【自学自習】 日常の光景

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月12日〜09月17日

リプレイ公開日:2005年09月22日

●オープニング

 妖精王国にまつわる様々な出来事で沸き立つケンブリッジ。
 だけども、別に学校は休みではないので、授業は普通にあって‥‥
 しかも夏休みはすでに終り、休みボケの生徒たちはひーひーいいながら課題をこなしているとか。

「‥‥えぇぇぇぇぇ! 明日までに作るんですか?! 無理無理無理無理ですってばぁー!」
「‥‥負けたら補習、負けたら補習‥‥(虚ろな目で素振りしながら)」
「ああぁ、こうなったら山張るぞっ! ‥‥ってか、範囲が広すぎる〜!!」
「もう、テストの問題を盗むしかっ‥‥って嘘ですよぅ先生〜(滝のように冷や汗を書きながら)」

 とまあ、休み明けの生徒たちは鈍ってるわけで。
 いろいろな依頼が集められたのだった。

「ふむ、どの生徒もぼーっとしおって‥‥鍛えなおすついでにいろいろと手伝ってもらおうとおもってな」
 そういってギルドにやってきたのはマジカルシードのアラン先生。
「我輩の手伝いを数日してもらおうか‥‥報酬は払うがその分働いてもらうぞ」
 そういって去って行くアラン先生。
「最近生徒たちの手を借りるのが難しくてな」
 今度はフォレストオブローズのガストン・ビアス先生である。
「休み期間でちょっと鈍っている馬たちに運動をさせたいんだが、手伝うための生徒を募ってくれ」
 こちらは、どうやら馬のための依頼のようで。

 しかし先生たちとはまた違った依頼人もいるのであった‥‥。
「久しぶりに手合わせでもしたいとおもってさ」
 フリーウィルの女剣士、ルカがそう言っていつものようにギルドを訪れる。
「ねぇねぇ、補習になっちゃったからこの翻訳手伝ってもらえない?」
 てへへと笑いながら、古代魔法語の書かれた羊皮紙を見せるのはマジカルシードのエリンだ。
「あー、やっぱり姉貴に負けっぱなしはイヤだし稽古したくて‥‥」
 なんだか決意に燃えてやってきたのはフォレストオブローズの少年、マリウス。

 依頼人によって目的は違うようだが、いろいろと力を貸してあげるのもよいだろう。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea1364 ルーウィン・ルクレール(35歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2253 黄 安成(34歳・♂・僧兵・人間・華仙教大国)
 ea7234 レテ・ルシェイメア(23歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea8367 キラ・リスティス(25歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea8870 マカール・レオーノフ(27歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea9520 エリス・フェールディン(34歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0888 マリス・メア・シュタイン(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3489 テリー・ジャックマン(25歳・♂・バード・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●魔法使いの少女と古代の浪漫?
「むー‥‥これが『人』でこっちが『水』だから‥‥どういう意味だかわかんない〜」
 前途多難な様子のエリン。今回の依頼人の一人でもある。
 補習の課題をこなすためにちょっとお手伝いが欲しかったらしいのだが‥‥
「んー、私も分からないのよねぇ‥‥」
 マリス・メア・シュタイン(eb0888)も一緒に課題をにらめっこであった。
 同じマジカルシードの学生同士とは言え、得意科目はそれぞれ違うので、古代魔法語が苦手な生徒も珍しくはない。
「って言うか、精霊碑文学や精霊魔法学だったら何とかなるんだけど‥‥古代魔法語は専門外なのよねぇ」
 二人とも得意ではない分野、作業はあまり進まない‥‥だが、
「ま、何とかなるでしょ。大丈夫大丈夫、最後まで付き合ったげるから♪」
 年長のマリスは、エリンを励ますようにぽんぽんと肩をたたき、それにエリスは笑顔で応えるのであった。
 そしてそこにもう一人、
「どれくらい進んでいますか?」
 ひょこっと顔を出したのはテリー・ジャックマン(eb3489)。探検家を生業とする彼はまた別の方法でエリンを助けるのである。
「あ、テリーさん。そーだ、この前の続きを聞かせてほしい〜」
 いきなりエリンは休憩モード。それもそのはず、テリーはエリンの興味が続くようにと自分が経験した探検の話をしているようだ。
 まだまだ駆け出しに見えるテリーの話の真偽はさて置いて、エリンは気に入っているようである。
「そうだな‥‥とある遺跡にいったときの話だが、実は途中で食料を盗まれてしまって‥‥」
「うんうん、それでそれで?!」
 エリンは勉強は好きじゃないが浪漫は好きなタイプのようで。
 横ではマリスもお茶を飲みながら楽しそうに耳を傾けている。
 そんなこんなで‥‥あれ、課題はどうなったのだろうか? ともかく、のんびりと時間は進むのであった。

