冒険者の卵からのお願い
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■ショートシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月08日〜11月13日
リプレイ公開日:2004年11月16日
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●オープニング
「ぼ‥‥ぼくといっしょに冒険に行ってくださいっ!」
精一杯大きな声は張り上げたのは10歳ぐらいの少年であった。
ギルドにこれくらいの少年がいることは珍しくないが、その中でも特に目を惹くのはその容姿。
一言で表すなら可憐。天使のような少年と形容したくなるほどの美しさだった。
女の子と見間違うほどの細い体躯に整った顔つき。
長いまつげに透き通ったブルーアイ、ばら色の頬に軽くウェーブした金の髪。
白く透き通った肌に折れそうなほど細い指。
すこし薄汚れているのが逆に美しさを引き立てているようにも見えるのであった。
冒険者らしくぶかぶかの皮鎧を装備して重そうにロングソードを背負っているのが不釣合いな少年はどうやら一緒に冒険してくれる仲間を探しているらしい。
おどおどとあたりを見回していた少年を見かねたギルドの人間が話を聞くと、少年はおずおずと詳細を語り始めた。
少年の名はエリック、先日冒険者になったばかりの冒険者の卵だ。
彼には立派な父がいた。冒険者としてかなりの腕前で、エリックにとっては憧れの存在だった。
そんな父も病気には勝てず、数ヶ月前に流行り病で亡くなったそうだ。
それから数ヶ月、エリックは父と同じ冒険者の道を志すことを決めた。父が残したロングソードを背負い、わずかばかりの遺産を抱え、今日このギルドの戸を叩いたということだった。
とりあえず依頼を受けたものの、仲間が集まらなければ始まらない。ギルドでは、冒険者の参加人数に満たない依頼は成立しないのだ。しかし初依頼を何としても受けたい!
そんな思いで、エリックは緊張しながら冒険者たちに声をかけたのであった。
ちなみにエリックの受けた依頼というのは――――
ここから徒歩で2日ほど行ったところにある村からの依頼で、村はずれにあらわれたゴブリンを退治してくれというものである。
ゴブリンの数はたった8匹。村はずれの森の中に踏み込めばすぐに見つけることが出来るそうだ。
エリック少年は、周りの冒険者たちを期待のこもった目で見上げる。
さて、どうする?
●リプレイ本文
●備えあれば憂いなし?
「冒険者にとっては依頼内容と作戦、仲間を見てその時の自分にあう戦い方を見出し、それに合った装備をするのは決して怠ってはいけない生命線だ。俺も今回は鎧は着ていないだろう? とりあえず‥‥装備を変えような?」
エリックの装備を見て、そう言ったのはレクルス・ファルツ(ea0231)だった。
7名の冒険者たちがまず気になったのは、小さな体に不釣合いな装備だったようである。
しかしエリックは装備を変えることに納得しているものの、どこか不服なようだった。
やはり親の形見でもあるロングソードに対するこだわりは強いようだ。
「体に合わない武器は周りにも危険です。その剣に合う体になってから使うほうが良いと思いますよ」
クリストファー・テランス(ea0242)はにっこりと微笑みながら優しく語り掛ける。
「父親の形見を使いたいという気持ちは分かるが‥‥身の丈にあった武器を選ぶことも大事だぞ」
しゃがんで目線を合わせながら、真摯にアズマ・ルークバイン(ea5276)が説く。
先輩冒険者たちの言葉を聞いて、ようやくエリックはこくりと頷いたのだった。
こうして一同は予め見繕ってきた装備をエリックに見せることになった。
「武器はこれを使うと良いでしょう」
