●リプレイ本文
●野営中の風景
「ふむ、こういうのも悪くない仕事じゃて」
ぱちぱちとはぜる焚き火を前に、悠々とその白髭を撫でながら言うのは高天原命(eb2222)だ。
今は隊商も一緒に街道わきの開けた場所で野営中である。
「それじゃあ、あとはよろしく頼むよ‥‥さて、私は少し寝させてもらうよ」
「ええ、任せてください。しっかり見張りをしておきますから」
今まで見張りをしていたエクレール・ミストルティン(ea9687)はリチャード・ジョナサン(eb2237)と交代。
「それでは、お先に‥‥」
「ええ、おやすみなさい」
フードを深々とかぶって耳を隠したセレスティ・ネーベルレーテ(ea8880)は、火から大分はなれたところにいたレリア・クローシス(eb1019)に声をかける。
まだ少し肌寒いイギリスの風の中、火のはぜる音が響く。
何の物音も気配もない。特に危険が無いようで、そうすればと雑談に花が咲くのは必定だ。
「‥‥あの、ジョナサンさん。あなたの持っているその短剣を少し見せていただけませんか?」
「ああ、これはダークといって‥‥」
刀剣が好きなレリアにとって、珍しい短剣は注目の的である。
「刀剣は実用出来る芸術品ですよね」
嬉々としてジョナサンのダークを眺めるレリア。キラキラ目を輝かせてたり。
その様をにこにこ眺めているのは命だ。落ち着き払って髭をさすりながら
「ほーっほっほっほ。ジャパンの刀もなかなかいいもんじゃぞ‥‥ふむ、この様子だと明日は晴れそうじゃのう」
ふと空を見上げて呟く命。風を読み天候を読むのである。‥‥彼のジャパン語の呟きは2人には理解できなかったが。
そしてしんしんと夜は更けていくのだった。
●熊と遭遇ドラゴンメリー?
「前の隊商はここから少し行ったところで襲われたって言ってたな‥‥」
「そう‥‥それじゃあ、行って来る‥‥」
馬車に並んで馬上で読んでいたイギリス王国博物誌をぱたりと閉じたのは夜光蝶黒妖(ea0163)だ。
そして荷物をごそごそごそごそ‥‥ドラゴンズヘッドをすぽっとかぶり、その上からもがもがまるごとメリーさんを装着。
まるごとメリーさんの顔の部分からドラゴンを模した金属兜がにょっきし。流石の隊商の頭も唖然としてる。
「フライングブルームに乗る‥‥謎の生命物体‥‥メルヘン‥‥?」
取り出したフライングブルームに乗り換えるとくびをかくんと傾ける。どうやら質問してるみたいだ。
頭はかくかくと頷くばかり。さらに追い討ちの黒妖。
「今は夜蝶‥‥じゃなくて‥‥ドラゴンメリー‥‥と呼んで‥‥」
そのままぶいっとVサイン。まさしく怪しい黒妖はそのままふわりと先へ飛んでいこうとして‥‥
「ああ、ちょいと待った。こちらに何かあればオカリナを吹くからの、聞こえたら戻ってきてくれぃ」
風見蒼(ea1910)がそういって、オカリナを一吹き。
ぺひょ〜〜♪ ‥‥まぁ、確かに耳に残る音である。
「‥‥むぅ、うまくいかんもんじゃのぅ‥‥」
「ん、了解‥‥」
そしてゆらゆら手を振ると黒妖はふわりと空に舞い上がり飛んでいくのだった。
しばらくして、街道沿いに飛んでいくと道端の木に爪あとが刻まれているのを見かける黒妖。
「くまー‥‥近くかな‥‥」
そして案の定近くでうろうろする二匹のつがいの熊を発見するのだった。
ごそごそと黒妖が取り出したのは釣竿‥‥どうやら釣りをする計画のようだ。
釣り糸の先に保存食をつるし、そーっと垂らす。
においに気付いたのか二頭の熊が鼻をひくひく。
ぷらりと保存食。
見あげる熊。
そして見詰め合う黒妖と熊二頭。
‥‥ばっちり目が合って見つかりました。
「くまーが‥‥きたぞー‥‥」
ぶおーと法螺貝を吹きながら、すたこら逃走中の黒妖であった。
●熊との大乱闘!
