【特殊訓練】 インドアアタック
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■ショートシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:フリーlv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:07月01日〜07月04日
リプレイ公開日:2005年07月12日
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●オープニング
人気の無い廃屋。壁はところどころ崩れかけ、茅葺の屋根もぼろぼろになっている。
その正面、正面入り口の扉の前に4人の人影があった。
鎧に身を固めた2人の重装備の騎士に盾だけ持った軽装の騎士、そして弓を持った女性の騎士。
軽装の騎士のうちで年上らしき方が、指を立てて、二度扉の方に向かって振る。
どがんっ!!
重装備の騎士の片方が、扉を蹴り開けるともう一人の重装騎士が中に飛び込む!
続いて、軽装の騎士と弓騎士が中に踊りこんで、弓騎士は即座に部屋の奥にいた人影に矢を射掛けるっ!
こちらに近づこうとしていた奥の人影は、矢の一撃で地に伏し、扉の横の暗がりから襲い掛かってきた人影のナイフの一撃は軽装騎士の盾で受け止められる。
一方裏口。慌てて飛び出してきた人影を、大剣の騎士が一撃でたたき伏せる。
「さて、中はどうなったかな‥‥」
重装備の騎士の槍の一撃で、最後の一人が壁にたたきつけられる。
そのとき扉に人影が現れて‥‥
「ふむ、今の動きは悪くないな‥‥こらダン、いつまで寝てるっ!!」
のろのろと弾き飛ばされた男が立ち上がりばつの悪そうな笑顔を見せる。
「さて、次は正面扉がもっと強固だった場合の動きをやるぞっ! ミーティングするからすぐ集まれよ」
そう、これはフォレストオブローズの訓練の風景なのであった。
そしてところ変わってケンブリッジギルドにて。
「今回は家屋に潜む敵を攻撃するという条件の訓練を行う予定なのだ」
ギルドを訪れているのはフォレストオブローズのガストン・ビアス先生だ。
「いつもは生徒同士で戦うのだが、たまには実践さながらの訓練もしようということになってな。冒険者たちに敵役をやってもらいたいのだ」
武器の刃先は丸めてあるし、回復魔法の使い手もそろえてはあるが、過酷な訓練になることは間違いない。
「こちらも全力で訓練させてもらおう。どうなるか楽しみだな!」
にっと野太い笑みを浮かべるビアス先生であった。
さて、どうする?
●リプレイ本文
●準備は念入りに
「ふむ、この箱は使えそうですね♪」
箱をごそごそと引っ張り出してきて重さを確かめているのは、シャルディ・ラズネルグ(eb0299)だ。
ここは訓練用の家屋の中。薄暗がりの中でそれぞれが思い思いの準備を進める。
「友人のガルネさんも応援に来てくれましたし、今回は精一杯頑張らねば!」
ぐっと握りこぶしを握り締め、シャルディは再び荷物を動かし始める。
「おお、この鉄鍋は重くていい感じですね〜」
「本当は錬金術の素晴らしさを教えたいのですが、流石に今回はあきらめるしかないようです‥‥」
「訓練とはいえ油断はできない内容ですよ、甘く見てはいけません」
最初っからやる気を失い気味なエリス・フェールディン(ea9520)をたしなめているのは、エレナ・レイシス(ea8877)だ。
「それでやはり後方支援を行うためには‥‥」
「私はバイブレーションセンサーで探査を行う予定ですから‥‥」
エリスの暴走がちょっと怖いが、まぁなんとかなるだろう。
「剣は使えないから仕舞って、ロングロッドはつっかえるからだめ‥‥となると、スタッフがちょうどいいかな」
部屋の大きさを考えて武器を選択しているのはマカール・レオーノフ(ea8870)だ。
そして、足元には妙なものが転がっている。わらを詰めて人のような形にした布袋である。
「あ、人形できましたから今裏の方に持って行きますよ〜」
囮を抱えてマカールは裏手に向かうのであった。
「久方に学び舎に戻ってみれば‥‥他流試合みたいなものかの?」
今ひとつ訓練というものの感想がずれているような気がしないではないが‥‥紅天華(ea0926)がそう呟いた。
不敵に微笑んだその表情から、現状を楽しんでいるのがありありと分かる。
「さぁて、お手並み拝見といったところだの」
好戦的な言葉とともに、手にした数珠がちゃらりとゆれる。
「これは戦闘訓練というよりは‥‥冒険者と騎士学校との対戦と考えた方が良さそうだな」
緊張感を漂わせ、黙々と準備しているのは風月皇鬼(ea0023)だ。
その巨躯で、大きな机をひょいと運んで正面扉の近くにどすんと下ろす。
「さて、こいつで飛び込んできた奴の出鼻は挫くことができるのでな」
満足そうに獰猛な笑みを浮かべる皇鬼であった。
「戦闘訓練は前もやったけど‥‥こういうのは初めてだね。皆頑張ろうね」
「ええ、頑張りましょうね‥‥さて、これで準備完了です」
弓を仔細に手入れして準備に余念が無いのはフィアッセ・クリステラ(ea7174)。
そして彼女にグットラックをかけていたのがラス・カラード(ea1434)である。
「ん、ありがと。どう来ると思う?」
「‥‥セオリー通りなら、壁役の重装備が一番最初でしょうね‥‥」
ガルネ・バットゥーラが皆を応援するために歌う。
その声が途切れ‥‥高く響く笛の音が聞こえる。
ついに訓練が開始されたのだったっ!
