魔法使いの塔
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■ショートシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:2〜6lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:09月26日〜10月01日
リプレイ公開日:2006年10月04日
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●オープニング
キエフから歩いて1日半ほどのところにある荒涼とした土地。
交易路からもはずれ、近くには森と荒地が広がっている。
開拓の手もいまだ届かず、近寄る人もない場所。そんな場所にその塔はあった。
何時からあるのか、誰も知らないその塔。石造りの塔はおよそ4階建て、装飾もほとんど無く窓も開いていない。
入り口と思われるのは一箇所、角ばった外壁にぽっかりと口を開いた暗い戸口。
昼でもなお光を嫌うかのようにぼんやりと暗闇がよどんでいるようだった。
そんな場所に数日前、何年ぶりかの客人があった。
それは一匹狼の冒険者、依頼で寄ったとある村で聞いた噂話は彼の好奇心を刺激したのだ。
森に塔を築き、ひっそりと研究を続ける魔法使いの話。近くの村からは歩いて半日、彼はそこに向かうことにした。
昼なお薄暗い針葉樹の森、ほとんど消えかけた道を進むとそこには古びた塔が立っていた。
人の気配は………無い。おそらくは何年もの間人の出入りは無いのだろう。
入り口はうっそうと生い茂った雑草に覆われ、木の扉も腐りかけていた。
そこを蹴り破り中に入った冒険者、古い塔には隠された宝があるかもしれない‥‥
一階から上に続く階段、一階にはそれしかなかった。
おそらく二階より上が魔法使いの住居として使用されていたのだろう。
二階に進もうとする冒険者、しかし一階のがらんとした空間の中央に像が置かれているのが目に付いた。
像は禍々しい翼とくちばしを持った悪魔の姿。彼の背筋を悪寒が貫いた。
炯々ときらめく瞳で彼を見据える石像の悪魔‥‥彼は、命からがら塔から飛び出して逃げたのだった。
「これは特に焦る依頼じゃないんだけど‥‥」
ギルドの受付が説明するのはそんな顛末。
「この話を持ち込んだ冒険者にはギルドからいくばくかの謝礼が支払われました」
この手の依頼の場合、ギルドは依頼を解決できそうな冒険者に依頼をまわすこともあるのだ。
「この冒険で発見したもので基本的にはギルドの持ち物になります。それを現金として評価し、報酬とするわけです」
しかし、この手の冒険の場合、非常にいいアイテムが手に入ることも時にはある。
「ですが、もしほしいアイテムがあればそれを引き取るのもいいでしょう。その場合は、報酬はナシになりますが」
さて、どうする?
●リプレイ本文
●道中にて
「塔にいるという石像のモンスターは、おそらくガーゴイルでしょう」
道中を急ぐ冒険者たちにそう説明しているのはメアリ・テューダー(eb2205)だ。
手に持っているのはマッパ・ムンディ。地理と博物について書かれたその書物を見ながら記憶をたどっているようだ。
「石並みの硬度というわけでは無いはずですが、それでもかなり頑丈だとおもって間違いないでしょう」
「ふむ、すると攻撃力が高いほうがいいわけでござるな。魔法の武器は必要でござるか?」
尋ねたのは磧箭(eb5634)。メイスと魔法のダガーを見比べながらである。
「いえ、魔力で動く石像ですから通常武器でも効果があると思いますよ」
「では、こちらを使うで御座る」
そう言ってかわやはメイスを装備するのだった。
「うーん、がーごいるというのは前の依頼で回収したあの石像のような奴がでてくるのだろうか?」
「ふむ、悪魔のような形の石像‥‥たしかに似たようなものかもしれないな」
以前一緒の依頼になったときの話をしているのは緋野総兼(ea2965)とエイリア・ガブリエーレ(eb5616)。
「それはさておき‥‥エイリア殿、これをお貸ししよう」
総兼が差し出したのは、ボーンヘルムだ。それに対してエイリアは鞭を取り出してそれを渡す。
「では総兼殿にはこの鞭を。この兜‥‥なかなか奇怪な形だな」
今回はお互いに装備を貸し合って依頼に挑むようである2人。そろいのヘルムをかぶって進むのであった。
