●リプレイ本文
●犬と一緒
「サイモンさんは毎日奥さんや娘さんや沢山の動物達に囲まれて幸せですね。私ワンちゃんが大好きなんです」
早朝の犬の散歩に行く準備をしながらダイアナ嬢にそう言うのはメイシア・ラウ(ea8255)だ。
今日から数日間はサイモン氏の自宅から、フリーウィル冒険者養成学校までが犬達の散歩コース。
なぜなら、ジョギングを兼ねて学生のフォリー・マクライアン(ea1509)も一緒にだからである。
「ショーン、クリストファー、イアン、カール、そしてメイシアさん。行ってきま〜す! 一緒に散歩したいけど、ガッコ行かないとマズイもんね」
早速覚えた犬達の名前を呼んで、名残惜しげにフォリーは学校へ。
そして、メイシアと犬達の時間が始まるのだった。
とりあえず、犬達の運動のために、サイモン氏の自宅から程近い公園へやってくる1人と4匹。
そろそろ寒さも厳しい季節になってきてはいるものの、幸い天気のいい日がつづき、犬達も楽しそうに走り回ってる。
大人しいクリストファーとイアンはメイシアのすぐ横をくっついて離れず、元気なショーンとカールは首に巻かれた紐をぐいぐい引っ張っていく。
足に体をくっつけて甘えてきたイアンをわしわし撫でながら、立ち止まってメイシアは一人呟く。
「なかなかいい運動になるますね。自分の体力アップにもなるでしょうか‥‥」
まだまだ一日は始まったばかり。
散歩から返ってくるととりあえずご飯。ダイアナ嬢を手伝って、ご飯を食べさせてからはブラッシングの時間だ。
真っ白でモコモコな4匹の犬。汚れが目立つ足などを布で拭いてあげてから毛並みを丹念に梳いて上げるのだ。
嫌がって逃げまわるショーンを追いかけたり、気持ちいいのか眠たそうに甘えてくるクリストファーと一緒にうとうとしたり。
「綺麗は毛並みを整えてあげないと勿体無いですからね。これでよしっと‥‥」
しっかりブラッシングして、ふかふかになったカールをぎゅっと抱きしめながら嬉しそうに微笑むメイシア。
そうして、時刻はそろそろ学校から生徒達がかえってくるころに。
「今度は私とお散歩の番だね!」
帰って来たフォリーは、待ち遠しかったようにそういって、犬達と一緒に夕方の散歩へ。
頼まれた買い物をダイアナ嬢に渡すと、はじけるように駆け出していく。
犬達に負けじとたっぷり散歩してきた後は、庭で日が落ちるまで庭で一緒に遊ぶようだ。
「ほらっ! 取ってこーい」
庭にフォリーの楽しそうな声が響き、お手製の布ボールを犬達が我先にと追いかける。
今回の勝者はショーン。千切れんばかりに尻尾を振りながら、褒めてとばかりにフォリーを見上げる。
「うん、偉いぞショーン君!」
わっしわっしと撫でて褒めてあげると、羨ましかったのか他の3匹もフォリーに突進する!
「あ〜! 嬉しいけど、ちょっと〜!!」
白いモコモコに埋まりながら幸せそうな悲鳴が聞こえたとか。
●猫と一緒
学校が終わった夕方、サイモン氏の自宅はにわかに騒がしくなる。
お手製の猫じゃらしを片手に猫と遊んでいるのはエレナ・レイシス(ea8877)だ。
「たくさんいますね‥‥」
6匹の猫達を眺めてそう呟くエレナ。猫じゃらしがお気に入りなのは、好奇心旺盛なドミニクとビリーの2匹のようだ。
無邪気にじゃれ付く2匹の仔猫を見て、さぞかしエレナは日常のリフレッシュが出来たことだろう。
「やっと帰ってこれたニャー♪」
英語は流暢になったはずなのに、どうも語尾が怪しいのはミカエル・クライム(ea4675)だ。
猫が心底大好きなようで、猫と一緒にソファーの上で丸くなっている。
肉球をぷにってみたり、ひっくり返っている猫のおなかをふわふわ撫でたり猫と一緒にごろごろしているといった方が正しいかもしれない。
「やっぱり猫って可愛いニャー。他の動物も良いけどね〜♪」
活発なリヴとヴィゴの2匹と一緒に近くに寝ていた犬のクリストファーにちょっかいをかけながらご満悦の様子。
なにやらもう1匹大きな猫が増えたかのようである。
そして猫と一緒にいつの間にか寝ていたり。おなかの上ではリヴとヴィゴがミカエルそっくりに寝息を立てているのがとても楽しそうである。
「特に問題が起きなくて何よりですね」
朝から学生の2人がいない間は猫達の面倒を見ていたエレア・ファレノア(ea2229)がそう言って微笑を浮かべる。
怪我をしたり、居なくなったりする猫は1匹もいなく、安心したかのようにダイアナ嬢と一緒に料理の準備をする。
足元にはエレアに懐いた一番小さなオーランドとすこしはなれて、どっしり構えた母猫のケイトが。
ご飯前まで、オーランドと一緒に毛糸玉で遊んでいたら、それを気に入ったようで、エレアの側を離れなくなってしまったのである。
「フォリーさんに追加で食材を買ってきてもらいましたし、もうすぐでご飯が出来ますからね」
他のメンバーにエレアがそう言うと足元でオーランドが同意するように、みぃと鳴いたのであった。
