彼女を守ってください!
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■ショートシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 62 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:03月23日〜03月30日
リプレイ公開日:2005年04月01日
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●オープニング
「お願いします。僕の彼女のボディーガードをしてくださいっ!」
そういって頭を下げるのはさっぱりとした服装の純朴そうな青年。なかなかに端正な顔の持ち主である。
しかし普段はきっと柔和な表情を浮かべているであろうその青年の顔は緊張に満ちていた。
「僕の名前はダンといいます。じつは今度キャメロットすむ祖父の下に行かなければならない用事が出来たんです」
どこか落ち込んでいるようにため息をつくと話を続ける。
「僕には彼女がいます。エセルという名で、僕たちはフォレスト・オブ・ローズ騎士訓練校の生徒です。一年ほど前から付き合っているんです‥‥でも‥‥」
そういって口ごもるダン青年。なにやら煩悶しているようだ。
「その‥‥自分で言うのも自慢しているようでなんなんですが‥‥エセルは美人で気立ても良くて、とても人気があったんです。だから‥‥今でも彼女にちょっかいをかけてくる人がいるんです」
眉をしかめて言うダン青年。なにやら嫌な思い出を思い返しているようだ。
「以前からその人は何度もエセルを口説いたり、ちょっかいをかけたり‥‥それに僕もなんども嫌がらせを受けてました」
くっと唇を噛み締めて悔しそうなダン青年。辛い思いもしたようだ。
「最近は特に嫌がらせやちょっかいも酷くなってきていますし、そんなときに僕がエセルのそばに居てあげられないのが心配なんです。どうかかえってくるまでの間暫く護衛をお願いしますっ!」
再びがばっと頭を下げるダン青年。
‥‥一方その頃。フォレスト・オブ・ローズのとある空き部屋で。
「良いかキミたち。私のような美しい人間にはふさわしい相手というものが居るのだよ」
華奢な体に金の巻き毛。ぬけるような白い肌に細い顎。輝く青い瞳を飾るのは世の女性がうらやむような長い睫毛。
「かのエセル嬢はまさしくこの私にふさわしい女性だ。ああ、竪琴が奏でる妙なる調べのようなあの美しい声っ! 清楚にして可憐、美の女神の祝福を受けるにふさわしいあの姿っ!」
豊かな金の髪をふわさぁっ! とかきあげながら、なにやら演説がヒートアップしている。それを聞くのは1人の男。
「‥‥ライオネルさん‥‥まーだあの人のことをあきらめねぇんですかぃ?」
「ふっ! なんとでも言うがいい。私はあの女神をわが手中に収めるまでは諦めんぞっ!」
「‥‥で、やっぱり俺も手伝わなきゃいけねぇのか?」
「当たり前だろう、ローム! 貴様がいい思いをしていられるのもこの私! 超絶美形で金持ちのライオネル・ラルトネイア様が居るからだろう!!」
「へぃへぃ、それで今度はどんなことをするんですかぃ?」
「ふ、凡愚どもには説明しなければなっ! 幸いなことにあの目障りなダンが暫く居ないという話だ。ならば、お前が人を集めてエセル嬢にからむ。そこを私が颯爽と助ければ、きっと自分の愚かな考え違いに気づくに違いないっ! そうなれば彼女を助けたこの麗しの騎士! ライオネル様に彼女は心奪われるのが当然である!」
わ〜はっはっはと白い歯を輝かせて高笑いをあげるライオネルを困ったように取り巻きのローム見やるのであった。
さて、どうする?
