●リプレイ本文
●遠足? いやいやモンスター退治♪
「では、出発の前に出席を取りますよ〜」
ぱんぱんと手を叩いて一同の視線を集める女傑はグレイス・ストウナー(eb0486)。
「あら、自己紹介が遅れたわね。私はグレイス・ストウナー‥‥『守衛の熱血教師』なんて呼ぶ方もいらっしゃいますけどね‥‥」
なぜかちょっと落ち込んだ様子のグレイス。
しかしケンブリッジにおいて臨時講師を務めることもある彼女はさながら引率の先生である。
「‥‥しかし、死体がアンデッドになるような何かが、森に存在するとしたら興味深いな」
こちらで無表情に呟いているのはエルンスト・ヴェディゲン(ea8785)。
彼も考古学者を生業とし、ケンブリッジの生徒ではない。好奇心から今回の依頼に参加したようである。
「マカールさん、お互いに日頃の研鑚の成果を披露しましょう♪」
「そうですね、久しぶりにモンスター退治ですしね‥‥あ、荷物持ちましょうか?」
シャルディ・ラズネルグ(eb0299)とマカール・レオーノフ(ea8870)は、ケンブリッジの学生である。
2人とも少々生徒の中では年かさだが、楽しそうに依頼に参加しているようだった。
「はじめましてや。うち今回がはじめての依頼ですねん」
「あ、あの‥‥はじめまして‥‥頑張りましょうね」
こちらの2人はケンブリッジに滞在中の冒険者。吟遊詩人のシーナ・フローティア(ea0400)と傭兵のフレア・カーマイン(eb1503)。
以上6人が今回の参加者だ。なかなか個性的な面々が集まったようである。
てくてくと依頼にある森の方へと移動する一同。もちろんいろいろな話が弾む。
「久しぶりに依頼を受けるわね‥‥あっ!」
何も無いところで転びかけたのはグレイス。熱血教師だけどどこかそそっかしいようだ。
「おうっと、足元気ぃつけた方がええでー」
とっさに手を伸ばして支えたのはフレア。女性的な容姿がどこか口調とミスマッチである。
「‥‥あそこのお菓子は美味しいですよね」
「わ、私も結構あそこのケーキ好きで‥‥」
甘いものの話に花が咲くのはマカールとシーナ。どちらも甘い物には目が無いようで。
「つい先日、遺跡についての本でよく纏められているのを読みましてね‥‥古代魔法文字についてもなかなか良く書いてありましたよ」
「おお、それは興味深いな。どんな内容だったのか教えてもらえないか?」
古代魔法語について話が弾むのはシャルディとエルンスト。こういった会話はさすがケンブリッジならではだろう。
そうこうして、森へと踏み込んでいく一同であった。
●森の中で
土地勘のあるメンバーに導かれるようにしてモンスターを探す面々。
「最近この近辺に出没するスカルウーォリアーは何体ですか?」
『‥‥3体‥‥』
道すがら遠くまで見渡せそうな大木に話しかけているシャルディ。グリーンワードによる植物との会話だ。
森が舞台となる今回の依頼は、どうやらシャルディにとっては特に好条件のようである。
「そこの小鳥さん、歩く骸骨を見なかった?」
『骨いたよ〜』
鳥がぴよぴよ言ってるようにしか他の人には聞こえないが、グレイスはオーラテレパスで鳥から情報収集だ。
「どの方角にいたかしら」
『明るいところ〜』
やはり鳥頭ということだろうか、なかなか居場所を掴むのは難しいようだ。
「今回は私が前衛ですね‥‥盾として皆さんをお守りしませんと」
周囲を警戒するマカール。彼は今回の前衛の要である。
「リトルフライじゃ、あんまり遠くまで見えないな‥‥」
エルンストはリトルフライで遠方の確認をしていたが、木々の重なりで見えないようだ。
まだ春には少し早いとは言え、針葉樹が生い茂る森はうっそうとしている。
そして暫くして‥‥。
「歩く骸骨見なかった?」
『さっき見たよ〜』
「スカルウォーリアーを見たのはいつですか?」
『少し前』
「‥‥どうやら近くに居るみたいですよ」
シャルディは木々から集めた情報で断言する。もちろん動物たちの証言もそれを裏付ける。