クリストファーが自分の荷物の中から、短剣を渡すと、エリックはおとなしくそれを受け取った。
今ひとつ手に馴染まない様子を見てアズマが柄に布を巻いて握りやすくする。
一方レクルスは体に合いそうなマントや靴などを持ち出してきた。
冒険に旅立つ前に最後の準備を整える先輩たちの姿を、じーっとエリックは見つめるのだった。
そうこうするうちに、数刻でエリックの装備は一通り整った。
「あ、あの‥‥ありがとうございました‥‥」
ぴったりと体に合う真新しい靴やマントを身に付けて、エリックは照れくさそうに一同に礼を言った。
●道中にて
クリストファーの説得で、エリックは馬に乗せられて進むことになった。
野宿の夜、焚き火を囲んで一同はエリックに様々なことを語っていた。
「今日から私は貴方のおねぇさんよ。エリックくん私の事はねぇさんって呼んで頂戴」
唐突にそんなことをエリックに言っているのは、ジャイアントのヴァルキリー・イエーガー(ea1417)。
女性だとはいえ、その巨躯に少々エリックはビビっているようであったが、ヴァルキリーはぜんぜん気にせずに、にこやかに話しかけながら、ごそごそと何かを荷物の中から取り出した。
毛布で作られた長い布が二枚出てきたのを、一行が注目していると、自信満々でヴァルキリーはエリックに言う。
「毛布を切って褌を作ったの。二人でおそろいの褌を締めてゴブリンと戦いましょう?」
そう宣言をするヴァルキリーを尻目に、エリックはきょとんとしてる。
それもそのはず彼は褌というものを知らなかったのだが、結局褌に模した毛布はあまりにごわごわしていて着け心地が最悪であったため、製作者自らの手でお蔵入りとなったのだった。
「‥‥そんなことよりエリック! お前に伝授しなければいけないことがある。それは冒険者には絶対必要なことだぜ」
エリックをぴっとゆびさし、劉蒼龍(ea6647)が勢い込んでそういうと、エリックはこくこくと頷きながら姿勢を正す。
「それはなんと言っても『必殺技を持つこと』だ! とにかく、必殺技があれば‥‥強い、勝てる、かっこいい!と三拍子そろうわけだ、わかったか?」
「は、はいっ! ‥‥が、がんばりますっ!」
エリックはあまりの迫力に気圧されたかのように返事をすると、蒼龍が実演と言ってたくさんのコンバットオプションに見せるのに驚き、年相応の笑顔を浮かべてもう一度見せてくれとせがむのだった。
こうしてある者はエリックに心構えを説き、ある者はエリックに剣技の手ほどきをし、あっという間に時間は過ぎ去っていくのだった。
●初めての戦い
「まず、囮の2人が森の中に入り込んでゴブリンを探す。そして、本隊は囮に遅れること数分で森に入り囮と交戦して油断してるゴブリンを側面から急襲するんだ」
ゴブリンが居るという町外れの森へと歩きながら重装備に身を固めた武藤蒼威(ea6202)が作戦を一同に伝える。
エリックは綿密な作戦を立て行動する先輩たちに信頼を感じながら、やはり緊張は隠せずに黙り込んでいた。
「周りの人間の動きをよく観察しておけ。状況を、正しく判断できるように。勇気と無謀は意味合いが違う。無駄な行動は危険を増やすだけだ。間違えるな‥‥」
囮が先立って森へと入っていきエリックが唇を噛み締めながらはじめての戦闘への緊張を募らせていると、リオン・ルヴァリアス(ea7027)が、エリックの肩に手をかけてそう語りかけた。
エリックは、こくりと頷くと本隊と一緒に森の中に歩を進めたのだった。
剣戟の音を頼りに、奥へと進んでいくと計画の通りすでに戦いは始まっていた。
シフールの蒼龍はその速度を生かして4匹のゴブリンを翻弄し、蒼威は盾と剣で攻撃を防ぎつつ鎧で攻撃を受け4匹をひきつけていた。
「頼むぜエリック、当てにしてるからな!」
怪我を負い血に濡れた蒼威からかけられた言葉に、エリックの恐怖心は吹き飛んだ。
弱者を嬲ることに気を取られていたゴブリンどもの隙を突き、本隊が奇襲をかける!