「机上の勉強だけでは見えないこともあるからな。‥‥ただ、言いたいことは伝わったのだろうか?」
「うーん‥‥とりあえず課題が終わってないことだけは確実ね」
 こっくりこっくりと勉強の途中で居眠りしているエリンを挟んで。
 少々心配顔のテリーと、いまだに楽天的なマリスが会話する。まだまだ道のりは長そうであった。
「ま、なんとかしましょう♪ ほらエリン。起きて起きて、続きやるわよ!」
「んぇ? ‥‥あ、マリスさんおはよー‥‥」
「おはよーじゃないわよ、ほら続き続き〜。続きやったらまた話聞けるわよ〜」
「ん〜‥‥なら、頑張る〜」
「頑張ってくださいね。それじゃ、私はお茶持ってきますから」
 そんなこんなで時間は進み、やっとこ課題が完成したのは期限ぎりぎり。
「二人とも本当にありがとう♪ なんとか終わった〜」
 目の下にクマはあるけど、笑顔のエリン。
 彼女はお礼だといって、テリーに学校でもらったという古代のメダルを差し出したのであった。

●騎士の少年と先生と馬
「ほらほら、脇が甘いですよ」
 木剣で打ち合う青年と少年。悩み多き少年マリウスの相手をしているのはマカール・レオーノフ(ea8870)だ。
 手数で圧倒されているマリウスは防戦一方、必死で木剣を振るっている。
「はい、隙あり」
 上段の一撃を防ごうと、腕を掲げたマリウスの腕を軽く打ち、ディザームによって武器を落とさせるマカール。
「んー‥‥やっぱり、もうちょっと度胸をつけないといけませんね。恐怖心があると今一歩が踏み出せませんしね」
「‥‥恐怖心‥‥」
「ええ、無謀と勇気は履き違えてはいけませんが、やはり勇気は必要ですから」
 そういうと、後ろで控えていたルーウィン・ルクレール(ea1364)に目配せしてマカールはルーウィンと交代する。
「次は私が相手になります。焦りは禁物ですよ」
 そういって、どんと踏み込むと苛烈な一撃を繰り出すルーウィン。
 騎士二人からしっかりとしごかれるマリウス少年であった。
 その後の乗馬の訓練も終り、暫くして、
「昔に比べれば確実に伸びてますよ」
「うーん、そうなのかなぁ‥‥」
 ルーウィンからそういわれて、じっと自分の手をみるマリウス。あまり自覚はないようである。
「それじゃあ、訓練の続きとしてガストン先生のところに行きましょう!」
「えっ? ‥‥あの先生苦手なんだけど?」
 突然のマカールの提案に大して露骨に嫌な顔のマリウス。
「そんなこと言わずに。馬の世話なども騎士の必須技能ですからね。さ、行きましょう」
「あぁぁ、ちょ、ちょっと‥‥」
 ずるずると引っ張られていくマリウス。マカールはにこやかなまま強引に手伝いへと行くのであった。
 そして、ガストン先生と一緒にとりあえず、馬の世話を始める2人であった。
「おお、来てくれたか。私は忙しいからあまり顔をだせんのだがよろしく頼むぞ」
 そう言いながら、ばしんばしんマリウスの肩を叩くガストン先生。しばらく一緒に作業をする。
 さらにガストン先生が居なくなってからも馬の世話を続けるのだった。そして、馬場にて。
 二人並んで馬を走らせながら、悩み相談が始まった。
「さて、周りには馬しかいませんし、悩みごとを吐き出すなら今ですよ」
 にこにこと言うマカール。するとその言葉に応えて、
「やっぱりどうにかして自立したいんだ‥‥姉離れしたいっていうか‥‥」
「そうですね、でもお姉さんも急に弟が離れていったら寂しいのかもしれませんよ」
「寂しいかぁ‥‥」
「まぁ‥‥たまにお姉さんと模擬戦なんかをして、実力を認めてもらうというのもいいかもしれませんね」
「なるほど‥‥模擬戦かぁ‥‥」
「ええ、だからこそもっと一生懸命訓練しないといけませんね。さて、続きも頑張りましょうか」
「うぇ‥‥は、はーい‥‥」
 ということで、訓練を続ける3人の騎士なのであった。
「馬での戦術なんかを教えてあげたいんだけど‥‥もっと腕を上げてからかな」
 ルーウィンが愛馬の首を撫でながらそう言う。
「久しぶりに馬に触れてやっと勘が戻った気がしますねぇ‥‥マリウス君も訓練を忘れてはいけませんよ」
 そういったのはマカール。そのマカールにマリウスはお礼だと言ってぶっきらぼうに一冊の本を押し付け、二人に深々と頭を下げたのだった。

