夏の夜の悪夢?!
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■ショートシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:08月28日〜09月02日
リプレイ公開日:2006年09月05日
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●オープニング
毎日のようにギルドへは冒険者たちへの依頼が届けられる。
しかし一口に依頼と言ってもその依頼人はさまざまだ。
権力者が依頼を出すこともあれば、村全体からの依頼がやってくることもある。
そして時には依頼人がちょっと特殊な場合も‥‥。
「えーっと冒険者の方々は、この証言を聞いてから依頼に行くといいと思います‥‥」
なんだか疲れた雰囲気の受付がそういって示した羊皮紙には、依頼人たちからの情報が。
それにはこんなことが書かれていた。
・アキモフさん(仮名)の証言
あれは一週間ぐらい前の夜のことです。その日はちょっと懐も暖かかったもので、行きつけの酒場にいったんですよ。
そうしたら見慣れない女がカウンターに座っていましてね‥‥(思い出したかのように遠くを見つめ)
それがまたいい女なんですよ。こう、色気があるというか‥‥
それでですね、お金もあったことだしおごるから一緒に飲まないか、なんて声をかけてみたんですよ。
そうしたら、なんとその女性が隣に座ってくれるじゃぁありませんか。
そしてそのまま、かなり長い時間を飲んでいたと思います。
馬が合ったといいますか‥‥話も弾んだのでもっと仲良くなれるのでは、なんて思ってしまいましてね。
もっと静かな酒場に行こう、なんて言って酒場を出たんですが‥‥
‥‥ええ、上手い話には裏があるとはわかっているんですけどね。
案の定しばらく行くと暗がりから数人の男が出てきましてね。
刃物をちらつかせるので、手持ちの金を全部置いて命からがら逃げ出しましたよ。
‥‥やっぱり、夢を見てもいいことはありませんねぇ‥‥(深い深いため息)
・キートさん(仮名?)の証言
ええ、あの日のことは良く覚えています。
私は吟遊詩人なんかをやっているのですが、その日は新作の受けもよくって結構な稼ぎになっていたと思います。
そして大分遅くなってきてお客の数も減ったので、お開きにして酒場を後にしたんですけど‥‥
その帰り道にとある女性が声をかけてきましてね。ちょっと寄っていかないか、なんて感じで。
いやぁ、じつは女性はあまり得意じゃないもので‥‥こうしなだれかかってくる女性からなんとか逃げようと思ったんですよ。
‥‥ああ、いや女性はとっても色っぽくて美人でしたが、どうもああいう艶っぽい方は苦手で‥‥
それで、なんとかやんわり断ろうと思っていたんですが、いつの間にか怖いお兄さんが出てきましてね。
その日の稼ぎを全部奪われてしまった上に怪我までしたので‥‥どうにかしていただけないものかな、と。
この大事な楽器が壊されたりしたらことですし、ああいう方たちはどうにかならないものかなと‥‥。
つまり依頼の内容は、男をだます女をばっちり捕まえることのようだ。
手口は大体一緒、鼻の下を伸ばす男が美人にほいほいついていくと怖い男が待っているという典型的な美人局。
被害も結構な数に及んでいるとか。
依頼人たちは対面もあるため、すでに連名でギルドに報酬を預けてあるらしいので、後は捕まえるだけ。
さて、どうする?
