バカップル撲滅作戦?!

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月19日〜01月24日

リプレイ公開日:2005年01月29日

●オープニング

「‥‥忌々しい‥‥忌々しい‥‥なんたる不潔!! あんな奴らは滅んでしまえばいいのだ!!」
 地の底から響くような呪詛‥‥いや、文句を言ってるのはまだ若いやせぎすな男。
 ぼさぼさに伸びた髪の毛の間から、ギルドの受付をギロリと睨みつけると、受付は思わずのけぞるほどの迫力がある。
 頬はげっそりとこけ、見るからに不健康そうな顔色。妙に細長い手足も相まってなにやら幽鬼のようである。
 ぼろぼろの服もなにやら不潔で、もちろんモテるようには思えない。

「俺の名前は‥‥ギョーイ‥‥いちおう作家の端くれだ」
 ぼそぼそと低い声で囁くギョーイ。
「‥‥うちの近くに綺麗な噴水がある‥‥以前は静かな広場にぽつんとあってな、ちょうど窓から見下ろすといい眺めだったのだ‥‥」
 そういってぎょろりと目玉を動かすさまはまるで蛇の様。
「それがな‥‥去年の聖夜祭あたりになにやら噂が立ったらしくてな‥‥曰く『この噴水にコインを投げ込んで愛を誓ったカップルは幸せになれる』とさ‥‥」
 急にギョーイは背中を丸めて肩を震わせる‥‥笑っているのだ‥‥。
「くくく‥‥くっくっくっくっく‥‥毎日毎日日がな一日いちゃいちゃいちゃいちゃしやがって‥‥」
 ごごごごごごご‥‥ああ、黒いオーラがギョーイの体を覆っているように見えるとか見えないとか。
「こちとら、彼女なんぞ生まれてこの方いねぇんだぞ‥‥それなのに、人の目の前でいちゃいちゃいちゃいちゃ‥‥」
 ああ、涙目になってる‥‥ここまで来ると可哀想である。

「‥‥ってことで依頼だ。あの目障りな恋人たちをどうにかして追っ払ってくれ!!!」
 魂の叫びが聞こえたとか‥‥。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea0018 オイル・ツァーン(26歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea0043 レオンロート・バルツァー(34歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea0244 アシュレー・ウォルサム(33歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0393 ルクス・ウィンディード(33歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea6883 アシュレー・コーディラン(30歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7509 淋 麗(62歳・♀・クレリック・エルフ・華仙教大国)
 eb0648 テンペル・タットル(21歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●こだわりのある‥‥
「見敵必殺、サーチアンドデストロイだ!」
 冬の公園にて。すみっこで物騒なことを言ってるのはルクス・ウィンディード(ea0393)である。
「よってカップルは一人残らず漏れも無く! スタンアタック後『メイド服』に着替えさせる!!」
 デストロイ違う‥‥が、それはさておきなにやらご執着の様子。
 ‥‥しかし、メイドは貴族令嬢達の他家での花嫁修業や家事手伝いの総称である。まぁ、人の好みもさまざま‥‥ということにしておこう。
 メイドに作業専用の服を用意できるのは裕福な貴族達だけで、メイド達はお気に入りの服で仕事をする。それをメイド服と呼ぶのだが、残念なことにそんな服なんかはなかなか手に入らないのであった。
「俺の趣味? 違うな皆の趣味だ・・・それでいて俺がメイドスキーだからだ!」
 たしかに怪しげな行動に広場のカップルが遠巻きに気味悪がっている!
 ‥‥ついでに、一緒に依頼を受けた冒険者も依頼人も距離を置いてるのだが。
「クールになれルクス・ウィンディード‥‥メイド服にした上でその羞恥の表情を見ることにより完璧な行動ができるようになる‥‥」
 まだぶつぶついっているルクス。たしかに依頼の成功には寄与している‥‥彼の心は満たされないだろうが。