●剣士と拳士
「せぃっ!」
「はっ!」
 木々の間に響く気合の声。
 女剣士ルカと手合わせ中なのは黄安成(ea2253)。もうすでにかなりの付き合いである。
 依頼でちょくちょく顔をあわせては、訓練のための試合をする仲の2人。その関係は‥‥良い友達以上であることは確かだろう。
 安成は新しく手に入れた武器、金剛杵を使い独特の柔軟な動きで攻撃を繰り出す。
 それに対してルカはいつのも戦い方、しかしお互い技量は上がっているため、油断はならないのだ。
「ここじゃのっ!」「甘いっ!」
 金剛杵での鋭い一撃、それを木剣で受け止め即座に反撃するルカ。
「当たらんのぅ!」「くっ、だめか‥‥」
 足さばきでするりと反撃を避けると蹴りによるトリッピングで足を払う安成。
「それはもう慣れたよっ!」
 しかし、その足払いが来ることを予測していたかのように、ルカは飛び上がるとそのまま安成に蹴りを放つ。
 辛くも蹴りを腕で腕で受けたものの、バランスを崩した安成にぴっと木剣を突きつけてにっと笑顔を浮かべるルカ。
「これで、36勝35負12引き分けだな。ん、いまのところ私の勝利だな♪」
「なに、そんなこと言ってられるのも今だけじゃ。すぐに追い抜かしてやるからのう」
 と、いつもこんな調子の2人であった。
「それで、ルカ。お前さんはこの夏休みの間なにをしとったんじゃ?」
「んー‥‥とりあえず、いつもの訓練と‥‥ああ、妖精王国とかでごたごたしてるのの手伝いをしたこともあった」
「ほうほう、確かにそんな話も聞いたのう」
「んじゃ、安成はどうしてたんだ?」
「わしは、キャメロットに戻って冒険者として依頼を受けて過ごしていたんじゃ」
「へー‥‥夏休みの間見かけなかったのはそのせいか。んで、どんな冒険をしたんだ?」
「ああ、それはのう‥‥」
 なかなかに仲が良さそうである。これもまた一つの学生たちの形なのであった。

●怖い先生と生徒たち
「‥‥いつもよりお仕事が増えてますね‥‥」
 日ごろアラン先生の研究室の片付けなど雑事もこなす弟子の一人、キラ・リスティス(ea8367)がそう呟いた。
 最近いろいろと忙しかったのか、アラン先生の研究室はかなりすさまじい状況。アラン先生はだらしないと言うわけではないのだが、片付ける暇を惜しんで作業するので、どんどん余剰なものが溜まり埋もれていったという感じである。
「でも、とにかく頑張りますっ」
 ぐっと小さくちからこぶ。そしてどんどんと片づけを始めていくキラであった。
 一方その頃、お手伝いとしてわざわざ来てくれた2人は‥‥
「‥‥君か」
「‥‥お久しぶりです。もう、握手はしませんよ」
 異性に触れると狂化してしまうエリス・フェールディン(ea9520)は、一度迷惑をかけたことから、今回はちゃんと警戒しているようで。
 ただ、薬草学と錬金術の関連に興味津々なのか薬草棚を見つめているので、アラン先生はかすかな不安を感じたのであった。
「今回はよろしくお願いします」
 レテ・ルシェイメア(ea7234)もそう言って手伝いにやって来た。彼女は主に薬草関連を手伝うようだ。
「あ、この薬草は纏めておいていいのですか?」
「ああ、そっちの棚だ。二度といわないからしっかり覚えておけ」
 レテが尋ねることにぶっきらぼうに答えるアラン先生。どうやらいろいろと忙しいようでいつもより怖いのだった。
「アラン先生‥‥この薬草の効果は‥‥」
「主として沈静作用だ。ミス・フェールディンが期待しているような錬金術関連に使うような薬草はないぞ」
 こちらも先手を打つアラン先生。エリスは錬金術をこよなく愛する学者なので、何事でも錬金術中心に考えるようだ。
 しかし、アラン先生の研究分野の薬草学はどちらかといえば治療のためなどの薬学、錬金術とあまり接点がないのであった。
「‥‥それでは、この本を借りていいでしょうか?」
 ケンブリッジ周辺の植物の分布などを調べた本を示すエリス。
「ふむ‥‥その本はもう使用しないな。読み終わった後で図書館に返すというのなら貸してもいいだろう」
「はい、それでは返しておきます」
 エリスは錬金術のためならめげず諦めず、どこまでも貪欲なのであった。

