●リプレイ本文
●魔法使いな授業
「それでは今日は精霊碑文学を勉強いたしましょう」
丁寧に生徒たちに教えているのはエレナ・レイシス(ea8877)。
「これはルーンといって精霊の力を借りるための文字なんですよ」
「はーい先生!」
いつもの先生より自分たちに近い年齢の先生が教えてくれるのが新鮮なようで子供たちも楽しそうである。
「分からなくてもいいですよ。今日は楽しく覚えましょう」
にこにこと笑みを絶やさぬエレナであった。
「これは、錬金術の素晴らしさを伝えるのによい機会です」
びしっと気合が入っているのはエリス・フェールディン(ea9520)。
錬金術に対して並々ならぬ情熱を注ぐ彼女にとって、今回は錬金術を知ってもらう良い機会。
気合が入るのも当たり前といえよう。
「今日は皆さんにこれを見てもらいます」
「なに〜? なに〜?」
エリスの周りに集まって騒ぐ子供たち。さまざまな種族の子供たちが集まってくる。
「これは磁石です‥‥見てください、鉄で出来た針がくっつくでしょう?」
「わー、すごーい!!」
「このように魔法とは違った自然の原理を知ることが出来るのですよ」
「私にも貸して貸してー」
がやがやと騒がしくなる教室。ハーフエルフの彼女はうまく狂化しないように男子生徒との距離を置きつついろいろな話をする。
「これで錬金術のよさが分かってくれれば宜しいのですが」
もしかすると、この中から未来の錬金術師があらわれるかもしれない。
「それではイギリス語の勉強をしましょうね!」
「はーい♪」
一番年長な生徒とそれほど年が離れていないのになかなかの先生振りを見せているのはインデックス・ラディエル(ea4910)だ。
どうやら、自分で作ったイギリス語の写本を使ってイギリス語の勉強を教えるようである。
「ねーねー、先生。ここはなんて書いてあるの?」
「そこはね、DOGって書いてあるんだよ。しっかり覚えるんだよー」
年若い生徒たちには丁寧に。一緒に発音しながら教えてあげているようだ。
そして年長の生徒たちにはラテン語を簡単に解説。
「いいですかー、ラテン語は神聖ローマ帝国やビザンチンの公用語なんです。それにジーザス教クレリックの間での共通言語でもありますからね」
うんちく話を交えつつの賑やかな講義。先生役のインデックス自身もなかなか楽しそうに講義をしていのであった。
「はぁ、先生から申し渡された課題が役に立ったよ〜」
‥‥どうやら写本は自身の課題でもあったようである。
●ちょっと特別な授業
「異国から来た冒険者参上〜」
わーっと歓声に迎えられて登場したのはユフィ・コーネリア(ea3974)。
「ウィザードだからってひ弱なのはダメ。身が軽い方がいいこともあるからね」
わくわくと何を教えてくれるか期待している生徒たちを見てユフィは言う。
「魔法使いが攻撃されないなんて法則は無いの。ぱっと逃げられたら、それだけでも有利でしょ?」
そういってぴょんと宙返り。再び子どもたちの歓声を受けて授業が始まった。
「いい、きつく結ぶんだよ」
「できました先生〜」
「ん‥‥なら‥‥はい解けた」
「わーすごーい!!」
縄抜けの妙技を披露するユフィ。どうやら手品のように思われてる気がしないでもないが、子どもたちは大喜びだ。
「‥‥じゃ、他のも見せてあげるね」
そして本格的に手品を見せはじめたユフィ。やはりこれぐらいの年の子どもたちには楽しい授業が受けるようだ。
演目は単純に銅製のカップとボールを使った手品。手にあったはずのボールがカップの中に。さらには入れたはずのカップではなくほかのカップの中からボールを取り出して見せたりする手品だ。
「先生か‥‥呼ばれて見ると結構たのしかったな」
生徒たちにも楽しい授業となったようだ。
「うーん、先生って言うにはちょっと若すぎるかも‥‥ま、いいや♪」
最年少の先生はファム・イーリー(ea5684)だ。
「ということで、あたしは、音楽とか歌を教えちゃいまぁっす!! みんなは音楽とか好きかな?」
「好きー!!」
「それじゃあ、皆にはマジカルシードらしくメロディーの魔法を体験していただきまっしょう! みんなメロディーって魔法は知ってるかな〜?」
「知ってるー」「知らないー」
いつにも増して賑やかな教室には歌声。明るいファムはシフールの竪琴をかき鳴らし自作の歌を歌い始めるのだった。
さぁ、今日も楽しい♪ 楽しい♪ お勉強♪
先生ぇの教えてくれることは、面白い♪
先生ぇの教えてくれることは、ためになる♪
みんな、解らないところは、先生ぇに質問だ♪
さぁ、今日も楽しい♪ 楽しい♪ お勉強♪
HEY♪
歌っているうちに皆もあわせて歌いだし、他の授業の時に口ずさむ生徒も居る始末。
この歌のおかげでなにやら勉強嫌いの子も勉強を一生懸命していたとか‥‥メロディーの効果恐るべしである。
「以上、ファムちゃんでしたぁ!!」
割れんばかりの拍手に送られて去っていくファム。意外に先生にもむいているのかもしれない。
「皆には馬について勉強してもらいます。ウィザードとは言え、馬のお世話になるかもしれませんからね」
全員を馬場に集めて授業をしているのはマカール・レオーノフ(ea8870)だ。
生徒たちは馬に興味津々の様子。今か今かとわくわくしているのが良くわかる。
「まず最初は馬と仲良くなって見ましょう、はい餌をあげたい人はあげてみましょうね」