●リプレイ本文
●日常とおしゃべりと
「わざわざ護衛をしていただいて、ありがとうございます‥‥ダンは心配性なところがあるので‥‥」
護衛対象であるエセルが冒険者たちに礼を言う。彼女の周りについて護衛をしているのは依頼を受けたうちの女性陣だ。
「人の恋路を邪魔する方は許せません! ダンさんが帰ってくるまで頑張りましょう!」
エセル嬢に対して、決意表明しているのはキラ・リスティス(ea8367)だ。
「あの‥‥エセルお姉さまとお呼びしてよろしいでしょうか?」
そういったのは同じフォレスト・オブ・ローズの後輩であるセレナ・ザーン(ea9951)。
少し離れたところで護衛しているのはジェシカ・ロペス(ea6386)。おっとりのんびり護衛の構えである。
そして三名の男性陣は、それぞれがちょっかいをかけてくるライオネル一味に対して備えているようであった。
エセル嬢と一緒にフォレスト・オブ・ローズに通う女性陣。キラやジェシカにとってはめったに見ることの無い騎士訓練学校の中は非常に興味深いようであった。
そして、今日も今日とて放課後にのんびりと過ごす一同。
天気が良かったので、食堂に集まり午後のお茶会である。
話題はなにやらセレナの部活の話のようだ。
「エセルお姉さま、実はわたくしは部活を持っているんですの」
「まぁ、そうだったんですの。まだ10歳なのに、凄いわね」
「はい、貴婦人を目指す男子禁制の部活なのですが、エセルお姉さまもいらっしゃいませんか?」
「あら、それは魅力的なお誘いですわね‥‥ですけど、護衛のかたには男性もいらっしゃいますし、今回はご遠慮させていただくわね」
申し訳なさそうに微笑を向けてわびるエセル。セレナも残念そうだが、その言葉には従うしかなかったのであった。
今度はなにやら学校の話題。キラがエセルに問いかける。
「‥‥エセルさんは、フォレスト・オブ・ローズの授業では特に何が得意なのですか?」
「ええ、私は体を動かすのよりは、外国語の勉強が好きですわ‥‥いつの日か海外の宮廷を訪れてみたいと思っているですの」
「そうなんですか‥‥」
いろいろ思い出したかのように、遠くを眺めて言葉を繋ぐエセル。
「ダンもゲルマン語のクラスで出会ったんですよ。彼は語学も堪能でいろいろ教えてもらっていたのがこの付き合いのハジマリなんですの」
かすかに頬を染めて告げるエセル。なにやら話題は恋の話のようである。
「ダン先輩とはそのようなきっかけだったんですね‥‥」
ちょびっと大人な世界を垣間見るセレナ、まだ幼いの彼女には恋の話は縁遠い物なのかもしれない。
一方キラはなにやら考え込んでいるようだ。
「あら? キラさんは好きな人でもいらっしゃるの?」
「‥‥その、私の場合は憧れている方が色々アレなので、その、趣味が悪いと言われるのであれなのですが‥‥」
「あらあら、キラさんが憬れているかたなら、さぞかし立派な魔法使いなのでしょうね」
しどろもどろのキラを見て、妹を見るような優しい視線を向けるエセル。そしてふと遠くの席に座っているマイペースなジェシカに目を向ける。
「そういえばジェシカさんには、お相手とかいないのでしょうか?」
ハーックション!! と遠くからジェシカの大きなくしゃみの音がしたとか。
●三文芝居? ロームの襲撃
話をしながら、女性陣が帰路につく。そこに道をふさぐ様にして立ちふさがる数人の影が。
ライオネルの腰巾着、ロームを筆頭にあまり素行の良くない学生たちが総勢で3名でお出迎えである。
「おう、ねぇちゃん‥‥特にそこのねーちゃんにはつきあってもらおーか‥‥」
べたなこと言いながら、エセルへと近づく男たち。
それに対して立ちふさがるのはセレナ。
「おやめください、エセルお姉さまが嫌がっておられるではありませんか」
きりっと言い放つセレナだが、いかんせん幼すぎる。ロームたちは馬鹿にしたような薄笑いを浮かべるのだった。
「へー、だったらお嬢ちゃんが相手をしてくれるのかい?」
頭の悪そうな下っ端が言う。
そこまで言って、ロームたちはすっと現れた男性陣とジェシカにぎょっとする。
「情けない行動をしてくれるものですね‥‥それでも君たちは騎士として恥ずかしくないのですか?」
やれやれと嘆息して言うはルーウィン・ルクレール(ea1364)だ。
「ル、ルーウィン先輩‥‥いや、別に先輩だろうと、関係ないじゃねぇか!」
絡んできた面々もフォレスト・オブ・ローズの学生。ルーウィンの顔を見知っていたようで一瞬怯むのだった。
「わしはお前らのようなやつが一番好かんでの、少々灸をすえてやらねばのう」
いつの間にかそばまで寄ってきていたのは黄安成(ea2253)。
飄々とした態度を崩さぬまま、かるくロームたちを挑発する。
「ふむ、少々貴殿たちには痛い目にあってもらおうか‥‥運が悪かったと思うんだな」
そう言って構えるのは斬煌劉臥(eb1284)。ふっと冷酷な笑みを浮かべて、くいくいと手招きする。
ここに来て進退窮まったロームたち。エセルに適当に絡んで、それをライオネルが助けるという台本が台無しである。
ということで、できることはただ一つ。目の前の邪魔な冒険者を排除することだけである。
「ちっくしょー! こんなこと聞いてねぇぞ! いいからこいつらやっちまえっ!」
やけっぱちのロームたち。もちろんそんなやつらが敵うはずないのであった。
「同じ騎士学校生徒として、情けないというか‥‥」
呟きながら片手で下っ端の攻撃をいなすのはルーウィン。戦闘力に長ける彼には下っ端は相手にもならない。
「さて、これで終りですね‥‥次は誰が相手ですか?」
したたかに下っ端を打ちのめすと次なる相手を探すルーウィン。余裕である。
「鞭でぺしっとするのは可哀想ですし、これで十分です。エセルさんたちは私に触れないでくださいね」
魔法を唱えて雷光を纏うのはキラ。ライトニングアーマーを使ったのだ。
「なんでぃ、お嬢ちゃんが俺の相手ってかぃ?」
馬鹿にしたような下卑た笑みを浮かべる下っ端の一人。それに対して嫌そうな顔をしながら手を差し出すキラ。
「あ? この手はなんだぁ?」
しかしどこか少しでも礼儀正しさが残っていたのか、そっと手を払いのけようとする下っ端は‥‥バリバリバリバリッ!!
