廃校舎の謎を追え!?

■ショートシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月22日〜11月27日

リプレイ公開日:2004年11月28日

●オープニング

 ケンブリッジは学園都市である。
 そして、学校につきものの話といえば‥‥怪談である。

「ということでぇ、私たち一緒に廃校舎を探検してくれる人を募集したいんですぅ」
 舌足らずな声でギルドの受付に申し込んでいるのは、茶色の髪を後ろでしばった少女。

「3年ほど前から使われなくなっている校舎で、最近人影をみたとか言う話があるんです」
 意思の強そうな瞳で言葉を繋いだのは、腰まである長い黒髪が目立つ一番年長の少女。

「あのっ、あの‥‥怖いから、冒険者さんたちについて来てもらいたいの‥‥」
 緊張しているのか、おどおどと周りを見回しているのは金髪の一番年下に見える少女。

「えーっとぉ、その学校は三つの建物に分かれているの〜」
「校舎と寄宿舎、あとは地下室ですね。どれも3年ほど前から使われていないようですね」
「えっと、えっと‥‥怪しい光とか人影とかが見えたり、うなり声とかが聞こえるって言うの‥‥」
「でねぇ、地下からうなり声が聞こえてぇ、怪しい光は校舎でぇ、寄宿舎で人影が目撃されてるの〜」
「それで、私たち三人はそれぞれ一箇所ずつ探検したいと思ってるんです」
「でもでもっ、とっても怖いから誰かついて来て欲しいの‥‥」
「あ! そ〜だ、この依頼には学生さんじゃなくても良いから助けて欲しいの〜」
「残念ながら報酬をたくさんお払いできないですしね」
「うん‥‥だから、待ってるの‥‥」

 ということで依頼の内容は―――――

 三人の少女と一緒に、廃校舎を探検して噂の元を暴け!!ということらしい。

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea5352 デュノン・ヴォルフガリオ(28歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea5996 エルフィーナ・モードレット(21歳・♀・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea6565 御山 映二(34歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea8622 ドレイク・カーティキア(46歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●冒険者と少女たち
「今日はよろしくお願いします」
 集まった冒険者たちに対して、そう言ったのはマリーだ。
 時刻は夜。
 昼間のうちには目撃された怪異が起こらないことを理由に夜になってからの探検となった。
「それで、私と一緒に来て下さるのはどなたですか?」
 じっと睨みつけるようにしてマリーの視線が冒険者たちに注がれる。
「僕がキミと一緒に行くよ」
 やわらかい笑みを浮かべて名乗りを上げたのは、一人の侍。
 彼の名は御山映二(ea6565)。フォレスト・オブ・ローズ騎士訓練校に籍を置く学生である。
 映二はすこし童顔で柔和な顔に優しい笑顔を浮かべ、かるくお辞儀をする。
 その様子をマリーは心強そうに見守るのであった。

「ねぇねぇ、お姉さんがエミーと一緒に来てくれるの?」
「ええ、よろしくねエミーさん」
 キラキラと瞳を好奇心で輝かせながらエミーが見つめているのはエルフィーナ・モードレット(ea5996)だ。
 上品な容姿と落ち着いた態度のエルフィーナも、同じくフォレスト・オブ・ローズ騎士訓練校に籍を置く学生である。
「ねぇねぇエルフィーナ、エミーのこともエミーって呼んで欲しい〜」
 騎士然としたエルフィーナの様子にエミーは憧れを抱いたようで、ぴったりとくっついて離れないのだった。

「よろしくな、コニーちゃん♪」
 にかっと笑いかけながら、俯いているコニーの頭を優しく撫でたのはデュノン・ヴォルフガリオ(ea5352)だ。
 人見知りをしているコニーの顔を覗き込むように腰を落として、頭をなでるデュノン。
「‥‥は、はい‥‥あの、よ、よろしくお願いします‥‥」
 その陽気な笑顔を見てコニーはほっとしたのか笑顔を浮かべ、次いではっと気づいたように頬を赤らめたのだった。
 
