憐れな少女

■ショートシナリオ


担当:鹿大志

対応レベル:1〜5lv

難易度:易しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月25日〜05月30日

リプレイ公開日:2005年06月05日

●オープニング

 迷信とは奇妙に思えても、なるべく守っておくにこしたことは無い。
 キャメロットから数日歩いたところにある村の教会では、金髪碧眼の6才の少女は、日没以降礼拝所に入れてはいけないとのいいつたえがあった。
 理由は醜聞として秘されていたことだが、百年程前に6才の美少女に恋をしてしまった老神父がいて、ものの分別もつかない相手に結婚の誓いをあげてしまおうとしたが露見してしまい、内々に処理されたのである。その少女が、金髪で碧眼だったのだ。
 神父の魂がまだ相手の少女を待って残っているのが禁の理由だったが、時が経ち事件が忘れられて事情を知らない若い者が、迷信を軽んじて旅の巡礼の家族を日没後に入れてしまったのである。
 時外れの結婚を祝する鐘が鳴り、家族の両親が飛び出してきた。教会の者も次々と逃げ出してきて、最後には少女が憐れレイスとなった老神父の魂に憑依されて、生きてる者を襲おうと徘徊し始めたのだ。
 村の者は事件を恥じて巻き込んでしまった巡礼者を憐れに思い、少女に襲われぬよう抵抗せず逃げ続けてはいるが、食いもせず眠りもせず休みもできない少女の体力は、しばらくすれば倒れてしまった。
 神の加護を祈り巡礼を始めた両親は、娘に降りかかったゆえなき不幸を嘆くばかりである。
 この村からレイスを排除し、適うならば憐れな少女を救える冒険者は居ないだろうか。

●今回の参加者

 ea4591 ミネア・ウェルロッド(21歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 eb0838 凍瞳院 けると(21歳・♀・僧兵・パラ・ジャパン)
 eb0884 グレイ・ドレイク(40歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb1274 郭 無命(38歳・♂・僧侶・人間・華仙教大国)