●インドアアタック!!
ディテクトライフフォースを使う天華とバイブレーションセンサーを使うエリス。
音を立てずに配置に着いた一同が、目配せをかわし突入して来るであろう騎士たちをじっと待つ。
天華とエリスが同時に4本指を立てたまま、正面入り口を差す。正面に4人というサインだ。
正面入り口の迎撃を担当するのは天華、エリス、ラス、フィアッセ、エレナ、シャルディである。
魔法戦力重視で果たして主戦力を打ち破れるのか‥‥。
ガンッ!! ガンッ!! 二度ほど正面扉が激しく揺れる。どうやら問答無用で重量武器を振り下ろしているようだ。
と、そのとき、
「ふむ、確か公共物に関する制約はなかったはずだのぅ」
と天華が呟き、問答無用で詠唱開始、なんどかの攻撃のぼろぼろになった正面わきの壁に向かってディストロイをぶっ放す!
本来なら歯が立たないであろう壁だが、攻撃で扉ごともろくなっていたようで内側から爆ぜ割れるように破片を撒き散らす。
「よもや、壁越しに攻撃されるとは思ってもおらんかったろう? だが、ありえないと思うことがおこる‥‥それが本当の戦場だ」
にやりと笑みを浮かべる天華。壁越しの気配で重騎士に続いていた後続の誰かがおもいっきり土くれをかぶったのが分かったからだ。
が、もちろんダメージは無く‥‥どがんっ!!! ついに正面扉が突破される。
突破してきたのは、大剣をもった重騎士、続くのは二名の弓騎士と小さい盾だけを持った軽装騎士だ。
突進しようとした重騎士は邪魔するように置かれていた机に気付くと剣を大きく振るう。すると一撃で机は木っ端微塵に砕かれる。
続いて飛び出したのは軽装騎士、ローリンググラビティの詠唱を始めようとしたエリスに向かって一目散に近づいていく。
その間も弓騎士が矢を放つのだが、とっさに狙いを定めようとして、人形の囮に対して矢を撃ってしまって慌てて片方が新たな矢をつがえる。
「さてと‥‥やっぱり教本どおりなら重装騎士が一番最初に来たね!」
きりきりと弓を引き絞るフィアッセ。装甲の隙間を狙って一撃を放つっ!
しかし、その一撃は重騎士の盾に弾かれてあさっての方向に飛んでいってしまし、逆に重騎士がフィアッセに狙いを向ける。
その眼前に躍り出たのはラスである。
「彼等への攻撃はさせませんよ! いきますよッ!」
盾受けの隙をついての波状攻撃で、左腕のクルスソードで切りつける。
それをがっきと武器で受けた重騎士。ガードと盾での受けに回るラスが若干の不利だが、この瞬間も自体は推移していた。
「さて、行きますよ〜♪」
その声にはっと狙いを変えた弓騎士は信じられないものを見た。‥‥‥飛んでくる巨大な鉄鍋。
弓使いのフィアッセが重騎士の体で隠れてしまったために、目標を変えようとして‥‥ごつっ!!!
「あらー‥‥なかなかいい音が」
たらりと冷や汗のシャルディ。サイコキネシスで鉄鍋を飛ばしたのだが、なんせ重さが20キロ近く。
弓騎士は一撃で目から星をだしてじたばた悶絶している。
「‥‥さあ、次はどうしましょうかね?」
ふと目をやったのは、エリスの方向なのだが‥‥
ローリンググラビティーの詠唱を終えたエリスは‥‥その魔法が失敗したことを感じた。
「な、失敗? ‥‥これだから魔法は‥‥」
とぶつくさ文句を言おうとしたときにふと気付いたことがある。
こちらに近づいてきていた軽装騎士が足を止めて精神を集中していたことを。
一瞬だが見えたのは淡いピンクの光の残像‥‥どうやら高速詠唱によるオーラホールドで思考を鈍らされたようだ。
「しまった‥‥」
とエリスは思ったのだが、既に時は遅し。距離を詰めた軽装騎士の手刀、スタンアタックがエリスの意識を刈り取ったのだった。
「手加減はせぬよ。若輩者ながら、全力でお相手いたそう」
そういって天華が狙ったのは、重騎士の剣だ。天華の手から飛んだ黒い光が狙い違わず剣を直撃するのだが‥‥
全然効いていない。
「む‥‥どうやら威力が足りないようじゃの」
冷静に解説している場合ではないのだが‥‥どうやらなんとかなりそうであった。
射撃戦の結果、フィアッセが同時にはなった2本の矢が弓騎士を直撃、思わず弓を取り落として弓騎士は降参のサイン。
軽装騎士が狙いを変えて重騎士の加勢に加わろうとした瞬間に、くいっと足を引っ張られ‥‥すこーんとすっ転ぶ!