●リプレイ本文
●情報収集はどたばたと
「犯罪です。犯罪者です。キエフの犯罪撲滅に協力です!」
ギルドで決意も新たに、緑色の拳をぐぐっと握り締めているのは泡小麟(eb5797)だ。
「美人局団は放って置けない所まで被害が広がってしまったから捕まえるのね」
美人局団って何だろう。それはさておき、やりすぎた結果捕まるのは必定である。
「良い事をするんだと思うと胸の奥からグッとヤル気がでて来ますわ」
故郷からは遠く離れたこのキエフで頼もしい限りである彼女の言葉。
「みなさん頑張りましょうね〜」
河童という非常に珍しい種族ながら明るさを忘れない彼女なのであった。
「‥‥‥‥ところで『つつもたせ』って何ですか?」
前途有望なのか前途多難なのか微妙にわからなかったりもするのだが、きっと上手くいくだろう。
たぶん。
「悪党の退治でゴザルな。純真な男心を弄ぶなど言語道断でゴザル」
確かに狙われたのは純なタイプの男ばっかり。その弱みをついた美人局は確かに卑怯である。
「ミーが正義の鉄槌を下してやるでゴザルよ!」
サムライを目指している変り種のナイト、トーマス・ブラウン(eb5812)は今日も行く。
何時の日かサムライ魂を身につけて、本物のもののふになるそのときまで。
さて、そんな彼も今日は周辺の酒場で聞き込みである。
どこの酒場で襲われたのか、それがわかれば狙いやすいと考えてあらかじめ調べたのだが‥‥。
その結果は芳しいものではなかった。
一つの酒場で被害があれば二度とその酒場では美人局の事件は起きていなかった。
おそらく犯人たちも足がつくことを恐れているのだろう。
こうなった以上、彼らは自分たちの身を犠牲にして働くしかないのであった。
「‥‥それならば、次はこの作戦でゴザル!」
トーマスが手にしたのは礼服一式、着替えればそこには堂々とした身なりの青年紳士が。
「これでミーの変装は完璧でゴザル!」
言葉遣いが少々気になるが、とりあえず囮捜査の作戦決行である。
彼がその狙い場所に定めたのは、キエフの下町で繁盛している大きめな酒場の一つ。
『白樺の枝亭』にて彼は囮となることを決めたようである。
そんなこんなで、今晩は豪遊。上手く成功報酬が出ないと赤字であるが、そんなことはお構いなし。
飲めや歌えやのどんちゃんさわぎ。
「そこのゲイシャのように美しい方。ミーの隣に来て、お酌をして欲しいでゴザル」
「ゲイシャ? お酌?」
白樺の枝亭のウェイトレスさんになにやら声をかけているトーマス。
聞きなれない言葉にきょとんとするウェイトレスさんだったがそんなことはお構いなし。
親しげにウェイトレスさんの肩なんかに手を置いて、妙に手馴れた感じ。
後日、彼は
「疑ってもらっては困るでゴザルが、間違っても素ではないでゴザルよ」
と語るのだが、果たして真相は‥‥。
さて、所変わらず同じ酒場の別の場所。ちょっと離れた卓にて、似たような光景が繰り広げられていた。
「ねーちゃんええケツしとるのう〜、どや、おっちゃんと酒飲んでくれたら、このネックレスあげるで〜」
なにやら怪しげな言葉遣いでくだを巻いている河童が一人。磧箭(eb5634)である。
ちなみに囮として参加する時には「ミーはニヒルでダンディなカッパなので御座るがなぁ‥‥」なぞと言っていた。
ところが現状はこう。なんだかノリノリで見れば見るほど堂々たるエロガッパっぷりである。
「おっちゃん、こう見えても結構えらいんやで〜。ちょいとサービスしてくれてもええやんか〜」
黒檀の杖に礼服、いかにもなお金持ち風。まさしくそんなエロ親父な雰囲気だ。
河童はかなり珍しいが、冒険者も訪れるらしいここではなんとか知名度があるようだ。
「あーそうか。つまり私たちが美人局にさらに美人局をして捕まえる作戦なのね」
微妙に違う気がしないでもないが、そんなことを同じ酒場の隅っこに座ってつぶやく小鱗。
「囮が男性だから「美男局」‥‥それとも「超級美人局」‥‥なんで作戦の名前つけないのかな」
なぜかしょんぼりしている彼女であった。
まぁ、積極的に行動できなくてたまっている鬱憤は別の形で晴らしてもらうことになるだろう。
「‥‥‥」
ぽつりと座る人影。場所は白樺の枝亭の入り口が見える小さな路地。
木箱や木材ががさがさと積んであり埃っぽい路地裏の影にジュラ・オ・コネル(eb5763)はいた。
ローブをまとって、地面に座り込んでいる様子は風景に溶け込んでいる。
彼女の膝には小さな猫が。ゴンタというちょっとかわいい名前の黒猫はその青い目でじっと飼い主を眺めていた。
そのうち膝の上でまるまって寝てしまうゴンタ。
その背中をなでながら、ジュラは静かに酒場の入り口を眺めていた。
男って馬鹿ばっかりだ、とでも言うようにその視線は無愛想そのもの。
こうして全ての冒険者は自分の務めを果たし、時期が来るのを待つのであった。
