暴走賊を蹴散らせ!

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月09日〜12月14日

リプレイ公開日:2004年12月17日

●オープニング

「うちの村を『暴走賊』から救ってくれ!」
 そう言ってギルドに駆け込んできたのは初老の男性。
 かなり切羽詰った様子で依頼の詳細を告げる。

「私はここから一日ばかり行ったところにある村の村長なのだが、奴らをどうにかして欲しいのだ!」
 ギルドの受付は困った様子で、村長に聞き返す。
「あの‥‥『暴走賊』とは?」
「最近うちの村を荒らすようになった、ごろつきの一味だ。馬に乗って村中を暴走するから暴走賊と」
「一体どのような被害に?」
「まず暴走すること自体が危険だ。奴らが走り回ってるときは怖くて往来に出れない」
 ぴっと指を1本立てて言う村長。
「それから、馬に乗ったまま長い棒などを振り回して、いろんなものを壊すこともある」
 続けて2本目の指をびっと立てる。
「それに何よりうるさいのだ‥‥流石に夜中は馬が走れないのか静かだが、早朝からどかどかと‥‥」
 思い出したのかがっくりとうなだれる村長。

「とにかく、どうにか奴らが暴走するのを止めさせてくれ!」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea6870 レムリィ・リセルナート(30歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea7440 フェアレティ・スカイハート(33歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea8171 卜部 こよみ(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea9267 鈴木 久遠(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9285 ミュール・マードリック(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)

●リプレイ本文

●村にて
「角笛を吹きながら走り回るってのは〜っていうのはださすぎぃ〜」
 からからと笑いながら馬鹿にしたように言ったのは卜部こよみ(ea8171)だ。
 暴走賊は確かに、古びた角笛で変な音を響かせて走り回っていた‥‥いやマジで。
 その姿を村長の家から眺めているのは5人の冒険者だ。
 小さな農村に響き渡る蹄の音‥‥端のほうにある村長の家にも聞こえてくるが、非常に迷惑である。
「ただ走りたいだけなら原っぱでも走ってりゃいいと思うが、踏み固められた道走りたいだの人がいる場所走りたいだの、色々あるんだろうねぇ」
 音を聞きながら鈴木久遠(ea9267)は、飄々と軽口を叩く。
「人々を無闇に怖がらせ、迷惑を働くとは許し難い。しかも、罪もない馬を駆っているとな。馬は己の快楽の為に存在しているのではないぞ!」
 怒りに拳を震わせてそう言ったのは、フェアレティ・スカイハート(ea7440)だ。
 目には炎が燃えている‥‥どうやら、人生舐めてる暴走賊の連中は彼女の怒りに火をつけてしまったようだ。
 その中で一人だけ、懐かしそうに笑顔を浮かべているのはレムリィ・リセルナート(ea6870)。
「あたしも子供の頃は鳴らしたなー。驢馬で」
「驢馬? 馬じゃねえのか?」
 ズッコケながら問う久遠。
「‥‥村に馬がなかったんだよ」
 レムリィはむくれながらそう返すと、さらに言葉を続ける。
「この笑顔と腕っ節で『伝説のガキ大将』なんて近隣の男の子たちに君臨してたっけ」
 さらっと凄いことを言うレムリィ。
「ま、連中も若いんだよね。このままいくとまっとうな人生送れるとは思えないんで堅気に戻したい」
 そして決意を込めて、うんうんと頷く。
「人に害為す行為をするのは、許し難い。人の痛みというものを知るが良い」
 すでに説教モードに入っているフェアレティ。
「な〜んていうか、青春なのは分かるけどぉ〜もうちょっと方向性考えられないのぉ?」
 若気の至りでは片付けられない暴走っぷりに、少々呆れてため息をつくこよみ。
 そして隣で困り果てた顔の村長を見上げる。
「あやつらのような半端者をどうにかしておくれ‥‥」
 懇願するように村長は言う。実害は無くとも、精神的な苦痛はかなり辛いようだ。
「あたしたち冒険者に任せれば安心よ、おじいさま♪」
 冒険者たちの決意は十分のようだ。
 そしてもう一人その光景を眺めて呟く冒険者がいた。
「‥‥半端者であることが悲しいのではない。半端者と呼ばれるのが哀しいのだ‥‥」
 そう呟いたのはフードを目深に被ったミュール・マードリック(ea9285)である。
 ハーフエルフの彼には、いろいろと複雑な思いがあるようだ‥‥。

●まずは拳で
 お説教と鉄拳制裁を兼ねて、深夜に暴走賊たちが根城にしている廃屋に忍び込むことにした一行。
 久遠が立てた作戦の通り、静かに行動する一同だった。

「抜き足差し足っと」
 こっそりと裏から一人で進入したのはこよみである。
 どうやら、馬に乗られて逃げないように先に馬の足を縛り付けておく作戦のようである。
「ロープを巻きつけてぇ〜っと」
 6頭の馬の足に順番にロープを巻きつけていくこよみ。
 しかし最後の1頭をしばろうとした時に、ちょうど見張りと鉢合わせてしまった。
「てっ! てめぇ!! こんなとこで何してやがる!!」
 怒鳴り声を上げる暴走賊の一員。
「はぁい、いい子はオネンネしてなさいってねぇ〜」
 気安く手をあげて挨拶をした次の瞬間、見張り役にダブルアタックEXによるスタンアタック三連撃が直撃する。
 こよみの作戦は無事成功を収めた。
 そして、一方その頃、正面から乗り込んだ冒険者たちはというと‥‥

