森の老人 開拓地の事件
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■ショートシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:09月11日〜09月16日
リプレイ公開日:2006年09月20日
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●オープニング
キエフから徒歩でおよそ一日。そこそこの距離にあるとある開拓地。
精力的に進む開拓、ある程度の規模となったその開拓地には、一つの悩みがあった。
開拓、それすなわち都市からの離脱。多くの人々が都市を離れ開拓に従事している。
その人々の中には、都市に住めなくなったため仕方なくという人も少なからずいるのである。
この開拓地のはずれに一人小さな小屋を立てて住む老人は、そんな人間だと思われている。
曰く、都市で何か悪いことをして追放された悪い魔法使い。
曰く、禁忌に触れるような行いを認め逃げてきた変人。
開拓地の住人たちは、なるべくこの老人と係わり合いにならずにすごそうとしていたのだった。
住人たちが会話するのはせいぜい、老人が持ち込んだ薬草や木の実などを交換するときだけ。
一人ひっそりとその老人は余生を過ごすはずだったのだ。
ところが事件はおきた。
開拓地の村はずれの森から姿を現したのは数匹のオーク。豚の頭を持つ獰猛なモンスターだ。
村はずれにあった小屋を襲った程度で一時期オークは去った。
しかし、そのときオークたちとともに、ローブ姿の老人を見たというものがいたのだった‥‥。
村からギルドに依頼を持ってきたのは村の男。
「オークたちは村の近くの崖にある洞窟に巣食っているようで、それを退治してもらいたいのです」
そして例の老人についての話が出る。
「‥‥村人の中には、あの老人が復讐のためにオークたちを操っているんじゃないかといっている人もいます」
彼の話によるとオークの襲撃以来、老人の姿は見えなくなったそうだ。
これにて、およその依頼内容は確定したかとおもったのだが‥‥。
依頼を述べて帰ろうとする男は数人の子供をつれていた。
男によれば、せっかくキエフまで来たのだから買出しもかねてちょっと子供たちに見学を、とのこと。
ところが、その子供たちがギルドの受付の袖を引いて言う。
「あ、あのね。ボクはあのおじいさん悪い人じゃないと思うの‥‥」
「あたしは前、森の近くで転んで怪我をしたときに薬をつけてもらったの」
「ボクは迷子になったときに、助けてもらったことがあるよ」
「‥‥このまえ怖い奴が村に来たときに、実はボク見たんだ」
子供たちは口々にいい、そのうち一人の少年がぽつりと付け加える。
「実はあの時ボク、村はずれの小屋で遊んでたんだ。そこであのおじいさんを見たんだ」
ぎゅっと拳を握り締めて言う少年。
「動けなかったボクの前に立って、水をぶつけてオークを追い返してたんだ。あのおじいさんは悪くないよ!」
そしてそこで、別の窓口でお金を渡していた村の男が戻ってきて、子供たちを連れて行った。
子供たちの訴えかけるような視線だけがこちらを向いている。
そして彼らが入り口から消えた後、依頼書にはこう書かれていた。
・オークたちと村の老ウィザードが交戦した可能性あり。彼の確認と保護も依頼目的とする。
さて、どうする?
