アラン先生の失敗? 〜犬探し〜

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月10日〜03月15日

リプレイ公開日:2005年03月19日

●オープニング

「‥‥今回も依頼を頼みたい‥‥」
 ギルドを訪れたのはアラン先生。しかし今日はどことなく印象が違う。
 いつもの迫力が無いというか‥‥覇気が無いのである。
「‥‥はぁ、なにか実験の手伝いとかでしょうか?」
「いや、そうでは無い。あくまで私的な用事なのだ‥‥」
「? 私的に講義とかをなさるんですか?」
「‥‥違う‥‥‥‥手伝いが必要なのだっ!!」
 プライドが高く誰の手も借りないアラン先生らしくない言葉にきょとんとする受付。
「‥‥我輩が手伝いを頼んでなにか悪いかね?」
 ギロリと睨むも珍しいことにかすかに動揺してるアラン先生。
「ともかく! 数人の手を借りたい。‥‥実は知人から預かっていた犬が逃げてしまってな」
 再びきょとんとする受付。
「はぁ、なんで犬を預かっていたんですか?」
「‥‥そんなことはどうでもいいのだ! ともかく、借りてから数日で逃げてしまってな‥‥四方手を尽くしたのだが見つからないのだ」
「‥‥まずいじゃないですか」
「分かっている!! だから、こうしてわざわざギルドなんぞまで来たのではないか!」
「は、はい!」
「いいかっ! 我輩一人でも探し出せるだろうが、時間が勿体無いから手を借りるだけだ!」
 だんっと机を叩いて言うアラン先生。おお、いつもの迫力が戻ってきている。
「別に技能がどうだとか、そんなものは要らん! とにかくしっかり働く冒険者を紹介してもらいたいからなっ」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea1000 蔵王 美影(21歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea1364 ルーウィン・ルクレール(35歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea4112 ファラ・ルシェイメア(23歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea8367 キラ・リスティス(25歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb0299 シャルディ・ラズネルグ(40歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb0311 マクシミリアン・リーマス(21歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0584 ロータス・セクアット(32歳・♀・僧侶・人間・インドゥーラ国)
 eb0710 アストレア・ワイズ(22歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●大追跡の始まり
 とりあえずアラン先生の元に集まる一堂。逃げ出した犬の情報を聞かねばならないのだが‥‥アラン先生はご機嫌斜めのようだ。
「‥‥カールの特徴や、大きさを教えていただけませんか?」
 アストレア・ワイズ(eb0710)がそう問うと、不機嫌全開のアラン先生が答える。
「体高は人の腰ほど、大分大きな犬だ。真っ白で長毛、他に特に特徴はないが、犬としては大きいので分かるだろう‥‥」
「そうですか‥‥では、探しにいきましょうか」
 そう、アストレアが言うと、思い思いの場所にそれぞれが移動し始めたのだが‥‥小さな呟きが。
「‥‥自分が動物に嫌われる体質なら、初めから犬なんて預かるべきじゃなかったのでは‥‥」
 ファラ・ルシェイメア(ea4112)である‥‥君子危うきに近寄らずとはいっても、アラン先生の地獄耳を甘く見ていたようだ。
「‥‥何か、言ったかね?‥‥」
 低くおもーい声‥‥いつの間にか他のメンバーはそそくさと去って行ってしまう。
「いえ、特に何もいってませんが‥‥」
「‥‥ふん、早く探しに行くことだな‥‥」
 アラン先生、むすっとしたままてくてくと住宅街の方に歩いていく。ファラはほっと息をつくのだった。