「恋人出来ない歴32年。こんな可愛い子ほっておく男が分かんないよ!! なんですぐ逃げたり、変な顔したりすんのよぉ!!」
 怒りも露わに地団太を踏むのはハーフエルフのテンペル・タットル(eb0648)である。
 ‥‥出自の割りにえらく明るいのだが、やはり種族の差は大きいらしい。
「ということで、バカップル達をめ・っ・さ・つ♪」
 すでに感情の高ぶりによって狂化状態。そのサディスティックな笑みには非常に怖いものがある。
 そして、噴水の前でいちゃいちゃするカップルに向かって近づいて“口”撃開始。
「あはははは。今年のクリスマス、全っ然いいこと無かったんだよね〜〜カッコいい男の子と遊べなかったし、それどころかクリスマスケーキ、後ろに並んでた野郎に最後の一個横取りされたし」
 カップルは気まずそうな表情で取り残され、撃墜ひとつ。テンションはますます上がる。
「身体的特徴で恋人出来ない人の身にもなってみてよう!!!」
 走り寄ってきながら怒りに任せて拳を振り回して、滝のように涙を流すテンペル。
「こんにちわ〜♪ 『悪夢のキューピッド』だよ〜♪」
 ただ脅かしているだけなのだが、鬼気迫る表情のハーフエルフは強烈である。
 ビビリまくるカップルは、きっと手ひどいトラウマを負ったことであろう。

●‥‥変態?
「ねぇダーリン♪」「なんだいハニー♪」
 そんなこと言いながら、コインを噴水に投げ込もうとするカップル。
 いちゃいちゃしつつ、コインを投擲‥‥その時!! ばしゃんと水柱が立ち中から人影が現れパシっとコインをキャッチする!!
 ひらりと空を舞い、台座に着地! そして、朗々たる声でカップルに物申す!!
「貴様らか〜! 我が噴水に、不順な目的でコインの投げ捨てる不届き者は!!」
 噴水の精に扮して、水の中に隠れていたのはレオンロート・バルツァー(ea0043)。
 この寒い中、全裸で水中に隠れていたために、唇なんて紫通り越して真っ青である‥‥人間離れしてて噴水の精っぽいと言えなくも無いが。
「静かで美しい広場で、景観を汚す貴様らの様な不順な存在は不必要!」
 レオンロートの方がうるさい気がしないでもない。
「コインと言う神聖な物を、貴様らのどす黒い欲望の為に使うとは恥を知れ!」
 全裸のレオンロートはきっと恥を知っているのだろう‥‥いろんな意味で。
「周りを見てみろ、子供達やその他大勢が欲望に塗れた貴様を白い目で見ているではないか!!」
 ‥‥しかも白い目はレオンロートの方を向いている気がしないではないが‥‥。
 ちなみに、カップルはとっくのとうに逃げ去っていましたとさ。
 そして再び獲物をもとめて噴水に沈むレオンロート‥‥きっと都市伝説になるだろう。

「このキャメロットの葉っぱ男が来たからにはもう安心。貴方のお気持ちよくわかりますよ! キャメロットの平和はこの僕が守る!」
 鎌をぎゅっと握り締めて黒いオーラを垂れ流しているのは、レイジュ・カザミ(ea0448)である。
 すでに依頼人のギョーイからは、手を繋いだカップルの間をワザと通り抜けるなどの正統派嫌がらせによって信頼は得ているレイジュであったのだが‥‥。
「ふむ‥‥頼りにしてるぞ、レイジュ殿‥‥しかしなんで服を脱ぎ始めてるのだ?‥‥」
 そう、やっぱりレイジュははっぱ一枚に。
 全身を真っ白に塗り、台座によじ登って石像の振りをするレイジュ。
 あからさまに怪しいし、プルプルしているのだが周りが見えてないカップルは不幸なことに‥‥いや、幸運なことに気づかない。
「僕の目の前でイチャついたのが運の尽きってヤツさ!」
 そして、手に持った虫をカップルに投げつけようとしてバランスを崩すレイジュ。
 どっぼーんと哀れレイジュは寒空の下、水の中へ沈んでいく。
「ねぇねぇ、いまのなぁに?」「さぁ‥‥」
 突然何かが落ちてきて驚くカップル。だが、レイジュも転んでただでは起きない。
 ざばっと水の中からカップルの前に躍り出て、その姿は泡から生まれた女神のようで‥‥あるわけは無いが確かに怖い。
「はっはっはっはー!」
 ‥‥高笑いをあげるレイジュはやっぱり伝説になりそうであった。