●リプレイ本文

 憑依された少女の危険を知って、冒険者が駆けつけた。事件は村に知れ渡っていて、到着は喜びとともに迎えられた。
 少女は既に衰弱から倒れていて、遠巻きに野次馬に囲まれている。少女の両親もその輪にいる。
 母親は赤い目で娘を見つめ、嗚咽している。父親は慰めながらも、駆け寄ろうとするのを防いでいる。
 少女の上には未だ青い炎のようなものがうずくまり、レイスが活動しているからだ。下手に近づこうものなら、母親もとりつかれかねない。
 華仙教大国出身でありながら青い目の僧侶である郭無命(eb1274)は、両親の悲しみように心を痛める。合唱して神仏の加護を祈り、戦いに備えて抗魔の法(レジストデビル)を準備する。白く淡い光が郭を包み、不浄のものからの抵抗力が増した。
 学園都市の打撃騎士として知る人ぞ知るグレイ・ドレイク(eb0884)は、少女を苦しめている老神父の妄執に憤った。
 居合わせている村人たちに10Gを取り出し、協力を求める。
「誰でもいい、これであの少女の看護の準備を整えておいてくれ。食事や薬はもちろん、部屋や医者も用意できる限りのものを頼む!」
「おおーっ!」
 見知らぬ少女の危機に駆けつけるだけでなく、清廉を越えて献身的なまでの大振る舞いに、村人たちから驚嘆の声が上がる。
「なんと素晴らしい騎士様だ」
「かくも慈悲心に溢れているものなのか」
 グレイの優しさの表しように心打たれたのか、物見高く集まっていた野次馬たちも、そう出をあげて少女の受け入れ態勢の整えに散っていく。両親は伏してグレイの足元にすがりつき、感極まってお礼を言っている。
 グレイは2人を抱き起こすと、諭すように言った。
「俺は当然のことをしただけだ。戦いはこれからだから、安全なところで待っててくれ」
 グレイは、仲間のミネア・ウェルロッド(ea4591)を向く。
 愛犬のクロワッサン(ボーダーコリー)を連れたミネアは、グレイにこくんとうなづいた。
 少女に比べれば11歳と5歳年長のミネアだが、幸か不幸か女らしい肉づきに恵まれないことを利用して、少女趣味のレイスをひきつけようという作戦なのだ。
 相手の趣味に合わせて、ちゃんと金髪に変装している。
「本当に頼んでいいのか?」
 グレイの心配に、ミネアは鼻歌交じりの上機嫌で答える。
「大丈夫でしょ♪ ミネアはプリチーだから♪」
「いや、効果の心配をしてるんじゃなくて‥‥」
 誤解を正す間もなく、ミネアはレイスへ走り出す。弱っている少女を、気遣ったのだ。
 この世ならざる気配を嫌ったのか、クロワッサンが吠え立てる。
 炎がぐらりと揺らめき、人が立ち上がったぐらいの高さになる。
 どう対応したらいいものかとミネアはにっこり微笑むと、炎は少女を離れ近づいてきた。
「いまだ! 少女を確保しろ」
 グレイの掛け声で、村人たちが少女を運び去る。救出は成功だ。少女の両親が、安堵の息をついたのが聞こえる。
 人は去り、辺りにはもうレイスと冒険者しかいない。これからは、レイスの始末をする番だ。
 青い炎はミネアにまとわりつき、身体の支配を試みる。
 心霊以外の悪寒も微妙に感じながら、ミネアは頑張っていた。
「う〜ん、ホラーはあんまり好きじゃないけど、ここは『えくそしすと』として頑張らないとね」
 ちゃんと用意したシルバーダガーを抜き放ち、自分の身体へぴっぴっと振り回す。
 レイスは、ミネアがミネアを傷つけないようにすることに気を取られている。
 パラではあるが僧兵の凍瞳院けると(eb0838)は、持っていたパリーイングダガーを地面に落とし、ジャパン式の除霊術として、なむなむと唱えていた。
「病弱な自分ではあまり力になれないかもしれませんが、できる限りのことをさせていただきます。むむむむむ」
 集中し、ビカムワースを発動する。黒く淡い光が、レイスを包み込もうと現われては消えていく。
「ここでまけるわけには参りません、ゴホッ」
 喀血に咽せながらも、けるとは魔法を成功させようと呪文を続けた。
 レイスがけるとや郭を傷つけないよう、グレイは前に出てシルバーダガーを構える。特に郭が魔法で戦えるよう準備を終えるまでは、なんとしても立ちはだかる覚悟だった。
「邪なる神官など、ケンブリッジの打撃騎士の名に掛けて許さない」
 レイスがミネアを利用している間は、うかうか反撃もできない。ライトシールドを構え、守りの態勢だ。
 グレイが時間を稼いでいるうちに、郭は施術の集中に入る。
「金縛りの法!」
 発動したコアギュレイトは、ミネアの身体を捕らえ動けなくする。
 グレイはここぞとばかりに距離を取り、レイスに挑発する。
「くだらない最期を遂げた、アホ神官、悔しかったら私に1発くれてみろ」
 ミネアにまとわりついていた炎は悔しそうに揺らめくが、グレイは手の届くところにいない。郭の術はしっかりとミネアを捕らえている。
 ついにレイスは、ミネアを離れグレイへと迫った。
「ゲフッ、ゲフ。この大事なときに、自分が休んでいるわけにはまいりません」
 けるとのビカムワースも、ついに効果を現した。レイスはわななくように震え、一回り小さくなる。
 そしてグレイが、満を持してレイスに迫る。
「体を離れたな、ならば貴様など、この世に留まらせはせん、覚悟しろ」
 大振りにより武器の自重が乗った銀の刃が、レイスの幽体を貫いた。
 人語で表せぬ忌まわしい悲鳴をあげて、レイスがたじろぐ。
 仲間が戦いやすいように距離を取った郭から、続けざまに退魔の法(ホーリー)が放たれる。
 レイスがグレイに触れる。しかし仲間をかばうグレイは、構わずシルバーダガーの2撃目を食い込ませた。この銀の武器は、着実にダメージを与えているようだ。郭の退魔の法も二度目が発現し、レイスはいっそう存在を薄する。
「これで終わりだ!」
 とどめの一撃を与えようとするグレイを、郭が止めた。
「お待ちくださいグレイ様。除霊の仕上げは、自分に任せてはいただけないでしょうか。地を彷徨う亡者を天に還し、輪廻の輪の中へと導く事は我が使命なのです」
「罪のない女の子を苦しめたこいつにそんな気遣いは必要ない。といいたいとこだけど‥‥あんたの頼みだ、気の済むようにしたらいい」
「ありがとうございます」
 レイスの攻撃は、そんなやり取りも会せず郭を襲う。だが郭はそれでも気を変えることなく、抗魔の法に守られながら浄化の法(ピュアリファイ)の集中に入った。
 郭の掌の前で、不定な魂は清められていく。レイスの存在を示す青い光が完全に消えると、様子を見ていた村人たちが飛び出してきた。
「すばらしい。あの幽霊が滅んだぞ!」
「これで、この村は迷信や醜聞からも解放された」
 村人の喜びようは甚だしい。特にグレイには、数人が手を取り、少女の宿へと案内しようとする。
「騎士様が姿をお見せになれば、巡礼の両親も喜びましょう。用意してくださったお金で、医者も看護も十分すぎるほどです。さあ、おいでください」
 しかしグレイは、手を払い告げた。
「そういうつもりはないんだ。俺は薪でも割ってるよ。困った人が助かれば、それでいい」
 グレイの遠慮は、さらなる賞賛を巻き起こした。
「さすがケンブリッジの打撃騎士様だ! この村はもちろん、巡礼の親子もグレイ様名を忘れることはないでしょう」
 気恥ずかしさから、グレイは早く帰ろうと仲間に呼びかけた。迷える魂の供養を終えた郭はうなづき、発作がおさまり喀血の跡を隠したけるとも、しぐさだけで同意を伝える。
 しかし‥‥
「くーん。くーん」
 クロワッサンは、未だ動けない主人に寄り添い、悲しげに舐めた。
 郭はミネアに振向き、合掌する。
「金縛りの法もほどなく解けましょう」
「なむなむ」
 けるとも合わせて、ミネアの早い回復を祈ったのであった。
 無事に魔法も解けて帰途についた冒険者たちだったが、巡礼親子に気づかれてしまう。
 少女はまだ衰弱して起き上がれなかったが、両親は日の暮れるまで見送りお礼を言い続けていた。
 そして、保存食が足りないことに気づくと、その分も都合してくれた。