地下からの刺客

■ショートシナリオ


担当:鹿大志

対応レベル:3〜7lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 4 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月23日〜08月28日

リプレイ公開日:2005年09月02日

●オープニング

 キャメロットから二日ほどの距離にある坑道が、厄介なものを掘り当ててしまった。
 コボルトの巣である。
 住処を脅かされたと感じたコボルトは、侵入者の掃討に、手練れの戦士を送り込んで来た。コボルト戦士4体である。
 彼らは、地下世界に踏み込んできた地上人を、不潔な刃で追い返そうとする。鉱夫たちは逃げようとしたが、まだ何人かがコボルトに見つかるのを恐れ、隠れ場所から出られないでいる。
 捜索隊も、コボルト戦士たちが徘徊している現状では、二次遭難を起こしかねないため送れない。そこで、冒険者が必要とされたのである。
 人間たちをつけねらって、坑道を徘徊している、コボルト戦士たちの退治をお願いしたい。敗走させることができたら、しばらくは大人しくしているだろう。一体でも殺すことができたなら、鉱夫たちが退避できる時間は、十分に稼げると思う。
 ただ、彼らは刃に毒を塗っているという噂だ。くれぐれも注意してもらいたい。

●今回の参加者

 ea1542 ディーネ・ノート(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea2153 セレニウム・ムーングロウ(32歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb1384 マレス・イースディン(25歳・♂・ナイト・ドワーフ・イギリス王国)
 eb2276 メルシア・フィーエル(23歳・♀・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 eb2347 アステリア・オルテュクス(21歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb2934 アルセイド・レイブライト(26歳・♂・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 eb2962 凍扇 雪(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 コボルトの巣を掘り当ててしまった坑道から、鉱夫たちを救うために冒険者が招かれた。
 到着した冒険者は、逃れた鉱夫たちに坑道の間取りを聞き、慎重に地図を書いていく。
 エルフのウィザードであるセレニウム・ムーングロウ(ea2153)は、コボルトの巣を掘り当てたであろう場所、隠れ場所の心当たりなど、詳細に情報を集めていく。
「『知』も『力』なり‥‥ですよ‥‥」
 そして集めた情報から、大まかな地図を作りコボルトの移動ルート、鉱夫の隠れ場所等の目星をつける。
 入って間もなく、入口からの明かりが届かず、足元が不案内になってしまう。
 ウィザードのアステリア・オルテュクス(eb2347)が、ランタンと松明を使い、光源を確保した。
 明るくはなったが、自然のごつごつした岩肌が天井になっているのは重圧感が有り、明かりとともに動く岩影は、なにか生き物のようで気味悪く思った。
 特にシフールのバードであるメルシア・フィーエル(eb2276)は、いつもの安全圏である上空がないため、落ち着かない。
「地下世界って、初めてだから緊張するなあ」
 一方、ドワーフのナイトであるマレス・イースディン(eb1384)は上機嫌だった。
「まっすぐ伸びる上下左右の壁に先を見通せない暗闇、そしてなによりこの土や岩の匂い。あぁ故郷を思い出すなあ」
 心から嬉しそうに深呼吸するマレスを、メルシアは不思議に思った。
 ひなたの土の匂いは確かに嫌いじゃなかったので、胸いっぱいに吸ってみる。
 メルシアの鼻に入ってきたのは、油の匂いだった。
 分かれ道を通った目印に、ウィザードのディーネ・ノート(ea1542)がロープを張り、それをコボルトに取られた時に準備して、油をこぼして臭いをつけていたのだ。
 ディーネはくりくりっとした大きな瞳でメルシアに振向くと、指をぱちんと鳴らした。
「いいアイデアでしょ?」
「〜〜〜」
 返事をしようとしたが、むせてしばらく声の出ないメルシアであった。
 コボルトの捜索を続けるが、現われる気配がない。
 引き返してみると、目印のロープが切られている。コボルトは通っているのだが、数の多い冒険者を警戒してか、離れるのを待っているかもしれなかった。
 挟み撃ちを避けられる分かれ道に引き返して、2班に分かれることにする。
 ここで、コボルトたちを引き付けておく戦闘班。そして、鉱夫を探しにいく救助班だ。
 救助班はディーネ、セレニウム、そしてアステリアの恋人である、エルフの神聖騎士アルセイド・レイブライト(eb2934)だ。
 さあ向かおうとするが、明かりの持ち手がいない。ディーネが、自分のランタンに火を灯して進むことになった。
