やっかいな暴れんぼう

■ショートシナリオ


担当:鹿大志

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月11日〜09月16日

リプレイ公開日:2005年09月20日

●オープニング

 キャメロットから2日ほど離れたある村に、やっかいな暴れんぼうが2人いた。
 血気盛んで乱暴だったその若者たちは、気に入らないことがあるとすぐに周囲へ当り散らし、自分が村で一番強いと思っていたので、とても仲が悪かった。
 ある日ささいな口げんかから(たしか、髪は逆立てるのと、真中から分けるのと、どっちがかっこいいかということらしい)、決闘という騒ぎになり、運悪く2人とも命を落とした。
 若い命が失われたことは悲しかったが、これ以上騒ぎが起きることも他の者が巻き込まれることも無いと内心ホッとしつつ、村人たちは2人を埋葬したらしい。
 その夜からである。
 深夜になると墓場から、乱闘のような騒ぎか聞こえるようになったのだ。
 浮浪者か酔っ払いかと村人が様子を見に行くと、骸骨が2体、互いを罵るような身振りをしながら、ケンカしているのだ。動き方からすると、どうもその2人が化けてでたらしい。死んだあとも仲が悪いのはご苦労なことだが、罪の無い村人が巻き込まれては気の毒だ。
 誰か冒険者が、死んでも子供っぽさの抜けない暴れんぼうを、懲らしめに行ってはもらえないだろうか。

●今回の参加者

 eb2276 メルシア・フィーエル(23歳・♀・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 eb2277 レイムス・ドレイク(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb3526 アルフレッド・ラグナーソン(33歳・♂・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 eb3527 ルーク・マクレイ(41歳・♂・鎧騎士・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