どうやら、サイコキネシスで動きを邪魔されてちょうどこけたようである。
と、転んだところは戸棚の横‥‥ひょいひょいひょいひょいと戸棚の引き出しが飛び出しがすがすがす!!
思わず頭を抱えてしゃがんだ軽装騎士のこめかみに、勢いよく開いた戸棚の戸がごつんっ!
くらっとなった軽装騎士に向かってフィアッセの矢が飛んで、軽装騎士もあっという間に降参であった。
しかし、最後の重騎士がしぶとい。
「ち、しまったっ!」
鍔迫り合いの状態から、大きく弾き飛ばされてしりもちをつくラス。
競り勝った重騎士に向かってシャルディによるつぶてが飛ぶのだが、いかんせん狙いがまずく、軽々と弾かれてしまう。
と、そのとき。
「‥‥ファイヤーバード」
ぼそりと詠唱を終わらせたエレナがなんとファイヤーバードで一直線に突進したのだった!
火の鳥というよりは、巨大な火矢のように一直線に飛ぶエレナを盾で受けるも、連続してなんども燃え盛る火の塊に突進されては敵わない。
ついぞ重騎士も降参して剣を納めたのであった。
そして、裏口。
裏口の戦力を突破して挟撃する作戦だったのだが‥‥
扉からマカールが人形を放り出す。すると一撃でばらばらにされる人形。
刃先は潰してあるとは言え、確かな剣筋。どうやら主戦力はこちらのようであった。
人形を切った一撃の隙に、追撃を加えようとしたマカールはだっと飛び出し、スタッフの一撃が敵の軽装騎士のパリーイングダガーで受け止められる。
逆手に構えたパリーイングダガーともう一方の手に持ったレイピア。珍しい構えの我流騎士のようだ。
スタッフの一撃を受け止めたまま、マカールが動きを止めるとそこにいつの間にか寄ってきていた重装備の騎士の一撃が振り下ろされようとして‥‥
「お前の相手はこっちだぞ!」
飛び出した皇鬼が爪のついた小手、龍叱爪で相手のロングソードを受け止める。
二組の攻防が始まったのだった!
マカールはスタッフで相手の腕を打ち据えて武器を落とさせようとするが、その一撃をことごとく相手はパリーイングダガーで受け止め、攻め手にまわればレイピアで的確に肩や腕を叩いてこちらも武器を落とさせようとする。
しかし、マカールはその突きをひらりと回避しながら、隙を待つ。
そして決着は意外にあっさりと着くのである。
武器を両手に持ち受けに頼った軽装騎士よりも手数であっとうしたマカールの方があっという間に優位にたち、びしりびしりと両方の手を打ち据えて、スタッフの先端で地に落ちた剣を押さえる。
「さて、これで終りです。降参してくださいね」
ふぅと息をついてマカールがいい‥‥攻防を続ける二人の重装備の騎士と武道家の戦いの行方を見るのであった。
お互い厚い装甲をもち、生半可な攻撃では通用しない。皇鬼にいたってはデッドorライブのCOまで修得しているし、一方重戦士の方もオーラボディで防御を固めているようだ。
お互い捨て身の一撃を応酬、しかし重騎士には欠けているのもがあった。
それは決定的な一撃を放つ攻撃力。
どんなに攻撃してもオーラパワーで強化してやっとかすり傷を負わせられる程度ではろくなダメージにならない。
「勝機っ!」
続けざまに放たれた三発の拳が、鎧の上から騎士を打ち据える。
ストライクによって強化された凶悪な拳が鎧すらへこませて、この訓練に決着をつけたのだった。
●先生より
「‥‥まったく負けるとは思わなかったぞ」
ガストン・ビアス先生が苦笑を浮かべながら自らの教え子たちを見やる。
騎士たちは一様に罰の悪い顔を浮かべながらどこか晴れ晴れとしているのだった。
「まぁ、これからの課題も見つかったし、悪い勝負じゃなかった。またよろしく頼むことにしよう!」
と、ビアス先生は盛り上がっているのであった。
「ん、何はともあれこういうのもたまにはいいね。いい、勉強になったよ。また、よろしくね」
フィアッセがそう仲間たちに言えば‥‥
「日は良い勉強になりました。また機会があればこのような訓練を行いたいですね。それでは、あなた方にセーラ神の御加護があらん事を‥‥」
敬虔さを表すようなラスの言葉が続き‥‥
「あなたたちが負けたのは錬金術を学んでいなかったからです!」
と、どこで話がねじれたか分からないが、とりあえずエリスは錬金術の普及に努めつつ。
「まぁ、お互いの健闘をたたえて一杯‥‥といきたいところなので、皆で食堂に行きましょうか」
わっと歓声があがり、先生も苦笑を浮かべつつもかすかに頷く。
これにて訓練は終了したのであった。