●リプレイ本文
●A地区ほのぼの探索記♪
「ごきげんよう、今日は宜しくお願いしますね」
「こちらこそよろしく。ご一緒できて嬉しいですよ」
地図に記されたA地区に向かうのはカンタータ・ドレッドノート(ea9455)とシャルディ・ラズネルグ(eb0299)である。
2人は幾度か依頼で一緒になったこともある友人であり、どこかのんびりと2人は地下水路に入り込むのだった。
「一体何があるんでしょうね? ともかくいろいろ探してみましょう♪」
「そうですね。とりあえず進みましょうか」
防寒着を着こんだ2人はランタンを手に静々と奥へ奥へと進んでいく。
水路の広さは2人で並んで歩いても十分な広さがあり、足元はしっかりとした石畳だ。
地上から近いA地区へと至る道は足元もあまり濡れておらず、一見ただの地下道のようなつくりである。
下水が流れ込んできているわけでは無く、外部の河川の水が流れ込んでいるために空気はあまり汚れていないようだが、風の吹かない地下水路、空気はどこかよどんでいるようだ。
その中をてくてくと歩く2人‥‥地図の写しを時折確かめながら、慎重に進んでいく。
「しかし、こんなところに迷い込む動物といったら‥‥水鳥とかウサギとか‥‥でしょうか?」
「私はネズミとかではないかと考えているのですが‥‥」
遠くから水の流れる音がかすかに聞こえるような静謐の中、2人分の足音が響く。
「冒険では怪しげなところを探すのがお約束ですよ‥‥なにか地図に無い横道とか有りません?」
「今のところ地図のとおりですね‥‥少しお待ちください」
「? どうしましたか?」
「はい、パーストを使って最近の様子を確認してみます」
「ああなるほど。宜しくお願いしますね」
カンタータが魔法を使っている間に、きょろきょろと辺りを見回すシャルディ。
「思ったほど空気は綺麗なようですが‥‥やっぱり空気がよどんでいますし、どことなくかび臭かったりしますね」
「ええ、そうですね‥‥それは?」
シャルディが荷物から取り出したのは、小さな袋。どうやら香り袋を持ってきたようだ。
二つの袋のうち一つをカンタータに手渡しながらシャルディが言う。
「これを持っていたほうが幾分楽ですからね。どうぞ使ってください♪」
「それは、どうもありがとうございます」
深々とお辞儀して答えるカンタータ。何処までも礼儀正しい2人であった。
と、耳が利くカンタータが小さな物音に気づく。どうやら少し進んだ通路の置くから小さな物音が聞こえたようである。
手でシャルディを制し、目配せするカンタータ。シャルディもすぐに気づき、ランタンをかざして奥へとゆっくりと足を進める‥‥。
すると、きらりと通路の暗闇に光る物があった。それは動物の目。十対を超える輝く瞳が2人を見据えていたのだった‥‥。
‥‥‥てってってってと通路の奥から進み出てきたのは、白黒のぶち猫。
行き止まりになっていた通路には十数匹の猫であった。
なぁぁう〜ん♪(ごろごろすりすりシャルディの脛に擦り寄るぶち猫)
「‥‥どうやら猫の溜まり場だったようですね‥‥」
ふっと体の力を抜いて、擦り寄ってきた猫の背を撫でるシャルディ。
「猫‥‥でしたか‥‥一応、記録しておきますね」
カンタータもくるくる喉を鳴らす猫に擦り寄られながら地図に記された場所にしるしをつける。『猫の集会場』と。
‥‥しばらくランタンの油が尽きるまで猫たちと遊んであげた2人であった。
「とりあえず、これで探索は終わりですね‥‥猫が居るとは予想外でしたけど」
「そうですね‥‥あ、爪を立てないで‥‥それでは報告に戻ることにしましょうか」
「ええ。じゃ、戻りましょうか♪」
猫たちに別れを告げ二人は来た道を引き返す。
「ところで、他の人たちはどうなったのでしょうね‥‥」
「う〜ん、危ない目にあってないと良いんですけどねえ‥‥」
●B地区にょきにょき探索記?!
