じじいの冒険!!

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月28日〜12月03日

リプレイ公開日:2004年12月07日

●オープニング

「わしの若い頃は凄かったんじゃよ! あの時も並み居るゴブリンどもをロングソードでばったばったと‥‥」
 キャメロットから一日ほど離れたとある農村の小さな酒場で、若い頃の自慢話をしているのは一人の老人。
 酒場の一席を陣取って、若い衆たちに大げさな身振りで英雄譚を語っているようだ。
 老人の名はガンドッグ。
 若い頃は冒険者として活動していたようであるが、今ではただの陽気な隠居じじいである。
 息子夫婦と一緒に畑を耕す脱冒険者生活もはや20数年。
 唯一の楽しみは、ほら話を酒場で語ることであったのだが‥‥ある日事件が起こったのである。

「大変だ!! どうやら、近くの森にオークが住みついたみてぇでボルコスん家の牛がやられた!!」
 ここ暫く聞かなかったモンスター出現の報に村は浮き足だつ。
 そんなとき、一人の若者があることを思いつく。
「そうだ! ガンドッグ爺さん、あんた歴戦の冒険者なんだろ? オークぐらい退治してくれよ!」
「‥‥そうだそうだ、それはいい考えじゃないか! たった3匹のオークなんてちょろいじゃねぇか!」
「そうだよな! 一人でドラゴンを倒したこともあるガンドッグ爺さんなら余裕だろ!」
 酒場で話を聞いていた若い衆たちが期待を込めて、ガンドッグを見つめる。

「‥‥もちろんじゃ! わしに任せれば安心じゃよ!!」

 ガンドッグは冷や汗をかきながら、胸を張って頷くことしか出来なかった。

 数日後、ギルドの受付にて―――――
「べつにオークごときが怖いわけじゃないぞい? 備えあれば憂い無しというじゃろ!」
 苦笑を浮かべる受付に詰め寄ってガンドッグは声を潜めて言った。
「‥‥じゃから、数名冒険者の助っ人がほしいんじゃ。じゃが絶対にわしより目立っちゃいかんのじゃぞ?」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea7075 柊 葵(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea7623 ジャッド・カルスト(36歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea7727 ヨアン・フィッツコロネ(29歳・♂・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 ea8202 プリム・リアーナ(21歳・♀・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 ea8738 セイヤー・コナンバッハ(70歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea8925 ブレット・ワクスマン(27歳・♂・バード・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●英雄到着!?
 突然のモンスターの襲来に恐れおののく小さな農村。
 冒険者たちから見ればオークの数匹なぞ、敵ではないのかもしれない。
 しかし、一般の人からすれば、モンスターは確かな脅威なのである。
 そしてその村には一縷の望みがあった。
「おお、見ろ! 帰って来たぞ!!」
 村人が村に入ってくる数名の人影を認めて、そう声を上げる。
「やった! これで俺たちの村は助かるぞ!」
 噂が噂を呼び、どうやら冒険者たちは英雄扱いをされているようである。
 そして小さな村総出でガンドッグ爺さんと冒険者の一行は歓迎されたのだった。
「ふはははは! わしはガンドッグ殿の戦友セイヤー! 皆の者よ、ガンドッグ殿とわしがいればオークごとき物の数にも入らん! 心配せずにわしらの帰りを待っておれ!」
 そう大声で雄たけびを上げたのはセイヤー・コナンバッハ(ea8738)。
 村人たちは歓声を上げて、冒険者たちを迎え入れたのだった。

