開拓者からの依頼

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 94 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月27日〜08月03日

リプレイ公開日:2006年08月04日

●オープニング

 ロシア王国には8つの公国から成り立っているのは周知の事実。
 しかし、ロシアには9つめの“国”がある。
 それは“暗黒の国”‥‥昼なお暗い森林地帯である。
 国土の3分の1を締める広大な大森林、そこはいまだ踏み入った者すら居ない謎に満ちた場所。
 その暗黒地帯を開拓しようと指揮を取るのは、ロシア国王の冠をいただくウラジーミル一世。
 この国王の号令の元に、森林地帯を開拓し文明化していこうとする試みが進められているのだ。

 しかし、この試みには多くの問題が立ちふさがっていた。
 地図すらなく、昼でもなお薄暗い前人未到の地、そこはモンスターや蛮族たちが支配する土地であった。
 厳しい気候に、劣悪な環境。じりじりとしか進まない開拓。
 そして道なき道を切り開く開拓者たちの前に立ちふさがるのは凶悪なモンスターたち。

 そう、暗黒の国で必要とされているもの‥‥
 それは絶対的な強さなのである。

「ボクの村に来てくれませんか?」
 ギルドにて、依頼の説明をするのは純朴そうな青年。
 少々埃っぽい服装だが、その顔は期待に輝いている。
「ボクたちの村はここから一日ほどの所にある開拓地なんですけど、今は順調に広がっています」
 どこか自信に満ちた彼の様子は生気に満ちて、充実している。
「しかし、やはり今のままの防備では心配なのです」
 短い夏真っ只中のロシア、モンスターたちもこの時期は活発になる種も多いらしい。
「なので、道中の護衛と村の周囲の脅威の排除、さらには村の防衛力の強化をお願いしたいのです!」
 こうして青年は開拓地からの依頼を締めくくった。

 開拓が進む今もなお謎に満ちた暗黒の国。
 しかしさまざまな脅威に負けず開拓を進める人たち。
 彼らのために、冒険者たちはいったい何がするのだろう‥‥

 さて、どうする?

●今回の参加者

 eb5584 レイブン・シュルト(34歳・♂・ナイト・人間・ロシア王国)
 eb5621 ヴァイス・ザングルフ(23歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5760 フォルケン・ジルナツェフ(36歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5763 ジュラ・オ・コネル(23歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5780 レティスタニア・クローディス(29歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5807 ティート・アブドミナル(45歳・♂・ウィザード・シフール・イギリス王国)

●リプレイ本文

●村へと向かう道
 冒険者たちがキエフから旅立ってから数時間。旅は長閑に進んでいた。
 野生の狼との遭遇などがあったがそこはさすが冒険者、さっくりと撃退して面目躍如であった。
「いや〜、皆さんやっぱり強いですね〜」
 そして、のんびりした旅の道すがら、駆け出しの冒険者同士で話に華が咲いているようであった。
「狙われるとしたら一番ちいさいレティスタニアだろうから、僕の近くにいるといい‥‥」
「わざわざ、ありがとうございます‥‥それと、私のことはタニア、とお呼び下さい」
 ジュラ・オ・コネル(eb5763)とレティスタニア・クローディス(eb5780)がそんな会話をしている。
 ジュラはハーフエルフのファイター、無愛想ながらも心配りが効いている。
 そんなジュラにのんびりと頭を下げて笑顔を向けるのはウィザードのレティスタニア。
 まだかけだしとはいえジェラもレティスタニアも油断なく周囲に目を配って進むのだった。
「ここらへんはまだ安全なようだな」
「ふむ、先ほどの狼どももすぐに逃げたしな。まぁ、安全であることに越したことは無いだろうな」
 最後尾をそれぞれの馬を引いて進むのはレイブン・シュルト(eb5584)とフォルケン・ジルナツェフ(eb5760)。
 2人のナイトの心配事は街道の安全らしく、手綱を引きながらこちらも歓談の様子。
 そして一団の先頭でなにやらどたばたしている2人が。
「初依頼だし気合入れて頑張るとするか‥‥って、どこ触ってるんだっ!!」
「む? おぬしなかなかよい筋肉しておるのう♪」
 ヴァイス・ザングルフ(eb5621)の肩の筋肉をぺたぺた触っているのはティート・アブドミナル(eb5807)。
 これでもかと鍛え上げたヴァイスがどうやらお気に入りのこのシフールのウィザード。
 ティートは体を鍛えるのが好きだとか‥‥ということで、ヴァイスに密着状態である。
「わしもお前さんみたいに鍛えたらジャイアントみたいになれるかのう?」
「‥‥あー、さすがにそれは無理なんじゃないか?」