「‥‥ここはさしずめ、手垢のつきまくった迷宮‥‥ってとこか?」
そう呟いたのはデューク・マーロウ(ea9833)だ。そしてカンテラで方々を照らしながら隣を行くのはハルト・セイラン(ea8957)。
デュークは弓を手に持ち、優れた視力で周囲を警戒しつつ慎重に進む。一方のハルトはというと‥‥。
「ふーん‥‥下水‥‥じゃなかった地下水路調査ねぇ‥‥」
時折靴を濡らす水路を踏破しながらカンテラを持ち自分にだけ聞こえるような声で呟く。
「ケンブリッジの地下にこんなもんがあったんだ‥‥」
フードを上げて、肩口で切りそろえた真っ直ぐな銀の髪を揺らしながら、さらに進む。するとデュークが声をかけてくる。
「おい、あんた。俺の分の油も渡しておくから使ってくれ」
デュークはそっけなくそう言うと、荷物の中から予備の油をハルトに渡す。
「ああ、分かった‥‥‥‥ふん、つるむのは好きじゃねーんだけどな‥‥」
後半は口の中だけで消え、ハルトは油を受け取るとスタッフを持つ手でカンテラをまとめて持つと油を補充する。
そのまま黙々と進む2人。着々と目的地まで進んでいく。
外部の川と近いのか、遠くから水の流れる音がはっきりと聞こえ、空気にも流れる水の匂いが混ざる。
地下水路というよりは、自然の鍾乳洞などの中を歩いているようであった。
「‥‥こんな所で滑ってこけたらつまんねーし、足下には十分気を付けねぇとな‥‥」
ボソっとハルトがデュークに告げる。デュークも頷いて答えると。ふとハルトに聞く。
「‥‥あんたは、ここに何が居ると思う?」
「‥‥ああ、外の川とちけーし、何か入り込んでるかも知れねーんだっけ‥‥なんだろうな?」
「まぁ、実際に見て見ないことには分からないか‥‥気をつけて進まないとな」
「ああ、何か居る様なら報告しとかねーとな」
徐々に近くなる川の音。ざぁざぁと水が流れる音が近づいてくる。
そして、とある直線の通路を進んでいるとき、カンテラを持っていたハルトが妙な物に気づく。
「なぁ‥‥あれなんだ?」
通路の隅に半分水につかるようにしてぴくりとも動かない灰色の塊があった。
それに近づこうとしてハルトが一歩近づくと‥‥突然その塊から、何本もの触手が伸びる!!
「そいつはローバーだ!! すぐに離れろっ!」
触手を振りかざして獲物を探すローバーの姿を見て、モンスター知識を持つデュークはそのモンスターがローバー、つまり巨大なイソギンチャクであることに気づいた。
急いで距離をとろうとするハルトに向かって伸びる触手。それを見据えて、デュークは引き絞った弓を放つ!
深々と矢が本体に刺さり、怯んだのか触手を引き戻すローバー。その隙にハルトは大きくローバーから離れる。
わきわきと触手を伸ばすローバー‥‥しかし届かない。
「‥‥とりあえず、倒せそうだな」
再び弓を引き絞るとローバーへと放つデューク。ハルトも魔法の詠唱を始める。
「ライトニングサンダーボルト! 距離が離れてるから、攻撃される心配もねーしな」
遠距離から攻撃されると動けないローバーは弱い。あっという間にローバーは倒されてしまうのであった。
「この先にはまだ居るかもしれないし。報告に戻らないとな」
デュークは矢を回収すると、来た道を引き返す。
「やっと終わったぜ‥‥じゃ、帰るか」
そうして、無言で2人は帰路につくのだった。
●C地区どきどき探索記!
