ひとりでできないもん!

■ショートシナリオ


担当:鹿大志

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月11日〜09月16日

リプレイ公開日:2005年09月20日

●オープニング

 キャメロットから、2日ほど離れたところに住んでいるおばあさんを訪ねに、一人の少女が向かうことになった。
 お見舞いを兼ねたいつものお使いと思われていたのだが、最近途中にある森を抜けた旅人の話では、油断ならないゴブリンを見かけという話だ。
 ゴブリンはゴブリンらしく、旅人が通った時にはすぐに隠れてしまったのだが、子供が一人で通ったときにはよくわからない。
 事情を話して、少女に今度のおつかいは諦めるように諭した両親だったが、おばあちゃんに懐いているその少女は、泣き暮れて食事も満足に取らないありさまだ。
 途方に暮れた両親は、一人で暮らしている祖母の身も心配ではあるし、このさい思いっきって引き取ることに決めた。
 そして、迎えに行く少女の護衛と、連れてくる祖母の運搬を、冒険者に頼むことにした。
 ギルドが調べたところ、その森にはまとまったゴブリンが住んでいるらしく、予想では8匹のゴブリンが、行きと帰りの2回襲ってくるだろう。
 冒険者の仕事は、行きは少女を、帰りは少女と祖母の2人を、そのゴブリンの襲撃から無事に守ることだ。
 2人とも子供と老人であるから、一撃でも与えられると、命に関わるかもしれない。
 8匹のゴブリンから、祖母思いの少女と、子供夫婦と暮らせることを楽しみにしているおばあさんを、守れる冒険者は居ないだろうか。

●今回の参加者

 ea0643 一文字 羅猛(29歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea0655 シェリス・ファルナーヤ(20歳・♀・ジプシー・エルフ・イスパニア王国)
 ea8984 アレクサンドル・ロマノフ(23歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb0432 マヤ・オ・リン(25歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0610 フレドリクス・マクシムス(30歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb2204 江見氏 喬次(31歳・♂・陰陽師・パラ・ジャパン)
 eb3491 ミリア・ファーレル(22歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

 離れて一人で暮らす祖母を、迎えに行きたいという孫娘を護衛するために、冒険者が招かれた。
 ハーフエルフのレンジャーであるマヤ・オ・リン(eb0432)は、道中保存食だけでは味気ないと思い、お弁当を持参することに決めた。
 すると少女に誘われて、一緒に作る約束をしてしまった。
「わたしもつくる。おばーちゃんにも食べさせてあげたいのー」
 台所でちょっとした冒険があったが、2人はなんとか(少女が2人分面倒を引き起こしたのだ)木の実入りの焼き菓子を作ることができた。
 2人は仲よく半分こにし、道中ニコニコしながら食べた。少女は食べきれない分を包んで残し、祖母への土産にするようだった。
 エルフのジプシーであるシェリス・ファルナーヤ(ea0655)は、少女がはぐれないようにの手を引き、進んだ。
 シェリスの大きな胸に母性を感じるのか、異種族であるのにも関わらず、少女はよく懐いている。
 シェリスが野営中の娯楽に踊りを披露すると、少女も見よう見真似で腰をくねらせた。
「えへ、うまくできてるかな」
 恥ずかしげな少女の問いかけに、シェリスがおおらかに誉める。
「ええ、とっても上手。これも、花嫁修行のひとつなのよ」
「そうなんですか!」
 驚いて、真剣に加わろうとかどうか悩みだしたのは、今回が初めての冒険である神聖騎士、ミリア・ファーレル(eb3491)だ。
(「違う。絶対違う」)
 と、仲間は心の中でつっこんだが、楽しそうな少女の様子に、口には出さなかった。
 幸いその話は長く続かず、ミリアは家事とか料理とかの話を、少女と楽しく続けた。
 そうこうして進むうちに、いよいよゴブリンの棲む森を通る。
 ミリアは意気揚揚とハンマーを手に、先頭を歩く。
 もしゴブリンが立ちふさがろうものなら、そのハンマーで一撃見舞ってやろうという意志が、ひしひしと感じられる。
 シェリスが少女の手を引き、ジャパンの僧兵である一文字羅猛(ea0643)が挟むように、反対側に回る。
 耳を髪で隠したハーフエルフのファイターであるフレドリクス・マクシムス(eb0610)は、両手に小太刀を構え、寡黙に後方を警戒している。
 護衛の内側で、マヤはショートボウを構えて目を光らせ、パラの陰陽師である江見氏喬次(eb2204)は、護衛対象や自分に危害を加える者が現われたらすぐに高速詠唱に入れるよう警戒していた。
 森の木立の間から、何かが動いた影がよぎる。動物ではない。
 子供のようなサイズの影がよぎり、ずるそうな瞳が茂みの間から覗く。
 冒険者の間に緊張が走り、少女はその気配に怯えて身を固くした。
 シェリスは手をギュッと握り、たわいの無いことを話し掛けて、気をそらそうとする。少女は顔を向けるが、視線は森をさ迷った。
 マヤが動いた。三つの矢を同時につがえ、1度に放つ。矢尻には茂みの向こうにいた、一群のゴブリンたちに飛んでいった。
「ぎゃっ!」
 悲鳴があがり、手応えを教える。
「神の名の下に粉砕します!」
 ミリアがブンブンっとハンマーを振り回し、ゴブリンの注意を引くように悲鳴の先へと向かっていく。
 羅猛から制止の声があがった。
「深追いするなミリア」
「およよ」
 不意に止められ、ミリアはなにもないところでずっこけた。
 しかし、ゴブリンはまだ襲ってくる気配を見せない。
 じりじりと前進し、冒険者はゴブリンの森を抜けた。
 少女も、森を抜ける前にシェリスのおしゃべりに気をとられ、ゴブリンのことは忘れてしまったようだった。

