【城内突入】experience――乗り越えて
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■ショートシナリオ担当：切磋巧実 対応レベル：1〜5ｌｖ 難易度：やや難 成功報酬：1 G 1 C 参加人数：8人 サポート参加人数：-人 冒険期間：03月30日〜04月02日 リプレイ公開日：2007年04月08日 |
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●オープニング
●激戦――すべては最初から謀られていたものであったのか‥‥。
真実はどちらか分からぬが、この戦い、国王として一歩も引く訳にはいかぬ――――。
「‥‥全軍進軍せよ！ デビルの軍勢に、この王国の底力を思い知らせてやるのだ！」
陽光にエクスカリバーを照り返らせ、掲げた剣と共にアーサー軍が迎撃へ向かってゆく。
各隊の円卓の騎士と冒険者達が打ち破るは、凶悪なデビルと醜悪なモンスターの軍勢だ。
次々と異形の群れを沈黙させてゆく中、マレアガンス城から駆けつけた軍勢と対峙する。
アーサーは不敵な笑みを浮かべた。
「よいか、小競り合いを続け、グィネヴィア救出までの時間を稼ぐのだ」
そう、アーサー軍の攻防は陽動だったのである。
マレアガンス城から敵軍を誘き寄せ、手薄になった所を冒険者達で城内戦を繰り広げ、王妃グィネヴィアを救い出す。
円卓の騎士トリスタンがこの攻防に参戦していなかったのは、少数精鋭による偵察を担っていた為だ。先の王妃捜索時と同様にシフールを飛ばし、様々な情報を送り届けていたのである。
――この時、既に戦線を離脱した者達がいた。
マレアガンス城攻略に志願した冒険者達だ。共に深い森を円卓の騎士と王宮騎士達が駆け抜けてゆく。
王妃救出を果たす為に――――。
――マレアガンスの城が目視できる距離まで近付くと、一斉に息を殺した。
城周辺には未だ少数の兵が待機していたのである。最後の砦を担う精鋭か否かは判別できないが、騎士の姿や弓を得物とする兵も確認できた。軽装の出で立ちは魔法を行使する者だろうか。更には醜悪なモンスターも混じっている始末だ。
トリスタンに偵察を任されていたシフールが、顔色を曇らせながら伝える。
「見ての通り、未だ簡単には近付けません。‥‥ですが、城に入れそうな扉を幾つか確認しました」
情報は限られているものの、扉の場所は何とか把握できそうだ。城の規模から判断するに、各班が連携できる程それぞれの扉が近い訳でもない。
冒険者達は『城周辺陽動鎮圧班』と『マレアガンス城突入班』に分かれる事となる‥‥。
●経験は浅いが‥‥
王宮騎士は冒険者達に視線を流す。
――僕も戦の経験は多い方では無いけど‥‥頑張らなきゃ‥‥。だって扉があるんだから‥‥。
そう、偵察を任されていたシフールの話では、突入できそうな扉があるのだ。つい発言権を先輩陣に譲っていたら『マレアガンス城突入班』として扉の一つを担う事になってしまったのである。
緊張に声を震わせながらも若い王宮騎士は冒険者に伝えてゆく。
「い、いいですか？ 城の内部は全く掴めていません。強敵が待ち構えているかもしれませんし、罠が張られている場合もあるかもしれません。大人数で待ち構えている事も‥‥あるかな？ で、ですがッ、敵を分散させる事が出来れば挟み撃ちの危険性を低減する事ができるのです。兎に角ッ、用心してあらゆる可能性を考慮しながら突入しましょう！」
果たして、冒険者達と王宮騎士の運命は――――。
●今回の参加者
ea8024 ユウヒ・シーナ（22歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国）eb8317 サクラ・フリューゲル（27歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国）
