●リプレイ本文
●ひよっこ魔法使いと
「わーっ! ふたりも手伝いに来てくれるなんて、エリン感激っ♪」
ぴょいんぴょいん飛び跳ねながら、手をぱちぱち叩いているのは依頼人であるウィザードのエリン。
手伝いに来てくれた冒険者を見て感激しているようだ。
「魔法についてもうちょっと知りたいと思ったし、精霊魔法にもいろいろ興味があるからね」
そうエリンに話しかけたのは御山映二(ea6565)。
「おいらもあんまり魔法が得意じゃないからなぁ‥‥」
こちらは蔵王美影(ea1000)。パラの少年は、同じ悩みを持つエリンとなにか共感する物があるようであった。
そして、思い思いの練習が始まった。
「ちょっと下がって! あぶないから! ‥‥微塵隠れ!!」
呪文の詠唱をしながら、片手で印を結ぶ美影。‥‥‥‥発動失敗で何も起こらない。
「‥‥もっと集中した方が良いのかな? それとも、詠唱の言葉を正確にやることかな? ねぇエリン」
答えるエリンもファイヤーボムを打つ構え。
「えぃ! ファイヤーボール!!」
するとぽんと火の玉が飛び出し、的代わりの大きな岩に向かって飛んでいく。
ひゅーん‥‥ばーん‥‥まだまだ初心者のエリン、少々迫力不足はご愛嬌。でも当の本人たちは‥‥。
「やったっ! やったー美影ちゃん!! やっぱり集中力が大事みたいっ!!」
「練習の成果かな? よかったねー!」
はたまた別の特訓中映二がエリンにいろいろ質問なんかをしていると‥‥。
「そーいえば、映二ちゃんは何でエリンの手伝いをしてくれたの?」
「‥‥映二ちゃん‥‥え、ええっと僕はジャスパーさんを、前怖がらせちゃったことがありますからこちらに来たんですよ」
変な呼び名にちょいとビックリしながら笑顔で答える映二。
「けほけほ‥‥鼻に水が‥‥もう一回挑戦!! ‥‥ごぼごぼごぼごぼ〜♪(あ!これなら1時間は顔つけても大丈夫! と水中でいいたかったらしい)」
「美影、水から顔を出さないと声が聞こえないですよ」
そんなこんなで訓練は進んでいく。
そして数日後。
「‥‥オーラエリベイション中にさらにオーラパワー」
びしりと全身に燐光を纏う映二。
「今度こそ微塵隠れ!! 成功♪」
爆発音とともに少しはなれたところに転移する美影。
「えーい、ファイヤーボムッ!!」
気合とともに、正確に飛んでいく火の玉を放つエリン。
どうやら数日の特訓でそれぞれ力がついてきたようである。そして別れが迫る。
「うまくいくといいですね、試験。あんまり役に立ててなさそうだった僕が言うことじゃないかもですけど」
苦笑とともに映二が言うと‥‥。
「ううん、全然そんなことなかったっ! ありがとうね映二ちゃん♪」
続いて美影が告げる。
「一緒に練習できて楽しかったよ♪ また今度、一緒に練習しようね!」
「エリンも楽しかったっ! 忍術ってはじめてみたけど凄かったよー」
年も近かったせいかエリンは美影と仲良くなったようであった。きっとエリンの試験はうまくいくことだろう。
●動物好きな騎士と
「初めまして、フォレスト・オブ・ローズ所属のラス・カラードと申します。よろしくお願いしますね、ダイアナさん」
ダイアナに対して丁寧な礼をしたのはラス・カラード(ea1434)。
「こちらこそ宜しくお願いしますね、カラードさん‥‥リラさん、その荷物はいったいなんですか?」
「‥‥お弁当だよー、練習の後で一緒に食べようね♪」
でっかいお弁当箱を持ってきたのはリリン・リラ(eb0964)だ。どうやら一緒にお弁当を食べる予定らしい。
そして、毎日同じ時間に決めてあった練習が始まるのである。