 そして、小さな冒険は始まった。

●真面目少女と笑顔の侍
「鬼が出るか蛇がでるか〜‥‥どっちも出て欲しいものでは無いんだけどね」
 苦笑を浮かべながらマリーに話しかけているのは、映二である。
 少女たちの予定の通りマリーは学校の地下室に向かい、ぐるりと学校の周りをそって歩いていた。
 映二が校舎の端にあるという地下へと入る階段を探していると、不意にマリーが声をかける。
「あの‥‥映二さんは学生なんですか?」
「うん? ああ、僕はフォレスト・オブ・ローズ騎士訓練校に通ってるよ」
「その‥‥失礼な質問かもしれませんけど、どうして大人になってからも学校に通っているんですか?」
 23歳になる映二はまだ10代のマリーから見れば十分な大人である。
 自分の通っている学校には、同じくらいの年の子供しかいなかったので、不思議に思ったらしい。
「いいじゃない、年取ってから勉強し直したって」
 さらりと映二は笑顔でそう言う。
 それを見てマリーはそんなものなのかと不思議そうな顔をするのだった。

 暫くして地下への入り口を見つけると、マリーのランタンで暗闇を照らしながら、二人は地下への階段を降りていく。
 学校の地下室は非常に単純なつくりだった。
 がらんとした広い空間のそこかしこに廃材などが捨て置かれている。
 ランタンの明かりではとても照らしきれないような広い空間。
 低い天井が圧迫感を与え、生気の感じられない石の壁と床が二人を寒々しい気持ちにさせた。
 グルルルル‥‥
 かすかに聞こえたのは噂のうなり声。
 二人がはっと音の聞こえた方を向くと、闇の中に光る一対の目。
 暗がりから姿を現したのは一匹の野犬だった。
 この地下室を寝床としているためか縄張りに踏み込んだ人間に敵意をむき出しにしている。
 牙をむき出しにして威嚇する犬の様子に怯えたのか、マリーは映二の裾をそっと掴んだ。
「だいじょうぶ、刺激しないように外に出よう」
 映二は安心させるかのように笑顔を浮かべて、マリーに促すと階段を後ろ向きにそっと引き返したのだった。

「結局ただの野犬でしたね。でも映二さんはお化けとか怖くないんですか?」
 マリーがそう映二に問いかける。
「うーん、特に怖いとか思ったことはないなあ。冒険者はそういうのを退治することもあるしね」
「‥‥やっぱり凄いですね。でも、本物じゃなくて良かったです」
「そうだね。ズゥンビとかじゃ無くてよかった。‥‥『壊れたもの』が動いていたりするのは嫌だからね」
 そういって静かに笑みを浮かべる映二の視線はずっと遠くを見ていたのだった。

●元気少女と心ある騎士
 エルフィーナは今日、少女たちと一緒に探検に行く前に、いくつか廃校舎について調べてきていたのだった。
 この学校が廃校になったのは3年前に寄宿舎で起こった火事が原因で、全焼するまでにはいたらなかったものの数名の生徒が犠牲になってしまったこと。
 書物と古株の教師たちの証言から、以上のことを調べ上げ冒険者仲間にはそれを伝えておいたのだった。 
 
 ゆえに探検を楽しみにしてはしゃいでるエミーとは対照的に、エルフィーナは軽く緊張を感じているのだった。

「ねぇエルフィーナ? 私もぉ、実は冒険者になりたいの〜!」
 エルフィーナの腕につかまるようにしながら、エミーがそう言った。
「でも、冒険者もなかなか大変ですよ? 楽しいことばっかりじゃないですから」
 苦笑を浮かべて答えながら、エミーの持ってきたランタンを使って周囲を照らしながら、校舎の中を二人は進む。
「でもぉ、冒険者ってカッコいいじゃない!」
 きらきらと目を輝かせて、嬉しそうに語るエミー。
「そうね、でも他の人のために働かないといけませんよ? 心が一番大事なんですから」
 優しく諭すように微笑みかけると、不意にエルフィーナは足を止める。
「‥‥どうしたのぉ? エルフィーナ」
「静かに‥‥怪しい光の原因を見つけました‥‥」
 その視線の先には、廊下の先で宙にゆらゆらと浮かぶ火の塊があった。
「ねぇねぇ、エルフィーナ‥‥あれは何?」
「‥‥わかりませんが、きっと良くないものでしょう‥‥」
「どうするの? あれを倒すの?」
「いいえ、流石に一人じゃ無理ですね‥‥」
 そういったとき、突然そのエシュロンがこちらに向かって移動を始めたのだった。
「っ! エミー、走って!」
 エルフィーナは鋭くそう言って、エミーの手を引きながら急いで出口まで走りはじめる。
 しかし、入り口まで数メートルのところまで来た時、とうとう追いついたエシュロンが体当たりを仕掛けてきた。
 すんでのところで、エミーを抱きかかえて床に転がり、体当たりを避けるエルフィーナ。
 そのまま、エミーを抱くように支えながら、二人は校舎の外に逃げ出したのだった。