法螺貝の音を聞いて街道を一気に先行するのはフェアレティ・スカイハート(ea7440)だ。
「さて、射撃にはそれほど自信が無いのだが‥‥」
そこでふと気付いたフェアレティ。矢が無い。
「‥‥‥‥」
そこに前方から地響きすら立てて逆行してくる謎のドラゴンメリーと熊二頭。
「くまー‥‥釣れた‥‥(ぶおぉ〜)」
「! ‥‥ええい、鉄弓がある!」
襲い掛かってきた熊の鼻面に鉄弓で一撃かまして、すたこら逃げる二人であった。(ぶおぉぉ〜)
ぶおぉぉ〜‥‥遠くから響く法螺貝の音。
「来たみたいだね、頼むよ、レリア」
「はい‥‥剣よ此処に来たれ、クリスタルソード!」
レリアの呪文とともに地より現れる一振りの水晶の剣。つぎつぎに剣を作ると、エクレールや蒼に渡していく。
フレイムエリベイションのスクロールを取り出して、読み上げるエクレール。
日本刀を馬に残し、水晶の剣を構える蒼。
ロングソードを両手で構え、瞑目して自らを高めオーラエリベイションを使うリチャード。
壁役が前に出て、突破されたときのためにリチャードは一歩引き周囲に目を配る。
そして、街道をこちらに向かって爆走する馬と箒と熊と熊。
「ほーっほっほっほ。まだまだ若いもんには負けぬのじゃ! サンレーザー!」
まだ、昼前だが天気は快晴。一閃の光条が真っ直ぐ一頭の熊に直撃する。
ぐぅるるるぅぅあああ!!!!
熊はもちろん大激怒。そして、ついに前線が熊と接触し闘いが始まるのだった!
きりきりと弓を引き絞り、いつでも熊を撃てるように構えているのはセレスティ。
「‥‥争いは、嫌いです‥‥」
ぽつりと呟き、周囲に気を配る。
その近くで、再び魔法を唱えていたのはレリアだ。
「我が意思を聞き、剣よ飛べ‥‥」
作り出したクリスタルソードをふわりと空中に浮かせ、それを素早く飛ばして攻撃!
熊の肩口を浅く斬りつけてあさっての方向に飛んでいく剣。なかなか難しいようだ。
「今のうちに、隊商の皆さんは進んでください」
「ああ、恩に着る!」
「少々痛いが、堪忍してくれよ‥‥ぬしらに罪はないからのぅ‥‥」
攻撃をクリスタルソードで受け流しながら呟く蒼。なんとか引いてもらいたいと思っているのだが、完全に熊も頭に血が上っている。
「二度と人の前に出てこなければ見逃してやれるものを‥‥はっ!」
気合一閃して腕を浅く切り裂く。左手の水晶の剣を濡らす血をすぐさま振り払うと、再び熊と向き合う蒼であった。
一方もう1匹の熊の前にはエクレールが。身軽な身のこなしで熊の豪腕の一撃はかすりもしない。
「なかなか傷を負わないわね‥‥痛い目見たら帰りなさいっ!」
ぶんっ! と振るわれた右腕の一撃を身をかがめてやりすごし、振り下ろされる左腕を体を捻って軽々かわす。
そのままひらりと剣を振るい腕をしたたかに切りつけるが、軽傷を負う程度。なかなか倒すまでは至らない。
すると、慌てて熊の横を通り過ぎる隊商に目を留めたのか熊はいきなり前衛を突破しようと傷をものともせずに突撃!
隊商が危ない! と誰もが思ったその瞬間に熊の前に立ったのはリチャードだ。
「これもチームワークだな‥‥ハッ!!」
熊の突進しながらの強烈な一撃をなんと体で受けるリチャード‥‥しかし、なんと皮一枚で攻撃を受けきる!
デッドorアライブの技によってかすり傷だけしか受けなかったリチャードは相手の攻撃を受けた瞬間にロングソードを一閃!
熊の体を深々と斬りつける。
「‥‥ここで‥‥」
もう一頭の熊に襲いかかったのは、セレスティの矢の一撃! その一撃に怯んだ熊にさらに追撃するのは、馬を下りてすらりとロングソードを抜いたフェアレティだ。
「ここは私にっ! 我が剣を受けよっ」
ずばっ! と華麗に振るった一刀は、深々と熊の体を切り裂いたのであった。
手負いの熊の抵抗はそこまで、ほうほうの体で熊は逃げ出していくのであった。
●そして道は続く
「‥‥熊鍋‥‥少し食べて‥‥みたかった」
黒妖は博物誌の熊の項を眺めながらぼそりと。ちなみに今もドラゴンメリーの格好である。
お昼時で休憩の最中。隊商も足をとめ、のんびりした旅路である。
「ちと手を加えただけじゃが、そのままよりは良かろうて。‥‥そのまま食べておっては、飽きるじゃろ?」
保存食の味気ないメニューに手を加えて振舞っているのは蒼だ。隊商のメンバーにもなかなか好評である。
「冬眠明けでよほどお腹が減ってたんでしょうかねぇ?」
「さあ、どうでしょう‥‥しかし、見るのも経験のうちと古老は言っていたが、その意味が良くわかった。今回は勉強をさせれもらったな」
レリアが森を眺めながら熊に思いを馳せ、リチャードも遠くを眺め昔のことを懐かしむ。
「それで、今回はなんでケンブリッジに?」
「うむ、私は既に立派に独り立ちした騎士だ。だが、未来の騎士を見て初心に返る事もたまには必要だ。最近世の中が慌ただしいしな」
エクレールとフェアレティはのんびり雑談。そろそろケンブリッジが見えてくる頃だ。
もうすぐケンブリッジ、無事任務完了である。