残酷な盗賊より残酷

■ショートシナリオ


担当:鹿大志

対応レベル:1〜5lv

難易度:易しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:06月08日〜06月13日

リプレイ公開日:2005年06月19日

●オープニング

 キャメロットの衛兵の前に、青褪めた男が飛び出してきた。彼は罪の告白を行い、公正なる死刑を己から求めた結果、受け入れられた。
 男の告白はこうだった。彼は近くの古い遺跡を根城にする残酷な盗賊団のメンバーで、近くを通る旅人を襲っては、金品を奪っていた。そして捕まえた旅人を苛め殺して毎日を過ごし、面白おかしく暮らしていたようだ。
 さてそれの祟りか遺跡の呪いか、殺された者たちが恨みからレイスとなって、盗賊どもにとりついたのだ。取りつかれた者は仲間を襲い、山賊たちは次々と命を落としていった。
 旅人たちの恨みは盗賊1人に取りつくだけでは収まらなかったのか、殺された者までズゥンビとなって蘇り、辺りは悲鳴渦巻き仲間が仲間を襲うために立ち上がる酸鼻極まるありさまだったそうである。
 酷い死を与える道具には事欠かなかったし、亡者どもの苛みにも命は擦り消れて平穏を与えてはくれなかったそうだ。
 男は遺跡を逃れ出たものの、常に亡者に追いかけられる恐怖に襲われ、キャメロットの騎士団に投降し死の平穏を求めたのである。
 彼は間際に犯した罪を告白し、神父から罪の許しを得て表情を安らげると、吊るされた。
 一方遺跡の亡者どもだが、彼らは復讐を果たしても浮かばれず、助けに来てくれなかった辺りの村を逆恨みして襲い、また襲われなかった全ての生者を妬んで憎んでいるという。化けて出るぐらいの怒りはすさまじく、放置していたのでは近隣の住人はもちろん、彼ら自身も決して救われないだろう。
 レイス2体にズゥンビ8体。楽な標的ではないかもしれないが、あの見捨てられた者たちへ、魂の救いを与えに向かってくれる者はいないだろうか。

●今回の参加者

 ea6072 ライラ・メイト(25歳・♀・ナイト・シフール・イギリス王国)
 eb1274 郭 無命(38歳・♂・僧侶・人間・華仙教大国)
 eb2064 ミラ・ダイモス(30歳・♀・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb2347 アステリア・オルテュクス(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb2404 明王院 未楡(35歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb2435 ヴァレリア・ロスフィールド(31歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 eb2456 十野間 空(36歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2526 シェゾ・カーディフ(31歳・♂・バード・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