 ある村で、死んでも仲の悪いふたりの乱暴者が、スカルウォーリアーになって暴れているという訴えがあった。
 それで冒険者を募集したのだが、シフールのメルシア・フィーエル(eb2276)と、ハーフエルフのレイムス・ドレイク(eb2277)は、すでに幾多の依頼で顔を合わせたなじみだった。
 グレイという名の兄への競争心で、すこし頑ななとこもあるレイムスにも、メルシアはシフール特有の無邪気さで話し掛ける。
 これまでのこと、これからのこと。主に、今まで体験した冒険と、それからメルシアの作ろうと考える歌のことだった。
 いくつかは、実際に歌って披露してくれた。
 シフールというのは見目麗しく、そばにいると花や蝶のように心地よいものだが、メルシアの歌はレイムスの耳にも、心地よく響いた。
 くつろいでいく自分を感じ始めたレイムスに、ふとメルシアの質問が刺さる。
「もうちょっと、冒険者の仲間に触れたほうがいいよね。そういえばさ、レイムスは何の目的で冒険してるの?」
 不意に兄への競争心をかきたてられる。メルシアの歌になったとき、自分は兄に勝てるのだろうか。それとも?
 激しい熱情を感じるとともに、自分の猛る思いは、素朴な優しさに満ちたメルシアの歌には、ふさわしくないようにも思えた。
 悩んだすえに、レイムスは反問する。
「あなたはなんでですか?」
 言いよどむレイムスとは違い、メルシアは朗らかに即答した。
「いろんな人に会いたいから!」
 なるほど。わかりやすい理由だ。冒険していれば、いろんな出会いがあるだろう。
 レイムスは悩んだ。冒険していれば、兄に勝てるようになるだろうか。いくら考えても、その答えは出なかった。
 レイムスの懊悩をよそに、メルシアが質問してくる。
「いろんな人に会えるかな?」
 悩む時ですら、この少女は素直だ。無垢な笑顔に救われるような気持ちがして、レイムスは保証した。
「きっと大丈夫ですよ。そう言えば、これから来る仲間は、今回の冒険が初めてだから、よく面倒を見てくれと言われてましたし‥‥」
 ちょうどそのとき、遅れてきた新人たちが合流した。
 新しい仲間はふたりいた。
 片方は、イギリス王国出身の、エルフのクレリックである、アルフレッド・ラグナーソン(eb3526)。
 女性と間違えそうな上品な面立ちをし、右の瞳が印象的な瑠璃色をしている。
 冒険は初めてのようだが、年齢は見識の落ち着いた大人と、言ってもいい外見をしている。
 さっきのメルシアの質問が、心に引っかかっていたレイムスは、アルフレッドの聞いてみた。
 なぜ、冒険へ出るのかを。
「天は全ての者に平等です」
 エルフの僧侶はそう語り始めた。レイムスは、全ての冒険を指したつもりだったが、このエルフは、今回の冒険と受け取ったようだ。
 それも仕方が無い。このエルフにとっては、今回の冒険が全てなのだから。
 アルフレッドの言うには、たとえ生前どんなに嫌われていようとも、天は全ての者に平等なのだから、二人の暴れんぼうも救われる資格がある。そして神の代わりに、聖職者である自分が向かうのだと話した。
 筋は通っている。意欲にあふれるが、あくまで穏かだ。自分も彼と同じぐらい年を重ねれば、ああ落ち着くのだろうかと夢想した。それとも、あの優雅さはエルフのと言う種の特性なのだろうか。それなら、自分にも半分その血は流れているのだが。
 もう一人の新人は、イギリス出身の人間のファイター、ルーク・マクレイ(eb3527)だ。
 かれも外見はアルフレッドと同じような年に見えたが、戦士であるせいか、レイムスにはずっと理解しやすそうに見えた。
「俺の名は、ルーク・マクレイ。宜しくな。なにをごちゃごちゃ話しているんだい。行くぜ、皆」
 まだ目的の村まで一日以上あるのだからとアルフレッドにたしなめられたが、ルークは気にしなかった。
 冒険者になると決め、武具揃えているときから、ルークは同じように意気込んでいたのだから。そこらへんの新米や、若気の至りと同じにしてもらっちゃあ困る。
 ルークが意気盛んなのは、もって生まれた性格なのだ。
 持ち前の直情径行でトラブルになることもままあったが、冒険者とは、そのトラブルが起きている所に行って、腕一つで解決するものらしい。
 親切心と意欲にあふれるルークにとって、天職に思えた。
 市民として穏かに暮らすには、ルークは向かなかったのだ。
 そんなルークを見て、メルシアがくすくす笑う。
「なんかさ、ルークが暴れんぼうみたいだね」
 冒険者としては先輩みたいだが、夢を抱いて戦士となったルークには聞き捨てならない。
「冒険者は、荒くれ者じゃないぜ、プロフェショナルさ。任せてくれよ」
 メルシアは大人しくうなずいた。
 ただ同世代に思えるせいか、同じ新人だと聞いたせいなのか、アルフレッドの心配そうな顔がやけに気になった。
 そんなこんなで村に到着する。武器を取って、早速現場に赴こうとするルークに、アルフレッドが待ったをかけた。
「私たちは、彼らを倒しに行くのではありません。その辺は、はっきりさせておきましょう」
 穏かだが、毅然とした態度だった。
「倒すんじゃなけりゃ。いったいなにしに行くんだ」
「救いに行くのです」
「はあ?」
 ルークははっきりと不思議だったが、あのハーフエルフのナイトは、わかったようにうなずいている。それが、すこし焦りになった。
「救うのは、骸骨に困ってるここの村人だろ?」
「ですが、あの骸骨も苦しんでいるのです。とどめは、私のピュアリファイで行なわせてはもらえないでしょうか?」
 初めての冒険が、骸骨なのはすこし大物だ。しかも、今回は人数も少ない。助けを乞われれば嫌といわないつもりのルークも、経験の浅さから来る不安には無関係でいられなかった。
「でも、そんなんで仕損じたら村人が」
「そのために私たちもいます。怖いんですか?」
 あれ以来、黙して語らなかったレイムスが話し掛けてきた。
「そんなんじゃねえ‥‥俺はただ。あなたこそ、大丈夫なのかよ。俺たちのメンバーには、守らなきゃならない後衛もいるんだぜ」
 レイムスは、返事をする前に立ち上がった。
「騎士としての、力見せてあげます。敵はふたり、私とあなたがいれば十分でしょう」
「ふんっ。そういうことなら、受けて立つぜ」
 墓場に赴いて、戦闘が始まった。
 戦い始めるなり、レイムスは髪を逆立てて目を充血させ、狂化を起こす。
 そしていきなり、スマッシュEX+バーストアタックで、耳をつんざくような音を立てて、スカルウォーリアーの盾を打ち砕いた。
「コナンの剛剣に砕けぬ物は、ありません」
 先達の豪腕に舌を巻いたルークだったが、負けているわけにはいかない。担当のスカルウォーリアーと向かい合い、ロングソードを構える。
「さあ骸骨さん、掛かって来な」
 レイムスは十分に弱らせると、アルフレッドの要望どおり、防戦に務めた。一体が浄化されると、ルークの援護に入る。
 そしてもう一人のスカルウォーリアーも、無事に倒された。
 初めての勝利に興奮していると、アルフレッドから声をかけられた。
「ありがとうございます」
「お礼を言われるようなことじゃねえよ‥‥」
「これで、お二人の神の御許での幸せを祈ることができます。あなたの協力のおかげです。ありがとうございます」
 そう言って、アルフレッドは祈りを捧げた。
 いつのまにか、シフールのバードも、鎮魂歌を歌いあげている。
 それを聞いているうちに、ルークの胸に興奮だけでなく、穏かな、それでいて充実した達成感が満ち溢れてきた。
 あたりに目をやると、戦闘のため献花などが散り、荒れ果てた印象を受ける。ルークは目につく物を片づけ、できるものは修復し整えてやった。
 歌い終わったメルシアが、ニコニコと訊ねてくる。
「親切なんだね」
「そんなんじゃねえよ。冒険者は、荒くれ者じゃない。当然のことさ」
 ふと気になって、あのハーフエルフを盗み見た。
 彼もルークを見つめ、かすかに微笑んでいた。
 ルークは、冒険者が天職ではなく、それ以上のものだと感じ始めていた。
 デビューの冒険にしては、上出来だったのでは無いだろうか。