「魔法使いが住んでいた塔。やはり冒険者としては探究心をそそられます」
レイヴァン・テノール(eb5724)はほかの冒険者とどんな発見があるだろうか、なんて話で盛り上がっているようだ。
「私はずっと欲しかった巻物があるんです、見つけられたら嬉しいなって思って!」
発見を楽しみにしているのかにこにこしているのはルンルン・フレール(eb5885)。
「めぼしいものがあるといいのですね‥‥持ち主が魔法のアイテムなんかを持っていたのであればいいのですが」
ローザ・ウラージェロ(eb5900)はレアなアイテムが残っていたら、と期待しているよう。
「あ〜たしは、欲〜しいもの、あ〜んまりな〜いのね〜♪」
そして羽ばたきながら歌っているのがナイアド・アンフェルネ(eb6049)。
こうして一同はそれぞれの思惑のもと、魔法使いの塔へと赴くのであった。
●塔にて
「ほかの生き物の気配は‥‥ねずみとかぐらいですね」
塔の前にて、集まった一同は突入のための準備を進めていた。
ブレスセンサーにて内部を探っていたのはローザだ。
「石の中の蝶も反応しないですし、やはりメアリさんが言っているように番人はガーゴイルなのでしょう」
大粒の宝石がはまった指輪を眺めてレイヴァンが言う。
「それじゃ、入りましょう♪ どうやら罠も無いようですし‥‥」
先頭は罠を警戒してルンルン。一同はランタンを掲げ、おそるおそる塔の内部に踏み込んだのだった。
塔の一階。破られぼろぼろになった木の扉を超えて中に踏み込めばそこは石畳の広い空間。
方形の空間の天井は低く、むかって奥のほうに二階へとつづく階段と落とし戸が見える。
しかし、ちょうど部屋の真ん中あたりに一体の石像が佇んでいた。
長いくちばしに蝙蝠の羽、鋭い爪が生えた手足に尻尾。悪魔然とした様子の石像である。
一同はすばやく打ち合わせの通り陣形を組む。
前衛にはメイスを構えたかわやと盾を構えたレイヴァン。
後衛には魔法を唱える準備をするローザ、、メアリ、ナイアド。弓を構えるルンルン。
そしてその中間に、鞭を構えた総兼と突破されることを警戒したエイリアが立つ。
そこでぽそりと呟いたのはルンルンだ。
「いかにも動きそうって感じですよね‥‥きゃあ、やっぱり動いた!」
タイミングよく動きはじめた石像、ガーゴイルは侵入者たちの姿を認めるとぎろりとこちらをにらんでくる。
距離を詰める2人の前衛、同時にホーリーフィールドを発動するナイアドの声が響く。
いよいよ戦端が開かれたのだ!!
「くっ! 想像以上に硬いで御座るな!!」
大振りなメイスの一撃は両手で力いっぱい打ちつけたのに、かすり傷程度しかダメージを与えていないよう。
「魔法もオーラもなかなか聞かないですし‥‥」
レイヴァンが高速詠唱で放つオーラショットは命中するもほとんど傷を与えていない。
2人の前衛は回避と盾を使ってガーゴイルの攻撃をしのいではいるものの、こちらも決定打を与えていないのであった。
メアリのアグラベイションは抵抗されてしまいなかなか効果を発揮しない。
またローザのウィンドスラッシュもダメージを与えられない。
冒険者とガーゴイルは完全なこう着状態に陥ってしまうのであった。
しかし、体力や魔力に限りのある冒険者といつまででも動き続ける石像、どちらに分があるのかは明白である。
だが冒険者はあきらめるわけにはいかない。
「千里の道も一歩から、堤防の決壊も一滴からだ、気長に殴るしかない‥‥」
ひたすら鞭で攻撃をしていた総兼。彼は突然、ガーゴイルが彼の方向を向いた気がした。
その刹那、ガーゴイルは自分の前にいるかわやとレイヴァンの2人を飛び越えると総兼へと襲い掛かる!
自分を足止めしている相手をやり過ごす程度の知識はあったよう。
総兼は突然のことに対処ができず、回避しようにもその行動はあまりにも遅すぎた。
しかしその眼前に飛び込んできたのはエイリアだ。わが身をもって守るつもりの彼女は槍を構えて待ち受ける。
物言わぬガーゴイルの一撃を、エイリアはよけもせずに受ける!
紙一重で急所をさけた彼女を掠めるガーゴイルの爪。そしてエイリアはガーゴイルの攻撃に対してカウンター!
オーラパワーによって強められた槍の一撃は、かろうじてガーゴイルの装甲を砕きダメージを与える。
予想外の手痛い反撃を受けてふっとぶガーゴイル、その瞬間に冒険者たちが畳み掛けた!
