弟子募集?!

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月31日〜04月05日

リプレイ公開日:2005年04月07日

●オープニング

 マジカルシードのとある部屋。ご存知アラン・スネイブル先生の研究室である。
「‥‥ふむ、忙しい‥‥」
 表情には出ていないが、なにやらいろいろ忙しいご様子。
「資料の整理に、部屋の整頓‥‥ふむ、雑用係が必要だな‥‥」
 アラン先生なにやら決意したご様子。すっと立ち上がると、ギルドへと向かって行ったそうだとか。
 ‥‥あ、足がぶつかった棚から干してある薬草がどさっと‥‥(ほこりがもわっと)

「あ、アラン先生おはようございます。今日はどんな依頼ですか?」
「‥‥雑用、いや‥‥いろいろと手伝ってくれる弟子を募集することにした」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥え?」
 受付のお嬢さん、あまりに予想外の言葉にしばし茫然自失である。
 あの生徒苛めが好きなアラン先生が弟子? ありえません。きっと雑用係にするに違いありません(正解)
「‥‥その驚きは一体どういう意味かね?」
「‥‥ああ、失礼いたしました‥‥あまりにも意外で」
「意外とは一体‥‥」
「それはそうと、一体どういうお弟子さんを募集するんですか?」
 アラン先生の言葉を遮って言う受付。意外に豪胆である。
「仕事内容は我輩の研究の手伝いに、資料整理‥‥薬草園の管理もしてもらわねばな」
 指折り数え始めるアラン先生。
「時折写本や口述筆記‥‥古代魔法語の解読もしてもらうことがあるかもしれん」
 言いながらどんどん仕事を思い出している様子のアラン先生。どうやらハードな弟子生活になりそうである。
「研究室の掃除に整理整頓‥‥ふむ、役に立つ生徒が来ればいいのだがな」
「そうですか、では弟子募集の張り紙を?」
「いや、少し見極めてから弟子を取ることにしよう‥‥働きぶりで弟子にするか決めるのだ」
「では、お試し期間ということで」
「‥‥‥‥優秀な生徒が来ることを願っているぞ」

 さて、どうする? 

●今回の参加者

 ea2253 黄 安成(34歳・♂・僧兵・人間・華仙教大国)
 ea8367 キラ・リスティス(25歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea8785 エルンスト・ヴェディゲン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ea9854 淋 慧璃(33歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb0299 シャルディ・ラズネルグ(40歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●まずは‥‥勘違い?
「あたいはオーラを学びに弟子になろうと思ってきたんだが」
 開口一番アラン先生にそういったのは淋慧璃(ea9854)。
「‥‥確か、ミス・淋と言ったかな。君は我輩を何の先生だと思ってるのかね?」
 苦々しげに答えるアラン先生。魔法全般の知識があるとは言え、アラン先生は地の精霊魔法を得意とするウィザードだ。
 さすがにオーラを教えることは出来ないのである。
「‥‥魔法の先生じゃないのか?」
「それはそうだが、我輩はウィザード‥‥教えるのはあくまでも精霊魔法と学問知識だ。君に必要なオーラの知識は教えることが出来ないことぐらい分かっていないのかね?」
 皮肉な調子で言うアラン先生。きょとんとする慧璃。
「じゃ、じゃああたいが修得したいオーラエリベイションとかは‥‥」
「もちろん教えることが出来ん。‥‥あきらめるんだな」
 そっけなく言われて、さすがに豪胆な性格の彼女も慌てた模様。詰め寄って問い詰めようとするが‥‥。
 以前慧璃が課外授業の中で狂化したことをもちろん覚えていたアラン先生、詰め寄ってきた慧璃に一言。
「‥‥サイコキネシス。少し頭を冷やすことだ」
 ぷかぷかと慧璃を空中に浮かしたままにして、自身の研究室に入るアラン先生。
 そして慧璃はがっかりしながら一人呟く。
「結局、あたいは何しに来たんだろう?」
 彼女にもぴったりな師匠がきっとそのうち見つかる‥‥かもしれない。

