【入学式】 目指す先は‥‥

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月19日〜04月24日

リプレイ公開日:2005年04月28日

●オープニング

「我輩が‥‥パーティなんかを企画するかと思うかね?」
 春の陽気もなんのその陰気なローブに鋭い眼光。アラン先生その人である。
「なにやら、妙に傲岸不遜な騎士から誘いの声をかけられた覚えがあるが‥‥まぁいい」
 そういって、受付に言う。
「すでに新入生のうち何人かを受け持った覚えもあるが‥‥せっかくの機会だ。それぞれの目指す高みを聞かせてもらいたい」
「目指す高み‥‥ですか?」
「魔術師たるもの高い目標無くば、成長も見込めないだろう。それにはっきりした将来像が無いとなかなかに難しいものだ」
「はぁ‥‥将来像ですか‥‥」
「ふん、どんな魔法を中心にして修得し、それを軸にどのような戦い方を考えてるかとか、長期的な成長目標だ。そんなことも分からないのかね?」
「今分かりました♪ ‥‥それで、将来像を語るだけですか?」
「‥‥いい機会であるし、新入生の皆から希望があれば、生徒諸君が目指す高みに近いウィザードの実力を見せるのも良いかもしれないがな‥‥」
「‥‥(暫く考えて)‥‥えっ? 先生がデモンストレーションしてくれるってことですか?!」
「何をそんなに驚いている‥‥我輩とて戦闘を得意とするウィザードだ。実力を見せることぐらい悪くはあるまい?」
 ごほんと咳払いをして言うアラン先生。
「それにウィザードだけではなく、他の職業でも将来像ぐらいあるだろう?」
「そりゃまぁ‥‥私は、これでも一応バードでして、将来は‥‥」
「ともかく計画は大事である。それぞれの目標を聞かせてもらおう」
 遮られて寂しそうな受付を放っておいて、お知らせをさらさらと羊皮紙に書き込むアラン先生。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea7218 バルタザール・アルビレオ(18歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea7234 レテ・ルシェイメア(23歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea7393 イオン・アギト(28歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea8367 キラ・リスティス(25歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea8877 エレナ・レイシス(17歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea9520 エリス・フェールディン(34歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●まずは準備を
「敬愛する先生の生徒としても弟子としても、お手伝い頑張ります!」
 いそいそと会場の準備をするのはキラ・リスティス(ea8367)だ。
 場所は外。机を運んで台を運んで、一人でくるくると働いている。
 隣をふよふよと飛んでいく重い机。アラン先生もとりあえずサイコキネシスでこっそり手伝っているようだ。
「あ、先生わざわざありがとうございます!」
「ふん、我輩は仕事が遅いから仕方なく手を貸しているだけだ‥‥早くしないと時間が無いぞ」
 そこに手伝いに来た人影は細身の女性。
「はじめまして、アラン先生」
 たおやかにぺこりとお辞儀したのはレテ・ルシェイメア(ea7234)。
「ふむ‥‥確かミスタ・ルシェイメアの妹であったかな?」
「ええ、レテ・ルシェイメアと申します。ファラと似ていますからやはり分かりますか?」
「確かに似ているな‥‥だが、無駄話は働いてからにするんだな」
 すっぱり容赦ないアラン先生であった。
「ところで、お茶とお菓子代はどうしたら‥‥まとめていったい幾らかかるでしょうか‥‥」
 自分のお財布を眺めてちょっと困っているキラ。その横でやはりお財布を眺めて途方にくれるレテ。
「私も旅費でお財布がすっからかんですね‥‥竪琴代もありません‥‥」
「む‥‥諸君たちはそのようなこと心配せんでもよい。すでに簡単な飲み物程度なら手配してある。とっとと取ってくるのだな」
 なんと意外に気の利くアラン先生であった。

「講演中に喉が渇くといけませんし、台の上には水差しと杯を置いておきますね」
 会場の用意も整い、準備万端。天気は快晴で非常に気持ちのいい午後である。
 徐々に出席者は講演したい者、それに話を聞きつけて講演を聞きに来たものが集まる。
 そしていよいよ講演の開始である。

●講演は‥‥
「1番、バルタザール。目指すはやっぱり戦闘型セージです!」
 台の上で勢い込んで話し始めたのはバルタザール・アルビレオ(ea7218)だ。
 講演と言っても小さな規模で、台の近くには先輩に同級生が集い、興味津々と次の言葉を待っている。
「最終目標のセージになるために火の精霊魔法をはじめ、今はひたすら修行の日々!」
 うんうんと頷く生徒一同。
「土ならグリーンワード、ウォールホールにアグラベイション‥‥風ならサイレンスにブレスセンサーに‥‥」
 指折り数えるは修得予定の魔法だ。
「探査系はいくつかあると使い易いし‥‥」
 いやあっちの魔法の方が使いやすい、いやこちらだとの生徒の声を無視して講演は続く。
「戦い方としてはウォールホールで落とし穴をつくって、穴の中にファイヤーボム。落差のダメージも狙えます!」
 ごくっと水を飲んでさらに続ける。
「重戦士対策にはアグラベイションのあとにアイスコフィンで動きを止める。決まればきっとどんな相手でも行動不能です!」
 ‥‥言うだけ言った達成感をバルタザールは感じたとか。
「‥‥(ぜえぜえ)‥‥以上です」
 息を切らせる疲れているバルタザール。ぱちぱちと拍手喝さいである。