eb8739 レイ・カナン（19歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国）
eb8856 桜乃屋 周（25歳・♀・志士・人間・ジャパン）
eb9605 クリスティーヌ・チェイニー（25歳・♀・バード・パラ・イギリス王国）
ec1713 リスティア・バルテス（31歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・ノルマン王国）
ec1974 イマ・マーダヴァ（29歳・♂・僧侶・エルフ・インドゥーラ国）
ec1999 スティンガー・ティンカー（27歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国）
●リプレイ本文
●経験が重ねる為に僕の班に分けられた８人の冒険者いる。集まってしまったか‥‥何気に溜息を洩らしてしまいます。
「はじめまして。サクラとお呼びくださいな」
にっこり微笑んでサクラ・フリューゲル（eb8317）さんが小声で挨拶してくれました。育ちのよさそうな顔立ちにたおやかな肢体。願えるなら王宮の晩餐会でお会いしたかったと思っても罰は当たらないでしょう。僕が頬を掻きながら「よろしくお願いします」なんてぎこちなく微笑むと、赤毛の娘さんが屈託なくニッと歯を見せました。
「あたしはリスティア。ティアって呼んで」
何となくサバサバした感じのリスティア・バルテス（ec1713）さんにも笑みを向ける中、ユウヒ・シーナ（ea8024）さんが傍に寄って来ます。
「騎士はんもそう肩肘張らずに気楽にいきや♪ あんまり緊張してると変なところでこけるで？」
ばんばんと背中を叩く娘さん。ははは‥‥痛いですよ、敵に聞こえたら拙いですって。‥‥気楽に‥ですか。クリスティーヌ・チェイニー（eb9605）ちゃんも満面の笑みで『王妃さま救出さくせーん！ かーっこいーい』なんて言ってましたね。イマ・マーダヴァ（ec1974）さんが派手な風貌に思いを馳せます。
「王妃の確保か‥‥王様の嫁さんというからにはさぞかし美人なんだろう。俺には縁のない話だけどな」
そうか、王妃様に謁見できる機会など、そうあるものではありませんね。さて、そろそろ作戦が纏まる頃でしょうか。
「皆様、突入前にいいですか？ 王妃様を奪還するのを最優先ですが、状況が許せば敵戦力の分断に務めたいと思います」
スティンガー・ティンカー（ec1999）さんの確認に、ユウヒさんが頷きます。
「そやな、王妃の場所が分らないんやったら他の班を楽にするためにも多少派手にやっておこか♪」
確かにそれもアリかもしれません。するとレイ・カナン（eb8739）さんが前向きに考えを紡ぎます。
「小さめであまり使用してない扉って事はもしかして秘密の抜け道、かも。それなら王妃の居場所にも近いかも知れないわね。さっさと王妃を取り戻して、戦いも終わらせて、大円満よ。いつものイギリスに戻ってくれなきゃ、安心して迷子になってられないわ」
‥‥安心して迷子になられても‥きっと僕以外の方も心の中で突っ込んでいた事でしょう。そう、育ちのよい風貌に瞳を研ぎ澄ます少年――桜乃屋周（eb8856）くんだって‥‥。
「そうだな、いつまでもこんな不毛な戦いを続ける事はできない。若輩だが殿を務めさせてもらう。後ろは気にせず王妃を探して欲しい。ッ！ ‥‥陽動班が動いたぞ！」
れっつごー☆ と小柄なクリスティーヌちゃんが駆け出し、皆さんが続きます。周くんが殿なら僕はユウヒさんの前でしょうか。陽動班の成果に応えるべく、蔦の巻き付く扉へ向かったのです。
●教訓――敵は人間とは限らない
――陽動作戦の隙を突き、城内突入班は動き出した。