●リプレイ本文
●村へ
ロシアの開拓は森を切り開くことから始まる。そしてその障害となるのは、大自然の猛威にモンスター。
開拓地の人間にとって、モンスターとは恐怖の対象なのだ。
何時自分や肉親、親しい友がその牙にかかって命を落とすか。
だからこそ、冒険者たちは力でモンスターたちを退治するのだが‥‥。
「うわっ!! モンスターだっ!!!」
村に駆け巡る悲鳴、逃げ惑う人々。彼らが目にしたのは空を舞う大きな猛獣の姿だった。
「あ、あの、この子は安全ですから!」
メイユ・ブリッド(eb5422)がいくら言っても、怖いものは怖い。
人になれているからといって、猛獣に近づきたいと思う物好きはなかなか居ないのだ。
せめて近くで降りて木につないで村にやってきてもらいたかった、といっても後の祭り。
とりあえず、先行したメイユはかなり胡散臭がられつつも、残りの冒険者たちの到着を待つのであった。
その手伝いで着ていたアレーナ・オレアリス。地図を作ろうとしたらしいのだが専門的知識がなければ不可能な難事。
こうして後続の冒険者が来るまで、メイユはなかなか居心地の悪い思いを味わうのであった。
●村にて
「おねーちゃんは子どもなのに冒険者なの?」
「ん? ボクはこう見えても17なんだよ。チュプオンカミクルのイコロって言うんだ。宜しくね!」
にこっと笑みを浮かべたイコロ(eb5685)は子どもたちに話を聞いていた。
子どもたちに聞けば、老人に助けてもらった記憶がある子がほとんど。
親からは近づいてはいけませんといわれているために、親たちは知らないようだ。
「あのね、おじいさんはいい人だと思うんだけど、ママは怖い人だって言うの‥‥」
「ううん、ボクもその御爺さんは悪い人じゃないと思うよ。キミ達を信じる!」
子どもたちに対してそう約束するイコロであった。
「それじゃ、聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」
子どもたちに尋ねるのはリディア・ヴィクトーリヤ(eb5874)。
こっくりと頷く子どもたち。リディアはのほほんとした様子で微笑を浮かべしゃがみこんで子どもたちに話しかける。
「そのおじいさんはどんな人だったか教えてくれる?」
一方そのころ、村人の案内で老人の家を探していたのはルンルン・フレール(eb5885)。
しばらく探して、木立の中に隠れるようにして立つ小さな小屋を見つけるルンルン。
「もしもーし、だれかいますかー!!」
どんどんと小屋をノックするルンルン。だが返事はなし。ドアを開けると案の定だれも居ない。
「独居老人の寝たきりの可能性もちょびっと心配だったんだけど‥‥安心ね」
彼女はばたんとドアを閉めると再び村へと帰っていくのだった。
●森の入り口にて
「村人の話では、こちらの方向の崖に洞窟があるとのことです」
村でアリアス・アスヴァール(eb6622)はオークたちの住む洞窟への道を聞いたようだ。
「老人が無事だといいんですね」
リディアは心配げにそういいながら森の中を進む。一行は、固まってオークたちの通った道を探っていたのだった。
「はやまっていないといいのですが‥‥」
メイユはグリフォンをつれて後につづく。村から離れたことでようやくグリフォンと一緒に行動ができたのだ。
「子供達を助けてくれたし、きっと悪い人じゃないと思うんです。だから事情を聞く為にも、早くお爺さん見つけなくちゃですね!」
ルンルンはそういって、決意を新たにするのだった。
足跡を追うルフェ・ルシェリア(eb6692)やリリーチェ・ディエゴ(eb5976)。
土地勘でミランダ・アリエーテ(eb5624)やイコロが導く。
こうしてついに冒険者たちはオークの住処を発見した。
木々がなぎ倒されていたり踏み荒らされた草が道を作り、そこを見つけるのは楽であったのだ。
そして、洞窟が見える場所までやってきたとき、ルンルンが声を上げた。
「まって! 反応がもう一つ‥‥こっちよっ!」
洞窟が見える場所の木立の影、そこには老人が一人座りこんでいた。
「おじいさん、大丈夫ですか?」
「む、お前さんたちは冒険者か‥‥」
ルフェの問いに老人は答える。老人はかなり疲弊しているが、大きな怪我もなく無事であった。
「もしかしてオークたちの動きを見張ってたんですかー?」
「ふむ、その通りじゃ‥‥まぁ、見ての通り水も食料も尽きてそろそろまずいと思っとったんだがな」
よいところに来てくれたと老人は笑みをこぼすのだった。
「今までなんとか牽制の魔法で洞窟の中に閉じ込めておいたのじゃが‥‥」
見れば洞窟の入り口は氷が張り付いている。おそらくはアイスブリザードを使い牽制していたのだろう。
「そろそろ食料が尽きたのか、頻繁に入り口に近づいてくるようでな」
魔法の使用回数が増えたため老人の魔力は尽きかけていた。そこに冒険者が現れたのだった。
「じゃから手伝うことはできんが‥‥」
「ううん、おじいさんが今までここで見張っててくれたからボクたちも間に合ったわけだしね!」
イコロがいう。そして冒険者たちは、準備をしてオークたちとの戦いに挑むのだった。
●戦い
生木をいくつも洞窟の入り口に放り投げ、それにイコロがサンレーザーで着火。
もくもくと煙が上がりそれが洞窟の中に流れていく。
ファイヤーボールは強力だが周囲の森への延焼を考え、今回は使わなかったようである。
そして洞窟の奥から聞こえる吼え声と足音、その瞬間リディアは魔法を発動した。
「ファイヤーウォール!! 火が燃えるのに欠かせない物をご存知ですか?」
もちろん新鮮な空気である。
煙と熱気、それに耐えかねてオークたちが洞窟から飛び出してくる!!
