではないのだろうな」
 ヴルーロウは威風堂々、泰然自若、傲岸不遜な態度で道行く人々を睥睨する。
「とりあえず突入の時には鳥でも持って行って、やつらの前で鶏肉でも食べるとするか」
 そう言ってヴルーロウは屋台へと向かうのだが‥‥。
「ローストチキンを売ってくれ‥‥売れない? なるほど、確かに下々の料理人、お前の姿を見れば味も知れよう」
 断られると、すぐさま踵を返し酒場へと向かうヴルーロウ。なかなかにタフである。

「やっぱり犯人たちは建物や洞窟などのような陽のささない場所にいるようですね‥‥」
 そう結論を下したのはシャーリー・チャダロ(ea9910)だ。
 サンワードの魔法を使い、鳥たちの行方をたどろうとしたのだが、太陽からの返事は分からないとだけであった。
 しかし、分からないという結果から太陽の光が届かない場所にいると推測するシャーリー。
 なかなかの切れ者のようであるが‥‥。
「とりあえず皆さんに報告しませんと。ぜひとも説得してみます!」
 お人よしでもあるようだ。

「ほう、以前鳥料理について文句を言った貴族の方がいらっしゃったと‥‥それは貴重な情報ですね」
 姿勢良く一礼するのは孫紫竜(ea9709)。
 キャメロットで鳥の料理が評判の店を聞き込み中に、興味深い情報に行き当たったようだ。
「やはり貴族が一枚噛んでいるんでしょうかねえ?」
 仲間の下へと戻りながら一人呟く紫竜。
「‥‥しかし前々から思っていたのですが‥‥イギリスの方は何故こうも極端なのでしょうか」
 ごもっともである。

●鳥の囮
「大量の鳥を運び出しているわけだから痕跡が全く無いのはありえない‥‥」
 単身犯人たちの痕跡を探しているのはケヴィン・グレイヴ(ea8773)である。
 そして、調査の結果、必ず犯人たちが特定の方向に向かって逃げていることが分かった。
 下級の貴族たちの邸宅が集まる郊外の一角。そこがどうやらきな臭い。
 他の仲間の情報と供に徐々に犯人の目星がついていく。
「ふん‥‥レンジャーの目は誤魔化せないぞ」

「今日の料理はこの鳥を煮込んでスープにしましょう」
 上機嫌でそう言うのはゼクウ・ランゼクウ(ea3357)。
 隣にはライル・フォレスト(ea9027)を伴って鳥を囮にする作戦である。
 すでに目星をつけたあたりに最も近い店から鳥を一羽買い、目印の布を足に巻く。
 鳥を買い取った後はライルは隠れる予定だったのだが‥‥。
「ところでライルさん‥‥その腰の物をちょっと見せていただけますか?」
 ひょいと鳥をライルに渡して勝手にライルの腰の日本刀を手に取るゼクウ。
「この武器のこの材質‥‥ふむ‥‥ああ、もうしわけありません! 武器や防具、特に刀剣類には目がないものでして」
 ついつい悪い癖が出てしまったようで、謝るゼクウ。しかし敵はこの隙を逃がさなかったのだった。
 ふいに2人の視界がゆがむと、そこに移るのは一面のお花畑。
 どうやらイリュージョンの魔法をかけられてしまった様である。
 そして、はっと気づいたときにはときすでに遅し。さっきまで持っていた鳥は何処にもいないのであった。
「くそっ! しまったなぁ‥‥俺が追う予定だったのになぁ」
 悔しそうに呟くライル。そこに声をかけたのはコロス・ロフキシモ(ea9515)であった。
「あっちの方に逃げて行くのを見た。あの先には一軒しか無いはずである‥‥」
 わずかにライルから離れたままそう告げるコロス。どうやらアジトの所在が判明したようである。

●“とり”あえず突入!
「俺が鳥質を取ったら、その隙に攻撃するんだぞ」
 そう突入の作戦を纏めるのはジャッドである。人質‥‥いや、鳥質を取るとはなかなかの策士である。
 あらかじめ隠密行動を得意とする面々が調べた間取りからてきぱきと侵入方法を割り振っていく。
 遠方から弓で狙撃するのはケヴィン。インビジブルをつかってこっそりと潜入するのはシャーリー。
 正面突破はコロスとライルとジャッド。裏からまわるのは紫竜とサクラとヴルーロウ。ゼクウは援護である。
 綿密に練られた作戦は、もちろん成功するはずなのだが‥‥そう簡単には行かないのであった。

