●リプレイ本文
●猫さんと一緒に
キャメロットから目的地を目指す一向。
急ぐ旅では無い。
自然と冒険者たちの足はゆっくりとなり、今日は小さな農村の近くでお昼となった。
『んにゃぁっ!』『にゃ〜〜』『んみ〜ぅ』
もちろん3匹の可愛い同行者も一緒である。
「本当に本当に本っ当に既に飼い主が決まってるのが残念でならない‥‥っ!!」
ぐっと拳を握り締め、悔しそうに叫んでいるのはカッツェ・ツァーン(ea0037)だ。
そう言いつつも、ちゃんと猫の餌を調達したりといろいろ用意周到である。
今日の猫たちのご飯は、近くの農村から貰ってきた肉やら魚やら牛乳など。
全員で調達に励んだため大分量が多いのはご愛嬌である。
そして、もくもくとご飯中の猫たちをじーっと見つめる冒険者一行。
そう、これから猫の遊び相手を巡る戦いが始まるのである。
「まぁ、遊んだり休んだりするのも良いけど、子猫が疲れすぎたりしたらダメだよねぇ」
苦笑を浮かべて、牛乳の入った皿を支えながら白猫の背をなでるカッツェ。
「んにぅ〜」
平気だよとばかりに小さな体をカッツェの手に擦り付ける白猫。
にまっと微笑んで今度は毛づくろいをしていた黒猫の喉をくすぐるカッツェ。
「な〜う」
けぷっと小さく可愛いげっぷをしてからゴロゴロ喉を鳴らす黒猫。
白黒猫の口の周りについた牛乳を拭いてあげるカッツェ。
「みゃぅ〜」
感謝を示すかのように頭を手に擦り付ける白黒猫。
「ああ、至福‥‥」
疲れないようにと言っていたのも忘れて、ついつい構ってしまうカッツェなのであった。
これぞ猫の魔力。
●白猫と昼寝と肉球と
お日様はぽかぽか、風も優しく秋とは思えない陽気の昼下がり。
お昼ごはんの後、てくてくと野原を行く人影が一つ。
草原を歩いているのはケンイチ・ヤマモト(ea0760)だ。
そして、それを追いかけるようにちょこちょこついてくるのは白い子猫。
目的地はちょっとした木陰、仰向けにごろりと転がると寝転がったケンイチの胸の上に白猫がよじ登る。
あ、一回転げ落ちた。
ケンイチがそっと支えてあげると、よじよじ頑張って登る白猫。
やっとのことで胸の上に到着すると、じーっとケンイチを見つめる。
「‥‥あなたも一緒に昼寝します?」
なんとなく白猫と目を合わせて問いかけるケンイチ。
「にゃ〜!」
一声鳴くと、くるっと丸くなって胸の上にうずくまる白猫。
「‥‥いい昼寝びよりです」
ふっと微笑むと、子猫をそっと撫でながらケンイチも目蓋を閉じたのだった。
数刻後、そろそろ日も沈み、一同はそのまま昼食をとった農村の近くで野営をすることになった。
テントを建てて、焚き火をおこし、その周りに一同は集う。
もちろん輪の中心には子猫たちが居る。
先程までケンイチと昼寝していた白猫と一緒なのは、ディーネ・ノート(ea1542)だ。
昼間も他の猫たちと遊んではいたが、やはり大人しい白猫が一番相性が良いみたいである。
「ふっふっふ〜、あなたを待ってる時間もなかなかオツなモノってね♪」
ぱちりと指を鳴らして、白猫をじっと見る。
尻尾をぴんと立ててディーネを見あげる白い猫。
ご機嫌なのを確認するとディーネはおもむろに猫の前足を取る。
「にあ? (何するの?)」
ディーネの野望、それは‥‥『肉球』だった。
ぷにぷに。
「にぅ〜」
ぷにぷにむにむに。
「にぁう〜〜」
ぷにぷにむにむにぷにぷにむにむに。
「にゃぅ〜〜」
嬉しいのかにゃーにゃーなきながら、肉球をぷにられる白猫。
「‥‥んむ〜、あなたの名前、ミルトってのはどう?」
「んにゃぅ〜〜〜」
‥‥いい加減肉球を触るの止めて上げましょう。
●黒猫と姉弟と‥‥
「パリからこちらに来て離れ離れだった真人との初めてのお出かけだ‥‥頑張らねば! デート!! そ、そんなものでは‥‥」
そう小さな声で呟いているのは、カオル・ヴァールハイト(ea3548)である。
その声に隣に座っていた友達のラディス・レイオール(ea2698)が苦笑を浮かべる。
「私達はあまり気にしてはいけませんよ、何をしていようとも‥‥ふふふっ♪」
ラディスの表情に気づいたのか、カオルはそう言ってにんまりと微笑む。
「ええ、もちろんです。今回は私は保護者ですからね」
にこっと上品な微笑を浮かべると、猫に浮かれ気味な一同を見まわすラディス。
そこに黒猫を抱えて不破真人(ea2023)がやってくる。
「姉さん、久しぶりのお出かけだね」
姉と呼び慕うカオルのぴったり横にすとんと腰を下ろす真人。
そして、抱えていた黒猫を下ろすと、植物の茎でつくったお手製の猫じゃらしで遊び始める。
「ほら〜、捕まえてごらん〜」
「にぁ〜っ!!」
元気な黒猫はくるくると勢い良く猫じゃらしを追いかける。
すると、黒猫の爪が軽く真人の指を引っかいてしまった。
「イタッ、なかなかやるなー」
にじんだ血を舌で舐めつつ、ひたすらに遊ぶ真人。
「真人、大丈夫か! あまり心配させるな‥‥」
ちょっとビックリしたものの、楽しそうに遊んでる真人をただただ眺めるカオル。
「ニャンコ♪ 可愛いなぁ、僕も飼いたいなぁ‥‥ねぇ姉さん?」
「可愛いなぁ‥‥ん? そうだなぁ‥‥可愛いな猫も」
ぼーっと真人を眺めてでれっとしていたカオルは急に声をかけられてびくっとして返事をする。
その様子にくくっと笑いを零すラディス。
そうして、子猫たちと一緒に夜は更けていくのだった。
そして、就寝。
「姉さん‥‥あったかいよぅ」
黒猫と一緒に眠るカオルの抱き枕状態の真人。
「これで寒くないだろう‥‥寂しかったろう‥‥これから一緒だからな」
黒猫が居なくても暖かそうな二人であった。
●黒白猫と遊ぶ?