マミ・キスリング(ea7468)/ アレクサンドル・リュース(eb1600

●リプレイ本文

 惨殺された恨みを抱いて化け出てたレイスと、それに殺された盗賊たちのズゥンビが居る。
 かれらは盗賊のねぐらであった遺跡に住まい、生者を妬んで襲撃を繰り返した。
 罪を繰り返す安らげぬ魂を救う為に、ついにキャメロットから冒険者が旅立つ。
 アレクサンドル・リュースとマミ・キスリングは、出立する者たちを見送った。
 日帰りで向かえる距離なら戦いを手伝いたかったアレクサンドルだが、仲間を激励するに留める。
「‥‥油断するな」
 ライラ・メイト(ea6072)は頷いて、安心させるように微笑んだ。
 マキはせめてもの助けになろうと、キャメロットで集められる限りの遺跡の情報を集めて、仲間へ伝えた。
 2人からの贈り物を受けて、パーティは旅立った。
 冒険者たちは相談の末、被害に遭う人を一人でも少なくしたいとの配慮から、到着するなり遺跡に向かい総力戦を挑むことになる。
 しかしその方針を守ったうえでは、可能な限りの有利を確保しようとした。
 遺跡に飛び込めば、待機しているズゥンビと一緒に、レイス2体を相手することになる。
 それを避けるために、遺跡を確認できる距離で、襲撃に向かうレイスを補足することにした。優勢になったときに、レイスへの応援が駆けつける距離になるが、まったくの無策で被害者が出るよりはいい。
 ライラは、仲間が半包囲を終えたのを確認すると、襲撃に向かうレイスを見過ごさないよう索敵を始める。
 シフールであることを利して、素早く飛び回った。
 街道へ降りていこうとするレイスを見つけた。憑依されないよう安全な距離を保ちながら、ライラはレイスの前へ飛び出し、注意を引きつけた。
「‥‥行かせません。ここで‥‥楽になってください」
 レイスたちはライラに気づいたように揺らめくと、後を追ってきた。
 ライラは仲間と合流すると、明王院未楡(eb2404)の武器にオーラパワーを発動する。
 華仙教大国の僧侶である郭無命(eb1274)は、レイスを見て悲しく思った。
「死してなお、恨みから解き放たれず地を彷徨わねばならぬとは何と痛ましい事でしょう。此処は何としても彼等を天へと帰して差し上げないといけませんね」
 味方を守るために、ホーリーフィールドを発動した。
 ジャイアントのナイトであるミラ・ダイモス(eb2064)は、オーラパワーを自身に発動する。
「これ以上、彼らを憎しみに囚われさせる訳には、いきません、必ず成仏させましょう」
 そして仲間をかばうよう、前衛に出た。
 耳が見えないほど髪を下ろし帽子を深くかぶったウィザードであるアステリア・オルテュクス(eb2347)は、まだ周辺警戒に留まった。そして、不快そうに遺跡のほうを見やる。
「まったく。貴重な遺跡に住み着くなんて、懲らしめてやらないとね」
 神聖騎士のヴァレリア・ロスフィールド(eb2435)は、亡者を野放しにしておくのは神の教えに反する由々しきことと考え、解決への意欲を強めていた。
「恨みは恨みとしても。その魂、救ってさしあげますわ」
 まずはコアギュレイトで、レイスの動きを止めようとする。
 だが、最初の一回は抵抗されてしまった。
 ズゥンビへの合流を阻む危険な相手だと判断したか、それとも神聖騎士ゆえか、抵抗したレイスがヴァレリアを狙う。
 しかし未楡が、ライラのオーラパワーを受けたシルバーナイフを構えて立ちはだかった。盾の防護を頼んで、2回切りつける。大きなダメージを受けて、レイスはヴァレリアを狙うのを止め転進した。
 後方で未楡の日本刀を預かり待機していた陰陽師の十野間空(eb2456)は、日本刀を足元においてムーンアローを発動する。
(「前衛の負担を減らすためにも、攻撃を集中させて早くレイスの数を減らしませんと」)
 未楡がダメージを与えたレイスを狙い、ダメージを与える。
 バードのシェゾ・カーディフ(eb2526)も、仲間を支援するためメロディーを発動する。
 竪琴を奏で、朗々とした声で歌いあげた。
「♪長く果てない旅。誰もが己を守る為に、奪う剣を持っていた。名も無き旅人達は辿り着く場所を失い。地に手をついて、これが私の限界なのかと呟いた‥‥」
 力の限界とその先の希望、そして手にした力の使い道を歌った歌は、仲間の士気を高めた。
 遺跡からズゥンビも現れて、レイスの応援に駆けつけようとする。アステリアはまず一度目のライトニングサンダーボルトを、傷ついたレイスと遺跡の入口に現れたズゥンビの群に放った。レイスは存在が薄くなり、ズゥンビの全てがダメージを追ったようだ。
 冒険者は、レイスがズゥンビとの合流を果たす前に、決着をつけようと追いすがる。
 ライラはオーラソードを発動させた。輝く光の剣が、ライラの手の先に現れる。
 郭はホーリーを発動させた。邪悪な者は抵抗できない力が、レイスを傷つける。
 ミラが追いすがり、振り上げたメタルクラブで逃げようとするレイスの背を打つ。いくら重い一撃でも、非実体のレイスは普通ダメージを受けないのだが、オーラパワーの効果のために話は変わる。ただでさえ大きなダメージを、アンデッドであるゆえオーラの効果が追加され強烈な被害を与えた。
 レイスの姿はさらにかすみ、もう一度ミラの与えたのと同程度のダメージが入れば、存在を消すだろう。
 そして、再び未楡が攻撃した。確かな技術が、二回攻撃を両方命中させ、レイスを一体消滅させる。
 レイスはズゥンビと合流した。だがここで、ついにヴァレリアのコギュレイトが、レイスを捕らえる。さらに、アステリアの手から、再び雷光が伸びる。
 雷光は残ったレイスと、守るように広がったズゥンビの半数を貫いた。
 十野間は判断に悩んだが、日本刀を拾い上げ、距離の離れた未楡に手渡しに走る。
 残ったレイスも、ライラ、ミラ、そして未楡の攻撃の後、郭のピュアリファイで浄化された。
 すくなくとも片方の魂には功徳を施せたことに、郭は安堵する。そして、残るズゥンビたちを見やった。
「死者に、村人も賊もありません。死者達に安らかな眠りが有りますように」
 アステリアは、仲間を巻き込まずに魔法で援護できそうな場所を探す。
 レイスが片づいたことに安堵したヴァレリアは、自らも武器を抜いて前衛に参加した。
 そして未楡も、十野間が運んで来た日本刀に持ち替えた。
「♪‥‥導かれし彼らが手にしたもの。それは奪うだけの剣ではなく。奪うことも出来、与える事も出来る。剣だったのだろう」
 シェゾの曲が終わる頃、歌詞の通りに、冒険者たちの剣は、亡者から罪を重ねる機会を奪い、また魂の救いを与え終えていた。
 職業柄心得のある郭やヴァレリアは、遺骸をまとめ懇ろに弔った。
 他の者も付き合い、哀悼の意を捧げる。ジャパンに長く居た慣わしから、ライラは花を手向けて手を合わせていた。
 ただアステリアだけは、名残惜しそうに遺跡を見つめる。
「ねえねえ、ちょと見学していってもいいわよね」
 十野間は驚いたように声をあげた。
「そんなアステリアさん。もう探索され尽くした遺跡ですから、価値あるものは残っていませんよ」
「そういうのが目的じゃないの。純粋な知的好奇心よ」
 心外そうに唇を尖らすアステリアに、十野間は邪推したことを恥じて赤面し、謝罪した。
 他の者たちも、放置された遺骸が残っていたら気の毒と思い、遺跡を一通り探索してから、帰途へついた。
 これでこの遺跡付近の幽霊騒ぎも止み、復讐に狂っていた魂も安らぎを取り戻しただろう。