厄介な同行者 

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 94 C

参加人数:8人

サポート参加人数:6人

冒険期間:08月07日〜08月14日

リプレイ公開日:2006年08月16日

●オープニング

 キエフ郊外のとある開拓地。その近隣に最近、骨の化け物が出現したという。
 その正体はアンデッドに分類されるスカルウォーリアーだ。
 そしてこの世の摂理に反する死者を成敗するためにやってきたのはとある人物。
 これは今から数日前のお話である。

「死してなお戦い続ける悲しき定めを背負いし戦士たちよ!!」
 森の中に朗々と響く大声。凛々しく気迫に満ちた声を上げるのは一人の青年だ。
「しかし! この私はそなたたちを成敗せねばならない!」
 しゃきんと剣を引き抜く青年。見れば質のいい服を着たハーフエルフである。
「人に仇なす存在と成り果てる前にこの私の剣の錆と消えよっ! いざ参る!!」
 青年の大声に反応したのかぽけっとこちらを見ていたスカルウォーリアー。
 そのスカルウォーリアーに向かって青年が剣を掲げて駆け寄る!
 剣は上段、一刀両断に剣を振り下ろし‥‥剣がすっぽ抜ける。
 すぽーん、ぽて‥‥無手になった青年とスカルウォーリアーが近距離で見詰め合う。

「‥‥ふむ、おぬしなかなかの強敵と見たっ!!」

「おおお、お坊ちゃま、逃げ‥‥いえ、後ろ向きに前進です!!」
 そこに走りこんできたのは、すでに壮年に差し掛かったエルフの男性。
 盾でスカルウォーリアーの剣を防ぐと、青年の後ろ衿をがっちりとつかんで戦略的撤退。
 そのまま馬に引っ張りあげられすたこら逃げる2人組みなのであった。
 スカルウォーリアーも思わずきょとんとしている‥‥?

 数日後、ギルドの受付にはその壮年のエルフがいた。
「私はフレンニコフ家に使えるイワノフというものです」
 礼儀正しく頭を下げるイワノフ。
「実はフレンニコフ家のユーラ様が現在モンスター討伐の依頼を受けているのだが、その補助をお願いしたいのです」
「フレンニコフ家のユーラ様‥‥ああ、スカルウォーリアー退治ですね」
「ええ、一度遭遇したのですがなかなか手ごわかったもので」
「なるほど。了解しました」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 eb5621 ヴァイス・ザングルフ(23歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5626 ソーンツァ・ニエーバ(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5690 アッシュ・ロシュタイン(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb5706 オリガ・アルトゥール(32歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5724 レイヴァン・テノール(24歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5760 フォルケン・ジルナツェフ(36歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5807 ティート・アブドミナル(45歳・♂・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 eb5856 アーデルハイト・シュトラウス(22歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

アルベール・アクエリアス(ea2321)/ イェール・キャスター(eb0815)/ フィリッパ・オーギュスト(eb1004)/ アド・フィックス(eb1085)/ エスメラルダ・ボーウェン(eb2569)/ ガンド・ビアンキ(eb5850

●リプレイ本文

●始まり
「これは皆様! お坊ちゃまの依頼に同行していただいて誠に感謝の至りでありまして‥‥」
 老年にさしかかろうというエルフ、イワノフがびしっとお辞儀をしながら冒険者たちに挨拶をしている。
 そして冒険者たちを興味津々と言った様子で見つめるユーラ。
 イワノフは人間の年齢で言うならば50近くの初老の男でマント姿も絵になっている騎士っぽい格好。
 一方ユーラはどこかぶかぶかの皮鎧とちょっと大きすぎる感の剣を腰にさしている。
 外見年齢は14歳、暦では28年生きていても中身は外見どおりの子供っぽさが残っているようだ。
 というか、むしろ外見より幾分幼いような感じすらする頼りなさである。
「ふーん‥‥まぁ、スカルウォーリアなら何とかなるかよな。ところで爺さん、数はどれくらいなんだ?」
 お守りまでやらされることに対して少々げんなりしているのはアッシュ・ロシュタイン(eb5690)。
 彼の質問に対してイワノフはしばらく考えると、
「そうですな‥‥結局一匹も減らせませんでしたから7、8体程度は‥‥」
 その言葉を聴いて、ぎょっとする一同。あんまり数が居ないのではないかと思っていた者も居たよう。
「ま、それでもこのメンバーなら問題ないはずよ。やることは一緒ね」
 アーデルハイト・シュトラウス(eb5856)がシニカルな笑みを浮かべて、一言。
 こうして一同は依頼の場所へと向かうのであった。