「それではダイアナさん。今日も乗馬の練習を始めましょう」
「はい、カラードさん。私はミランダに乗りますから、リラさんには馬を貸していただけますか?」
自分の愛馬のミランダを引きながらダイアナが答える。
「ラスがおいらに貸してくれるのか♪ お礼に持ってきた干草をあげる〜」
「それは、きっと僕の馬も喜びますよ、では少し待ってください‥‥」
そう言ってグットラックを2人にかけるラス。
「さて、それでは始めましょうか。どうぞ。人には慣れていますから安心してください」
練習が始まったのだった。
「あまり力まないでください。乗り手が緊張していたりするのは馬にも伝わってしまいますからね。それでは良い走りは出来ません」
多少はリリンより馬の扱いに長けているラスが教師役のようである。
「わわっ! 高いなぁ‥‥」
そして、お昼には‥‥
「ねぇねぇダイアナさん、将来の夢とかある?」
「そうですね‥‥動物が好きなので、動物と一緒に出来るような仕事が‥‥」
そして、やっぱり別れがやってくる。
「リリンさんも筋がいいですし、すぐに上達しますよ。これからも練習に励んでください。それでは、あなたにセーラ神の御加護があらん事を」
「ありがと! ラスさん。ダイアナさんも一緒にたくさんお話できて楽しかったよー。
「こちらこそ付き合っていただいてありがとうございました。また機会がありましたら〜」
にこやかに手を振って答えるダイアナであった。」
●読書好きな魔法使いと
「はじめまして、ひよです。歌って踊れるバードです。依頼は初めてだからどきどきです。頑張るのでよろしくです!」
ジャスパーはきょとんとしているは、元気良く挨拶をしているヒヨン・パリニャス(ea4047)に対してだ。
「纏めって、大変だよね。書き方のコツとか教えてあげるよ♪」
そういってぐっと握りこぶしを作ったのはフォリー・マクライアン(ea1509)だ。
「あー‥‥こちらこそ、そのよろしく‥‥」
ごにょごにょと言うジャスパー。やはり女性が苦手なのは健在のようである。
「‥‥あたしはジャスパーさんの課題のお手伝いをする。頼まれたものを調べたり、本を棚に探しに行ったり♪ 草原で鍛えたこの身軽な身体であっという間に資料をかき集めてくるわよ〜! そうしてはやく課題が終わるように頑張る!」
くるくると躍るように言うヒヨン。対してフォリーは‥‥
「そーいえば、ジャスパーって、女の子苦手なんだって? ついでに克服しちゃおう♪」
笑顔で肩を叩くフォリー。賑やかさでジャスパーは硬直していたとか。
そして探し物とレポートの再開である。
「‥‥テーマは欲張らず、1つに絞って明確にするんだよ‥‥このレポートだったら‥‥」
なぜか赤面しつつ、ひたすらかりかりと羊皮紙にインクで書き込むジャスパー。
そしてトラブルも起きるのだった。
「えーっと確かこの辺に資料が‥‥きゃっ!」
突然何にもないところでつまずくヒヨン。手をついた先は棚の一つ。さすがに倒れはしなかったものの、棚から落ちた重そうな巻物がジャスパーの頭を直撃する。
「ひよちゃんっ! 危ないよー!! ジャスパーにイギリス語教えてもらうんだから怪我させたら駄目だよっ」
「あっ! あたしも教えてもらうのー。早く課題を終わらせないとねー」
ジャスパーは痛む頭を抱えるしかないのであった。
そしてお昼時。
「ほらほらジャスパー、一緒にお昼を食べに行こう〜。先生たちもいらっしゃるし、質問とかも出来るよー」
ジャスパーの背中をずんずん押して進むフォリー。うしろからてけてけヒヨンがついてくる。