その数4匹。先頭の一匹が火にまかれて悲鳴を上げるがそこに叩きつけられたのはウォーターボムだ。
「水でも効くでしょう?」
アリアスの魔法は的確に手負いのオークに命中し、オークは火が消えたものの足を滑らせて洞窟の入り口から転げ落ちる。
後続は広い洞窟の入り口で燃え上がるファイヤーウォールを避けて横から出てくる。
そこに襲い掛かったの、メイユのグリフォンだ。
真正面から組み合ってがしがしと殴るオークに、それをくちばしや爪で攻撃するグリフォン。
しかし、他のオークがグリフォンの背後から鎚による強烈な一撃を見舞う!
グリフォンを巻き込んだ乱戦に、他の冒険者は手をだせなかった。一瞬の隙を突かれた形で、一撃を受けるグリフォン。
「ピン玉!!」
高速詠唱でコアギュレイトをかけたいが、オークのそばにクレリックが行くのは自殺行為。
グリフォンは悲しげな泣き声をあげて、どうと地面に倒れる。
そしてオークたちは冒険者たちに向かって突進を始めるのだった。
最初に飛んだのは弓。
ルンルンが放った強烈な一撃は、見事オークの喉に突き刺さる!
鎧の隙間をついたその一撃にオークはもがき苦しむのだが、さらにそこに弓が。
リリーチェは入り口が見える木の上から。
器用に二本の弓を同時に放つと、その弓は狙い過たず肩口と足にささりのどの一撃とあわせてオークは倒れる。
そして残るは手負いが二匹と無傷が一匹。そこに吹き付けられたのは氷の嵐だった。
「氷の中で眠りなさい‥‥アイスブリザード!」
アリアスが放ったアイスブリザードは三匹のオークを巻き込む。
グリフォンとの攻防でぼろぼろになった一匹はこの一撃で体中を凍てつかせながら倒れる。
残る二体、その前に躍り出たのは二名の冒険者だ。
すたっと軽やかに躍り出たのはルフェ。武器のダガーは重かったので脇の木立に突き刺して残し飛び出す。
そこに振り下ろされる強烈なオークの一撃、それをひらりと回避するルフェ。
「そんなのじゃ当たりませんわ」
もう一方にはミランダだ。ロングソードをすっと構えてオーク一撃を受け止める!
火花を散らして、かみ合う戦鎚と剣。ぎゃりんっと鎚は滑らされてただただ地面をえぐるのみ。
そこに後ろから声が響く。
「援護するよ!」
放たれたのはサンレーザー。イコロの放った一撃が手負いのオークに突き刺さる!
オークの毛皮がぶすぶすとこげ、これで手負いが倒れ、残るは一匹。
そこに放たれたのはメイユのコアギュレイトだ。
最期の一体も動きを止められ、そこに突き刺さったのはミランダの剣。
鎧の隙間を突いた一撃がぐさりとオークに突き刺さり、ついに最後のオークも倒れるのだった。
グリフォンもなんとかポーションで回復しメイユは老人に声をかける。
「貴方の帰りを待ってる子供たちがいるのですよ」
こうして冒険者たちは帰路に着くのであった。
村に帰った冒険者たちは老人の行いについて正直に伝えた。
村がオークの脅威から助かっていたのは彼の存在があったからだ、と。
それにあわせて子どもたちも老人について親に語ったようだ。
冒険者たちは村を離れキエフへの帰路に着く。
なので、老人がこれから村でどのように扱われていくかを知るすべはなかった。
しかし、最後の日。村を去る冒険者たちを見送る村人たちに混じる老人の姿を見れば心配は無さそうであった。
こうして無事依頼は終わったのだった。