●村の酒場にて
「ええ、僕はガンドッグさんに憧れて、この依頼を受けさせてもらったんです‥‥まだ新米ですけどね」
 そう村人に話しかけているのはヨアン・フィッツコロネ(ea7727)だ。
 ガンドッグ爺さんの、自分より目立って欲しくないという難儀な願いを冒険者たちは聞き届け、あらかじめ打ち合わせておいたのである。
「あたしもそうですわ‥‥ガンドッグさんは歴戦の冒険者ですから」
 にこっと微笑んで同意したのはプリム・リアーナ(ea8202)だ。
 話し合いの結果、ガンドッグ爺さんに憧れた新米冒険者や戦友が集ったということで口裏を合わせることになったのだ。
 嘘に嘘を重ねることになるのだが‥‥ガンドッグ爺さんはなかなかご満悦のようだ。
「ガンドッグ氏は死ぬ事も少なくない冒険者時代を生き抜いたとは、是非俺も見習いたいね」
 そういってガンドッグ爺さんをおだてているのはジャッド・カルスト(ea7623)。
 周囲には数少ない村の若い女性を座らせて、こちらもご満悦だ。
「っと、そこのお嬢さん。ちょっといいかな?」
 村を救う英雄として扱われているせいもあるのだろう、なかなか人気があるようだ。

「嘘を付いていればその内ボロが出てくる物じゃ‥‥自業自得じゃな」
 酒場の隅で苦々しくそう呟くのはセイヤーである。
 口裏を合わせはしたもののガンドッグ爺さんとほとんど変わらない年齢ながら現役の冒険者である彼は、ガンドッグ爺さんのことを不甲斐ないと思っているようだ。
「そうですねぇ‥‥」
 そういって同意したのはブレット・ワクスマン(ea8925)だ。
 ハーフエルフである彼を避けるような人間は一緒に依頼を受けた仲間にはおらず、しかも村では英雄として扱われているために、彼がハーフエルフであることに誰も気づいていなかったのだ。
 彼はさっきまでオカリナを演奏して、酒場を盛り上げていて、今はセイヤーの話し相手をしているようなのだが‥‥
「しかしその気持ち分からんでもない‥‥ふむ、ここは貴殿のために一肌脱ぎましょうぞ!」
 急にがバッと立ち上がると、なぜか本当に服を脱ぎ捨て筋肉を誇示するポージング。
「さあ、このわしの完璧なる筋肉を見るがいい!」
 どうやらセイヤー、かなりの量の酒を飲んだ様子。
 まあ、それが原因かどうかは分からないが。

「おう、わしに任せておけぃ! 明日オークどもを、しっかり退治してきてやるわい!!」
 味方を得たガンドッグ爺さん、いつものように、調子のいいことを言っているのを、冒険者たちは苦笑を浮かべて見守るのだった。

●いざ戦い!?
「皆さん、気をつけてくださいね」
 ぱたぱたと森の中を羽ばたきながら一行を先導するのはプリムだ。
 土地勘を使って、森の中を迷わないように進んでいく。
「‥‥ふむ、あれじゃな。見つけたぞい」
 優れた視力によって森の中の開けたところに集まっているオークを見つけたのはセイヤーだ。
 前衛にはファイターのジャッドとナイトのセイヤー。
 ウィザードであるプリムとヨアンが中衛につき、ブレットとガンドッグ爺さんを囲むような陣形を取る。
 作戦の準備と打ち合わせは万端。
 そして戦闘が始まった。

「アイスコフィン!」
 プリムの鋭い声とともにオークの一体が氷に閉ざされる。
 魔法の発動とともに、開けたところへと飛び出す一行。
 その姿に気づいて、襲い掛かる2匹のオークに向かってもう一つの魔法が発動する。
「これでどうです! ストーンウォール!」
 すぐ近くまで近づいたオークの眼前、腰の高さぐらいまでの石の壁が地面から伸び足止めをする。
 しかし、1匹のオークは一切の足止めを受けずに襲い掛かってきたその時!
「このオークどもめ! このわしが相手じゃ〜!!」
 ロングソード片手にガンドッグ爺さんが進み出ようとする。
 この面子で作戦がうまく決まれば、オークなど物の数ではないのだが、いかんせんこのお爺ちゃんの名誉を傷つけるわけにはいかないのである。
「お待ちを! 貴方は我々の最後の切り札、ここで使うにはあまりにも惜しい!!」
 ナイスフォローのジャッド、その言葉には流石のガンドッグ爺さんも足を止める。
「そうまで言うなら、ここはお前さんたちに任せたぞ!」
 すでにいい気分のガンドッグ爺さん。
 その言葉と同時にオークの持っている粗末な鎚をセイヤーがロングソードでがっきと受け止める。
「お眠りなさい! アイスコフィン」
 ストーンウォールで一瞬動きを止まったオークをプリムが氷漬けにする。
 そしてたった1匹のオークは一行の華麗なチームワークを相手に手も足もでないのであった。
「せぇぇぇぇぇぇぇいやぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
 1匹目のオークの止めを刺したのはセイヤーのスマッシュとカウンターアタックの合成技であった。
 どさっと倒れるオーク。
 そして、氷漬けのオークが2匹残ったのだが‥‥。

