●リプレイ本文
●村への道のり
『このような機会を‥‥下さったタロン神に感謝致します‥‥』
ノルン・カペル(ea9644)がイギリス語を習得していないためラテン語でつぶやく。
今回の冒険ではラテン語に堪能な冒険者が他にもいたので事なきを得たが、イギリス語の習得はお早めに。
そして彼女は呟くように決意を口にする。
『カップルの方々から恋愛を学び‥‥間違えました、オーガを倒す事‥‥です』
‥‥いい間違えるのも無理は無い。今回の冒険、冬なのにとっても暑苦しい物となったからだ。
「やっぱり素敵なカップルさんが集まったわね♪」
嬉しそうに言うのは依頼人の埴生麻依。隣では彼氏のマイク・ダーリントンがぶんぶか頷いている。
「はっはっは、でも僕たちだって熱々じゃないか! 愛の強さでは負けないのさっ!」
きらりと光る白い歯。そう、道中全編こんな感じなのである。
しかも、カップルは一組ではない。
「前回は一緒の依頼に出れなかったけど、今回はさくっとオーガを倒して来たいものだね」
「うん、私も一緒に参加出来て凄く嬉しい♪ 一緒に居ないと不安って言うわけじゃないけど、出来る限り一緒に居たいし!」
アシュレー・コーディラン(ea6883)とライラ・フロイデンタール(ea6884)である。
ぎゅっと手を繋いで、何処からどう見てもらぶらぶ、そして仲良く話している2人を見つめる人もいた。
『‥‥私はただ依頼を果たすべく精進するのみです』
そうきりっとして言う長寿院文淳(eb0711)。しかし内心はなかなかに複雑である。
「‥‥‥はぁ」
口を突いて出るは万国共通のため息。やはり異国の地では人恋しくもなろうというもの。
ちなみに彼もイギリス語未修得のため、今回は通訳が必要である。相手を探すにも語学は大事なので習得は必須だ。
そんなこんなで道中は進み、丸一日かけて依頼の村に着く。すでに夜、一同は宿に泊めてもらうことになった。
●夜の出来事
どうやら少し前にオーガたちは食料を奪ったっきり森から出てこなくなったとか。
明日からは森へと踏み入ってオーガ退治。英気を養うために一行はゆっくりと体を休めることにした。
宿では相談と、ちょっとした雑談。冒険で一緒になっただけとはいえど仲間は仲間。こういう時間も楽しみの一つだ。
「‥‥これから作る‥‥物語の‥‥参考にしますから」
オフィーリア・ベアトリクス(ea1350)がマイクと麻依に尋ねる。テンションの高い二人の馴れ初めをあまり理解できていないようであるが。
ちなみに彼女はこの依頼に“友人”のラルフ・クイーンズベリー(ea3140)と一緒に参加したとのこと。
「うう‥‥幸せな恋人って、そう見て貰えるのっていつになるのだろう‥‥」
ラルフのちょっぴり寂しそうな呟きは誰にも聞こえなかったとか。でも、悲しいことばかりじゃない。
「では、休みましょうか‥‥でも‥‥見張りも一応しませんと‥‥。ラルフ、一緒に見張りを‥‥」
そういって、襲われた倉庫が見える部屋で一緒の毛布に包まるオフィーリアとラルフ。
他にいないからラルフを選んだオフィーリアとそれだけで真っ赤になってるラルフ。
そのうちラルフも報われるときが‥‥来ることを祈ろう。
そして、もっと大胆なカップルもいる。
「それにしても、仲の良いご依頼人方だな。まあ、私とシェリスも仲の良さでは負けてないとは思うのだが‥‥」
ふっと笑みを浮かべるのは一文字羅猛(ea0643)。隣にいるのは恋人のシェリス・ファルナーヤ(ea0655)である。
「婚前旅行終わって初めての依頼ですし、初心を忘れずに頑張りましょうね‥‥‥‥負けない」
らぶらぶ度合いでは決して負けていないだろう。
「さてシェリス‥‥できれば毎日でもしたいと言ってたし、今日も‥‥」
‥‥あぁ! なにやら怪しい!
「え? 今‥‥ここで? うん、そうね‥‥毎日でもやりたいって言ったのは私だし」
そういうと、連れ立って夜更けに宿の外へと。
「他の人が起きるから静かにしないとね‥‥」
だがその怪しげな雰囲気を嗅ぎ付けたのか、2人を追う人影がいくつか。
「一文字さん達はお互いが居ればそれでいいって感じが素敵です‥‥でも、何処に行くんでしょう? ノルンさんどう思う?」
ノルンにゲルマン語で問うたのは、マリー・プラウム(ea7842)。対するノルンは無言で後を追う。どうやら恋愛とは何たるかを学ぶつもりらしい。
「いつか‥‥私も‥‥はぅぅ」
少しはなれたところから、仲むつまじい羅猛とシェリスを見つめるのはエスナ・ウォルター(eb0752)だ。
手にはぎゅっとペンダントを握り締め、どうやら遠い異国にいる想い人に思いを馳せているようである。
「でもでも‥‥一文字さんたちって何をしに‥‥はぅぅ」
そして、多少怪しいカップルを追いかける三人の少女。そしてそこで見たものは!!