●特訓開始‥‥前途多難
「自分はフォルケン・ジルナツェフと申す者。宜しくお願いしますぞ!」
「おお、これはこれは頼もしき騎士殿! こちらこそ‥‥お坊ちゃま、怖がらなくてもいいのですぞ?」
 迫力あるフォルケン・ジルナツェフ(eb5760)はいきなりユーラに怖がられてみたり。
 がくっと肩を落とすファルケンだったが、それに声をかけたのはオリガ・アルトゥール(eb5706)。
「ユーラもそんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。頼もしいじゃないですか♪」
 にっこり笑顔のオリガにファルケンがなんだか感動していたり。
 それはさておき、それほど急ぐ必要も無いため一行は多めに休憩を取りつつ進む。
 そして休憩の折にはそれぞれの訓練を行ってくれる冒険者がたくさん居るのだった。

「いいですかユーラさん。それでは打ちかかってきてください」
「うむ、では参るぞ! えぃやー!!」
 お昼休憩の後、手合わせをしているのはソーンツァ・ニエーバ(eb5626)だ。
 ユーラと同じく育ちのよさそうな彼は、なかなか教育熱心な先生となっていた。
「剣を振り終わった後よろけるので少し力を抜いたほうがいいと思いますよ。あとは、武器を軽いものに替えるとか‥‥」

「いいか、剣の握りは小指からしっかりと握りこんで‥‥」
 乗り気でないようにいいながらも意外に世話を焼いているのはアッシュ。
 道中歩きながらも、簡単な説明をしてあげているところを見るとなかなかに気が利くようだ。
「のう、アッシュ! こんな感じでいいのだろうか?」
 意外にユーラもなついているようだ。

「まずは自分に合った武器を探すことです! たとえば槍なんかはよいと思うのですが?」
 最初は女性? とユーラが思っていたのは秘密。休憩中に武器を見せてくれたのはレイヴァン・テノール(eb5724)。
「これはちょっと重いかも‥‥」
 ユーラはトライデントを持ってみてちょっと重かったとか。
「ふむ、それじゃもう少し軽い槍を今度試してみるといいかもしれませんね」
「そうなのか? 槍はどんなところがいいのだろうか」
「槍は身の丈や間合いの狭さを補い、剣よりも力強い一撃を可能にする武器ですから、一度使ってみるといいですよ」
 なかなかに知的な会話が弾んでいるようであった。

 一方こちらは体育会系。
「いいですかユーラ殿! これぐらいの岩を運べなくては立派な騎士にはなれませんぞっ!!」
 岩をロープに結び付けて特訓をさせているのはフォルケン。
 最初は大きな岩だったものの、あんまり力の無いユーラには無理だとの意見を聞いて、今ではずいぶん縮小気味。
 最初のころは衝突もあったし、ユーラは乗り気ではなかったとか。
「たとえ貴族であろうと、此処に居る貴殿はただのヒヨッコにすぎん・・・自分達の忠告は大人しく聞くものですぞ?」
 たとえばこんなことをユーラに言って鍛え上げたのだ。しかし結果としては非常に努力したようである。
 話は変わるがなぜか岩にはコンダーラと書かれていた。
 遠い異国の伝承らしいが一度“思い込んだら”なかなか消えないようである。
 そしてずりずり小ぶりな岩を引きずるユーラを見守る影が。
「いかにも夢に向かって走る若者といった感じでいいですねぇ♪ 応援してますよ〜」
 こうしてオリガがひっそり見守っているなか、ユーラは地道に頑張るのであった。
 このままで行くと、夜空を見上げてしまいそうな面々である。

 そしてこんな一幕も。
「体を鍛えておくのはいいことだぞ」
 お互い成長しようという心構えのヴァイス・ザングルフ(eb5621)と一緒にユーラも腕立て伏せ中。
 ユーラも結構必死に頑張っているようだ。
「‥‥ふぅ‥‥ふぅ、ところでヴァイス‥‥その、ヴァイスの背中にはなんで‥‥ティートがいるのだ?」
 筋肉好きのシフール、ティート・アブドミナル(eb5807)は今日も今日とてヴァイスの近くに居たりする。
「む、わしも強くなるために一緒にトレーニングしとるのじゃよ♪」
 そんなことをいいながらなにやら筋肉と戯れているティート。
「それに、別に剣で戦うだけが能ではないしの。ヴァイスのような拳で戦ってみてはどうじゃ? それともわしのように魔法使いもいいかもしれんのう」
 こうして、冒険者の面々からいろいろ学ぶユーラであった。

