獣たちの反撃?!

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:5

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月28日〜10月03日

リプレイ公開日:2005年10月07日

●オープニング

 大きな騒乱も一段楽したのか、ケンブリッジは徐々に平穏を取り戻しているように見える‥‥。
 だがしかし、混乱の最中だからこそ悪事を働く奴も居る。
「‥‥へっへっへ‥‥これをみてみんな腰を抜かしやがれ‥‥」
 目の前では怯えているのか、ぶるぶると震える小さい影。
 その小さい影にじりじりと言葉の主は近づいていく。その手にはぽたぽたと液体を滴らせるナニカ‥‥

「きゃぁぁぁぁ〜!!」
 学園に響く絹を裂くような悲鳴。
 自分の最愛の友人の変わり果てた姿を目にして彼女は驚きの声を上げる。
「‥‥なんだかかわいいわ!!」
 ‥‥その目の前には、なんとも可愛く『眉毛を書かれた犬』が一匹。
 こころなしか、悲しそうに尻尾を巻いている犬さんであった。
「くぅん‥‥」

 そう、ペットの犬や猫に眉毛を書き込む悪戯が頻発していたのであった。
「ということで、許せません。私の家の子たちは被害に遭っていませんが、いつ被害に遭うかわかりませんし」
 怒り心頭といった様子の女性は、フォレストオブローズの学生ダイアナ。
 彼女の家にはたくさんの犬(白もこもこ)とたくさんの猫(どいつもやんちゃ)さらには馬までいるという根っからのの動物好き。
「ぜひ私たちの手で、犯人を捕まえましょうっ! 犬たち猫たちも一緒に犯人を追うのですっ!!」
 ずらりと勢ぞろいする犬と猫たち、彼らも‥‥たぶん士気十分なんだろう。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea1434 ラス・カラード(35歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea5382 リューズ・ウォルフ(24歳・♀・バード・パラ・イギリス王国)
 eb0486 グレイス・ストウナー(35歳・♀・ナイト・エルフ・ノルマン王国)
 eb2554 セラフィマ・レオーノフ(23歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

●犯人をさがせっ!
「動物にそのような悪戯を‥‥可哀想な事をするものです」
 ラス・カラード(ea1434)が言う。彼はダイアナの家の動物たちとの関わりも多くその分憤りの大きいのかもしれない。
 しかし、どうやら他にも目論見があるようで‥‥
「ダイアナさん、我々で協力して何としても犯人を捕まえましょう」
 がっとダイアナさんの手を掴むと決意にめらめら。なにやら他の炎も燃えているようで。
 ともかく、秘めた思いを原動力にラスは頑張っているのであった。
「では、ショーン君。一緒に頑張りましょう! ‥‥ダイアナさんも一緒に」
 と言いかけるラスに気付かず依頼人のダイアナは
「それでは私も情報収集を。また後でお会いしましょうね」
 たったか一人で行ってしまったのであった。
「‥‥じゃあ、行こうかショーン君‥‥」
 わうっ!(ウチのご主人様に手ぇだす気なら覚悟しとけよ〜)
 こころなしかショーンの視線が痛いラスであった。

「‥‥あなたに眉毛書いたの、どんな人だったのか覚えてるかな?」
 うー‥‥ばうばうっ!(小さい奴だった!)
「それじゃあ髪の色とかは覚えてる?」
 わぅ?(イロってなんだ?)
 被害にあった犬、ロドリゲス君とお話しているのはリューズ・ウォルフ(ea5382)。
 テレパシーを使って被害者‥‥否、被害犬からの聞き込み中である。
「じゃあ、何人ぐらいだった?」
 わふ‥‥わわんっ!(ちっこいのが2匹ぐらいいた〜)
 言葉が通じるのが嬉しいのか、まだおこちゃまのロドリゲス君はしっぽをぶんぶか振りながら答える。
 とりあえず、ちょっとずつ集まる犯人たちの情報。
「うーん、やっぱり犯人たちは、子ども‥‥なのかな?」
 しばし黙考‥‥すると横で待っているロドリゲス君とダイアナの飼い犬のイアンが会話してるのが聞こえたりする。
 ちびっこいロドリゲス君が吼える。わんわんっ♪(絶対犯人を捕まえてやるんだー♪)
 するとどっしり構えたイアンが答える。ばぅっ!(ああ、無理しない程度に頑張らないとなぁ‥‥)
 いよいよ次は足で犯人を追うことになる。

