本を探して教室探索?!

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:2〜6lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 36 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月29日〜05月04日

リプレイ公開日:2005年05月10日

●オープニング

「マジカルシードの上の階のことってご存知ですか?」
 ギルドの受付に対して問いかけているのは、図書館の司書を務めるブックス女史だ。
「ああ、あの謎が多いって言うところですか‥‥いいえ、全く知らないです。ちょっと興味ありますけど」
「そうなんですよね。噂ばっかりで何があるか分からないんですけど‥‥実はちょっとその上層部にいってもらいたいんです」

 ケンブリッジ魔法学校・マジカルシードの校舎は10階建てである。
 そのうちで教室は5階まで。6階から上は図書館や治療室などの施設が設けられているのだ。
 しかも8階以上の階層は過度な造形建築のあまり幻の校舎と化している。
 どうやら今回の依頼はそのどこかに行ってもらうといったものらしい。

「行ってほしいのは7階のとある特別研究室です。実はこの部屋の持ち主がまだ本を返していないのです」
「‥‥やっぱり本ですか。どんな本ですか?」
「取ってきてほしい本は、ジェル状の生物についての本ですわ‥‥とりあえずその本を回収してきてください」
「なるほど‥‥(羊皮紙に書きつつ)‥‥それでどなたがその特別研究室の持ち主なのです?」
「それが‥‥3年ほど前に亡くなった人間のウィザードでフィーリウス先生というモンスターの研究者のようです」
「‥‥え、もう亡くなってるんですか?」
「はい、なので部屋の中にあるのもは勝手に回収して良いそうです。許可は貰いましたので報酬に足すという形で」
 そういうとブックス女史は一枚の羊皮紙を取り出す。
「一応その部屋の場所と部屋の見取り図が見つかりましたので、これも差し上げます」
 ‥‥今回はおとなしいぞ、ブックス女史‥‥
「‥‥永きに渡って行方不明になっていたなんて‥‥‥ああ、なんて可哀想なのかしら‥‥」
 ゆらりと顔を起こすブックス女子。陰々としたオーラを感じ取ったのか受付さんもびびり気味。
「一刻も早く持ち帰ってきてください!!」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea3974 ユフィ・コーネリア(31歳・♀・レンジャー・人間・ロシア王国)
 ea5381 ミア・フラット(32歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea7218 バルタザール・アルビレオ(18歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea8785 エルンスト・ヴェディゲン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 ea9520 エリス・フェールディン(34歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0299 シャルディ・ラズネルグ(40歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb1355 アリア・シャングリフォン(23歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb1915 御門 魔諭羅(28歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●なぜか大掃除
「物置代わりになっていると言う事は、部屋を使われていた方が無くなってからは実質的に放置されている状態のようですね。なら、一緒に大掃除もしてしまいましょうか」
 ミア・フラット(ea5381)がそういいながら、ぐるりと部屋を見回す。
 生業のせいかはたまた生来の綺麗好きか‥‥ともかく気合十分である。
「‥‥まぁ、これは研究者の業、でしょうね。片付けるだけ片付けてしまいましょう、うん」
 苦笑を浮かべながらバルタザール・アルビレオ(ea7218)が言う。
 どうやら彼も覚えがあるようで‥‥もしかすると片づけが下手なのは伝統なのかもしれない。
「当の教室でなくなったわけではないから‥‥危険はないと思うがな。取り合えず気をつけるに越したことはないな」
 非常に現実的なことを言っているのはエルンスト・ヴェディゲン(ea8785)である。
 とりあえず皆で手分けして、奥のほうへと進むために入り口から片付け開始である。
「それにしても、ジェル状の生物ですか、錬金術とはあまり関係なさそうです」
 ケンブリッジでは知る人ぞ知る錬金術の教師、エリス・フェールディン(ea9520)がそう呟く。
 やはり今回も錬金術がらみのアイテムを探しているようだが‥‥なかなか望みは薄そうだ。
「うーん、全てが終わったらアラン先生に報告に行きましょうか♪ 何かあるかもしれませんしね」
 そういいながら入り口付近にある木箱をごそごそ整理しているのはシャルディ・ラズネルグ(eb0299)。
 ずぼっと取り出したのは虫食いだらけのマント‥‥見なかったことにして、持参の麻袋に丸めて捨てるのであった。
「はぁ‥‥、今回は人間の男性の方が居ませんので、萎縮する心配はなさそうです‥‥」
 呟きながら部屋に踏み入るのはアリア・シャングリフォン(eb1355)だ。
 確かにケンブリッジでは人間以外の生徒も多いが、教師が人間の男性だったりしたらどうするのだろうか?
 しかし、とりあえず今回はのんびりと作業が出来る心持のようである。
「“ジェル状の生物についての本”ですか? どの様な表題が着いているのでしょう?」
 まだ少しぎこちないイギリス語で問いかけるのは 御門魔諭羅(eb1915)である。
 アリアと一緒に本棚をごそごそ片付ける魔輸羅、なかなか勉強熱心なようで手に取る写本などの文字をしげしげと眺めているのだった。

