●リプレイ本文
●白軍打ち合わせ
「今日は参加してくれてありがとう‥‥一緒に頑張ろう」
そういったのは練習試合を企画したファイターのルカ。頼もしげに一同を見ながら挨拶を交わす。
練習試合に参加した冒険者たちのうちルカのチームに参加したのは3人だ。
「あ、あの‥‥私はシーナ・フローティア(ea0400)です。そ、その‥‥が、頑張りますっ」
引っ込み思案はシーナはぐっと意気込みを示す。
「武闘大会は魔法が使えねぇから物足りねぇしなぁ。何でもアリのガチンコ勝負か‥‥燃えるぜ!」
びしっと拳を突き出して気合を入れているのはミカ・フレア(ea7095)だ。
「フォレスト・オブ・ローズのマカール・レオーノフ(ea8870)です。宜しくお願いします」
深々と礼儀正しく一礼したのはマカール。
そうして揃った4人は作戦会議を始めるのだった。
「さて、どうしましょうか。一点突破で弱いところから行くか、セオリー通り前衛同士ぶつかるか‥‥。なんにしろ、『冒険者の正々堂々』になりそうですね」
マカールは今回は剣ではなくロングロッドを装備している。どうやら、武器を叩き落すことで攻撃力を奪う作戦のようだ。
「そうだルカ。俺はこんな作戦がいいと思うんだがどうだろうな」
「どんな作戦?」
「ルカにゃ、敵陣に突っ込んでもらいたんだ。撹乱役だな」
「ん‥‥悪くないね。スリルがありそうだ」
にっと笑顔を浮かべるルカ。戦うのが楽しみだといわんばかりの表情である。
「ああでも、そんときにゃセレナ・ザーン(ea9951)の攻撃にゃ気をつけろよ。どうやら一番格闘が得意みたいだからな」
「ん、わかった。オフシフトで回避しなきゃね」
「え、えと‥‥私は後ろの方から見てどこを攻めたら良いか伝えたいと思います‥‥みなさん、怪我したときは任せてくださいね」
「了解。で誰から狙ったら良いかねぇ?」
「私はやはりフィアッセ・クリステラ(ea7174)さんだと思いますね。弓は脅威ですから」
「ああ、俺も同意見だな。こっちの魔法よりも距離が遠くまで届くからな‥‥」
「じゃ、私が撹乱。マカールが前衛。ミカが魔法攻撃で、シーナが回復担当。狙うのはフィアッセってことでいいのか?」
最後に問うルカ。一同は闘いの緊張に身を引き締めるのであった。
●紅軍打ち合わせ
「エリンと一緒に戦ってくれるんだよねっ! ありがと〜♪」
はしゃいでるのはウィザードのエリン。ぴょんこぴょんこ跳ねながら3名の協力者に握手を求めている。
「エリン様、フィアッセ様、ミーシャ先輩‥‥宜しくお願いします」
礼儀正しくぺこりと一礼するのはセレナ・ザーン(ea9951)だ。彼女はまだ年若いながらなかなか高い戦闘力の持ち主だ。
「私はエリンのチームだね。今日はよろしくね、エリン」
ぐっとエリンと握手を交わすフィアッセ。相手チームからマークされているアーチャーである。
「私は、ハーフエルフ地位向上にロシアから来た、騎士訓練学校在籍のミーシャ・クロイツェフ(ea9542)だ。よろしく」
最後に礼をしたのはミーシャ。こちらも作戦会議が始まるようだ。
「前衛がそれぞれ後衛を守るように陣形を組もうか。私がエリンを守るから、セレナはフィアッセを守ってくれないか?」
「あーい♪ よろしくね、ミーシャ! エリンのことを守ってね!」
「それが良さそうだね。じゃあ、セレナお願いするね。開始は100m離れてるから‥‥ロングボウなら丁度射程圏内。上手くいけば先手を取れるね」
「はい、わたくしでは空を飛ぶミカ様に手出しできませんから、遠距離攻撃できるフィアッセ様の身を守る事を優先いたしましょう」
「みんな頑張ろうね〜♪ エリンも頑張るよっ!!」
エリンが決意のえいえいおー。他3名も一緒に拳を突き上げ戦いに備えるのだった。
「‥‥そうだ。じつは私は戦闘になるとその時の記憶が曖昧になるのだが、その時のことを友人達に聞いても話をはぐらかされてしまうのだ。今回、それを確かめたいと思って参加した」
ミーシャのその一言があとで大変なことを巻き起こすということは誰も思いもしなかった。
●そして戦闘開始!!