「皆さん、いまですっ!」
メアリのアグラベイションが倒れたガーゴイルを阻害する。
そして止めとばかりに飛来したのは青白く光の尾を引いて放たれたルンルンの矢。
「そこだっ!」
石像のもろい部分に見事突き刺さる強烈な一撃を受け、ガーゴイルはひび割れ二度と動かなくなるのだった。
●探索にて
ガーゴイルを撃退した一同は二階へ進んだ。そこには予想通り魔法使いの住居が。
冒険者たちは目当ての品を見つけ、さらに依頼を果たすためそれぞれの行動に移るのであった。
生活空間であったと思しき二階、そこにいるのは。
「うーん、知識も技能も無いからなぁ。一体どうしようか‥‥む、そうだ、キキーモラの布巾を使おう!」
布巾はおもいっきり掃除用具な気がする。しかし総兼は魔法の布巾を出すとてきぱき整理整頓と掃除を始めるのだった。
「‥‥総兼殿、なんだか楽しそうに掃除をしているな?」
声をかけたのはエイリアだ。彼女は彼女でなぜか床石の隙間を探したりしていたり。
「いやぁ、作家としてのわたくしの経験上、この部屋の主は私と同じ性格だったと見た!」
「ふむふむ、そのこころは?」
「片付けが面倒になったがらくたを一緒くたに放り込んで、後で片付けようとして忘れていたりするはずだ!」
「‥‥ということはガラクタに大事なものがまぎれてる、ということだな」
「うむ、間違いない!」
そんな2人、しばらく部屋の隅の壊れた家具やガラクタと思しき山を漁る。そして‥‥
「おお、こんなところに指輪が‥‥これは?」
「む、それはプロテクションリング。‥‥私が持っているものと似ているし、おそらく間違いはあるまい」
「ほうほう、なかなか良い物なのだな。ふむ、それではこれは世話になったエイリア殿に差し上げよう♪」
こうして2人で見つけた指輪はエイリアが受け取ることになったのであった。
一方書庫兼倉庫とおぼしき三階でほかの冒険者たちは探索していた。
「とりあえず分類はしてみましたが‥‥ゴーレム関係の研究はしていなかったようですね」
メアリは埃を払った羊皮紙や写本を束に重ねながら言った。
「感知系のスクロールも無くって、あったのは水を作るスクロールとか。生活用かな?」
ルンルンは目当てのスクロールを探しながら。
「でも、きちんとしたウィザードさんでよかった。だってずぼらな人だったら宝物も資料もガラクタもみんな一緒にしてそうで、探すの大変ですよ?」
「ええ、たしか。総兼さんとエイリアさんが片付けている二階は雑然としてましたが、ここは綺麗ですものね」
そして次の束の整理を始めてしばらくして、2人は同時に驚きの声を上げた。
「あ、アイスチャクラのスクロールが。これを探していたんですよ」
「メアリさんもそうだったんですか? 私も探していたんですよ‥‥あ、二枚ある!」
どうやら2人とも目当てのスクロールを手にすることできたようである。
「魔法の武器や補助具はさすがに無いみたいですね‥‥それにどうやら女性の魔術師さんだったみたいですね」
「もしや魔力のこもったナックルなどがあればいいと思ったのだが、やはり無理で御座るな」
残念そうにため息をついているのはローザとかわやだ。
「この帽子とかも女性用ですし‥‥これはまだきれいなものなのでもらうとしましょうか」
棚にきれいにしまってあったとんがり帽子をかぶるローザ。
「むぅ、ミーが欲しい物がみつかるので御座ろうか‥‥しょうがない、ミーはこれで我慢で御座る」
かわやが手に取ったのは、古びた貨幣の入っている木箱、おそらくへそくりか何かであろう。
「防具があればいいとは思っていたが‥‥なぜこんなものが魔術師の塔にあるのだろう?」
首をひねって疑問顔なのはレイヴァンだ。彼が手にしているのはヴァイキングヘルムだ。
棚の上で埃をかぶっていた唯一の防具なのだが、とりあえず彼はそれを手にした模様。
「さて、資料やスクロールはまとめましたし‥‥隠し扉とかもなさそうですね?」
レイヴァンが確認すると答えたのは、天井のあたりまで飛んでぺちぺちと確かめていたナイアド。
「空洞が〜無〜いか、叩い〜た音を聞いて確かめ〜てみま〜したが、なさそうで〜すの♪」
彼女は引き出しにしまってあったレインボーリボンを手に入れたようだ。
こうして一同の魔法使いの塔での探索は終わりを告げた。
大量に持ち帰った資料とスクロール等はギルドがちゃんと買取ったらしい。
なかなか思い通りのものが見つからなかったものの、依頼はこれにて無事に終わるのであった。