「犯人たちをがっしり捕まえて、お仕置きです! 目には目を! 犬眉毛には犬っ鼻の刑です!!」
 犯行現場と思しき場所の周囲で聞き込みを続けながら気炎を上げるのはセラフィマ・レオーノフ(eb2554)。
 お嬢様風な外見の印象とは異なり、なかなかアグレッシブなお嬢さんである。
 今日は眉毛犬が目撃されていた市場の近く。露天などがちらほら出ている。
「ここらへんで有名な悪戯っ子とか居ませんか? 最近インク壷もってうろうろしてたりするようなのとか!」
「うーん、結構悪戯っ子はいるけどねぇ‥‥」
 答えているのは通りすがりのおばちゃんである。
 望みの情報はなかなか集まらないが、とにかく証拠集めを地道に行うらしい。
「まぁ、一緒に頑張ろうね。クリストファー」
 ばうっ! と、クリストファーも答えるのであった。

「みんな、余り離れないでね」
 ぞろぞろと猫を連れて移動しているのはグレイス・ストウナー(eb0486)。
 自分の飼い猫ビビアンとダイアナの飼い猫数匹を従えたグレイスは、ただいまパトロール中であった。
 オーラテレパスを使って、動物たちに離れないように言い聞かせるグレイス‥‥しかし
 にゃー♪(こっちからおいしそうな匂いがする〜)
 うにゃー♪(こっちの抜け穴なんだかいいかんじ〜)
 ふみゃー♪(ひなたぼっこしたい〜)
 首に鈴をつけたビビアンだけはぴたりとグレイスの近くにいるが、どうしましょうという様に主人へと視線を向ける。
「‥‥やっぱり、猫に団体行動を期待するのが間違っているのよねぇ」
 ため息と共に、勝手気ままに歩き出す仔猫たちを頑張って指揮するグレイスであった。

「目を離した隙に悪戯をされる危険性もありますが‥‥」
 動物を連れて歩くことは逆に危険だと思ったのか大宗院透(ea0050)がそう呟く。
 しかしどうやら相棒を囮に使うことにすることで、危険性を逆手に取る作戦をとることにしたようだ。
 その相棒というのは‥‥透の飼い猫である影凪である。
「影凪‥‥同胞のために頑張ってもらいます‥‥」
 きらりと視線のするどい静かな猫の影凪。主人の意図が分かるのか、とことこと一人で歩き出す。
「では‥‥」
 しゅたっと姿を隠す透。土に潜ったか人に紛れたか、忍者の本領発揮である。
 さて、どうなることやら。

●大追跡!!
「さあショーン君、この匂いを覚えてください。インクの匂いで犯人を追跡するのです」
 ラスがショーン君と匂いで追跡する作戦を開始。
 ついたところは、インク壷がおいてある露天商。
 わうっ!(これと同じ匂いだぞー)
「‥‥さすがケンブリッジではインクはそこかしこに溢れているようですね‥‥」
 作戦、ちょびっと失敗である。

 一方その頃、少女と犬のコンビはのんびりお散歩していた。リューズとイアンは一応犯人探しである。
「破天荒な人生より何事も無く平凡な人生の方が幸せだよね‥‥」
 わうぅ。(僕も、家でごろごろしながらのんびり日向ぼっこしたいなぁ。前みたいに一緒にゴロゴロできるヒトがいるともっといい。暖かいし)
 秋の陽気の中、てくてくと歩く2人‥‥そして、ちょっと休憩。
 しかし、そのとき事件は起きたのだった!
 ばぉぅっ!(わ、何をするんだー!!)
 突然聞こえたのはイアンの声。
「はっ! 目を離したすきに‥‥」
 と、ちょっと離れたところで、10歳前後ぐらいのガキ2人に押さえつけられているイアンの姿が。
 ああ、インクにまみれた指で白い毛皮を汚そうとしたそのときっ!
「こるぁあああああ!!」
 どどどどどっ! っと土煙を上げて走ってくるのはセラフィマである。併走するのはクリストファー。
 怪しいなぁと目星をつけていたがきんちょ2人組が大正解だったようだ。
 全速力で走ってくる女の子と犬を見てがきんちょ二人は大慌て。
「やべっ!」「逃げるぞっ!!」
 追跡の開始である。
 逃げるガキ二人に追いかける少女2人と犬2匹。するとそこにさらに追加が。
「追いかけているのがどうやら犯人のようですね‥‥ショーン君! 行ってくださいっ!」
 グットラックをぽむとショーンにかけると、一緒に走り出したのはショーンとラス。
「待ちなさい! もう逃げられませんよっ!」
 さすがに街中で騎馬での追跡は出来ないものの、子どもの足では年長の冒険者たちには敵うはずもない。
 しかし、地の利と子どもの優位がガキたちにはある。狭いところを走りぬけ、抜け道をひたすら逃げる子ども2人。
 いつしか使われていない廃校舎の近くまでやってきている一同であった。