「‥‥別に退屈ってわけじゃないんですが‥‥アラン先生は息抜きとかしないのでしょうか?」
 こっそりと研究室を抜け出したのはレテ。流石に凶悪な雰囲気のアラン先生と一緒にいるのは慣れている弟子でもなければ難しいのだろう。
 一人静かに木陰に腰掛け、歌を口ずさむレテ。彼女なりのリラックスの方法らしい。
 と、そこにもう一人の人影が。エリスが本を抱えてやってきたのであった。
「レテさん、少しいいでしょうか」
「っ! は、はい‥‥いいですけど」
 ちょっとうとうとしていたレテは少々吃驚、そしてエリスのすることといえば‥‥もちろん錬金術の啓蒙である。
「アラン先生が質問に答えてくれないので、お聞きしたいのですが‥‥この薬草の効能はわかりますか?」
「こ、効能‥‥たしか、防腐とかに使えると思うのですが‥‥」
「防腐ですか、もしかしたらそれも錬金術に‥‥これでまた一歩練金術の高みに近づけました。どうですレテさんも勉強してみませんか?」
「私がですか? えっと、その‥‥」
「錬金術はいいですよ! たとえば‥‥」
 一方その頃研究室で。
「この写本は‥‥古代魔法語関連なので、こっちですね」
「‥‥‥‥」
「こっちには‥‥タイトルの翻訳を小さな羊皮紙の切れ端にメモして貼り付けておきますね」
「‥‥‥‥」
 ひたすら無言のアラン先生の前で、作業するキラ。流石にキラも内心どきどきである。
「‥‥あの2人どこにいったんでしょうね‥‥」
「‥‥‥知らん」
 ぼそっと呟くアラン先生。かなり怖い声だったようで、あわててキラも作業に没頭するのだった。

 そして、戻ってきた2人もかつてないほど怖い顔をしているアラン先生を見て、作業に戻ったのだった。
「あ、あの‥‥こんなのがでてきたんですが、どうしましょう?」
 部屋の隅で埃を被ったいろいろな道具類を片付けていたキラが持って来たのは、優美な羽飾りだった。
「‥‥多分もらい物だろう。どこでもらったか覚えてはいないが‥‥いらんから持って行ってくれ」
「あ、ありがとうございます‥‥‥‥わぁ、きれい‥‥」
 どことなく嬉しそうなキラであった。

「先生は息抜きとかなさらないんですか? 森林浴とか‥‥」
「作業が終わったら思う存分させてもらいたいものだ‥‥手が止まってるぞ」
 講義は始まらないまでも、皮肉で返されてしまったレテ。作業が終わってからの方が良かったかもしれない。

「‥‥なかなか錬金術への応用は難しいですね‥‥」
 薬草学を修得しようにも、やっぱり一朝一夕では無理なのは当たり前。
 話は聞いたものの、なかなかに長い道のりのようであった。

「自分で作れればもっといいんですけど‥‥」
 そして手伝いもある程度片付いたある日の夕方、キラは羽飾りのお礼とばかりに、ケーキや焼き菓子などを買い込んで研究室へと戻る。
「あの‥‥片付けも何とかなりましたし、お一つどうぞ‥‥えっと、その、よろしかったらですけど」
 弟子ですらびくびくしながらアラン先生に焼き菓子を勧める。他の2人はその様子をじーっと見ている。
 するとアラン先生は見ていた分厚い写本から顔を上げると、ひょいと焼き菓子を手にとってぱくり。
「‥‥ご苦労だったな」
 そしてそう一言言うと、キラの頭にぽんと手を置き、二人の手伝いのそれぞれご苦労と小さく声をかけて、研究室の奥に引っ込むのであった。
 ‥‥どうやらアラン先生なりのお礼の言葉のようで。
 こうしてやっと、依頼の幕が下りたのであった。