「はーい! 餌あげたいー!!」
わーっと集まる子どもたちを誘導して、ちょっとずつ干草をあげたり、塩を舐めさせたり。
「こらこら、後ろに回ると危ないよ。イーニーは大人しいけど、馬の足の力は強いんだからね!」
尻尾に悪戯しようとしたちびっこを叱るマカール。馬に関して教えるのもしっかりわすれない。
「いいですか、決して馬を驚かせたり怒らせたりしないように。馬が人に従い、人を乗せるのは『人は馬に酷い事をしない、馬にとっての友』という信頼関係が出来ているからなのですよ」
イーニーと一緒に立ち、座っている子どもたちを教えるマカール。
「それでは、イーニーにお願いして、乗せてもらいましょうか。ちゃんとイーニーを信頼しないといけませんからね」
ボクもボクもとせがむ子どもたちと一緒に馬の背に乗って、馬場をぐるりと回るマカール。子どもたちも始めての経験がよほど楽しかったのか、何度も何度も乗せてとせがむようになるのだった。
「思ったとおりですけど‥‥やっぱり一番喜ばれますね。もうひと頑張りしましょうか‥‥ありがとうイーニー」
時間が足りなく、授業の合間を見つけて馬場に訪れる生徒たちの相手をしつつ、愛馬を労うマカールであった。
●異国から来た先輩の話
「それじゃあ‥‥私は話をしよう。異国‥‥ジャパンの話を」
生徒たちを前に自らの体験を語るのはファラ・ルシェイメア(ea4112)。訥々と自らの思い出を綴る。
「村を襲う山鬼に、遺跡の奥深くに眠る埴輪の群。地の魔法を操る大蛇に、自在に空を舞う巨大蟷螂なんてのもいたっけ」
まだ見ぬ異国の冒険譚を聞き、生徒の誰しもが瞳を輝かせてファラの話に聞き入る。
「鬼というのはジャパンに居るモンスターでね。こう額に角が生えていて体の色が‥‥ああ、森の木々を自由に飛び回り足場にする巨大な蟷螂には深くにも一撃を喰らってしまったこともあったね‥‥」
モンスターの特徴を織り交ぜて語られる真に迫る物語。息を飲んで聞き入る子どもたち。
「君たちがウィザードを目指すかはわからない。真理の探究に日々費やすかもしれないし、危険な冒険に好んで挑むことになるかもしれない。僕の場合は、どうやら後者に近いようだけどね」
あくまでも無表情に淡々と語るファラ。しかしまだ幼い生徒たちすらもしっかりと話を聞いているのは、ファラの言葉の真摯さを感じたからだろうか。
「君たちは小さいから、まだ強敵と戦うなんて機会は無さそうだけど、もしかしたら戦場に立つ日が来るかもしれない」
生徒たちをぐるりと見回して続けるファラ。
「何にせよ、目標は持った方がいい。人でも夢でもいい。目指すものがあれば、人は、限界を超える力を発揮するものだからね。それに君たちの場合、目指す人には事欠かないだろう? この学校には、目標にするべき先生たちがたくさんいるからね」
そういって授業を終えたファラ。生徒たちの心にはその言葉がしっかりと残ったことだろう。
‥‥もしかするとファラのことを目標にする生徒がいるかもしれない。
●優しさの魔法
「ソフィアせんせー、今日はなにするのー?」
生徒たちの元気な声にこたえるのは、ソフィア・ファーリーフ(ea3972)。
「今日はね、あるところに行こうと思ってるの‥‥ねぇみんな、みんなは、病気になった時ってどんな気持ち?」
つらいー、かなしいーと答える生徒たちを見つめるソフィアの目は何処までも優しさに溢れている。
「それじゃ、キールくん。今君たちの本当の先生はどうしてるか知ってるかな?」
「いませんせーは、びょうきでねてるのー」
「そうだね‥‥じゃぁ、きっと先生も辛かったり悲しかったりするんだよ」
はっと顔を上げる生徒たちに優しく微笑みかけるソフィア先生。
「それじゃみんなは、病気になって、寂しかったり辛かったり悲しかったりする時に、どんな事があると嬉しかったかな」
がやがやと話し始める生徒たち。その中で手をあげている小さな女の子が。
ソフィアは生徒の名前を覚える努力をしたので、その生徒の名前がすぐに分かった。
「じゃぁ、エレノアさん。どんなことがあったときかな?」
「えっとね、おともだちがおみまいにきてくれたときがうれしかったの‥‥」
「うん、それじゃあ私たちも先生のお見舞いに行きましょうか。病気に負けないでー、って元気を分けてあげましょう♪」
そうしてソフィアは生徒たちを連れて先生の家へと向かうのであった。
「皆でそれぞれ花を摘んで行きましょう。あんまり沢山とってもいけませんよー」
道中で花を摘む生徒たち。暖かくなってきたケンブリッジに咲く草花で思い思いの花束を作る。
「あら、その花の冠は綺麗ね。そんなのを作れるなんてすごいわね♪」
生徒を褒めながら先生の家へとやってくるのだった。
「じゃ、皆で先生に挨拶をしましょうね。元気になって欲しい気持ちを素直に伝えるんですよ」
ソフィアの声に気づいて、ひょっこりと寝室の窓から顔を出す本当の先生に対して生徒たちが言う。
早く元気になってね、先生のこと待ってるからね、病気が早く良くなるといいね。
思い思いの言葉と一緒に窓べに摘んだ草花を置いていく生徒たち。
そんな生徒たちに礼を述べ、目に涙を浮かべた先生は深々とソフィアに頭を下げるのだった。
「早くよくなりますように、ってみんなの想いを伝える事が、元気を分け与えるまほうなのですよ」
子どもたちはきっと立派な『まほうつかい』になることだろう。