●住宅街にて
「犬なら帰巣本能を持っているし、アラン先生に恐れをなして逃げて行ったのなら、飼い主の家に戻ろうとするかもしれないな」
 そういって住宅街を行くのはファラとロータス・セクアット(eb0584)だ。
 ファラは得意なモンスター全般の知識を駆使して犬の行動を予測しているようだ。
 ちなみにロータスはイギリス語をいまだ修得していなかったため、言語に堪能なファラと同行することになった。
「ともかく、住人に迷い犬の目撃情報を聞こうか。まずは飼い主の先生の家の近くからだな」
「そうですね。それにしても‥‥ファラ様のような言葉の通じる方がおられて、本当に助かりました! 私なんでもいたしますから、バンバンおっしゃってください♪」
「そうか、ならセクアットさんは聞き込みはできないだろうから捜索をお願いするよ」
「はい。掃除と捜索に全力をぶつけたいと思います!」
「‥‥掃除? 一緒に掃除をするの?」
「はい、掃除をしながらだと街の人の歓心も得られますし、時間がもったいないと思うかもしれませんが、神はいつも見ています。善行を積めば必ずよいことがあるのですよ♪」
 にこにこと笑顔を浮かべて答えるロータス。さっそく道端の枯れ木や布くずを拾って片付け始める。
「カール‥‥カールー‥‥一緒に帰りましょう〜」
 犬にはヒンズー語もイギリス語も関係ない。ロータスは地道に犬を呼びながら掃除をしている。
「ふむ、では僕も‥‥」

 少しして、ロータスが何かに気づいたようだ。
「ファラ様。どうやらここの道は犬たちの通り道になっているようです。ところどころに跡がありますし‥‥」
 そういって犬のマーキングの跡を示すファラ。もしかするとここを脱走したカールも通るかもしれない。
 手にはいろいろ道端で拾ったゴミやらを持っている。さらには掃除のせいでロータスの服はところどころ汚れてしまっている。
 しかし、ロータスの顔を見ると非常に満ち足りているようであった。
「アラン先生が四方手を尽くして探して見つからないのなら、比較的遠くへ行っているか‥‥もしくはいろんなところを移動しているのかもね」
「そうですね。この辺りには今は居ないようですし、もう少し探しましょう♪」
 その道に沿って2人はマーケットの方へと歩いていくのだった。
 
●マーケットにて
「カールは一体何処にいるんでしょうね?」
 そう尋ねるのはルーウィン・ルクレール(ea1364)である。ゆっくりと見物をしながら探している。
「カール君とはサイモン先生の依頼で会ったことがありますし‥‥サイモン先生の娘さんからこっそりとカール君の好物を教えてもらったんです。ですから、好物のありそうな場所をさがしたら居るかもしれません」
 そう答えたのはキラ・リスティス(ea8367)だ。どこかうきうきとマーケットを歩いている。
「私のブレスセンサーもありますしね。きっとお腹がすいているでしょうし、見つかるといいですよね」
 もう一人の同行者はアストレア。ブレスセンサーを使ってカールを探しながらの散策である。
「それでカールの好物って一体なんなんですか?」
「聞いたところでは、骨を齧るのがとっても好きだということなので、お肉屋さんとかにカール君はいるのではないでしょうか?」
「そうですね。とりあえずあっちの方の肉屋さんから見てまわりましょうか。‥‥それにしてもアラン先生、何かカールを怒らせるようなことをしたのでしょうか?」
「‥‥アラン先生は厳しい先生ですから、もしかしたら怖いと思ったのかもしれませんね‥‥私はいい先生だと思っているのですけど‥‥」
「ともかく、アラン先生には会わせない方がいいかもしれませんね。犬は意外に記憶力が良いですし」
「そうですね、とにかく見つけるために頑張りましょう。アラン先生のお役に立てると良いですし♪」
「ええ、頑張りましょうね‥‥あら、こっちの方に似た大きさの反応が‥‥」

 そうして暫く時間が経つ。そしてとある肉屋の裏にて。
 がりがりがりがり‥‥(じめんに寝そべって太い骨を楽しそうに齧っている大きな白い犬)
「やはりこっちでしたね。私は捕まえるのは苦手ですし、キラさんお願いできますか?」
「はい、カール君なら‥‥」
 そういって、しゃがみこむとおいでおいでするキラ。それにカールは気づくと、尻尾をぱたぱたと振ってとことこ近づいてくる。
 そばまで寄ってきたカールの首に手を回して抱きつくようにして捕まえるキラ。それを見てアストレアたちも近づいてきてカールを撫でて見る。
 暫くその場所にとどまって、さてどうしようと思ったその時。
「見つかったのかね? これだけ人数が居れば見つかるだろう」
 のしのしとやってきたのはアラン先生。住宅街でカールを探していた二人と一緒に居る。
 しかしカールはアラン先生を一目見るとびくっと身を縮めると、一目散に逃げ出してしまった!
「あっ! と、止まって下さい〜!」
 ‥‥しかもしっかりとしがみついていたキラを乗っけたままたったか走り去って行ってしまったのである。
「‥‥‥ぼーっとしてないですぐに追うのだっ!」
 唖然としてるほかのメンバーを急かすアラン先生。そしてそろって学校の方へと急ぐのだった。