「にゃんこといっぱー遊ぶの〜♪」
猫と遊ぶのではなく、猫に遊ばれているのが一人。
白黒猫と一緒に日がな一日戯れている遊士天狼(ea3385)だ。
一緒に虫を追っかけて、どんぐりを追っかけて、猫じゃらしには一緒にじゃれて。
原っぱを一緒に駆け回り、思わず一緒にお昼寝したり。
猫以上に猫らしい天狼であった。
「これでよしっ!」
リボンを首輪代わりに子猫たちにプレゼントしたのはユーリユーラス・リグリット(ea3071)だ。
黒猫には青、白猫には黒、白黒猫には紅のリボンを。
猫たちもお気に入りのようで、なかなかお似合いである。
しかし悲劇は起こった。
それは天狼が危なっかしい手つきで猫たちのご飯を用意しているときのこと。
ユーリユーラスが猫たちのかごの上に乗っかっていると‥‥
黒白猫がぴょいんとユーリユーラスに飛び掛ったのだった!
かごの中に転がり落ちる、黒白猫とユーリユーラス。
「にゃ〜う〜」
おもちゃ発見とばかりに、肉球でぽふぽふ叩き、ユーリユーラスにくっつく黒白猫。
「あー! 幸せだけど誰か助けてー!!」
流石に小さなシフールには子猫の全力アタックは荷が重かった。
そこにやって来たのは天狼だ。
「あ〜! 助けりゅのです〜」
しかし何を思ったのか天狼もかごに突撃。
ひっくり返って転がる二人と一匹。
猫と天狼が戯れる横でユーリユーラスは目を回していたのだった。
そして、こちらも夜。
テント持参のユーリユーラスは、白黒猫と一緒に寝ているのだった。
「ふかふかです〜〜☆」
幸せそうに抱きつくユーリユーラス。
すると、テントに入り込む人影が。
またしても白黒猫を探しに来た天狼である。
「天、白黒のにゃんこを抱っこしてねりゅの〜にゃんこを抱っこして寝りゅとあったかなの〜♪」
子猫ごと抱きつかれたユーリユーラスが悶絶したのは言うまでもない。
寝顔が幸せだったかどうかは、当人しか知らない。
●ちょっぴり悲しいお別れ
しかし、やっぱりお別れは来てしまう。
届け先の家まで漸く到着した一行は、ついに猫たちとのお別れを迎えていた。
「ね、猫さん‥‥い、一匹僕の所来るです?」
「でも、3匹を離れ離れにしては可愛そうですよ?」
ユーリユーラスが思わずそう言うと、そっとラディスがそう諭す。
「にゃんこたちが離れ離れになるのはとってもさみしーから、天、我が侭いわなーの」
引き取り手に仲良くなった白黒の猫を笑顔で渡す天狼。
「また会おうね♪」
そういって白猫に手を振るのはディーネ。
「今度は私の演奏を聞いて欲しいですね」
にっこり微笑んで握手するかのように白猫の手を握るケンイチ。
「また、会いに来て良いです??」
決意したかのように引き取り手に告げるユーリユーラス。
「ありがとう猫ちゃんたち! 楽しかったよ〜」
びっとブイサインをして、猫たちにウィンクしたのはカッツェだ。
「家で絶対飼おうね、姉さん」
真人がカオルを見あげて言う。
「猫はまだ売ってないからな‥‥代わりにこのヘアバンドをあげるからな我慢な?」
真人の頭をなで、ヘアバンドを付けてあげるカオル。
残念そうだった真人もヘアバンドを貰ってやっと微笑んだのだった。
そして、それぞれが猫たちの名前を告げたところ、引き取り手はその名前をつけることを決めたようだ。
黒猫には『モイラ』
カッツェが候補に上げた運命の女神の名前を。
白猫には『ミルト』
ディーネが呼んでいるうちに、そう反応するようになったから。
白黒猫には『空星(くうしん)』
仲良くなった天狼があげた名前が選ばれた。
『にゃぅ〜』『んみゃぉぅ〜』『なぉぅ〜』
別れと告げるモイラとミルトと空星の声。
名残惜しげに冒険者たちは猫たちと別れを告げたのだった。