●村にて
 村へついた一行は宿を見つけるのもそこそこにして、さっそくそれぞれの作業にはいる。
 彼らが受けた今回の依頼には、脅威の排除とは別にもう一つの目的があった。
 それは村の防衛体制の強化である。それぞれ思い思いの作戦を立てて挑むらしい。
 村にすでに設けられたいくつかの施設を見回りつつ、それぞれのアドヴァイスが始まるのだった。
「キケンな荒事は全部冒険者に任せてくれ……と言いたいところだがな、残念ながらこっちにもそこまで余裕はないんだ。ともかく、ここの人たちが自分達の村は自分達で守れるようになるため精一杯協力するぜ」
 ヴァイスが言うとおり冒険者に常に頼ることはできない。だからこそ村自体の強化を行うのである。

「見張り台には音を鳴らして知らせることができる鐘なんかをおいたほうがいいな」
「ええっと、それじゃあ壊れたなべとかを叩くでも?」
「ああ、とにかく何かが来たときにわかればいいんだ。それに、もうちょっと見張り台も高さがあると安心だな」
 そんなことをいいながら見張り台の補強なんかに手を貸しているヴァイス。
 村の青年たちと協力しながら作業を進めているようだ。
「あのー、こっちの木材運ぶの手伝ってもらえますか〜!」
「おお、ヴァイス。なにやら呼んでおるぞ。今行くから待つのじゃ〜!!」
 どうやらティートも手伝っているようである。

「そうですね‥‥まずはもしもの時の逃走経路と避難場所なんかがあるといいと思いますよ。一番近いほかの集落は?」
「半日ほど東に進んだところにあります。なるほど‥‥連絡や逃げるときの手順ですね」
「ええ、使わないですむならばそれに越したことはないんですけど、もしものときの備えは必要ですし」
 村の集会場で村長たちと相談しているレティスタニア。
 なめした羊皮紙の裏に簡単な地図と集落の見取り図を描きつつ、いろいろと決めていっているようだ。
「自分で自分の世界を切り拓き、創っていく‥‥素晴らしいことですよね。だからこそ上手くいくように考えましょうね」

「ふむ、村の周囲に堀を作るにはさすがに広すぎるが‥‥柵の補強は有効な作戦だと思うぞ」
 自らの剣で木を削って先を尖らせながら柵の補強をしているのはフォルケンだ。
 そして作業に従事していた男たちを集めると続けて技術指導の時間である。
「いいか、敵一体に対し、必ず複数で応戦する事が原則だ」
 騎士というよりは教官といった様子のフォルケン。話を聞く一同の前を行きつ戻りつしながら説明は続く。
「複数で相手をするときは、一人が正面で防御に徹しほかのものが周囲に回る。狼退治なんかで有効だと思うぞ」
 木の棒で地面に図を書いて説明するフォルケン。
「もし数が多いときなどに引くときもあろう。そのときは決して後ろを見せずに睨みながら後退するのだぞ」
 そして最後に彼はこう締めくくるのであった。
「いざと云う時、貴殿等の家族を護れる者は、己自身と云う事を忘れてはなりませぬぞ」
 一同はこの言葉を聴いて深く頷くのであった。
 そして続けざまに精神論、気概について語る冒険者もいた。ジュラが今度は一同に語るのだ。
「短時間で、技術指導を徹底するのは無理だ。付け焼刃の一般人で相手になるような相手ではたいした脅威ではないからな」
 突き放すような物言いのジュラ。しかし続く言葉には一同は頷く。
「そんなとき差をつけるのはなにかというと、それは精神の差、即ち“覚悟”だ。攻撃するなら必ず倒す。防御するなら必ず防ぐ‥‥こういう心構えが無いと守れるものも守れないからね」
 冒険者は常に命の危険に身をさらす職業である。その冒険者たちから語られる真摯な言葉。これには住人たちもこころを打たれたようであった。
 そして最後はどうやらヴァイスが村人たちに簡単な武器の扱い方を教えるようである。
「いいか、こういう槍で突くときは‥‥」
「ヴァイス、早ぅわしにも教えるのじゃ!」
 こんなときにもちゃっかり混じっているティートであった。