●遭遇、そして対決
「あら、おじさま。ずいぶんと羽振りがいいみたいですわね?」
ふらりとその酒場に見慣れない美女がやってきたのは数日後。
もうすでにトーマスと箭の2人がこの酒場の名物に近くなってきたころであった。
「私もご一緒してよろしいかしら?」
「おぅ、おっちゃんは文句ないで!」
「ミーも貴方のようなきれいな方と一緒できたら嬉しいでゴザルよー」
こうして同意の下、にわかに盛り上がる囮2人。
そう、もちろんこの女が依頼で示されていた女なのであった。
顔かたちは依頼人たちが情報として出していた通り。確かににおい立つような色気のある美女であった。
どこか影のある、つかれたような雰囲気がまた色気を醸し出していた。
そして、その女が決定的な台詞をはく。
「ねぇ、どこか別の場所で飲みなおさない? もっと静かに飲めるところに行きましょうよ」
こうして、囮の2人は酒場の外に連れ出された。
その後ろをついていくのは、酒場の中で張っていた小鱗。
そして酒場を出たときに、路地裏からごそごそと移動し始めたのはジュラ。
しかもジュラは、しっかりと女の後を追う複数の男たちの姿を捉えているのだった。
「お? なんでこんなところでとまるんや?」
「うむ、ここらへんには酒場なんて無いようでゴザルよ〜」
箭とトーマスが抗議するも、女は薄い笑みを浮かべるだけ。
そこは路地と路地が交差する薄暗い路地裏、人っ子一人いなく、待ち伏せするには絶好の場所である。
「さ、それじゃお金を出して頂戴。もしイヤだなんていったら痛い目に会ってもらうわよ」
ぱちんと指を鳴らす女、すると路地の暗がりから6人の男が姿を現す。
今日はカモが2人と仲間をかき集めたようだ。駆け出しの冒険者ならば多勢に無勢、ピンチかと思われたそのとき。
男たちのうち一人が何も言わずにどさりと倒れる。
その後ろから姿を見せたのは、ジェラ。手に持ったショートソードでしたたかに男を打ち据えたようである。
「‥‥次はだれだ?」
ぎらりと光るショートソード。思わず女は声をあげる。
「あ、あなた一体なにをっ!」
「それはこっちの台詞でゴザルよ。美人局の悪事はわかっているのでゴザル!」
マントの下に差してきたロングソードを抜くトーマス。
「フッ、ユーの悪事はみんなばれているので御座る! さあ、ミーと戦うで御座るよ!」
びしっと構えをとる箭。
しかし、それを見てとっさに逃げようとする女、そこに立ちふさがったのは小鱗であった。
「はあぁぁぁ〜、戦いの舞♪」
体をくねらせながら踊って登場、ぽかんとあっけにとられた女だがとっさに下っ端の男が前にでる。
どきやがれとばかりに押しのけて逃げようとした下っ端の男なのだが、その瞬間小鱗が動く!
「ヒップアターック!」
偽装した格闘攻撃を仕掛けて、一瞬気をそらせた隙に叩き込まれた回し蹴り。
さらに追加で足払いをかけて、そして倒れた相手を踏む踏む踏む!!
これにて合計2人撃退、残りは4名。
「‥‥くらえ!」
ジェラの声を合図としたように一気に乱戦へとなだれ込んだ!
ナイフをもった男相手にひらひらとかわし続けるのは箭。
びしびしと両手の拳を打ち込んでいくのだが、いかんせん決定力がない。
その瞬間、彼は一瞬にして相手の懐の間合いへと入り込むと、飛び上がるような一撃を顎に!
奥義、龍飛翔が見事に顎にきまって、箭は対戦に勝利したのだった。
かきんかきんと拳を打ち鳴らせながら次なる相手に近づくのは小鱗。
そのまま一気に踏み込むと、目前で拳をがつん! おどろいた相手は一瞬気をそがれる。
「隙あり! くらえぇぇぇ〜!」
どすんと重い膝蹴りが見事みぞおちに決まり悶絶する男。
そして苦し紛れの反撃はひょいと難なくかわしとどめの一撃。
「せぃ!」
両手の攻撃にさらに頭突きをプラス。これにはさすがの男も鼻血を吹いてぶっ倒れるのだった。
「こいつはミーにまかせるでゴザルよ!」
相手の攻撃を剣で受けて、反撃のときは果敢に打ち込む。
ごろつき程度ではさすがにナイトの剣にはかなわずあっという間に倒されてしまうのだった。
「‥‥‥」
弧を描くように相手から一定の距離をもちつつ、相手に一気に踏み込んではショートソードの一撃。
回避でも格闘でも優れた能力を持っていた彼女の一撃は的確に相手に傷を負わされていた。
犯罪者に被害者の報復として「理不尽を思い知らせる必要がある」として剣を取ったジェラ。
ついに幾度目かの攻撃がきまり、男はどさりと倒れるのだった。
そして残ったのは一人震える女だけ。
その女にかつかつとジェラは近寄ると、剣を振るう!!
‥‥ばさっと切り落とされる一房の髪の毛。女の命とも呼ばれる髪を非情に徹して切り落としたのだった。
そして泣き崩れる女。
こうして事件は解決し、ゴロツキと女はギルドを通してしかるべき場所に突き出されたようであった。