ついに闘いの時がやってきた。
100メートルの距離をおいて対峙する二つの集団。各々が得意の武器を持ち、戦闘の準備を整える。
「いよいよだな‥‥」
ごくりと息を飲むルカ。居並ぶ面々も対面に立つ相手のチームを見据え、緊張を高める。
戦闘の開始を告げる笛の音が鳴らすためルカの協力者であるクレリックの青年がやって来る。
そして、高々と響き渡る笛の音。いよいよ闘いが始まった!
はじめに動いたのは、ルカチームのミカ。ファイヤーボムの射程距離まで近づくために矢のように距離を詰める。
それにあわせるように距離を詰めるお互いの前衛たち。
それに対して動かずに弓を引き絞るのはフィアッセ。二本の矢を一挙に構えぴたりと的を見据える。
狙いは唯一つ、空を一直線にかけて近づいてくるミカである。
「射程に入ったね。先手必勝で行かせて貰うよ。ダブルシューティング!」
ロングボウがびっ! っと二本の矢を放ち、その矢は一直線にミカへと向かっていく。
「ちっくしょう! こんなとこで終わってたまるかよっ!」
ぐるりと空で身を翻すミカ。本来なら回避の素養が無いミカに高い技量を誇るフィアッセの矢を避けることはほとんど不可能であった。
しかし、幸か不幸か突然の強風によって矢とミカの両方が煽られ、なんと矢ははずれてしまう。
「貰ったっ! ファイヤーボム!」
裂帛の気合とともに放たれるミカのファイヤーボム。ミカの手のひらから放たれた火の玉は一直線に敵陣に飛来すると、炸裂するっ!!
「よっしゃぁ!!!」
空中でガッツポーズで喜ぶミカ。しかし爆発が晴れるとそこにはしっかりと立ちはだかる人影が。
正面に盾を構えたセレナが、フィアッセの前に立ち爆発から守ろうとしたようだ。
お互い爆炎で手傷を負った様だが、まだまだ戦闘可能。闘いはこれからだ。
「こんどはこっちの番だよっ! ファイヤーボム!!」
「ちぃ! しまったっ!!」
今度はエリンが火の玉を放つと、爆風に弾かれ地面に辛くも着地するミカ。それに駆け寄るのはシーナだ。
「あ、あの‥‥今癒しますっ」
そして、こちらでは別の闘いが繰り広げられていた。
「セレナ嬢、相手していただきましょうか」
ロングロッドを構えるマカールは古代ローマより伝わる古き歴史の流派エンペランを修得している。
軽くロングロッドの先端を下げて構える様は華麗に決まっているが、対するセレナも一歩も引かない。
「マカール先輩‥‥宜しくお願いします。 えぇい!」
セレナは若干十歳。しかしジャイアントの彼女は体格では負けておらず、技量もなかなかの物である。
初撃はセレナ、大上段から片手で繰り出されるスマッシュの一撃。重量が乗った一撃は当たれば致命傷だ。
しかしここでは同じ騎士訓練校の先輩に一日の長があったようだ。
「あたりませんよっ! ‥‥失礼っ」
すっと攻撃を回避すると一転して攻勢に移るマカール。構えたロングロッドがうなりをあげて旋回すると、左からの横薙ぎの一撃がセレナを襲う。
しかし、セレナもそれでは終わらない。ライトシールドを掲げると、横薙ぎの一撃をがっしとロングロッドを打ち払う。
「やりますね‥‥でも、これで!」
弾かれた勢いを利用してぐるりと体ごと旋回するとさらに加速をくわえて逆側からの横薙ぎの一撃。
今度はセレナがロングソードを握る手を狙うディザームだ。
「‥‥っ! しまった」
甲高い音を立てて、手から弾き飛ばされる剣。攻撃手段を失ったセレナは盾で耐え凌ごうとするもついには盾をも弾かれてしまう。
「攻撃手段を失った相手に止めを刺そうとは思いません。引いてください」
「‥‥‥‥」