「じゃ、俺がバーストアタックで氷を破壊したらいいんだな‥‥せぃ!」
 ジャッドがバーストアタックを氷に放つが、しかし氷はびくともしない。
 アイスコフィンの氷は強力な魔法の武器で無い限り破壊できないのだ。

 ということで、氷が溶けるまでの間、一行は火を焚いて暖をとりながら、それぞれ時間を潰したのであった。
 ガンドッグ爺さんの冒険談を聞くヨアン。
 なにやらプリムと親しげに話しこんでいるジャッド。
 なぜか腕立て伏せを始める元気な老人セイヤー。
 そして、オカリナの美しい音色を響かせるブレット。
 こうして敵を前にして、しばしの時が流れたのだった。

●ガンドッグの活躍!
 残る2匹のうち、1匹はヨアンのグラビティーキャノンとジャッドとセイヤーの連携によって難なく倒され、残るは最後の一匹だけとなった。
「ガンドッグ殿‥‥最後の1匹は頼みましたぞ。わしらがオークの注意をひきつけますからな」
 そういってロングソードを構えるセイヤーと頷いて横に並ぶジャッド。
「頑張ってくださいね」
「頼りにしていますから」
 口々にそういうプリムとヨアン。
 ウィザードの2人はガンドッグ爺さんに止めを刺させるために最後の1匹との戦闘では出番が無いのである。
「来ます‥‥」
 そう言って、呪文を唱え始めるブレット。
 そして氷が完全に溶け、歩き出した最後の1匹との戦いが始まった。
 ジャッドとセイヤーの2人で連携してオークに傷を負わせていく。
 そして、あと一太刀でオークが倒せるほど弱らせると、2人はブレットに合図を送る。
「イリュージョン‥‥視覚に我が身を切り裂く剣を、聴覚に肉を裂き骨を砕く音を、痛覚に最大の痛みを、嗅覚に鮮血を‥‥」
 ブレックの声とともに、弱りきって逃げ出そうとしたオークが幻覚を見せられ急に苦しみ始める。
「さぁ、フィニッシュだ!! ガンドッグ氏、トドメを!!」
 ジャッドの声とともに、初めてロングソードを振りかぶるガンドッグ爺さん。
「そりゃぁぁ!!」
 ガンドッグ爺さんの一太刀はしっかりとオークをとらえ、オークは音を立てて崩れ落ちたのだった。

●村の英雄とガンドッグの褒美
 村に戻った冒険者の一行は、村を救った英雄として前にも増して歓待を受けた。
 ガンドッグ爺さんに限らず、村の人たち全員が大げさな性格なのかもしれないと思わんばかりの歓迎だが、冒険者たちも悪い気はしないのだが‥‥
「‥‥ガンドッグ氏、よければ貴方の鎧を譲ってはもらえないだろうか?」
 そう言ったのはジャッドだ。
 他の面々も、ガンドッグ爺さんが初めに言っていたように何かしらの物品をもらえるかもしれないとガンドッグ爺さんに尋ねる。
 しかし帰って来た答えは‥‥‥‥
「しっかし、わしが冒険者をやっておったのは数十年も前だしのう‥‥今じゃ、とてもじゃないが使い物にならんし、もう珍しいもんなんぞ持ってないからのう」
 結局一行が得たのは、村での英雄としての名声と、報酬だけであった。
 冒険者稼業も楽じゃない。
 ガンドッグ爺さんが何故冒険者を辞めたのが分かった気がしたとかしないとか。