「我々は村長から依頼を受けて貴様たちを更正するために来た冒険者である! いざ正々堂々と勝負いたせ!!」
 こっそり忍び込んだはいいものの、だらだらと酒を飲んでいる暴走賊たちを見て、フェアレティは我慢の限界だったらしい。
 いきなり大声で名乗りを上げて、勝負を挑んだのであった。
 そして、乱戦が始まった!
「馬鹿にすんな!! これでもくらえっ!」
 近くにあった粗悪な短剣を掴んで、暴走賊の男の一人がフェアレティに襲い掛かってきた。
 しかし格闘術に優れる彼女は相手の攻撃より素早くロングソードの一撃を打ち込む。
 鞘から抜かずにばしっと一撃。もんどりうって転げる暴走賊の一人。
 返す刃で棒立ちだったほかの一人に更なる一撃を与え、戦闘力の差を見せ付けるフェアレティ。
「‥‥次に痛い目にあいたいのは誰だ?!」
 一人はフェアレティに敵わぬと見てミュールに襲い掛かるが、これもまた武器の重さを生かしたスマッシュの一撃で地に伏せる。
「‥‥抵抗して、余計な怪我を増やすな‥‥」

 こうして、一瞬で三人が倒されると、残りの2人はくもの子を散らすように逃げ出したのだった。
「くそっ! 覚えてやがれ!!」
 捨て台詞をはきつつ、正面の入り口の反対側にある扉から逃げようとした一人。
 そこへレムリィが足払いが一閃。あわれ暴走賊は顔面から地面に突っ込んでぴくりとも動かなくなった。
 だが最後の一人はうまく正面口から駆け出した。
 そのまま見る見る遠ざかっていく最後に一人。
 しかし突然、後ろからおもいっきり殴られたかのように吹っ飛ばされたのだった。
 廃屋の入り口では、拳を構えた久遠の姿。
「おたくらは、まだまだ甘いな」
 拳の威力をソニックブームによって衝撃波として放ったのである。
 こうして、あっさりと暴走賊の一味は全滅することとなった。

●そして、お説教
 久遠が全員をぐるぐる縛り上げ、先ほど裏手で倒した見張りの一人をこよみが引きずってくる。
 総勢六人の暴走賊は、全員がロープで縛り上げられて、神妙にしている。
「貴方たち、いい? 人に迷惑や、自分がやられると嫌なことはちゃんと見て止めるのが常識よ」
 きりっとこよみがそう言っても、若さゆえの過ちか、誰も聞く耳を持とうとはしない。
「今はいいかもしれないけど、いつかムリが利かなくなったらどうするの? 部屋で一人黄昏てる?」
 姉御肌のレムリィがそう語りかけても、暴走賊どもはそっぽを向いて不服そうな面構え。
「手に職ないのに一緒になるなんて、そんなバカいないよ?」
 痛いところを疲れたのか、ぐっと唇を噛み締めながら、それでもレムリィの言葉を無視する暴走賊。
 久遠とミュールはそんな若者を見ていると‥‥ゆっくりとしばられた暴走賊たちの前にフェアレティが進み出た。
「お前たちは何故このような暴走行為を働くのだ?」
 そう問いかけても答える者はいない。
「そうか‥‥いい度胸だな。覚悟しろ、お前たちに一から騎士道とは何たるかを叩き込んでやる」
 びしりとそういい放つと、彼女の長い長いお説教が始まった‥‥朝までエンドレスで続くお説教。
 暴走賊は誰一人として眠ることを許されず、延々とお説教を聞くことになったのだった。

●そして、更正?
 激しく憔悴しきった6人の暴走賊は村に引き渡された。
「別段、尚早物を壊したくらいで‥‥何かをやらかしたということはない。村での奉仕労働くらいでいいのではないか」
 そう言ったのはミュールだ。
 馬を生かした仕事をさせて更正を促す‥‥村長もそのことを了承し、無事暴走賊の面々は引き渡されたのだった。
「居場所があればひとは生きていけるのだから‥‥」
 フードの下から現れたハーフエルフの顔を見て息を飲む暴走賊たち。
 自分の居場所を探しつづけているミュールの一言は重く響いたかもしれない。

「まともに出直す気があるならあたしに会いにおいで」
 最後に一言、笑顔といっしょにそう言ったのはレムリィだ。
「あんたらが懲りるまで殴ってもいいんだけど。 あんたらの姿が故郷の情けない子分たちと重なっちゃってね」
 からからと笑うレムリィ。

 きっと彼らは更正できるに違いない‥‥癖はあるが優しい冒険者たちの言葉を忘れない限り。