キラに触れたことで、電撃を浴びたのちあっという間にセレナに押さえつけれる。
「先輩、恥を知ってください」
セレナの一言で、がっくりとうな垂れる下っ端、さすがに後輩の一言は効いたようだ。
●そして黒幕登場
あっという間にぶちのめされた下っ端たち。ロームも安成とジェシカにあっさりとつかまるのだった。
さて、ロームに対して詰め寄る一同。劉臥が尋ねる。
「さてローム、貴殿にこんなことするように頼んだのはやっぱりライオネルなのか?」
ライオネルの名にぎょっとするローム。今までのことから考えればバレバレなのだが、気づいてなかったようだ。
そこにやっと遅れてやってくるライオネル。
「はっはっは、私が助けるまでも無かったようだね。いやぁ、このライオネル、エセル嬢が無事で安心いたしました」
まだ三文芝居を続けるライオネルに一言言う劉臥。
「貴殿がこのロームに指示してエセル嬢を襲わせたとのはすでに知っている。それでもまだしらを切るのか?」
ぎっとロームを一度見据えると手を上げて、ひらひらと振りながら言い訳するライオネル。
「何をおっしゃいます、ロームが嘘をついてるに決まってるではないですか! この私がそのように卑劣な‥‥」
「もういいライオネル、俺と戦って勝てたら俺はもう何も言わないぞ。もちろん戦うよな?」
事態の推移を見守る一同の前で、ライオネルはまだ悪あがき。声が震えて裏返るライオネル。所詮へっぽこなのであった。
「い、良いでしょう‥‥我が身の潔白を証明して見せましょう!!」
「じゃ、かかってくるんだな」
そうして、ひたすら攻撃を回避する劉臥に翻弄されるライオネル。
「口で言っても分からないやつには、痛い目にあってもらわないとな。龍飛翔!」
顎に痛烈な一撃を受けもんどりうって転げるライオネル。
うずくまるライオネルに対して今度はお説教タイムが始まった。
「あなたはやっぱり自信過剰な人のようですね‥‥でも、そんな風に人の気持ちを考えない人は女性にもてませんよ」
ジェシカは自分なりにライオネルの人となりをみて決めたようだ。そしてにっこり笑うと、とどめの一撃。
「私、あなたみたいな人嫌いです。よく覚えて置いてくださいね」
そういうと座り込むライオネルに平手打ちを一閃。女性の心を考えない自己中心的な輩に天誅である。
「‥‥二度とつきまとわないでくださいね
きっぱりはっきり本当のとどめを刺すエセル嬢。思わずライオネルもガックリ来ている。
「おお、何故失敗したのだ‥‥私は完璧なはずなのに‥‥」
そして、最後にライオネルに声をかけたのは安成だ。
「おぬしはその自分勝手で傲慢な考え方がいかんのだ。そんな性格では騎士に必要であろう大切な人を思いやる心に欠けている」
ぐっと言葉に詰まり、ますます俯くライオネル。
「その傲慢な性格を直し、騎士として人を思いやる心を養っていけば将来エセル嬢以上の女性がきっと現れるであろう」
はてさて、本当にそうなるといいのですが、それはライオネルの努力次第。
こうしてエセル嬢は無事何事も無くダンと再び会うことが出来たのであった。