●説教と説得と‥‥
「要は公共の場を不当に長時間占有しかねない者達に注意を促す、ということで良いのだよな?」
 今ひとつカップルに対して黒いオーラを燃やす奴が多いのか理解してないのはオイル・ツァーン(ea0018)。
「‥‥まぁ、やる気充分なのはいいことと思うが、ずいぶん荒っぽいな‥‥」
 剣に手をかけて暴れるテンペルとサイズを握るレイジュあたりを見て呟くオイル。
「モラルの話もあったところだし、冒険者はチンピラではないのだ。もうすこし落ち着こうじゃないか」
 ‥‥彼がいなかったら、他の冒険者たちはきっと何処までも暴走して行ってしまっただろう。
「ふむ、噴水に物を投げ込むと掃除や管理が大変になるのでやめてほしいといった文面の立て札でも立てるか‥‥ギョーイ、君が書いてくれないか?」
 的確な選択であろう。他の面子であれば余計な門限を足したりしていたかもしれない。
「静かないい広場だったということだし‥‥恋人以外も気軽に利用できるようになればいいが。そうすれば、場を弁えない者も減るだろう‥‥」

「真の愛とは素晴らしいものだと思います」
 もう一人他の人とはかけ離れた世界に生きている人が一人。真摯な表情でそう言ったのは淋麗(ea7509)である。
 こちらは真正面から愛をカップルたちに説くつもりのようだ。
「神に愛の成就をお願いすることはよいことですが、神は努力するものにこそ幸せを授けるものです。また、ここでの願いを約束として二人だけでなく、家族の幸せも望むことが大切です」
 とても含蓄のあるありがたいお言葉なのだが、やはり若いカップルにはそこまで望むのは酷かもしれない。
 なにやら真正面から愛の成就とやら言われて、苦笑いを浮かべるカップルたちであった。
 そして依頼人にも麗はなにやら言いたいことがあるとか。
「他人を羨むよりも、羨まれる人になりませんか。私は恋をすること自体が幸せなことだと思います」
 笑顔とともに説得する麗。そして麗は一人思うのであった。
「何故、恋は一人の人しか幸せにできないのでしょうか」

●そして依頼人と‥‥
 そしてここでも黒いオーラの持ち主が2人‥‥ただし恋人持ち。
「ふふふ、カップルがいっぱいだねえ‥‥こっちは彼女とここ数ヶ月まったく合えないんだよね、うん、ほんと会いたくて会いたくてしょうがないのに会えないんだよね、羨ましいよね、くすくす、いやいや僻んでるわけじゃないよ、でも‥‥」
 ぶつぶつと呟いてるのは、アシュレー・ウォルサム(ea0244)。渦巻くような黒いオーラである。
 そして、遠巻きにウォルサムを眺めるカップルにはさらに追加のどす黒いオーラ。
「何? 君たちはそんなにいちゃつきたいのかい? そうだろうね、そうやって悲しい思いをしている人なんかは気にせず二人だけの幸せな時間を作るんだね。え? え? 違うかい、違わないだろ、そうだろ‥‥」
 カップルは一目散に逃げて行ったとか。

「片時も離れず一緒にいる恋人と、今回の仕事では離ればなれになってしまってね‥‥うぅ、ライラ! ちゃっちゃとカップルを撲滅してすぐ帰るとも」
 なにやら黄昏ているのは、アシュレー・コーディラン(ea6883)。
 そして、コインを投げようとしてるカップル‥‥大分減ったようだがまだいた数少ない生き残りに向かってモップを振りかざして妨害する。
「困るね‥‥公共の噴水なんだから! 掃除するこっちの身にもなってくれ!! 毎日毎日いちゃいちゃしてるだけとは‥‥仕事をしなさい仕事をっ!」
 激しく私怨交じりであるが、かっぷるは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていったとか。

 そしてこの2人は、ギョーイにあることを提案したのだった。
 それは身だしなみを整えること。ナンパの知識をもつコーディランが率先してギョーイにアドバイスをする。
「とりあえず身だしなみから整えたらどうだろう? 人間中身とはいえ、やはり最初に目に入るのは容姿だからね」
 そして2人で理美容道具一式を使って髪の毛を綺麗にくしけずり、服装も良いものに取り替える。
 するとここ数日のカップル苛めで気分も良くなったのか血色も良くなり、身だしなみを整えたギョーイは意外な好男子へと変身を遂げたのだった。
「‥‥これが‥‥俺‥‥」
 しかし、彼女ができるかどうかはギョーイ次第。しかももし仮にカップルが出来たとしても‥‥撲滅されそうであるが。

 そして、ここの噴水には依頼の結果‥‥一切カップルが寄り付かないばかりか、人影すら見えなくなってしまったとか。
 めでたしめでたし‥‥?