●学校にて
「アラン先生は珍しくお困りのようでしたし、私も助力させていただきませんと」
 落ち着いた笑顔を浮かべてそう言ったのはシャルディ・ラズネルグ(eb0299)。
 学校の敷地でさまざまな動物に話しかけたりしてカールを探している。
 そしてその近くには少年と1匹の犬。
「わ〜♪ すご〜い、本物みたい! ふわふわしてるよ♪」
 もこもこの狼犬を触っているのは蔵王美影(ea1000)だ。そして触られている犬はマクシミリアン・リーマス(eb0311)がミミクリーで変化したものである。
「ここら辺に匂いはあるんですけどね‥‥う、あんまり触らないでください」
 尻尾をぱたぱた動かして答えるマクシミリアン。ちょくちょく魔法をかけなおしてはいるものの、この近辺にカールが良そうだという証拠は掴んだようだ。
 そして、そのとき遠くから1匹の犬がかけてくる‥‥いや、一匹の犬とその犬に掴まる少女が一人。
「あ、あれはカールですね‥‥って、キラさんが乗ってるのは何故でしょう?!」
 びっくりしたシャルディ。それでも一応プラントコントロールを唱えるとカールの足に草が巻きつき動きを妨害する。
 その隙にキラは転がり落ちるようにカールから離れるところころと受身を取って立ち上がる。
「マーケットからここまでつかまって来てしまったんです!」
 俊足の犬の足でも結構な時間がかかっただろう。キラはその間中ずっとしがみついてきたようで、心なしかふらふらしている。
「それは大変でしたね。大丈夫でしたか?」
「あ、はい。シャルディさん、ありがとうございます」
 とそんな挨拶をしている隙にカールは足の拘束を解き、ふたたびたったか駆け出そうとして‥‥疾走の術を発動した美景と犬の姿のマクシミリアンに行く手を遮られる。
「おっと、これ以上逃がさないよ♪」
「‥‥わ、わんっ!」(マクシミリアンが吼えた)
 微妙に普通の犬と違う気がしたのかカールはマックスをじっと見つめて足を止める。
「いまだっ! 隙有り、春花の術〜」
 一瞬の隙を逃さず眠りの香を放つ御影、するとあっさりカールは寝てしまう。
 ‥‥やっとカールを捕らえることが出来たのであった。

「やれやれ、やっとつかまったか‥‥このためにわざわざ冒険者を雇ったんだからこれくらいはしてもらわないとな」
 ぶすっとした表情のままのアラン先生。やっぱり憎まれ口である。
 それをみてなぜか尻尾を丸めて耳を寝かせているまだ犬のままのマクシミリアン。姿は変わっても考えることは一緒のようだ。
 するとふと美景が思いついたように言う。
「そうだ! アラン先生、しゃがんでください♪」
 そうして無理やりアラン先生の顔を有無を言わさずがしっとつかむと一瞬の早業で鼻をくっつける。
「これはね、犬の感謝の気持ちを表す行動なんだよ〜♪」
 嬉しそうに微笑む美景。一瞬唖然とするアラン先生はなにか言おうと口をぱくぱくいわせるだけで、結局背を向けると一同に言う。
「と、とにかくこれで仕事はおわりだっ!」
 するとまた呟きというかささやきが。
「それにしても、アラン先生が動物を“借りる”なんて‥‥意外ですねぇ。寂しかったんでしょうか?」
「まさか顔に似合わず犬好きとか‥‥僕も顔に似合わず猫好きだから、人のこと言えないけどさ。もしそうだとしたらアラン先生‥‥何だか貴方には僕に近いものを感じるよ」
 こそこそ話していたのはシャルディとファラ。
「‥‥今‥‥なにか‥‥言ったかね?‥‥」
『いいえっ! 別に何もっ』
 カールが逃げるのも分かると実感する一同であったとか。