扉に耳を当て、クリスティーヌは愛らしい風貌に瞳を研ぎ澄ます。少女の上から同様にスティンガーが耳を欹てる中、サクラ、レイ、ティア、王宮騎士、ユウヒ、イマ、周と続く。しかし、いつまでも待っていられない。ダガーで蔦を切り裂き、慎重に城内に侵入を果たした。殿の少女が扉を閉じると同時、エルフの娘が陽気な声をあげる。
「ほーら、うちの思った通りや♪ 美味いもんでもないねんか？」
「わー☆ ほんとに厨房だねー♪ テーブルに丸い蓋が並んでるよ、中は御馳走かな〜」
じゅるりと口元を袖で拭うクリスティーヌ。周が溜息を吐きながら左手でパラの少女を掴みあげる。
「怪しいと思わないのか？ 人もいないのに料理があるのは明らかに罠だろう」
蓋だけ開けようよーと切なげな眼差しを向ける中、気楽に鼻歌を唄いながらテーブルに近付くユウヒが、ピクンと耳を跳ねらせ視線を疾らす。同時にスティンガーが警戒に瞳を研ぎ澄ました。
「匂いますね。モンスターの気配がします」
「厨房を出るドアはあそこよ。でも、素直に通してくれなそうね」
壁の棚から響く物音。レイの鋭利な眼差しが数多の敵を捉えた。実戦経験の少ないイマが静かに呟く。
「厨房にジャイアントラットか。有りそうな話ではあるな」
各自戦闘フォーメーションに移行。弓や魔法を行使する者は距離を置き、後方に周が鋭い視線を流して魔剣を引き抜く中、前線を担うサクラが盾を前にしてシルバーレイピアを構えた。
「防御は私が！」
そんな中、クリスティーヌとユウヒが視線を交錯させ苦笑い。
「数で来られると〜ムーンアローはー」「厳しいでんなー、スリープで眠らすか」
「大人しくしてたら暖かくなるまで生きていられたのにね」
レイがアイスブリザードの魔法を紡ぎ出す。吹雪の洗礼は巨大鼠に吹き荒れ、バタバタと沈黙してゆく。周の薙ぎ振るうシャスティフォルの切っ先も同様だ。
「狙える！ そこです！」
スティンガーが弓に撓らせ、サクラがモンスターを貫く初戦は、痛手なく潜り抜ける事が出来た。
――再び隊列を組み、城内を慎重に進んでゆく。
クリスティーヌが忍び歩きで警戒し、ティアが殺気に神経を研ぎ澄ます中、ユウヒは頭の後ろで腕を組み苦笑する。
「何かの芝居みたいに悪人が大事なこと話しててくれはると楽でええんやけどなー。‥‥流石にそれはないか。‥‥しっかし歌が唄えんのは寂しいなぁ。うー‥‥静かだと歌いたくなってしまうわー」
「静かにしてくれないかなー？」「警戒してる意味がなくなっちゃうわよ」
愛らしく眉をハの字に振り返るクリスティーヌと注意を促すティア。刹那、レイとユウヒの視界で人影が揺らいだ。
「今、奥の方に人影が見えたわ」「曲がり角があるんや！ ほら、顔だしてるやん」
一気に駆け出そうとする中、イマが割り込み行く手を杖で遮る。
「待て！ 罠の可能性もあるぞ」
続く通路の途中は地面が剥き出しになっている。彼は常に壁や床に注意を払っており、ビリジアンモールドの罠も未然に防いでいた。スティンガーの知識が人間の張り巡らせた罠を看破する。
「これはライトニングトラップですね」
しかし、イマとて万能ではない。スリープで眠らせた敵兵の装備を手馴れた動作で着込み、情報撹乱を試みたが、説法話術で切り抜けるには無理があった。ユウヒのチャームで難を凌ぎ、抵抗されればレイがクーリングで脅す。
「さーて、王妃はんの居所教えてくれへんかなー？」
「本当の事を言わないと‥‥氷の彫像になっちゃうわよ☆」
このパーティーは戦闘に時間が掛かるものの、実に巧く役割分担が果たされていた。
デビルが邪魔すれば周の魔剣が唸る中、サクラとティアのレジストデビルが効果を発揮し、仲間が痛手を負えば彼女達のリカバーが傷を癒す。
「回復はあたしに任せて！ 頑張るわよ」
「何か物音が聞こえたよ‥‥待ってて」
そして、クリスティーヌのサウンドワードもあらゆる局面で大いに役立った。