●宝探しと整理整頓‥‥
 そして、やっぱり片づけをしながら、お目当てのものが無いかを探す一同である。
「刺繍入りローブがあるといいんですけどねぇ‥‥ああ、そういえばサイコキネシスを活用できそうですね」
 ごそごそ探しながらはたと気付いたシャルディである。
 木箱をぱかり。ごそごそと中身を漁ると、虫食いの衣類に、いつのものとも知れないドロドロの毛布などが出現。
「‥‥‥‥これはゴミと‥‥これもゴミ‥‥これももちろんゴミ‥‥う‥‥捨て捨てと‥‥」
 ばっちいモノを運ぶのにもサイコキネシスを活用するシャルディ。ゴミ用の麻袋ばかりがパンパンになるのであった。
「うーん、なかなかいいものはないですね‥‥」
 そんなこといいつつも、木箱をぴかぴかに綺麗にするシャルディ。意外にマメな性格なのであった。
「リーフグリーン色のローブとかありませんかねえ‥‥ん? ‥‥リーフグリーン色の穴開きマントは‥‥ゴミですねぇ」
 ぽいぽいゴミが増えていく。しかし何処となく片付けるシャルディは楽しそうであった。
「‥‥♪〜‥‥♪♪〜‥‥」
 鼻歌を歌いつつ作業するシャルディ。とりあえず本人はあまり苦痛でないようである。

「3年以上も行方不明の本ですか‥‥、無事な状態で見つかるといいのですけど」
「そうですね‥‥とりあえず整理しながら探しましょう」
 ミアとバルタザールは部屋の奥の机周辺を片付け中であった。
「とりあえず、ここにまとめて行きましょうか‥‥」
 バルタザールは何枚か板を持参して、その上にひょいひょいと机周辺の雑多なものを乗せていく。
 しかしやっぱり殆どがゴミばかり。
「‥‥フレイムエリベイション‥‥」
 こっそり魔法で強化するバルタザール。こういう光景も魔法学校の生徒ならであるといえよう。
「ジェル状の生物の本‥‥ぱっと見ただけで分るのでしょうか? どちらにしても、イギリス語で書かれていないと私にはお手上げですね」
「たしか、ブックス女史に聞いたところイギリス語の本っていってましたから大丈夫だと思いますが‥‥」
 ひょいひょい分別する2人。ときおり指輪などが見つかったりするもどれもこれもガラクタである。
「それにしても‥‥この誇りだと喉を痛めそうですね‥‥」
「そうですね‥‥掃除も大変です」
「あとで、飲み物でも調達しませんと‥‥」
 こうしてのんびり片付けは続くのであった。

「あ‥‥やっぱりリヴィールマジックには何も反応しませんね‥‥良いスクロールはないのでしょうか‥‥」
 じーっと本棚周辺を見つめながら言うアリア。はぁっとため息のおまけつきである。
「それは残念ですね‥‥選択の幅を広げるためにも、別系統の物があればと思ったのですが」
 魔輸羅も残念そうに答える。こちらはおっとりと頬に手を当てて、小首をかしげている。
 しかしそれもそのはず、スクロールは非常に高価なアイテムであるし、作れるものも少ない希少な道具である。
 魔法学校とはいえ、そうほいほい転がっているわけではないのであった。
「‥‥それにしても、こちらの文字は音しか表さないので少し読み難いです」
「私はイギリス語しかしゃべれないのであまり考えたことはありませんけど、そうなんでしょうか?」
「ええ、私の故郷のジャパンの文字はそれ自体に意味が含まれていまして‥‥」
 そんな会話をしながら、生徒が作った粗末な写本や、書きかけの何かのスクロールや羊皮紙を纏めるアリアと魔輸羅。
 生徒ではないといえ、ケンブリッジに似合った学のある高尚な会話になるのは場所のせいかもしれない。

「一応クレバスセンサーやブレスセンサーにはなにも反応が無いが‥‥」
 ごそごそと右の棚の周辺を片付けながらエルンストが言う。非常に冷静である。
「研究対象であるモンスターを扱う場合もあっただろうしな‥‥気をつけておこう」
「ブックス女史に聞いたところ‥‥以前はジェル系のモンスターを飼っていたこともあるとか‥‥警戒しておきましょう」
 サイコキネシスとバイブレーションセンサーを使いながら言うエリス。
「とりあえず動いてるものはいないようですけど‥‥」
「そうかそれならまだ大丈夫だろうな‥‥しかしこの実験器具は一体なんに使うんだろうか?」
「ああ、それは金属を溶解するための坩堝です。錬金術では良く使いますから」
 エルンストとちょっと距離を置いて話すエリス。別に嫌っているわけじゃなく、エリスがハーフエルフで異性に触れることで狂化するからである。
「しかし、ここにはふるびた武器と金属製の道具ばかりで本は無さそうだな‥‥」
「そうですね‥‥もっと良い実験器具とかがあれば、いただくんですが‥‥ここにあるのは古いものばかりですし」
 ちょびっと話がずれているような気がしないでもないが、とりあえず片付けは続くようであった。