●とりあえずお掃除
 残る弟子候補は3人。とりあえずアラン先生から仰せつかった最初の仕事は掃除である。ちなみにアラン先生は不在だ。
「それでは‥‥私は薬草の整理整頓を行いましょうか。植物の知識ならありますからね」
 シャルディ・ラズネルグ(eb0299)が言う。そこかしこに吊るされ棚を埋めている干した薬草の束を見て仕分けしていく。
「それじゃ俺は、乳鉢やら器具の整理をしよう。錬金術をかじってるし、ちょっとなら分かるからな」
 エルンスト・ヴェディゲン(ea8785)ががたがたと薬草用の鍋を片づけをはじめる。
「私はまず資料の整理をしますね。たしかお引越しのときも整理しましたし、勝手が分かりますので」
 乱雑に散らかった写本や羊皮紙を集めるのはキラ・リスティス(ea8367)。幾度か足を運んだ研究室であるアラン先生の私室で手際よく作業していくのであった。
「シャルディさん、ここの資料そこの棚に入れるのでこの干した薬草の束お願いしてよろしいでしょうか?」
「いいですよキラさん♪ これは‥‥ローズマリーですね。こっちにかけておきましょう」
 シャルディに薬草の束を渡すキラ。埃を払いながら棚を綺麗に片づける。
「ここに入ってたこの写本そっちにうつすぞ。ここは器具入れるから、ちょっと持っててくれ」
「はい、わかりましたヴェディゲンさん‥‥えっと、これは薬草関連ですから、ここに入れますね」
 棚をふさいでた山積みの写本をキラに渡すエルンスト。こうして片づけは進んでいく。

「いい機会ですし、床もしっかりお掃除しましょう」
 そういってブラシと水桶を持ってきたのはキラである。あれだけ荒れ果てていた教室も大分片付いてきているようだ。
 床にあるものをどけて、とりあえずごしごし。みんなで雑巾がけである。
 ごしごし。ごしごし。ごしごし。棚の下から出てきたかぴかぴの薬草を片づけつつごしごし。
「‥‥それじゃ、最後に纏めて流しましょう」
「スクロールですか? なにか魔法をつかうのですか‥‥」
「はい、ウォーターコントロールのスクロールで床を濯いでみようかと思いまして」
「ふむ、それは面白い‥‥俺にもスクロールを貸してくれるか?」
 そして、キラとエルンストがウォーターコントロールを使用し、水桶からもにもにと水の塊が持ち上がる。
 もにもに。粘土細工のように床を転がる水の塊。もにもにもにもに。細かい塵やゴミを巻き込みながらうごめく塊。
「‥‥なんだか不思議な光景ですねぇ」
 シャルディの感想は最もである。
 とにかく、そんなこんなで掃除は終わり、いよいよ弟子としての仕事が始まるのだった。

●弟子として‥‥
「ミスター・ヴェディゲン、ここのセイボリーを精油しておいてくれ」
「はい、アラン先生。器具はここのを使っていいですか?」
 エルンストがやっているのはハーブを精製してオイルを作る作業を手伝っている。錬金術を学ぶエルンストが最も向いていたのだろう。
「薬草は利用の仕方‥‥干したり煎じたり精油することで薬効が変わるのですか?」
 錬金術に関係することに興味があるようで、いろいろと聞いている様子。アラン先生も作業の手を休めずに時折説明もしているようだ。
「精油することで薬効を増す薬草も多く、セイボリーの場合食欲がない者に希釈したものを飲ませるのが‥‥」
 聞いたことを自分が羊皮紙に書き込むエルンスト。しかしアラン先生は容赦ない。
「自分の勉強をするのも良いが、我輩が言ったことをしっかりこなしてからにして欲しいものだな‥‥次はこっちの葉をすりつぶしておいてくれ」
「はい‥‥っ、容器は‥‥」
「葉はそこの蓋付き容器に入れる。茎もしっかり束ねて縛る。乳鉢はそこのだ‥‥」
「は、はい! ‥‥‥つ、次は何を‥‥」
「ここの束をまとめて精油だ。気をつけたまえ、ヘンルーダは効能が強いから直接肌につくと肌を痛めることもあるからな‥‥」
 こうしてこき使われるエルンストだった。
 しかしどうやらマジカルシードの生徒でもないエルンストにはあまり強く言えない様子。
 はてさて、弟子探しはどうなることやら。