 二番手は小柄な女性ウィザードが。イオン・アギト(ea7393)である。
「ボクの目指す高み‥‥一つの魔法を極めること。以上」
 一瞬で講演が終わった‥‥わけではないようである。他のバリエーションを覚える気はないのかーとの野次の声に反応するイオン。
「確かに、他の魔法も魅力的だし、有効だって事は今まででよ〜く分かってるよ」
 とても真剣な顔で言うイオン。その迫力に並み居る生徒たちも自らの目標を噛み締めるかのように静まる。
「まあ、冒険者としては3流の考えだから冒険者じゃなくて、ここで学生やってるんだ。以前受けた依頼じゃ、賞金首にかすり傷すら与えられなかったし、それで結局相手を逃がしちゃったしね‥‥」
 しかし、誰もが一つの力を極めたウィザードの強力さを知っている。ここは学園都市ケンブリッジなのだ。
 イオンに対しても暖かい拍手が起こったのであった。

「これは、錬金術の素晴らしさを伝えるのによい機会です」
 きりっと決意して講演に臨むはエリス・フェールディン(ea9520)。今回も錬金術のためにやってきたようである。
「魔法は確かに便利ですが、それだけのものです。錬金術で自然の定理を学ぶ事により、魔法は生まれ変わると私は考えます。錬金術は誰にでも使える力です。皆さんも錬金術を学びましょう」
 一部熱烈な拍手はあるもののなんとなく胡散臭そうな視線を浴びるエリス。しかし錬金術の偉大さを告げる講演はまだまだ続く。
 しかし、魔法がれっきとして存在する世界において錬金術は異端の学問。ちょっとした言葉が惨劇の引き金に‥‥。
「でも、錬金術なんかに頼らないで魔法をつかったほうが‥‥」
「(ざわざわ髪を逆立てて、紅の瞳で反論者を睥睨)‥‥わたくしに意見するなど、百年はやいですわ。お〜ほっほっほ!!」
 ぷっちりと切れた。そして、飛び交う銅のゴブレット(主にサイコキネシスで)。
「わ〜! 落ち着け落ち着け〜!」
「百万年早いですわ〜」
 止めるのはハーフエルフに好意的なイオンだが、とまらないエリス。さりげなく年数増えてるし。
 そして、暫くして。
「ハーフエルフの方に悪い印象を与えてしまいました」
 反省している模様のエリスであった。繰り返さないように努力した方がいいかもしれない。

●ウィザードの力
「アラン先生の魔法、是非みたいです。私が習得している月の魔法とは趣が違うものとは思いますが、同じく魔法の技を修めている者として、興味がありますし」
 レテがそういえば、イオンも賛同する。
「そうそう、自分より高位の魔法って、見てみたいじゃない」
 そしてもちろんキラは大賛成である。
「是非見て見たいと思っていたのです。見せていただけませんか?」
 他の生徒たちからも期待の視線を浴びて、アラン先生もしぶしぶ頷くのであった。
「諸君らの目標とする境地が何処であるかは知らぬが、高度な魔法技術を見るのも刺激にはなるかもしれないしな‥‥」
 そういうとちょっと離れたところに立ち‥‥高速詠唱での呪文の行使!
「ストーンウォール‥‥」
 数歩離れたところに出現する巨大な石の壁。高さも幅もおよそ3メートルはあるだろう。
 そして、そのまま後ろ向きにてくてくと下がるアラン先生。足を止めると二つ目の魔法の詠唱に入る。
「‥‥グラビティーキャノン‥‥」
 通常詠唱による攻撃呪文。するとその魔法の軌道上にあるストーンウォールが一撃で粉砕される!
 そして、そのまま一瞬にして重力の波は芝生におよそ100メートルにわたってくっきりと後を残す。
 高い威力に静まり返る一同。これ以上の強力な魔法の力を見たことある者は殆ど居ないのであった。
「‥‥諸君も努力をするのだな」
 何事もなかったかのようなアラン先生。はっと気付いたようにキラが拍手をすると、一同も拍手をするのだった。

●そして歓談
「私の場合は‥‥人の足手纏いにならないよう自分の身を守れるウィザードですね」
 武術の腕を磨く変り種のウィザードのキラははそんな決意を秘めていた。
「精霊魔法と古代魔法語を専修にし、いつか遺跡探索出来るだけの実力を身に付けたいですからね」
「そうなのですか‥‥私は火を中心に攻撃系の精霊魔法を覚えて、さらに神聖魔法も覚えてセージになるのが目標ですね」
 エレナ・レイシス(ea8877)が言う。大きな夢だが、他のウィザードの卵たちもうんうんと頷くのであった。
「私は、まだはっきりとは‥‥決まってないのですけど、全ての月魔法を達人レベルで使いこなせれば、とは思っていますね」
 にっこりと微笑を浮かべて言うのはレテ。
「兄のファラのように明確な目標が無いのが、私の成長が遅い要因かもしれませんね」
 悩みは人様々であるようだ。

「ミス・リスティス。今日も多少の息抜きになっただろうから、この前の課題はちゃんと期日までに提出するようにな」
「は、はい! ‥‥うう、また徹夜かもしれません‥‥」
 ある者は師を得てその元で研鑽を積み。
「様々な系統の魔法が使えるといろいろ役に立ちそうですよね、アルビレオさん」
「そうですね、同じくセージを目指すものとして頑張りましょうね、レイシスさん」
 ある者は大きな夢を叶えるために日々の努力を重ね。
「錬金術も必要な学問なのですが、誰もわかってもらえません‥‥」
「大丈夫ですよエリスさん、一つの道を究めればきっと先が開けると思いますよ」
「ありがとうございます、アギトさん」
 ある者は様々な障害を乗り越え成長し。
「早く入学して頑張りたいものですね」
 レテのように学園の門を新たに叩く者もいる。
 ケンブリッジでの彼らの未来は、辛く苦しくもきっと実り多いものになることであろう。