「おばーちゃーん。今日から一緒に暮らせるんだよ」
「おや! ひとりで来たのかい? 途中の森には最近ゴブリンが‥‥あらら。これは大勢のお客さんだねえ」
 老婆は冒険者を見ると、目を丸くした。しかし、少女と一緒に事情の説明を聞くと、納得したようだ。すこしして、一人暮らしの住まいを引き払う準備を終えた。
 羅猛が背を向けて、負ぶわせるようにしゃがんだ。
「あらら。そんな、子供じゃないんだし」
「よいしょっと」
 恥じらうおばあちゃんを、言葉すくなに背負ってしまう。
 帰り道が始まった。
 シェリスに連れられた少女は、羅猛の背に負われた老婆と、戻ってからの生活について、いろいろ話を弾ませている。
 心温まる光景だったが、それは同時に、シェリスと羅猛の2人が、戦力外になっていることを雄弁に物語っていた。
 再び、ゴブリンの森に差し掛かる。
 パーティーは相談し合うと、ふたたび陣形を取って踏み込んでいった。
 戦闘に加われない分、羅猛たちはしきりに少女たちへ話し掛け、安心させる。
 他の仲間は、森からゴブリンが襲ってこないかに、集中していた。
 なかなかゴブリンは姿を見せない。行きの、マヤの威嚇射撃が聞いているのだろうか。
 しかし、行きとは違うことが一つあった、足手まといがひとり増えたことにより、戦力がひとり落ちている、それは、モンスターの目にも明らかだった。
「来たにゃ!」
 最初に気づいたのは、喬次だった。不思議な語尾で、仲間に警告する。
 狙いは、あからさまに無防備な羅猛へ集まる。それは、老婆が危険にさらされることでもあった。
 フレドリクスはゴブリンの進路を阻むように立ちふさがりながら、敵の数を確認する。
 行きと比べ、2体少ない。気づいたことがあって、警告する。
「周囲にまだ潜んでいるぞ。気をつけろ!」
 一瞬遅く、通り過ぎた茂みから2体が飛び出してきた。狙いは、シェリスの連れている少女。小さいなら簡単に殺せ、死んだら捨てていってくれるとでも考えたのだろうか。
 狙われて震え上がる少女を、シェリスは落ち着かせようと抱きしめた。身を呈して庇うように。
 ゴブリンは接近する間、冒険者は矢を放ち、喬次は魔法を唱えた。
「これが俺っちの、二連影縫いですたい」
 変な語尾の喬次が、高速詠唱によるシャドウバインディングを放ち、ゴブリンの動きを封じる。
 ミリアは、動けないゴブリンに向かい、高々とハンマーを振り上げた。
「おりゃー」
 ゴスッと、力任せの一撃がゴブリンにめり込む。
「やった〜、スマッシュがあたったわ〜」
 喜ぶミリアに、先ほどへの恐怖もどこへやら、少女は声援を送っていた。
 フレドリクスは手近なゴブリンに、小太刀によるダブルアタックを命中させる。
 すると、意図せず少女から歓声が寄せられた。
 一瞬、ハーフエルフであることが露見したのかと思い髪に手をやり確信する。そうでないことがわかると、軽く手を振りそれで済ました。
 マヤは、散開して迫ってくるゴブリンに、至近距離から再び三本の矢を放つ。
 ぷすぷすぷすっと、三つの矢を身体に突き刺したゴブリンはのけぞった。
「江見氏さんの二連影縫いだぜぃ」
 さらに喬次が、語尾をコロコロ変えながら、再びシャドウバインディングをかける。
 それが効果をあげたわけではないだろうが、ゴブリンたちも、自分たちの獲物が容易くないということを、察し始めたらしい。
 だが仮借なく、フレデリクは別のゴブリンにダブルアタックを見舞い、ミリアは動けないゴブリンをガッツンガッツン叩いている。
「喬次くんの二連月光矢どすよ〜」
 一つとして同じ語尾を使おうとしない喬次が、ムーンアローに切り替えて、ダメージに貢献し始めた。
 勝ちを見失ったゴブリンは、壊走する。
 冒険者はこうして、少女と老婆を、ゴブリンのすまう森を抜けて無事に送り届けたのだった。