果て無き黄金への夢

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:3 G 71 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:09月18日〜09月23日

リプレイ公開日:2005年09月29日

●オープニング

 キャメロットに住むとある下級貴族の邸宅にて。
「‥‥これをご覧下さい。我らの研究が達成された暁にはこの数倍の金が手に入るのですよ」
「むぅ‥‥これほどの金があれば‥‥」
「しかし、まだ準備が足りません。少々の資金と時間をいただければ必ずや‥‥」
「うむ、それぐらいは提供してやろう! その代わり必ずや成功させるのだぞ」
「はい、お任せください‥‥」
 成り上がりを狙う貴族は黄金を夢見て。
 そして、既に黄金を手に入れたときの計画を立て始めた貴族を尻目に、踵を返したローブの男女たちはフードの陰で蛇のような笑顔を浮かべていたのであった。

 数週間後‥‥
「ええ、直接の依頼元の名前を出すわけには行かないのですが‥‥」
 声を潜めてギルドで依頼の説明をしているのは、眉間に深いしわを刻み込んだ苦労人風の男。
 とある貴族の下で働いているらしいのだが、その表情はどこまでも暗い。
「実は最近同じような被害にあったという方が多いのですが‥‥我が主君もその一人なのです」
「被害‥‥というと、錬金術師を騙る者たちに騙された、という奴ですね」
「ええ、かなりの量の金を見せて信用させ、数週間にわたり研究と称し、資金を奪った挙句唐突に行方をくらますというやり方です」
「‥‥貴族様は被害にあっても、そうそういいださないからなぁ」
「ええ、ですから被害はもっと広範囲に及んでいると思います。我が主君はいたくご立腹で、私を介して依頼をだせとおっしゃりまして‥‥」
「ああ、あなたも苦労してるんですね。分かりました、かなりの被害がでているようですし、早急に冒険者たちに依頼を啓示しましょう」
「助かります‥‥依頼料のほうは最大限融通しますのでなにとぞ、よろしくお願いいたします」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea0163 夜光蝶 黒妖(31歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea0933 狭堂 宵夜(35歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 ea1519 キリク・アキリ(24歳・♂・神聖騎士・パラ・ロシア王国)
 ea2155 ロレッタ・カーヴィンス(29歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea5556 フィーナ・ウィンスレット(22歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea8773 ケヴィン・グレイヴ(28歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0117 ヴルーロウ・ライヴェン(23歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

リノルディア・カインハーツ(eb0862

●リプレイ本文

「貴族さんを騙してお金とるなんて‥‥正体バレたら酷い目にあっちゃうよ。それに真面目な錬金術師さん達にもほんと失礼だよね」
 キリク・アキリ(ea1519)が言う。確かに世の錬金術師たちにはいい迷惑だろう。
「やっぱり、見せた黄金は『愚者の石』を使ったのかな‥‥」
 依頼人も、他の貴族の情報を知っていなかったため、今キリクは地道に足で情報を集めているところだった。
 しかし、なかなかに情報が集まらない。
 まず第一に、ローブを着ている怪しい人間を目標に情報を集めようとするのだが‥‥どうやら普段は違う格好をしているようだ。
 普段からわざわざ怪しげな格好をして街をうろつく必要も無いし、一種の迫力付けといったところだったのだろう。
「貴族さんたちから直接情報は聞けないけど‥‥働いてる人は知ってるかも」
 その観点から、貴族の屋敷で働いている人々がやってくる酒場へと足を運ぶキリク。そして
「‥‥ああ、そういえば最近急に旦那様が太っ腹になったっていう奴がいたな‥‥」
「ん、これで怪しそうな貴族さんが3人目‥‥あとで貴族のお使いの依頼主さんに住所聞けばみんなの助けになるかな」
 嬉しそうに言うキリク。だが、彼を酒場の隅からじっと見ている人物がいたことに誰も気付いていないのであった。
 そして、仲間たちに報告するために戻るキリクの後をその人物はそっとつけて行くのだった。