「さぁ、動くな。この可愛い鳥がどうなってもいいのかい!」
 声高々とジャッドが告げる。手にはまるまると太った一羽のガチョウ。
 なんと誰にも見つかることなく鳥たちが集められていたところに潜入を果たす一同。
 とある下級貴族の屋敷の一階がほとんど鳥たちの住処になっていたのだ。
 そろった一同に慌てて武器を構える用心棒たちと、憎憎しげにジャッドを見つめるローブの男と、なにやらおどおどする貴族が一人。
 どうやら貴族がローブの男率いる窃盗団のパトロンだったようである。
「ふん、我々の高貴な思想を理解できない無知蒙昧の輩‥‥許してはおけぬ!!」
 ケヴィンが弓を射るよりも一瞬早く、高速詠唱でスリープを唱えるローブの男。
 予想通りバードの月魔法である。そして、なんとジャッドは不運なことに抵抗できずに眠りに落ちてしまう。
「いまだ! かかれい!!」
 鳥質がいなくなったことで、にわかに乱戦!!

「おぬしらのその体躯、信念ごと叩き潰してやろう」
 モーニングスターを振り回し、用心棒を蹴散らしているのはコロスの一撃。
 鳥たちもがぁがぁコケコケ逃げるのに必死である。そしてコロスは用心棒のメイスの一撃をたくみに鎧で受け止める。
「非力!! ムウウウンッ!」
 哀れ用心棒は壁まで吹き飛ばされるのであった。
「そちらの言い分がどうあれ、あなた達がしていることはただの窃盗です!」
 身軽さと手数を生かして、一人の用心棒を翻弄するのはサクラだ。
「暫く眠ってなさい!」
 スタンアタックが決まり、倒れ付す用心棒‥‥ぐるぐるとサクラにロープで縛られてしまうのであった。
「鳥に気をつけてください!!」
 目の前を横切るニワトリたちに難儀しながら、巧みに用心棒を斬りつけているのはライル。
 装備の重さのせいか、多少動きが遅いようだが何とか一人を打ち倒す。
「あまり暴力に訴える事は好きではないのですが、これも仕方が無い事なんでしょうね」
 体の大きな用心棒の前にして呟くのは紫竜。拳を握って拳闘の構えである。
「受けなさい、狼の牙を」
 一気に踏み込んでストライクの二連撃を放つ。さすがの用心棒も傷付いた体ではこの攻撃には耐えられずダウンである。
「起きなさい!! まったく下賎な者はこれだから‥‥」
 ジャッドを踏みつけて起こしたのはヴルーロウ。普段よりさらに自信ありげな様子。
 なぜなら、鳥たちの羽にまみれて狂化したからであるが‥‥これでようやくジャッドも戦線復帰。
「‥‥死にたいのは誰だ?」
 ようやく鳥の隙間を見つけ矢を射掛けるケヴィン。狙いは首魁のバードただ一人。
 一度に2本放たれる強力な矢に、壁にローブを縫い付けられ、とうとう降参するのだった。

●そして物語の“トリ”
 鳥の回収の手はずを整えるライル。
「纏めておいて、回収に来てもらいましょうか」
 そして縛り上げた犯人たちへの対応は千差万別。
「次にやれば命が無いと思えよ‥‥分かったな」
 脅すコロス。一方シャーリーは‥‥。
「常にこの世は弱肉強食なのです。鳥が人間に食べられるのも、大いなる太陽神の定めし自然界のオキテです」
 真摯に身振り手振りを交えての熱演である。
「糧にするために奪われた命に対して感謝する事。偽善かもしれませんがそれがわたくし達の彼等に対する供養なのです」
 説教をする紫竜、拳で用心棒をぼこぼこにした人間とは思えない話であるが。
「さてと、きりきり全ての罪を白状してもらおうか!」
 ジャッドが縛り上げたバードとパトロンに告げるのだが‥‥。
「貴様らに我らの使命が‥‥」
 なおもいい募ろうとする犯人たちへの対応はひとつ。
「‥‥もうちょっと痛い目見るか?」
「何か袋にしようとしてる人がいるような‥‥」
 サクラはさり気なく見ない振りをしながら鳥と戯れる。
「はああ‥‥やはり冒険というものは難儀ですね。もの凄く疲れてしまいました」
 ゼクウがため息と一緒に言う。確かに妙に疲れる依頼であったことは確かだった。
 ガチョウががぁと同意したのは気のせいだと思っておこう。