 と、そんなときに、教室の反対側から。
「この本がそうではないですか?」
「あ‥‥そうですね、きっとこの本が探している本だと思いますよ」
 魔輸羅とアリアがどうやら対象の本を見つけたようである。
 一同はやれやれとばかりに片付けの手を止め、笑顔を浮かべたのだったが‥‥。

 どさっ!!
 何かが棚の上から勝手に落ちてくる。
 見た目は大きな金属製の盾‥‥のように見えて、その表面がぐにゃりと大きくうねる!
 そして、ぼろぼろの盾の表面からぼてりと剥がれると床の上で塊をつくる。
「!! そいつはメタリックジェルです!」
 バルタザールの警告の声が戦闘開始を告げると、メタリックジェルは酸を帯びた体の一部をエルンストへと大きく伸ばす!

●意外な先客
「サイコキネシスで動きを止めます‥‥」
 とっさに反応したのはエルンストの近くにいたエリスだ。
 触手の一撃をなんとか回避したエルンストを援護するためにサイコキネシスを詠唱するエリス。
 とっさに一同も魔法を使える面々は詠唱に入る。そして一番最初に攻撃したのは、唯一魔法を使う職業じゃなかったミアだ。
「いきなりでしたね‥‥っ!」
 ちょうど動きを止めたメタリックジェルへとショートボウで矢を放つ。
 見事に突き刺さると思ったが、うまく刺さらずにかすり傷を負わせる程度である。
「あ、あの‥‥私はとりあえず本を持って引きます‥‥」
 偶然もっていたスクロールの種類がわるかったのか、運悪くアリアには攻撃の手段がなかった。
 なので、とっさに本を抱えて、出入り口のほうに移動するアリア。
 そして、メタリックジェルが再び攻撃するのだが‥‥。
 近寄ってきたメタリックジェルが急にのろのろとした動きになり、それをひょいと避けるエリス。
「この力を使うのは不本意なのですが‥‥」
 サイコキネシスの力で、相手の触手の動きを制限したのである。
 そして、さらに追い討ちの攻撃が次々に突き刺さる。
「‥‥ではこれで‥‥ムーンアロー」
 魔輸羅のムーンアローが一直線にメタリックジェルに突き刺さるがこれはかすり傷。
「‥‥全然効いていませんね」
 かすかに歯噛みする魔輸羅。続いてエルンストも魔法を唱える。
「ウインドスラッシュ! ‥‥これでも大して効かないか」
 エルンストの風の刃も、せいぜいかすり傷程度である‥‥メタリックジェルの触手の攻撃はサイコキネシスで制限する限りそうそう当たらないが、このままではこちらも攻め手が無いようである。
 しかし、ケンブリッジの冒険者たちは知略では負けないのであった。
「シャルディさん、これをサイコキネシスで!」
 呼びかけたのはバルタザールだ。見れば近くの大きな金属製の置物が炎を纏っている。
「なるほど、バーニングソードを像にかけたんですか! では、サイコキネシスでっ!」
 シャルディが使うのは専門ランクの強力なサイコキネシス。重さ20kgほどの置物がふわりと浮かび上がると、そのまま一直線にメタリックジェルにぶつかる。
 さすがのメタリックジェルもこれは痛かったのかじたばたと動くのであった。
「‥‥そ、それなら私も」
 アリアもバーニングソードの使い手であり、すぐさま手近な古びた道具入れにバーニングソードをかけると、今度はエリスのサイコキネシスでメタリックジェルにぶつける。
 そうして暫くダメージをあたえると、漸くメタリックジェルも動きを弱め‥‥。
「これで止めです‥‥使いたくないのですが‥‥離れててくださいね! ‥‥ローリンググラビティー!」
 エリスの魔法が効果を発動。するとメタリックジェルがふわりと浮き上がり‥‥天井に激しくたたきつけられたあとに再び地面に落ちてくる!!!
 どんがらごわしゃっーーーん!!
 ‥‥もちろん周囲のアイテムをおもいっきり巻き込んで。
 おかげでメタリックジェルは退治できたのだが‥‥部屋の中は悲惨な状態である。

「‥‥こ、これはだれが片付けるんでしょうね‥‥」
 誰かが呟いたのはきっと一同の本心であった。
 そして、本は無事回収できたが、部屋の片づけをもう一度最初からやり直す一同であった。
 こんな状況では冒険者たちがアイテムを手に入れられたかどうかは定かではない。