「ふ、一ヶ月、または二ヶ月くらい前に大量に金を買い付けた者とか居ないかね? または金箔とかな」
 威風堂々と、キャメロットの街中を闊歩する青一色の姿はヴルーロウ・ライヴェン(eb0117)だ。
 ハーフエルフということもあって、あまり良い顔はされていないが、本人はちっとも気にしていない様子。
 ちなみに本日の聞き込み先は、長距離荷物を輸送することの多い行商人たちに聞き込みの模様。
「ぁあ? そんなこと聞いたことねぇなぁ‥‥だいたいその金が買える金があるってことはそれだけ金貨持ってるってことだろう?」
 つまり、金を買うということはあまり一般的ではないのである。
「ふむ‥‥そうするとやっぱり、見せ金は偽者か‥‥魔法的なものだろうな」
 聞き込みもそこそこ一度依頼主のところへ戻ろうとするヴルーロウ。
「しかし、こんな聞き込みをしていたら、詐欺グループに感づかれてしまいそうだな」
 ふと苦笑を漏らして言った言葉。だが、彼の予想は完全に的中していたのだった。
 第一、金について尋ねること自体が非常にまれであり、それに聞き込み行動をした2人は少々目立ちすぎたのだった。
 そして、ヴルーロウもばっちりと後をつけられてしまうのであった。

「正直、日頃威張ってやがる貴族どもが騙されたってのは愉快すぎてしょうがねーがな」
 日憎げな笑みを浮かべているのは狭堂宵夜(ea0933)だ。だがその目は事件の真相を見極めようとしている。
「ま、こっちもプロだし、しっかり仕事はやるが‥‥明日の飯のために‥‥ってか、やれやれだぜ」
 しかし、やはり貴族に対する反感にはなかなかの物があるようだ。
「ま、確かに欲の皮が突っ張った愚かな貴族どもの事などどうでも良い話だがな」
 ケヴィン・グレイヴ(ea8773)も冷笑と共に言い放つ。
「だが‥‥他人を騙して金を稼ごうなどと考えているクズどもに世の中の厳しさを味あわせるのも悪くないだろう」
 そういってにやりと笑みを浮かべるのだった。
「しかし、怪しげなローブ姿の目撃情報は無いということらしいし、やはりキリクの情報を元に張り込むしかないのかな」
 そういって目を向けた先には瞑目する夜光蝶黒妖(ea0163)。
「‥‥そうだね」
 無表情にぽつりと言うと、すっくと立ち上がる黒妖。
 そして、ケヴィンと宵夜に顔を向けるという。
「‥‥さて‥‥行こうか‥‥」
 追跡が始まる。

 張り込みを始めてから数日。目星をつけた貴族の邸宅から2人組みが出てきたのを黒妖は目にした。
 依頼人から詐欺師たちの背格好を聞いていたために、ぴんときた黒妖。
 すぐさまそれをケヴィンと宵夜の二人に伝えると、尾行を始めたのだった。
「‥‥しょーやもついてきてるね‥‥急ごう‥‥」
 最低限の言葉とハンドシグナルで静かに後を付けるケヴィンと黒妖。
 その2人を追う様にしてついてきているのが宵夜。目立つのを避けるための二重尾行だ。
 どこかアジトなどに向かえば儲け物。とにかく証拠さえつかみさえすれば、冒険者の勝利であるが‥‥。