「‥‥当たりのようやで。ほら、おいでなすったわ」
視力に長けるフレアが指差すその先遠方には、歩く骸骨の姿が。
「い、いよいよです‥‥‥」
全員の緊張を代弁するのはシーナ。戦闘開始である。
●遭遇、そして‥‥
「とりあえず戦闘は生徒たちに任せるわ。私は援護だけ。ま、危なくなったらもちろん助けるけどね。はい、オーラパワー」
オーラパワーをマカールに付与するグレイス。戦闘は生徒たちに任せるようだ。
「私も同じく。では牽制をやらせてもらおうか。ストリュームフィールド!」
轟々と風がエルンストの周りに渦を巻くと、エルンストは他の冒険者を巻き込まないように前に出る。
そして遠方からがしゃがしゃと骨を鳴らして近寄ってくる骸骨にこちらの先制攻撃。
「ブラックホーリー!」「ホーリー!」
マカールとシーナの魔法が一体のスカルウォーリアーに直撃する。
「これでも喰らいやー!」
弓を引き絞ると、さらに追い討ちの矢の一撃。骨だらけの体はなかなかに当たりにくいのだが、幸運にも頭蓋骨に命中する。
「それではこれを試してみましょうか‥‥グリーンビート」
プラントコントロールを得意とするシャルディ。周りの自然が全て味方である。
ばりばりと音を立てて、地中の根が起き上がると、すでにダメージの蓄積した一体の骸骨に狙いを定める。
そして、3本の根を束ねると、風切る音とともに打ち下ろす!
弾き飛ばされるようにして、一体の骸骨は木の幹に打ち付けられ、そのまま動かなくなるのだった。
一方他の2体はついにメンバーと接触する。
「ここは通しませんよっ!」
マカールがクルスソードで相手の攻撃を受け止める。このスカルウォーリアーたちはどうやら生前大した武器を装備していなかったようで粗末な錆びたショートソードを振り上げている。
しかし、受けに専念しているマカールにとって動きの遅いスカルウォーリアーの攻撃はあまりにも稚拙。
2対同時に対面し、剣で攻撃を弾き時には回避して完璧に足止めしている。
しかもエルンストがストリュームフィールドの範囲ぎりぎりに骸骨を巻き込んだり、遠方からのシーナのホーリー。
さらにはシャルディのプラントコントロールによって、すでに勝敗は決しているようだ。
「あ、マカールさん‥‥次は右の攻撃に気をつけて‥‥」
シーナは後方に控えて、指示を出す。先生の2人はあえて手を出すまでもないと考えたのか、静観している。
「これでもくらいや!」
「土より生まれた物は土に返りなさい!」
矢の切れたフレアは手持ちのダガーを投げつけ、その隙にマカールが止めの一撃。オーラパワーによって強化された刃によって一体が動かなくなる。
「それではこれで。グリーンスープレックス!」
木々の枝や根で縛り上げていた最後の一体を高々と持ち上げるシャルディ。そしてそのまま投げ下ろす!
こうして最後の一体も動かなくなったのであった。
●供養と帰還
「‥‥あ、あの‥‥やっぱり亡骸は持って帰ってあげますよね‥‥」
「ああ、まだ遺族の方が行方不明になった人を探しているかもしれないですしね」
シーナの問いに答えるマカール。一同も亡骸は丁重に扱うと聞いてシーナは安心したようだ。
神聖騎士とクレリックの2人はとりあえず供養してから骨になった亡骸を布で包む。
「ふむ、遺族を探して見つからなかったら、身元を捜すのを依頼にしてみるのもいいだろう」
エルンストがそういうと同意をこめて頷く一同。
「なかなか今回はうまくいきました‥‥他にもいろいろ考えられるかもしれませんね」
帰る道すがら今回の戦闘を復讐しているのはシャルディだ。撃破数2体は森でのシャルディの強さを物語っている。
「ん、初依頼も無事成功したみたいやな。次も頑張らんとな〜」
矢が切れたことはちょっと失敗だったが、幸いにも投げた矢もダガーも回収できたようだ。次からはもうちょっと多めに矢を持つことに決めたに違いない。
「はーい、家に帰るまでが依頼ですからね!」
特に道に迷うことなくすすむ一同。こうして、依頼は無事成功したのであった。