●馬と一緒
早朝の厩舎。まだ日が昇ってからそんなに経っていないのにすでにそこには三人の人影があった。
「おれも厩舎で過ごすか。馬の世話は一日仕事だから」
そう言って、厩舎に泊り込んでいるのは伊達和正(ea2388)だ。
学生のはずなのだが‥‥今回は自主的にお休みだそうで、朝から干草をせっせと運んでいる。
「時間はたっぷりありますし、まずはミランダと仲良くならないといけませんね」
そういって、丹念にブラッシングをしているのはマカール・レオーノフ(ea8870)だ。
他の面子の前でも、ハーフエルフであることが不快でないようにとの配慮でフードを被っているのだった。
「あの、私そろそろ学校なので、後はよろしくお願いします!」
そう言って早朝の世話を手伝っていたキラ・リスティス(ea8367)がローブを着て学校へ行く準備をする。
朝早くから、厩舎の掃除などを真剣に手伝っていた彼女は、慌てて学校へと駆けていくのだった。
「まずは水遣りからだったはずだ。実家の馬番がやってたと‥‥」
「ええ、そうですね‥‥冬なので、お湯を取ってきて、ぬるま湯にでもしましょうか」
「次は餌だよな、干草取って来ます」
「よろしくお願いします、その間に私はこっちを‥‥」
伊達は自分の実家でどのように行われていたのかを思い出しながらてきぱきと作業し、マカールも慣れた手つきで馬のミランダの世話をする。
そして、一通りの世話が終り、和正が厩舎の掃除をしている間にマカールが軽く運動を兼ねて軽くミランダに乗ってみていた。
しかしなかなか言うことを聞かないミランダだが結局、馬の扱いが専門的であるマカールが時間をかけて世話をして言うことを聞くようになったのである。
そんな2人の様子を眺めているのは、学校から帰って来たキラだった。
ウィザードである彼女は馬を乗りこなすことが出来ないため、わざわざ学校の図書館を使って、馬の世話の仕方を調べて、せめても馬の世話をしっかりやろうとしたのだった。
時折憧れの眼差しで馬に乗る2人を眺めていたキラの様子に気づいたのはマカールである。
ぬるま湯でごしごしミランダの足を洗っていたキラに向けてちょいちょいと手招き。
「キラさん、あなたも乗ってみませんか? 私がミランダを引いていればきっと大丈夫ですよ」
「‥‥あの、ぜひお願いしますっ!」
そして、ミランダも丁寧に世話をしてくれていたキラに思うところがあったのか、いつにもまして非常におとなしくキラを背中に乗せて、たかたかと歩くのだった。
「どうだキラ。初めて馬に乗った感想は?」
和正が問いかけると、キラは目を輝かせて答える。
「視線が高いですし、すごいですねっ!」
こうして馬と親しくなると、より一層世話にも力が入る3人だった。
●みんな一緒
そろそろ依頼もおわりに近づいたある日、いつものようにマカールは厩舎に和正と一緒に泊り込んでいた。
いつもは夕食をエレアが届けてくれていて、今もエレアが差しいれてくれた毛布を被って寒さをしのぎつつ清潔は干草のベッドに転がっているのである。
しかし、今日はどうやら様子が違う。
なぜなら、食事を届けに来るエレアの変わりにミカエルが厩舎にやって来たからである。
「マカールさん、一緒にご飯を食べましょ! だって、同じ依頼を受けてる仲間じゃないですか♪」
がしっとマカールの腕を掴んで、有無を言わせずマカールを食堂へと連れて行く。
そこには今回の依頼を受けたメンバーが全員揃っていた。
犬のクリストファーに夜のブラッシングをしながらくつろいでいるのはフォリー。
毎日犬と遊んで、犬たちともすっかり仲良くなったようである。
ダイアナと一緒に料理を作っているのはエレア。マカールがやってきたのを見て嬉しそうに微笑を浮かべている。
その足元にはやっぱり仔猫のオーランドがぴっとりとくっついていた。
「実家の馬番の苦労がつたわるよ。ほんとに」
そう言う和正の言葉に、元気を出せとばかりに、犬のイアンがぺろりと手の甲を舐めて励ます。
今日も今日とて猫のリヴと一緒にゴロゴロしているのはミカエル。
「やっぱ猫と一緒が良いニャー」
猫口調も板についてきたようである。
犬のカールと一緒に座っているのはメイシアだ。
ふかふかもこもこをゆっくりと撫でながら幸せそうな笑顔である。
キラは猫のヴィゴとビリーにじゃれ付かれて幸せそうに笑う。
元気な2匹に甘えられて、優しく撫でながら猫達と一緒に遊んでいるのであった。
猫じゃらし片手に、猫のドミニクを構っているのはエレナだ。
数日ですっかり仲良くなったようである。
そして、引っ張ってこられたマカールは面食らったように一同を見渡す。
と、立ち止まったマカールを後ろから犬のショーンがそっと押すようにする。
そして、初めて全員が一同に会して夕食を取ることとなったのである。
短い期間だったが、冒険者達も動物達も非常に充実した時間を送ったことだろう。