「‥‥シャンピニオンさん。大丈夫ですか?」
「うん、ボクは大丈夫だよー♪ 運んでくれてありがとうね、王子様!」
通路を行くのはマカール・レオーノフ(ea8870)と、その背中のフードに入って運ばれているシャンピニオン・エウレカ(ea7984)だ。
上品で凛々しいマカールを王子様と呼ぶシャンピニオン。確かにその呼び名は言い得て妙である。
「きゃっ!! ネズミ〜!」
もぞもぞマカールの背負う毛布の中に潜り込むシャンピニオン。マカールも苦笑しつつ黙認だ。
「まぁ、ネズミぐらいはいると思いますが‥‥他に何がいるかわからないので、気をつけないといけませんね‥‥」
ランタンをかざして、てくてくと奥へ進んでいくマカール。ふと思い出したかのようにシャンピニオンへと語りかけた。
「そういえば‥‥こうして地下水路を歩いていてふと思い出したんですが‥‥」
「うん、何を思い出したの?」
「噂に聞いたことがあるのですが‥‥とある貴族が遠方からワニの子を輸入したのは良いが持て余してしまって‥‥それを下水道に捨てたら、とてつもなく巨大に育ったワニが下水道を徘徊してたというのが‥‥」
「わ〜ん、そんなのが居たらボク、まるごと食べられちゃうよ〜!」
「‥‥まぁ、あくまでも噂ですし、ここにいるという話は聞かないですしね」
「うう、そうだけど‥‥まあ、何が出ても王子様と一緒なら怖くないけどねっ♪」
にぱっと微笑んでマカールに言うシャンピニオン。マカールも笑みを返すのであった。
「うーん、地図に無い秘密の小部屋とか隠し通路とかないかな〜」
ぱたぱたと好奇心でランタンの明かりの届く範囲で飛び回るシャンピニオン。
「あまり離れてしまうと何がいるかわかりませんから、気をつけてくださいね」
「は〜い、ちょっと疲れたから、またフードに入れてね〜♪」
「はい、どうぞ。でも、くすぐったいのであんまり動かないでくださいね」
「ありがとう〜〜っ。やっぱり王子様は素敵だねっ♪」
どことなく楽しそうに進む2人。しかしここは地下水路のなかでもかなり深い場所。
徐々に緊張が高まるのを2人は感じるのだった。
かつんかつんと響くマカールの靴音。
「シャンピニオンさん‥‥なにがいるんでしょうね?」
「うーん‥‥動物だったら分かるんだけど、他のモンスターはあんまり良く知らないし‥‥」
「まあ、何が出てきても危なくならないように注意して行かないといけませんよね‥‥」
ズル‥‥‥ズル‥‥‥
「‥‥ねぇ、王子様‥‥いま何か聞こえなかった?」
「いえ。特に何も聞こえなかったのですが‥‥」
ズル‥‥ズル‥‥ズル‥‥
「‥‥やっぱりなんか聞こえる‥‥這いずるような音が‥‥」
「ええ、今度は私も聞こえました‥‥気をつけましょう。なにが出てくるか分かりませんから‥‥」
足を止めて周囲を見回すマカールとシャンピニオン。ズルズルという音は徐々に近づいてくる。
‥‥‥‥ポトリと水滴が垂れる。ジュッ! という嫌な音とともに白煙を上げる!
「上ですっ!!」
マカールの声で天井を見上げるシャンピニオン。するとそこには天井に張り付いたゼリー状の生物の姿が。
「退きますっ! 大丈夫ですかシャンピニオンさん?」
踵を返すと、駆け出しながら隣を飛ぶシャンピニオンに話しかけるマカール。
「うう、あんなのが出てくるなんて思わなかった〜! あれ何〜?」
「私にも分かりませんが‥‥きっと手を出すのは賢明では有りませんね」
漸く大分距離を戻ってから、地図の写しに記入する2人。
「とりあえず危険なものが居ることは分かったので、報告しないといけませんね」
「うん、他はちゃんと調べたしね‥‥今日はありがとね王子様♪ 早く帰ろー」
こうして、地下水路の探索は幕を閉じたのだった。