先陣を切って突進したのはヴァルキリーだった。
巨大なクレイモアを振りかざし、慌てて反撃に転じたゴブリンの一撃を予め作り出しておいたオーラシールドで弾き、武器の重さを生かした強烈な一撃を叩き込む。
アズマはゴブリンの攻撃を華麗に回避しながらレイピアで的確に攻撃を重ね、リオンは恐れをなして隙を見せたゴブリンたちの武器を叩き落し、あるいはオーラパワーで強化した一撃を浴びせ多彩な攻撃を見せた。
レクルスによって傷を回復された蒼威は守勢から攻勢へと転じ、蒼龍も多彩なコンバットオプションを駆使してその小さい体から強烈な一撃を放つ。
今までのエリックなら目を背けたであろう戦場の光景を彼は目を見張ってしっかりと見つめるのだった。
そしてあっというまにゴブリンは数を減らし、残るのはただ一匹だけとなった。
「ダークネスをかけるので、最後の一匹はエリックさんが倒してください。動きに注意して攻撃してくださいね」
クリストファーが、ダークネスを放つと最後のゴブリンは黒い塊に包まれてじたばたと暴れ始める。
「ま、冷静に気軽に、そして真剣に、な」
ぽんっと背中を叩いてグットラックをエリックに付与すると、レクルスが励ます。
「前に教えたように、避けて回りこんで背中に一撃だ」
アズマが声をかけると、エリックはぐっと気持ちを引き締めて、暴れている最後のゴブリンに向き直る。
エリックは闇雲に突進してきた手負いのゴブリンをしっかと見据え、その突進を円を描くようにかわし背中に短剣の一撃を放つ。
その一撃はゴブリンを確かに仕留めたのであった。
●贈る言葉
「お疲れ様でした。無事に倒せましたね」
やわらかい笑顔を浮かべて、労いの言葉をかけているのはクリストファーである。
「俺にもエリックみたいなときがあったぜ! きっと優秀な後輩になれるぜ!!」
にかっと笑いかけて、エリックを励ましたのは蒼龍だ。
「囮の時にはお前のことも頼りにしてたんだ。自信を持つことだ」
無愛想ながらも元気付けようとしているのは蒼威である。
「怪物とはいえ、生き物を切るのは気分悪いもんさ。いずれはもっと気分悪いこともやらなければならないだろう。それに慣れろとは言わん。ただ、冒険者を続けるのなら、その気分悪いことをどうにかして避けることも自分なりに考えるんだ」
突き放すようだが、どこか暖かく語りかけているのはアズマだった。
「冒険者はね。勝たなくても良いんだよ。負けなければ良いの。冒険者の敗北は死‥‥。死ななければ何度でも再戦出来る。お父さんの意志を継いで冒険者に成るのは良い事だよ。でもね、お父さんに成ることは出来ない。キミはキミのやり方でお父さんの意志を継いで一人前の冒険者を目指しなさい」
じっと目を覗き込んで、思いを伝えようとしたのはヴァルキリーである。
「君がいずれ騎士となり国に剣を奉げるのか。戦士として何かを見出すか。それとも神の教えに何かを見出すのか‥‥楽しみな事だな」
頭をくしゃくしゃと撫でてやりながら、声をかけたのはレクルスだ。
「命を奪うことに意味を感じたようだな‥‥見所のある戦士になれるかもしれんな」
最後に肩に手を置いて、語りかけたのはリオンである。
「‥‥本当にありがとうございましたっ!!」
涙交じりの声でエリックは一同に礼を言う。
短い間だったが、エリックはこの数日で多くのことを学んだようだ。
彼の冒険者としての人生はここから始まるのだが、彼はこの日のことを一生忘れないことだろう。
彼の涙交じりの笑顔がそれを物語っていた。