‥‥棒切れでで格闘の訓練をする羅猛とシェリスだった。ちょっとガッカリしたのはネタ探しに来たマリーだ。
「‥‥ネタになるかと思ったら、紛らわしいですぅ」
「ん? 紛らわしいことをするな? それはどういうことだ‥‥」
今ひとつぴんと来てない羅猛と‥‥。
「紛らわしいこと‥‥って‥‥えっと、それはその‥‥さすがに外ではしないわよ」
赤面して言うシェリスは墓穴を掘った気がするのであった。
室内に響くのは妙なる笛の調べ‥‥まだ荒削りではあるが。横笛を吹いているのは文淳。言葉は分からないが、音楽に国境は無い。
そしてそれに耳を傾けているのはアシュレーとライラだ。ちなみに寒さ対策で、アシュレーが後ろからライラを抱きしめるような格好である。
ちょっと羨ましそうな文淳の視線に気づいたのかライラが囁く。
「‥‥ちょっといちゃいちゃしすぎかな? で、でも、良いよね? 良い事は良い事だって言うし! それにくっついてると暖かいし♪」
文淳の笛の調べは悲しげな響き。異国の地でもいい人が見つかるといいなぁと祈るばかりである。
そしてお約束。
「まぁ、訓練はこれくらいにしましょう、羅猛。おやすみなさい♪」
宿に戻りながらお休みの口付け。照れている羅猛を見たマリーが顔を赤らめて退散したのはご愛嬌。
ライラとアシュレーは、お互いの頬に口付けするのは日常茶飯事らしく、エスナの「はぅぅ」が止まらない。
そして、依頼人カップルは仲むつまじく寝ていたようであるが‥‥マイクが寝相の悪い麻依に蹴落とされている。
「‥‥うう、眠れない‥‥」
そして、眠ってしまったオフィーリアのとなりで一人悲しくつぶやくラルフであった。
●オーガとの闘い
次の日、早速一同は襲われた村の倉庫を調べ、オーガがいるであろう方向へと歩を進める。
森の中には土にしっかりと残る足跡などから、簡単にオーガを追い詰められるだろうが、待ち伏せる作戦を取るようである。
オーガをおびき寄せるのは、シェリスの踊りとマリーの竪琴。
オーガを確認するのはラルフのブレスセンサーと優良視覚を持つエスナ。
後衛に控えて魔法を使うのはオフィーリアのスリープ、ラルフのウインドスラッシュ、ノルンと文淳のブラックホーリー。そしてエスナのアイスブリザード。
前衛は羅猛、アシュレー、ライラ、そして依頼人のマイクだ。
ちなみに麻依は応援である。
なかなかの協力作戦であるが、やはりトラブルは起きるのであった。
「素敵な舞には美しい音色をね♪」
空を舞いながら竪琴を奏でるマリーにあわせて、シェリスが躍る。
その音につられる様にして、のそのそと姿を現す2匹のオーガ。
『悪いがお主にモヤモヤをぶつけさせて貰う!』
闘いの始まりとなったのは文淳のブラックホーリー。それとあわせるようにノルンもブラックホーリーを放つ。
狙い違わず命中するブラックホーリーだが、頑丈なオーガにはかすり傷しか与えられない。
「遠慮しません‥‥アイスブリザード‥‥全開です」
続いてエスナのアイスブリザードが片方のオーガを凍てつかせ、その隙に華麗な連携でライラとアシュレーが片方のオーガを追い詰める。
そこでもう一匹を牽制するためにオフィーリアがスリープを放つのだが‥‥なんとそのスリープが効かなかったのだ!
あっという間に接近されて、棍棒での一撃をうけてしまうオフィーリア。
それを見たラルフはそのオーガに準備していたウインドスラッシュを放ち、慌てて駆け寄る。
「! オフィーリアッ!?」
血相を変えているラルフに対してオフィーリアは応えることも出来ない。どうやら重傷のようだ。
するとラルフはリカバーポーションを自ら口に含んで、口移しで飲ませると、オフィーリアの傷が回復。
うっすらと目を開けるオフィーリアに真っ赤な顔をして問うラルフ。
「だ、大丈夫‥‥?」
こうしてオフィーリアも回復し、ラルフとオフィーリアがばたばたしているうちにどうやら戦闘も終わったようであった。
●末永くお幸せに
「はっはっは、いろいろハプニングがあったけど、愛の力はやっぱり強かったね!」
にっと笑って冒険者たちを労うのはマイクだ。手には全員分の誓いの指輪を持っている。
「彼女さんの傷を治すために、キスなんてかっこよかったわ〜♪」
麻依がそう言って、ライラとオフィーリアに指輪を渡す。
対して渡された2人はなかなか複雑な心境の様子。果たして2人の仲は進展するのだろうか?
「二枚目楽士に謎の美少女でしょう、でもライラさん達の青春って感じも捨てがたいのよね‥‥もうネタの宝庫ですぅ」
そういって喜ぶのはマリー。どうやら次回作のネタは十分に集まったようだ。
「これを誓いの証に出来たら本当に幸せ。これからもずっと一緒にって‥‥」
ライラはアシュレーと一緒に指輪をはめて、嬉しそうに微笑む。
「今回は‥‥カップルの勉強になりました‥‥はぅぅ」
やっぱりハズカシそうに赤面しているのはエスナだ。だけど、こんなカップルが増えたらちょっと困るかもしれない。
ともかく、当人たちは幸せそうだ。彼らの行く末に幸あらんことを。