無言で飛び退るセレナ。しかしこのときマカールは油断していたのかもしれない。
「鎧の隙間は‥‥そこ! がら空きだよ!」
いつの間にかセレナの後方には狙いを定めたフィアッセが。どうやら2人の距離が離れるのを伺っていたようだ。
「しまっ‥‥ぐぅ!」
飛来した矢に回避を試みるも、皮鎧の隙間を穿たれるマカール。先端を潰した模擬戦用の矢とは言え、ダメージは大きい。
ここでマカールとセレナは退場となった。
「‥‥私が相手だ‥‥どうした?」
ルカと対峙してるのはミーシャ。しかしミーシャの様子がなにやらおかしいことを見て、怪訝そうに見やるルカ。
「‥‥ホーホッホッホ、可愛い子は、私が、みんな可愛がってあげるわよぉ〜!」
突如豹変したミーシャ。どうやら戦闘の緊張で狂化してしまったようである。
しかも狂化したミーシャはどうやら女性的になるようだ。クネクネと体をくねらせると、シールドソードを構えて、ルカへと躍りかかる。
シールドソードの一閃を軽いステップで回避するルカ。更なる一撃は今度はロングソードで受ける。
攻勢にまわったルカの一撃を、シールドソードで受けるミーシャ。
「うふ、いい勝負ねぇ〜♪」
ぞぞぞ、とルカの背筋に悪寒が走る。筋肉質な体躯の男性がくねりながら刃を振るう様子はそれなりに迫力があるのだ。
次なるミーシャの連撃を二度の回避で避けるルカ。そして、悪寒を振り払うように気合とともに連続攻撃。
なんとか一度は盾で受けるが、続く攻撃でしたたかに肩を打たれるミーシャ。しかしまだまだ終わらない。
「いやぁーん。痛いじゃないの〜」
「‥‥‥っ」
これにはさすがのルカも一瞬動きが止まってしまったようで、その瞬間にシールドソードの一撃が刀で受けようとしたルカの防御の隙をついて、腕をびしりと打つ。
そしてその瞬間に飛来した矢がルカの足をしたたかに打ち据え、ついに膝をつくルカ。
これにてルカは脱落だ。
「い、今です‥‥ホーリー!」
しかし、ふと安心したミーシャが白く淡い光に包まれる。シーナのホーリを受けたのだ。
そしてミーシャが怯んだ隙に続く魔法攻撃。
「喰らいなっ! ファイヤーボム!」
ミーシャとエリンを巻き込んで爆風が吹き荒れる。しかし、エリンは中心地より遠かったようで、ダメージがすくない。
「うーっ、お返しだよっ! ファイヤーボム!」
しかし飛んで行ったファイヤーボムは、なんとミカではなくシーナを直撃。
これにてシーナも脱落。そして、魔法を詠唱しようと再び飛び上がったミカが地上の一点を見つめて唇を噛み締める。
「ちぃ! だめかっ」
「これで終りよっ! ダブルシューティング!」
ミカの羽を掠めた矢の一撃によって、ミカは魔法詠唱を妨げられ、地上に降りてくるのだった。
●決着の後
「ちっくしょう‥‥ッ! まだまだってコトかよ‥‥」
悔しげに歯噛みするのはミカだ。力及ばなかったことが悔しいようだが、弓使いに対してウィザードは不利なのは仕方ない。
「あ、あの‥‥残念でしたね‥‥」
シーナはミカの治療をしながら励ましているようだ。
「なかなかいい勝負でしたね」
「また訓練をしていただきたいですわ‥‥ありがとうございました」
マカールが声をかけるとセレナはセレナに礼を言う。
「‥‥一体私はどうしていたのだ?」
「‥‥いや、特になにも‥‥」
やはりルカもミーシャの豹変について触れる気はないようだ。
そして今回活躍したフィアッセが言う。
「ふう‥‥たまにはこういうのもいいね。いい運動になったよ。また依頼で一緒になったらよろしくね」
そういって一同は再び固い握手を交わすのだった。