 そして同時に集落の狩人たちを率いて村の周りを見回るのはレイブンだ。
「‥‥この獣道はかなりの数の何かが使ってるな。しかも最近だ」
 そして数日が流れ、ある日突然敵はやってくるのだった。

●脅威との戦い
「俺たちが居る間で助かったな。ま、、俺達は報酬さえもらえれば全力を尽くすだけだけどな」
 美容体操中だったヴァイスは見張り台の警鐘が鳴らされる音で装備を整えて外に出てくる。
 するとどうやら村の北側の森からゴブリンの一団が現れたとのこと。
 冒険者一同は装備を整えると、一斉に迎撃に向かうのであった。
 ゴブリンの数は10数匹。村に一団がやってくる前に冒険者たちで倒す心積もりだ。
 そして戦いの火蓋は切って落とされた。

「ジルナツェフの家名に、恥じぬ戦いを!!」
 じゃきんとロングソードを鞘から抜くと、迫ってきたゴブリンを一撃するファルケン。
 重さを生かした強烈な一撃がゴブリンに命中する。血煙を上げて倒れるゴブリンであったが、ファルケンにも変化が。
 髪は逆立ち瞳は紅。ハーフエルフが持つ狂化現象である。
 ファルケンは剣についた血を振り払うと、そこに襲い掛かってくる別の一匹。
 そのゴブリンが持っていたぼろぼろにさびた斧がファルケンの腕を掠める!
 しかしファルケンは皮一枚だけで攻撃を受け反撃でそのゴブリンを切り払いながら雄たけびを上げるのだった。
「ふんっ 貴様等如き雑魚共が、我に噛み付くとは片腹痛いわ!!」
 さらに戦いは続いていく。
「ヴァイス、良い魔法をかけてやるのじゃ!」
「おお、これはありがたいっ!!」
 バーニングソードをティートがヴァイスにかける。ティートは別の魔法の準備へと入り、ヴァイスは一気に距離を詰める!
 ゴブリンがキィキィ叫びながら振り下ろした粗末な武器の一撃。
 それをヴァイスはなんと体で受けるのだった!
 しかし急所ははずし、打点をずらすことによってほとんど怪我を負わないヴァイス。
 彼はそのままゴブリンの首をつかむと高く掲げて一気に叩き落した。
 悶絶して動かなくなるゴブリン。そのゴブリンを投げ飛ばしてほかのゴブリンにぶつけると、こんどは混乱するゴブリンたちを次々に投げ飛ばすのだった。
「そこっ!」
 ゴブリンたちの群れに踊りこんでかく乱しつつ剣を振るうのはジュラ。
「甘いなっ」
 武器を弾き飛ばしながらレイブンがゴブリンの一体をきりつける。
 しかし2人の剣を逃れた2匹がなんと後衛のレティスタニアへと向かう。
「タニア、危ない!!」
 思わず声を上げたジュラ。だがその瞬間、地面から吹き上がる火の柱。ティートのマグマブローだ。
 しかし一体はそれすらしのいだ一匹がレティスタニアに襲い掛かるのだが‥‥。
「魔法使いが非力とは、限らないんですよ!」
 なんとナイフで相手の武器の一撃を受ける。そして見る見るうちに狂化したタニアは逃げようと慌てふためくゴブリンに向かって魔法で作り上げた雷の刃を振り上げる。
「魔法使うだけが能じゃねェんだよ!!」
 こうしてほとんど被害らしい被害を出すことなく、ゴブリンの群れは殲滅されたのだった。

●村を去るとき
「本当にありがとうございました! 教わったこと頑張りますから!!」
 イーゴリ青年が勢い良く頭を下げると、見送りに来た人々も手を振ったりお礼を言ったり。
 短い時間であったが、村に残したものは思いのほか大きかったようである。
 そしてその様子を見て呟いたのはジュラ。
「この森を伐り拓き、奪う君達と、住処を守ろうとする獣、どちらの覚悟が強いかは‥‥僕の知ったことじゃない、かな」
 知ったことではない、と無愛想な言葉だったが、冒険者たちが改めて言う必要はないな、という実感からくる率直な言葉であった。
 冒険者一同は彼ら開拓者の未来が明るいことを祈って帰路に着くのであった。