●リプレイ本文
「お、来てくれたんだ。2人ともありがとう!」
依頼に参加した二人の冒険者を迎えたのは依頼人である女剣士ルカだ。
「いいえ、手伝えることがあればいいのですが‥‥」
丁寧な物腰で答えたのはロータス・セクアット(eb0584)だ。
はるばるインドゥーラからやってきた僧侶のロータスは人の良さそうな笑みをルカに向ける。
他人に尽くすことを喜びとする清らかな笑みを見て思わずルカも微笑を浮かべるのだった。
「ふん、ホーンリザードか‥‥モンスターの相手は初めてだな‥‥」
そうラテン語で一人呟いたのはガルディ・ドルギルス(eb0874)だ。
ラテン語しか話せないガルディは、意思疎通の手段を持って居ないと思われたのだが‥‥。
「あー‥‥『よろしくお願いします』でいいんだったっけ?」
苦笑を浮かべつつ片言のラテン語でルカがガルディに話しかける。
幸運にもルカは簡単なラテン語を学んでいたようであり、なんとか話し合いが出来るようだった。
そして、一行はホーンリザードが出ると言われている東の森へと向かうことにした。
「‥‥そういえば、ルカさんがお会いになった妖精と言うのは一体どのようなことを?」
控えめにロータスが問うと、ルカはしばらく思い出すかのように視線をさまよわせてから言う。
「ああ、最近ケンブリッジでもいろいろ噂があるみたいだけど‥‥なんか困ってるみたいでね」
「困ってる‥‥ですか。困ってる人は放って置けませんね」
にこっとロータスは微笑む。するとルカは、
「まぁ、困ってる人って言うか、困ってる妖精だね。一体何がおきてるんだろうね?」
ロータスとルカは並んで首を傾げるのだった。そしてルカが続ける。
「まぁ、頼まれたことはホーンリザードの退治だしね。たまに人里に出てくると危ないし、いいチャンスかな?」
そういって、意気込みも露わに自分のロングソードをすらりと抜くのだが‥‥
『む、おぬしの剣をちょいと見せてもらえんかね?』
その姿を見て言ったのは後ろをついて来ていたガルディだ。
『ん? あ、ああ。いいよ』
目の真剣な光に気圧されたのか、ちょっと休憩がてら足を止めて剣をガルディに渡すルカ。すると‥‥
『ふむ、刃こぼれもしているし、おぬし手入れをしっかりしておらぬな?』
達人級の鍛治の腕前をもつガルディからみれば、ルカの剣の手入れがまだまだ未熟だった模様。
ちょっと照れたように笑みを浮かべてルカは、
『あー‥‥そういえば最近訓練したあとにしっかり手入れしてなかったかも‥‥』
『ふん、そんなんじゃ立派な戦士にはなれんぞ』
倍以上も年の離れたベテランの鍛冶師。しかもドワーフとあってはその言葉の重みもひとしお。
めずらしく頭をかきながらルカもしきりに恐縮していたのであった。
『まぁ、とりあえずわしが手入れしておいてやろう‥‥』
無愛想なガルディだが、丁寧に手入れしているところをみるとかなり職人気質のようである。
「それで2人とも、どういう作戦で行こうか?」
そろそろ東の森の入り口付近。
妖精は依頼が終わったらやってくるそうで、ルカはとっととホーンリザードを片付けるつもりのようだ。
「私はまずホーリーフィールドで結界を張る予定です。その後はホーリーで援護になると思います」
「ふんふん、ホーリーフィールドがあれば突進はすこしは防げるかな‥‥ガルディさんは?」
『わしは見ての通り弓が獲物だ。岩陰や木の陰から弓矢で攻撃させてもらうぞ』
「ああ、弓の援護があればずっと戦闘が楽になるね。一匹一匹倒していこうか!」
かくして作戦は決まり、いよいよ戦闘が迫ってくるのであった。
「もし怪我などなされた場合は、すぐにリカバーをかけさせていただきますので」
そしてロータスはどこまでも献身的であった。
「‥‥いたね‥‥」
ホーンリザードを探すこと数十分。突進のあとがあるためにそう難しくはなかったが幸運にもすぐに見つけることができたようだ。
群れているのは3匹のホーンリザード。とりあえずはそれだけしか居ないようだ。
「それじゃ‥‥がんばろうね!」
小声で言うと、ロータスとガルディの肩をぽんぽんと叩くルカ、いよいよ戦闘開始である。
「ホーリー!」
「くらえぃ!」
同時に一匹を狙って放たれた矢とホーリー。警戒すらしていなかった一匹のホーンリザードに吸い込まれるように二発の攻撃は命中する。
とたんにじたばたと相手を探すのだが‥‥いかんせん頭の悪いトカゲ。こっちを見つけるまでに時間がかかっているようだ。
「お、チャンスだね! どんどん打っちゃえ〜!」
びしびしと飛ぶホーリーと矢。三本目の矢が刺さる頃には一匹目のホーンリザードは動かなくなった。
すると残る2匹がようやくこちらに気付いたようで、真っ直ぐ突進してくる。
そこでひとり囮といったように前にすっとでたのはルカ。蜥蜴たちのまえに立ちはだかると、もちろんホーンリザードはそのルカ目掛けて突進するのだった。
その大きな角を突き出しながら突進して攻撃力を増加させるのがホーンリザードの得意技なのだが‥‥別段命中率が増えるわけではない。
「ほら、こっちおいでー♪」
そして、ひきつけるようにしてから横っ飛びで二匹とも回避! 返す一撃で一匹にしたたかに切りつける。
するとカウンターで威力を強められた攻撃に深々と切りさかれ、ふらふらとよろめいたホーンリザードにホーリーが直撃してホーンリザードはどさりと崩れ落ちる。
そして、三匹目を倒してほっと一息ついた瞬間‥‥なんと後ろの茂みからもう一匹がやって来て、ロータスに向かって一直線に突進したのだった!
「ちっ! しまった!!」
届かないルカは思わず声を上げ、寡黙にガルディが放った矢が深々と突き刺さるも最後の1匹はその歩みを止めない。
しかし‥‥
「大丈夫ですよ」
ロータスがそういって微笑む。するとその1匹は見えない壁に弾かれるようにして歩みを止めたのだった。
事前に張っていたホーリーフィールドが効果を発揮したのだった。
「いまだっ!」
ルカが駆け寄って一撃を与え、止めの一撃をガルディが放つ。
こうして無事に全てのホーンリザードを退治することが出来たのだった。
『ふむ‥‥どうやらちょっと手入れすればどの鏃も問題無さそうだ‥‥』
回収した矢を調べながらガルディが武具の手入れをしている。ちなみにルカの剣も再び手入れしてくれているようである。
するとそこに妖精がやって来た。
「みてたよーお姉さん! 凄い強かったね〜」
シフールよりもさらに小さな人影、ディナ・シーという妖精である。
きらきらと光る粉をときおり振りまきながら、冒険者たちを褒める妖精。
「皆みたいに強い冒険者がたくさん居れば‥‥僕たちも安心〜! そのうち助けてもらうときはよろしくね♪」
どうやら妖精たちは強くて信用の置ける冒険者を探しているようだ。
「ああ、また役に立てるときがあったら教えて欲しいな♪」
ルカが答えると、冒険者たちも頷くのだった。
「ありがとー。あ、これが約束の金〜」
そういって、金貨一枚分ほどの小さな金の塊をもらう一同。
それは妖精たちからのお礼と期待のこめられたもので、こうして無事依頼は終了したのであった。