‥‥敢えて難を言えば、レイが何度か迷子になりそうになったが、彼女の名誉の為に伏せておこう。
こうして様々な障害を潜り抜け、彼等は最上階で思わぬものを見る事となる。
●王妃との対峙
それは、すでに息絶えたマレアガンスの遺体。恐らく先に辿り着いた冒険者が倒したのだろう。
「あ、奥に部屋があるみたいだよ。王妃さま、助けられるといいなー」
クリスティーヌを先頭に、豪奢な調度品が揃っている優雅な部屋の隅に口を開ける一室を潜ると、先着していた者達は躊躇っているようだった。
イマは気品漂う見目麗しき女性の姿を捉えて感嘆の声を洩らす。
「あれが王妃様か‥‥王様の嫁さんというだけに、想像以上の美人だな」
冒険者達や騎士達、そして国中が探していた王妃グィネヴィアがいる。
しかし、様子が変だ。先着していた冒険者達は王妃を遠巻きに囲んでおり、慎重な気配を消していない。対峙するグィネヴィアの笑顔は次第に戸惑いと不安に彩られてゆく。
「王妃様‥‥なのか？ しかし、先程の‥‥」
エルフのウィザードは戸惑いながら自らの指につけている石の中の蝶に視線を移す。彼が部屋に入る前、蝶は――羽ばたいていた。
「助けに来て下さったのではないのですか？ どうなさいましたの？ 皆さんお顔が怖いですわ」
冒険者達は悟られぬよう王妃が本物か確かめていたのである。石の中の蝶に差異はなく、ミラーオブトルースのスクロールを行使した者に映るは魔法の輝き。
――こいつは王妃に化けたデビルだ！
瞬間、熱病のような熱い思いが冒険者達を支配し、得物がグィネヴィアに向う。
魔法の洗礼が叩き込まる衝撃に肢体を苦悶に染め上げ、デビルを退治せんと切っ先が振るわれ、か細い悲鳴の中に鮮血が舞う。一見すれば常軌を逸した凶行だ。この場に今駆けつけた者がいたなら驚愕に瞳を見開く事だろう。
床に崩れながらも王妃は哀願するように冒険者に瞳を潤ませ、震える腕を指し伸ばす。
「‥‥わ、わたくしは‥お止しになって下さい‥‥裁きなら‥‥」
経験の浅い冒険者は、憐れすら感じる姿に躊躇いと不安が過ぎる。
――もし、本物の王妃だとしたら‥‥取り返しのつかない事をしているのではないか？
「まさか、本物の‥‥？」
同様の疑問はナイトを務める娘の胸中にも沸き起こる。
彼女の放った何の変哲もない鏃は、容易く王妃の肌を傷つけたのだ。本来デビルが化けているのならば、その程度で傷を負わせる訳がない。しかし、ホーリーの魔法ですらデビルだと証拠を示している。まして熟練の冒険者はデビルの非情さに苦汁を飲まされていた。
「ならば私がッ」
冒険者の刃がデビルへ向けて振り下ろされようとした刹那――――。
「待て！ 冒険者！ 得物を一旦引いてくれ！」
悲痛な叫びと共に姿を見せたのはラーンスだ。驚愕に瞳は見開かれ、痛々しい愛しき者の姿を映す。
「なんという事を‥‥話を聞いてくれ！」
「ラーンス卿！ 我ら全てを、国さえも敵に回し王妃を連れ去るおつもりか！」
神聖騎士の青年は最も高貴なる騎士と言われた人物に、騎士としての信念をかけて問うた。アロンダイトを煌かせて円卓の騎士が迫る。
「阻むなら冒険者といえど、斬るッ！ ‥‥ッ！？」
石の中の蝶へ意識を向けていた者は気付いた事だろう。
「な、なんだ！ あれは！」
突如出現した数多のデビルがラーンスへ飛び掛ったのだ。
冒険者は困惑した。何故ラーンスを阻む？ 彼も本物なのか？ 油断させる罠か？
統率は一気に崩れる。王妃に油断なく得物を構える者もいれば、ラーンスへ加勢に入る者もいた。見目麗しき円卓の騎士が冒険者へ叫ぶ。
「この剣で王妃を救って欲しいッ！」
放り投げられたのは畏怖すら感じられる装飾の施された長剣だ。分散したデビルが追う中、冒険者が飛び込み、援護を受ける中で託されたアロンダイトを握った。瞳を流す先で気品を歪める王妃が戦慄く。
「ま、まさか‥‥その太刀で‥わたくしを‥‥いやあッ」