 校舎の外までエシュロンが追って来ないことを確認して、しばらく離れたところで息を整える二人。
「‥‥だいじょうぶですか?」
 苦笑しながらエルフィーナがエミーに問いかけると、怖かったのかエミーはぎゅっとエルフィーナにしがみ付く。
「もし、あなたが冒険者になるのでしたら、いつもこう優しい結果になるものではありませんよ? 気をつけて下さいね」
 抱きついてきた少女の背をそっと撫でながら、エルフィーナはそっと優しく言い聞かせるのだった。

●泣き虫少女と黒い騎士
「へー、コニーちゃんも料理が好きなんだ。俺も実は料理が得意でな」
 寄宿舎のなかをうろうろと二人で歩きながら、場違いに明るい声でデュノンがコニーに語りかける。
 奇遇なことに二人とも料理が得意なようで、得意なレシピの話で盛り上がっているのだった。
「‥‥わ、わたしは、お菓子とかを作るのが好きで‥‥よ、よく友達に頼まれたりするんです‥‥」
「へー、そうなのかい。俺は野外で料理するのも得意だからなぁ。たとえばこの前なんか‥‥」
 人見知りの激しいコニーも珍しく饒舌に話しているのは、きっと料理の話だからだろう。
 だが、最初にそれに気づいたのはコニーだった。
「‥‥あ、あのデュノンさん‥‥私なんだかさっきから誰かに見つめられてる気がするんですけど‥‥」
「でな、そいつは‥‥ん? 誰かに見られてるって?」
 ふと背筋に冷たいもの触れるような感覚。
「‥‥‥‥っ!! デュノンさんっ!! 後ろっ!!」
 ふと後ろを振り返ったコニーの目に映ったのは、廊下の端からこちらを見つめるぼんやりとした人影。
 青白く炎のように揺らめく人影がいつの間にか二人を見つめるようにして立っていた。
 デュノンはその人影をきっと見つめると、剣を抜いて、コニーを守るようにして立つとどうにかして意思疎通しようと考えた。
 しかしその時、人影のほうが先に動いた。
「‥‥あ‥‥つ‥‥い‥‥」
 声も無く唇をそう動かすと、レイスはゆっくりと二人の方に一直線に近寄ってきたのだった。
「ちっ! 一人じゃ無理だな‥‥逃げるぞ!」
 そういって、コニーに手を差し伸べたデュノンはコニーがすくんでしまって動けないことに気づいた。
「‥‥仕方ないな、よっとっ!」
 徐々に近づいてくるのをちらりと見ると剣を収め、なんとコニーをひょいと抱き上げると、そのまま走り出す。
 そして恐怖のためか、しっかりとしがみ付いてくるコニーを抱えたまま全速力で寄宿舎から逃げ出したのだった。

 コニーの手を引きながら待ち合わせ場所に戻ると、すでに他の二組は帰ってきていた。
 すぐさま何があったのかを教えあい、何が廃校舎に潜んでいたかを報告することを決めたのだった。

 真っ直ぐに映二の瞳を見つめて、礼を述べるマリー。
 決意を秘めた瞳でエルフィーナを見て、首にしがみつくようにして抱きつくエミー。
 耳まで真っ赤に染めて、デュノンに礼を言うコニー。

 こうして、小さな冒険は終わったのだった。