「みんな頑張るわね〜。ま、こうしてやってみることは悪いことじゃないわよね」
 のんびりお茶を飲むアーデルハイトはそんなことを呟いているのだった。

●いよいよ退治
 数日の特訓の成果か、ちょっとはまともになったユーラの剣さばき。
「さて、いよいよだ」
 ソーンツァが呟くとおり、一行は前回スカルウォーリアーが目撃された場所までやってきていた。
「いいか、トドメはユーリが刺すんだ。一人で前に出たりしたらだめだぞ」
 釘を刺しているのはヴァイス。それぞれが護衛としてユーリとイワノフを囲むようにして周囲を警戒しながら進む。
 そして数十分、ついに前方が見通せるぐらいのまばらな針葉樹の森の中、遠くにさまよう白骨たちの姿が見えた。
 全員が武器を構えると戦闘準備。いよいよ戦闘開始である!

「みなさん、魔法を使いますのでちょっと失礼いたしますね」
 近寄ってくる三体ばかりのスカルウォーリアーに向かって魔法を唱えるのはオルガ。
 アイスブリザードが発動し巻き込まれたスカルウォーリアーたちは鋭利な氷と寒さでダメージ。
「我が魂よ! 一迅の光となりてかの敵を撃て! オーラショット!!」
 狂化しながらレイピアを構え光弾を放つレイヴァン。
 オーラショットを追うようにして前線の三体のうち一体へと近づくとレイピアを一閃、的確にしとめていく。
「そんな攻撃じゃ私に当たらないわよ」
 アーデルハイトはスカルウォーリアーの攻撃を避けつつダメージを与える。
「マグナブローじゃ!」
 地面から吹き出た火の柱が最初の三匹の最後の一体を破壊するのだった。
 そして前衛の3体が崩れ落ちるとき、ちょうど横手の藪を書き分けて残りの5匹が現れた!
「ふっ、考える脳が無いくせに賢しい事を!」
 二方向から押しかかってきたスケルトンウォーリアーを巨大な斧で一撃したのはフォルケン。
 まだかろうじて倒れないスケルトンに対してさらに攻撃するファルケンは一言。
「貴様には、我が最高の一撃お見せしよう!」
 相手の一撃を紙一重で受けて、返す一撃で一刀両断、哀れスケルトンウォーリアーはこなごなになる。
「こいつは俺に任せな」
 真紅のサーコートを翻して、ロングソードで斬りつけるのはアッシュ。
 重量を生かした一撃で確実に一体のスケルトンをぶちのめす。
 そしてヴァイスはスケルトンウォーリアーの一撃を受けながら、なんとつかんで投げ飛ばす!
 硬い木に叩きつけられたスケルトンは一撃で粉砕。
 ソーンツァはスケルトンウォーリアーの攻撃を盾で受け止めると、カウンターでメイス攻撃。
 強烈な一撃を受けて、スケルトンウォーリアーはあっさり崩れ落ちるのだった。

 そして一体だけ残ったスケルトンウォーリアー。
 それをがっしりと防御して、行く手を阻むのはソーンツァ。ディザームで武器をはじく。
 さらにアッシュが盾を重さを乗せた剣の一撃で粉砕する。
 ここまで完璧にお膳立てをした最後の一匹。
「さあ、今です! ユーラさん! 貴方の力で敵を打ち倒してください!」
 レイヴァンの声が飛び、ユーラが剣を構える。そして、
「皆の者感謝する! 喰らえ〜!」
 こうして、無事ユーラは自らの手でスケルトンウォーリアーを討つことが出来たのであった。

●帰り道
「私は貴族というものは皆のために働くものだと思っているのだ。なので冒険者としての経験が生きると」
「そんなこと考えているなんてユーラは立派ね〜」
「うむ、ユーラ。立派な心がけだぞ!」
 オルガにほめられたり、レイヴァンに感心されたりしながらユーラは帰路についていた。

「それにしても爺さんよ。ちょっと無理があるんじゃないかい? 甘やかすとユーリのためにもならんぞ」
「そこはわかっているのですが‥‥どうも幼いころからを知っていますと甘くなってしまって」
「イワノフ殿、心労で倒れる事のない様、お気をつけ下され‥‥」
 アッシュに忠告されたりフォルケンに同情されたりイワノフもいろいろと苦労しているようである。
 果たして新米のユーラが再び冒険者の前に現れるときにはどう成長しているのだろうか。
 なにはともあれ依頼は無事終了。冒険者たちはその務めを果たしたのであった。