「無礼は承知、後で御咎めは覚悟の上だ！」
刹那、振り上げたアロンダイトは眼が眩むばかりの白い光を放ち、グィネヴィアを包み込んだ。
その時冒険者等は見た。意識を失った王妃から逃れるように姿を露呈させた禍々しい姿を――――。
そう‥‥デビルは本物の王妃に憑依していたのである。冒険者の選択に、判断に、考察に‥‥憑依は含まれていなかった。
凶悪な風貌を晒したのは、背に蝙蝠の翼を広げた巨人だ。頭部に捩れた二本の角を生やしており、大きな耳は邪悪の象徴の如く。正に悪魔と形容するに相応しい容姿だ。初めて遭遇したデビルに、冒険者は戦慄を浮かべる。刹那、円卓の騎士は新たな気配に瞳を研ぎ澄まし、石の中の蝶は壊れんばかりに激しく揺れた。
『気配を感じて来てみれば‥‥。どうやら面白い事を始めるようですね。‥‥お手伝いが必要ですかな？ 閣下』
瞬間移動したかの如く姿を見せたのは、蝙蝠の如く漆黒の翼もつ端整な風貌の青年。知っている者もいただろう。
『クク‥‥あの森で見かけた通り、立派な立派な騎士様のようだなぁ‥‥？』
次いで遠巻きに、山羊の角を２本頭部に生やす、ガッシリとした体躯の男が姿を現した。続いて、獅子の如き形相で、片手にクサリヘビを持った男の怒れる姿が浮かび上がる中、背中に鷹のような翼を生やした大きな犬がほくそえむ。
『‥‥ふん』
『この程度の試練、超えてもらわねばな‥‥』
まるで地獄を錯覚させる如き光景に冒険者達は言葉を失った。
現れたのはいずれも高き力を持つデビル達。共に呼吸するだけで瘴気に身体が犯されるようだ。
一見しただけで簡単に倒せる相手ではないと誰もが悟った。城内の敵を沈黙させて辿り着いた者達は疲弊の色も濃い。禍々しい巨人が口を開く。
『ここで貴様達を血祭りにあげるのは容易い。だが、我等の邪魔をした報いに苦しんで貰うとしよう。楽しみにしているのだな』
「待て！」
誰かが呼び止める中、不敵な笑いを響かせながら威圧したデビル達が次々と姿を消す。
同時に城が大きく揺れた。
「城が、城が崩れる。皆！ 脱出だ！」
「急ごう、壁に印をつけてある。差し出がましくなければ王妃を私の背中に‥‥案ずるな、これでも女だ」
周が王妃を一旦預かる中、何が起きたか解らぬまま冒険者達は、それぞれ駆け出してゆく――――。
――マレアガンスの城は土煙と共に崩れ去った。
「王妃さま救出さくせん成功ー！ 傷の方は大丈夫だよね？」
クリスティーヌは満面の笑みで明るく拳を突き上げた後、周の背中から王妃を預かる娘に不安げな色を見せる。どうやら負傷は酷い訳ではなさそうだ。仲間達もホッと胸を撫で下ろすが‥‥。
「確かに憑依を見破れませんでしたが、危うくデビルを忍ばせたままアーサー王の許へ届けられる可能性もありました。もしかすると、ラーンス卿と冒険者が本気で剣を交える事になったかもしれません。皆さんは立派に任務を果たせたと僕は思います」
「そう、ですね」
「まあ、騎士はんがどこで頑張ったか見えへんかったけどなぁ。‥‥ラーンスはんか」
サクラが豊かな胸元に手を当てる中、ユウヒが意地悪な笑みを騎士に向けた後、ふと視線を流す。
そう‥‥冒険者等は無事王妃を救出したものの、決着をつけねばならない事が残っている。
「ラーンス卿、どうか話し合いを。陛下の元へお戻り下さい」
力なく横たわる王妃を介抱しながら、神聖騎士の娘はラーンスに問うた。
「王妃の災難は去った。王の許へ届けてくれ。密会がたとえデビルの罠だったとしても、私が一時でも王を裏切った事に変わりはない」
戻れないとラーンスは告げ、１人冒険者等から離れてゆく。これで一つの戦いは終わりを告げた。
だが王国の揺れは鎮まったと言えるだろうか？
冒険者達は束の間の平穏が訪れただけに過ぎない事を胸に刻んだ。
デビルの放った報いの矛先とは一体何か、そして誰か――――。