「ご飯が終わったらあたし、何かお歌を歌うね。だってバードだもん! 音楽聴けばみんなリラックス、リラックス♪ 勉強もはかどるってモンよ!」
そして努力のかいもあって、少し早めに課題は仕上がった。
「うんうん、誤字もないし大丈夫だと思うよー」
「‥‥あー‥うん、あ、ありがとう‥‥」
フォリーが太鼓判を押すと、嬉しそうにはにかむジャスパー。なにやら内心の変化があったようで、なんだかフォリーに‥‥。
「ねーねージャスパーさん、イギリス語教えてー。フォリーさんと一緒に特訓するのー」
「あ、そうだっ! えへへ、君、頭よさそうだしさ、私の苦手な”イギリス語”の特訓に、付き合って欲しいの‥‥駄目かな?」
「‥‥も、もちろん、駄目なわけ‥‥ない。お礼も兼ねて‥‥」
そしてなんだが、イギリス語の特訓はフォリーに対して、妙に力の入ってしまうジャスパーであった。
●寡黙な剣士と
「‥‥かっこいいポーズが大事なんだっ!」
ルカのジト目にもめげず、そんなこと言ってるのはロンド・ファイルヒェン(eb0961)。
朝のジョギングを終えて、数人の冒険者とルカは一緒に訓練の最中である。
「えいっ!!」
バク宙にチャレンジして、顔面軟着陸を繰り返すロンドに、なにやらいたい視線が突き刺さる。
「‥‥馬鹿なことやってないで訓練しなさい」
びしりと突っ込みを入れるのはカグラ・シンヨウ(eb0744)。
ハーフエルフの彼女もルカには立派な訓練仲間。ロイドも怪我をカグラに直してもらっている。
「顔は大事にしろ‥‥」
ぼそっと呟くルカ。どうやらロンドを女の子だと勘違いしているようだ。
「では次はわしの特訓に付き合ってもらおうかの。組み手を頼めるかな、ルカ殿」
すっと進み出たのは黄安成(ea2253)。手には木の棒となぜか酒を持っている。
「わしの動きについてこれるかの?」
そして酒をくいっとあおると、酔っ払いのように不思議な動きで棍を構えるのであった。
びしりと木剣を構えるルカに対して、棍に寄りかかるようにだらりと構える安成。
ふらりと危なっかしく足を一歩踏み出すと、そのまま予想外の方向から棍の一撃を放つ。
辛うじて斜め下からの一撃を受け止めるルカが、今度は反撃するが、ぐにゃりと状態を傾けた安成にやすやすと避けられ、すれ違い様に足へとしたたかに打ち込まれる。
「‥‥不思議な動きだな」
準備体操をしながら言うカグラ。
「かっこよさが足りないな!」
懲りないロンド。いくつもポーズをとっているのがなかなかに楽しい。
そして、勝負は佳境に‥‥だがしかし、ここで予想外の事態が。
「‥‥うっぷ、酔ってしまったようだの‥‥」
本当にふらふらして、ぱたりと座り込む安成。さけがまわってしまったようだ。
「‥‥まだまだ改善の余地があるようだな、次はカグラが相手をしてくれないか?」
ルカはかすかに苦笑を浮かべて、訓練を続けるのであった。
そして、休憩時間。
「やはり日々の鍛錬を怠らないことが僧兵の務め‥‥精進せねばのう」
酔っぱらって倒れてしまった安成は反省会モードである。それを尻目に笛の音を響かせるのはカグラだ。
「東方の曲を一曲。しっかり休むのも大事だしな」
そしてやっぱり懲りないのが一人。
「こうやって足はこの角度! ここでビシッと決めポーズっ!」
なんとルカにそういうポーズをやらせようとしているようだ。
「‥‥仕方ないな」
そういって、付き合ってあげるルカ。あとで組み手で、ロンドがけちょんけちょんにされてたのはご愛嬌だが。
一人で訓練するよりは、上達するのかどうかは分からないが、楽しいことだけは確かだとルカは思うのであった。