 ところかわって、こちらは囮の影凪。飼い主のために体をはる健気な猫さんである。
 と、そこにやっぱり迂闊にやってきた犯人。こちらはまた別の10歳程の少年2人である。
 そこには影凪と‥‥もう1匹の猫が。ダイアナの家のチビ猫、オーランドである。
「‥‥? いつの間に来たのでしょう?」
 こっそり見守る透が不思議そうに呟く、するとそのオーランドを追いかけてきたのか鈴の音を響かせた猫ビビアンが。
「あなたたち、何してるの!」
 ビビアンを追ってグレイスが登場。現行犯で捕まえようとして‥‥
「うわっ大人が来た!」「見つかったっ!!」
 やはりダッシュで逃げ出すがきんちょ。こちらも大追跡である。
 ぼこっと道端の土から這い出して追いかけ始める透と、猫を連れて走るグレイス。
「どこまで逃げるつもりかしら?」
 グレイスが呟く。どうやらこっちの2人も廃校舎付近へと逃げていくのだった。

●お仕置タイム
「げっ!」「お前たちも見つかったのかっ!」
 遭遇する二組のがきんちょ。どうやら犯人たちが日ごろ集まる場所につい来てしまったようだ。
 進退窮まって、冒険者たちを睨みつけるがきんちょたち。
「さぁ、纏わりついてあげなさい!」
 グレイスの号令一つで突進するのは仔猫たち。
 にゃいにゃい鳴きながらがきんちょ4人に突進して服に爪をガッと引っ掛けたり、足に擦り寄ったり。
 わたわたしてる子どもたち。すると‥‥
「“観念”してください‥‥“堪忍”はしませんけど」
 いつの間にやら忍び足で近寄ってきていた透が、子どもたちの背後に。
 くるくるっと逃げられないように腕にロープをまきつけると4人を数珠繋ぎ。
「‥‥うぅ、ごめんなさーい!」「もうしないからー!!」
 流石のがきんちょたちも、ここでギブアップであった。

 さて、やはり悪いことをした子どもにはお仕置も必要である。
「あとで、眉毛を書いた犬の飼い主やダイアナさんに謝りに行くのは決定として‥‥どうしようかしら」
 さすがにさらし者にするのは忍びなかったのかグレイスがいう。
「動物に落書きしたんですから、目には目を。犬っ鼻の刑です!!」
 インク壷を取り上げて、がきんちょ一人のほっぺたをうにうにつまみながら準備万端のセラフィマ。
「んー、それもそうね。髭とかも書いちゃいましょう。猫の髭っぽく」
 透の命令で仔猫がにゃいにゃいまとわりついて可愛さをアピールしているので、罪悪感が沸きあがってるがきんちょたちにグレイスがとどめの一言。
 しかも長い長いお説教も悪ガキどもを待っているのである。
「いいですか、これ以上の罪を重ねずに悔い改めるというのならセーラ神もきっとお許しになります。さあ‥‥悔い改めなさい」
「‥‥まぁ、お仕置きは皆に任せて、私たちはのんびりしようね、イアン」
 伏せて眠そうなイアンの背中をもふもふ撫でながら呟くリューズ。その姿をみて透が一言。
「“動物”は“胴部”をくすぐられるのが弱点です‥‥」
 確かにイアンはおなかが弱いらしいのである‥‥別に関係ないが。

●依頼のあとに
 そして、悪ガキどもは落書き顔のまま迷惑をかけた人に謝りにいかされ、さらには動物たちにも頭を下げたとか。
「みなさん、本当にありがとうございました」
 礼を言う依頼人のダイアナと、こころなしか嬉しそうな動物たちに冒険者たちは思い思いに声をかける。
「本当に良かったです。犯人が捕まって、何よりもダイアナさんに笑顔が戻って‥‥」
 ちょっぴり気障なラス。ダイアナの騎士であるショーンたちの視線が痛かったが、ダイアナさんの感謝はもらえたようで。
「お疲れ様でした‥‥影凪もご苦労様‥‥」
 こっそり仲間の動物たちにお魚をあげているのは透。透が動物たちを認めたように動物たちも透を信頼しているだろう。
「またどこかで会えたらいいね」
 名残惜しげにイアンをなでるリューズ。イアンもまた会おうとばかりに頭をぐりぐり押し付ける。
「ふふんっ! 今回で懲りて二度とこんな馬鹿なことはしないでしょう!」
 セラフィマがやり遂げたと晴れやかな笑顔を浮かべると、相棒だったクリストファーもしっぽをぱたぱた嬉しげである。
「まぁ、いい薬になったでしょう」
 グレイスが言うと、同意するかのように飼い猫ビビアンも、にぁと鳴くのであった。