「植物の相手は得意ですし、森へ薬草を取りに行くことも出来ますよ♪」
「ふむ、そのときは頼むとしよう。とりあえず今はタネを撒いてもらおうか‥‥そのタネはこっちだ」
 薬草園にてアラン先生からいろいろと指示されているのはシャルディだ。
 植物知識を持ち、アラン先生と同じ地のウィザードでもあるシャルディはまさしく適任だろう。
「いいかミスター・ラズネルグ、スィートバイオレットはさまざまな用途に使えるから、常に切らさないようにするのだ。栽培時の肥料は多めで‥‥的確な間隔が開くように‥‥」
「隣接する区画はあけておくのですか?」
「小型のハーブであるうえに、花も見栄えがする‥‥大型のハーブの根元に植えるのも一つの手なのだ」
「はい‥‥では、こちらは?」
「そっちは、アニスを撒く予定だ‥‥夏に実の収穫を考えるなら春から栽培を始めなければいけない」
「はい‥‥株分けではなく直播で?」
「しっかりと覚えておくのだな。アニスは移植を嫌うハーブだ。直播が適している‥‥それに種を撒く前に石灰を撒いておけ。土壌の管理も植物の管理には欠かせないのだ‥‥二度とは言わんぞ」
「‥‥わかりました。あとは任せてください」
「それだけではない。今日は来週植える予定の箇所に肥料のすき込みをしてもらうからな。一人でも問題はあるまいな?」
「‥‥な、なんとか頑張ります‥‥」
 やはり容赦ないアラン先生であった。

「‥‥そこで改行だ。次『プラントコントロール使用時における植物の差異による効果の違い』‥‥」
「‥‥‥は、はい。次よろしくお願いいたします」
 羊皮紙に羽ペンとインクで丁寧に文字を口述筆記しているのはキラである。
「‥‥遅い。もう少し早く書けんのかね? ‥‥まあいい。次だ‥‥『他者への付与魔法使用時における対象が及ぼす影響』ここで改行‥‥」
 マジカルシード内では実力はあるもののその性格ゆえに苦手とする生徒が多いアラン先生。
 その先生を敬愛しているというキラは非常に珍しい生徒だと言えよう。
 しかし、その熱意は本物、どうにかしてアラン先生の役に立つように努力を欠かさないようだ。
「ミス・リスティス、次はここに纏めた古代魔法語の訳文のチェックをしておいてくれ‥‥明日までに終わらせておくように」
 たとえまだ年若い生徒とは言え容赦ないアラン先生。どさっと羊皮紙の束を置くと、さっさと自分の仕事に戻ってしまう。
 しばしぼーっと書き物をしているアラン先生を眺めるキラ。しばらくしてはっと思い出したかのように、いそいそと仕事に戻る。
「‥‥一番年下ですけれど、できることは何でも精一杯やりませんと‥‥」
 アラン先生にもその熱意はしっかり伝わってるに違いないだろう。

●弟子は‥‥
「キラさん、そっちの写本を取っていただけますか?」
「ええっと、これでよろしいですか?」
「はい、ありがとうございます‥‥えっと、薬草学の資料は‥‥」
「ああ、こっちだ。今精製方法のところだけ写してるからちょっと待ってくれ」
 空き時間にそれぞれ思い思いの勉強をする3人の弟子候補。そこにアラン先生がやってくる。
「ふむ、揃っているようだな‥‥とりあえず依頼は今日で終りだ」
 そっけなくいうアラン先生。ちなみに研究室は綺麗に片付いている。
「‥‥まぁ、弟子なんぞ我輩には必要ないのだがな、役に立たなかったとは言い切れなくも無いだろう‥‥」
 そういうと緊張しながら言葉を待つ3人へと続ける。
「‥‥ミスターヴェディゲン。君はマジカルシードの生徒では無いし、我輩とは違う分野を専門としている。残念ながら、弟子には向かないだろう‥‥資料の貸し出しぐらいなら融通しないではないが」
 ちょっとがっかりした様子のエルンスト。それに対してアラン先生はエルンストにより向いているであろう他の先生の話などを伝え、教室から送り出す。
 そして、残る2人の生徒を向いてしばし沈黙。息を飲んで見守るキラとシャルディ。
「‥‥‥‥ミスター・ラズネルグとミス・リスティスは、明日からも来るように。仕事は幾らでもあるのだ‥‥未熟者でも手は多いほうが良いようだ」
 どうやら、アラン先生は弟子を無事見つけるにいたったようだ。
 ‥‥‥‥ちなみにその日もキラとシャルディは山のような仕事をやらされたとか。
 このような過酷な弟子生活を乗り越えれば、立派なウィザードが生まれるに違いないだろう。