 一定距離進むたびに、セレニウムがブレスセンサーを発動する。
 ようやく、吐息を2つ見つけた。背格好、呼吸の頻度は同程度。ただ、どちらがどっちかはわからない。よく考えれば、移動している方がコボルトだろうか。
 結論に行き着く前に、答えがわかった。
 セレニウムの詠唱を耳にしたのか、移動しない方の吐息が、声をかけてきたのだ。
「誰だ? 助けが来たのか」
 途端、移動していた息が声のほうに近づいていく。
「いけない。止めませんと!」
 続く悲鳴。三人が駆けつけたときにはコボルトの姿はなく、鉱夫はすでに倒れ、傷口は変色していた。
「コボルトに刺された。俺は、毒で死ぬんだ。もうだめだ」
 ディーネは、すぐさま応急処置を行ない、鉱夫を落ち着かせた。
 ディーネもセレニウムも、ちゃんと解毒薬を用意している。
 責任はないのだが罪の意識を感じ、仲間思いのセレニウムは、鉱夫に解毒剤を使った。使用した分は、コボルトを倒せば補充できるだろう。
 ディーネとセレニウムが2人で鉱夫に肩を貸すと、アルセイドは急かした。
「コボルトめ、なんと卑劣な。もしもアステリアになにかあったら、残らず抹殺してやる。急ぎましょう!」
 戦闘班も、襲撃を受けていた。しかしこちらは、迎え撃つ気まんまんだ。
 マレスとジャパンの浪人である凍扇雪(eb2962)が、救出班が赴いた坑道を並んで塞ぐ。後衛は、その後ろに隠れた。
 3体のコボルトが迫ってくる。
 アステリアは小悪魔的な笑みを浮かべると、ライトニングサンダーボルトを放った。
「悪い人には、おしおきよ」
 手から伸びる雷光が、2体のコボルトを打った。
 メルシアは岩陰に移動しながら、ムーンアローを放つ。
「岩越しの一番近いコボルトに行け、ムーンアロー」
 ムーンアローは障害物に邪魔されず、命令通りの目標に当たった。
 凍扇は十手と盾を落とし、日本刀を構えた。
 マレスは、その凍扇の日本刀に、オーラパワーをかけた。
「お前達はどれほどの腕のモンだ? やるからには全殺してやるぜ!」
 コボルトたちは、接近で終わる。
 凍扇は袈裟斬り・逆袈裟とかすめるような斬撃を続けざまに放った。
 大怪我をしたコボルトはよろめき、凍扇への攻撃をはずしてしまう。
 マレスはきわどいところで、盾でかわした。
 メルシアは再びムーンアローを打ち、マレスは自分にオーラパワーをかけた。
 凍扇は装備を十手と盾に戻し、持久戦の構えを取る。
 アステリアは、ウインドスラッシュを天井に放ち、風圧でぱらぱらと砂をコボルトたちの上に落とした。
 これから、救出班が鉱夫を助け出し、合流してくるまで耐え忍ばねばならない。
 マレスは更にオーラボディをかけ、凍扇は十手で捌き、コボルトの毒の刃を凌ぎ続ける。
 そうこうしている内に、ついに救出班と合流した。
 心細くなっていたアステリアは、アルセルドの胸に飛び込んだ。
「わーん、待ってたよ」
「無事なんですね。もう、心配ありません」
 抱き合う2人を尻目に、ディーネは、せっせと鉱夫を地上へと護送する。
「じゃあ、任せたわよ」
 セレニウムとアルセイドはうなずき、戦闘に加勢した。
 マレスは、待ちに待っていた反撃を始める。
「さあ、今までの借りを返してやるぜ」
 うってかわって、攻勢に出る冒険者たち。
 マレスや凍扇の攻撃に加え、セレニウムのウインドスラッシュや、アルセイドのホーリーもそれに加わる。
 少々の手傷も恐れぬ、マレスの積極的な攻撃が、ついにコボルトの一体を仕留めた。
 仲間が倒れたことに動揺して、コボルトは身を翻し、逃走を開始する。
 全滅を狙うマレスはもちろん追った。凍扇も再び日本刀に持ち替え、追撃に参加した。
 岩壁や天井に引っ掛けないように注意して、切先が背をかすめるように袈裟切りに斬りつける。
 もう一体コボルトが倒れるが、残り一体は逃げてしまった。
「ふぅ、今回は結構いっぱいいっぱいですね、私」
 武器を傷めないようにとの配慮は神経を使うのだが、凍扇はそういうだけで息をついた。
 マレスはどこまでも追っていきそうな勢いだったが、アステリアの明かりが届かなくなってさすがに諦める。
 セレニウムは、無事コボルトたちを追い払えたことに、安堵した。
「今回は、何とかなりましたか‥‥しかし、今後も注意が必要ですね‥‥」
 地上に出た冒険者たちは、先に運び出した鉱夫の応急処置をディーネが済ませていたこともあって、関係者から感謝された。
 これでようやく、捜索隊を出せるという。
 しかし、ディーネは自分が目や耳が利くことを訴え、時間が許す限りの協力を申し出た。
 仲間もそれには異論はなく、鉱夫たちを伴って、再び坑道へ降りていく。
 マレスは、鉱夫たちに力こぶを作って見せた。
「隠れてるおっちゃんたちは俺達が必ず助け出してやるって。ついでにコボルトの戦士階級って奴等がまた襲ってくるようなら、纏めてぶっ飛ばして、安全に鉱山仕事ができるようにしてやるよ」
 凍扇は、気合が乗りすぎているような気もするマレスを見て、かすかに微笑んでる。
「どんな時でも余裕を忘れずに」
 戦闘班の警護の元、ブレスセンサーなどの魔法の助けもあって、隠れていた者だけではなく、傷つきそのままでは手遅れになったであろう鉱夫たちも発見した。そして、ディーネのいち早い処置によって、死者を出すことなく坑道の事件は解決できたのであった。