 2人は人気の無い一角で立ち止まった。幅の広い道。片方には木立が広がり、もう片方は無人の邸宅の塀が続いている。
 急ぎ逃げ道をふさぐように駆け出す黒妖とケヴィン。木立を抜けて相手の前に廻りつつ、呼子笛を吹く!
 高く高く響く呼子の音。そして、立ち止まっている2人組みを完全に3人は包囲するのだった。
 黒妖とケヴィンが前方、後ろから追いついた宵夜が後方。距離はおよそ6〜7メートルほど。
 すると、2人組の小さいほうがすと手を上げ、指を突きつけると黒妖に言った。
「貴様たちだな‥‥我々をかぎ回っているのは」
 どうやら尾行は、感知系の魔法によって筒抜けだったらしい。
 その瞬間3人の体を重圧が襲う。見れば背の高い方の影、茶の髪の女性の体が淡い茶色の光で耀いている!
 アグラベイションの範囲に囚われてしまったらしい。
「お前たち無知蒙昧な輩どもに我らの考えを理解してもらおうとは思わん‥‥が、邪魔だてはさせん」
 小柄な影、頭の禿げ上がった不気味な老人はそういうと、にまりと笑みを浮かべる。
「これは警告だ‥‥二度と我らの邪魔をするな」
 そういうと老人の周囲から瞬時に猛烈な勢いで煙が発生する。高速詠唱によるスモークフィールドのようだ。
 重圧のせいでままならない手足を引きずり、駆け出したのは宵夜。
「これで逃がしてたまるかっ!!」
 濃い煙を掻き分けるように進むと黒い影。先ほどの老人の後姿だ。
 間合いを詰めながら、振るった刃は確かに老人の背中を袈裟懸けにして‥‥その老人は一瞬にして灰になる。
 アッシュエージェンシーによる身代わりだ。
 そして煙が晴れたときに3人が見たものは、塀にウォールホールで空けられた穴だけであった。
「‥‥ちっ‥‥」
 ケヴィンの忌々しげな舌打ちだけが虚しく響くのだった。
「たぶん‥‥女の方が地のウィザード‥‥バイブレーションセンサーで‥‥尾行もばれてたね‥‥」
 黒妖が言う。するとケヴィンも続ける。
「そして、じじいの方が火のウィザードか‥‥生かしたまま捕らえようと考えてたせいで先制攻撃が遅れたか‥‥」
 手の中に収めたままのダーツを眺めるケヴィン。
「‥‥ちっくしょう!」
 そして宵夜は忌々しげに呟くのだった。

 一方その頃、いまだ聞き込み中のヴルーロウとキリクのところにも不審な影が忍び寄っていた。
 情報の共有のために、待ち合わせ場所に来た2人。調べたことを話し合っていると、すっと近寄ってくる2人の人影が。
「‥‥君たちはどなたかね?」
 尊大にヴルーロウが尋ねると、二人のうち細い方が言う。
「お前たちがこそこそかぎまわってるのは知ってるんだよ‥‥これ以上は、関わるな!」
 そういうと、2人のうちで太った方が細い方に氷で出来た輪を手渡す。アイスチャクラだ。
 細い方は、チャクラを投げると、そのチャクラは2人の体をかすめて、ふたたび手に戻ってくる。
「‥‥今のは警告だ」
 そういうと、太った男を中心に霧が渦巻き2人の姿を覆い隠す。闇雲にキリクとヴルーロウがつっこんで行っても、すでにそこには誰もいないのであった。
「逃げられてしまいましたね‥‥」
 唖然といった感じでキリクが呟く。
「まったくだ‥‥さて、どうしたらいいものだか‥‥」
 ヴルーロウが呟くのだった。

 そして依頼も終りを迎える。
「諸君たちに頼んだ詐欺集団の捕縛は‥‥残念ながら達成できませんでした」
 そういう依頼人の男性。
「しかし諸君たちが派手に動いた結果、彼らは貴族の屋敷から姿を消したそうでして‥‥その分の費用がなくならないですんだのですよ」
 そういって依頼人は、最後に言う。
「ということで、報酬は払いますが‥‥次はまた違う手段を考えて見ます。ありがとうございました」
 そういう、依頼人のなんとも言えないやりきれなさが伝わってくるのであった。