泥だ沼だ!

■ショートシナリオ


担当:鹿大志

対応レベル:1〜5lv

難易度:易しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:05月25日〜05月30日

リプレイ公開日:2005年06月05日

●オープニング

 キャメロットから数日の距離にある村の墓地に、にわか雨が続いた。墓石が倒れ盛土も流れ出し、遺体が姿を現した。
 村人が憐れに思い、しっかり埋め直そうと近づいたところ、遺体が動き出し村人をぬかるみの中に引き釣り込んでしまった。いつのまにか、墓地の遺体はズゥンビになってしまっていたのだ。
 村人は難を恐れて逃げ出したが、ある家族が子供が足りないことに気がついた。恐々ズゥンビの徘徊する村に戻ってみたところ、その子は墓地の隣にある、墓守の小屋に隠れていたのだ。
 鈍いズゥンビには幸い気づかれていないようだが、時間がたてば飢えと渇きが代わりに殺してしまうだろう。
 しかし、家族にはズゥンビの群を排して、子供を救いに行く力は無かった。
 冒険者ギルドに、ズゥンビ掃討の依頼が舞い込んだ。その村はしばらく続いたにわか雨でぬかるみ、足元には充分注意して戦闘を行うようにと警告されている。数体の半身のズゥンビが、泥の中に潜み足を取ったという報告もなされている。
 また特別な報酬は無いが、迅速に墓守の小屋から子供助け出せたなら、心配している家族は喜ぶだろう。

●今回の参加者

 ea0643 一文字 羅猛(29歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea0655 シェリス・ファルナーヤ(20歳・♀・ジプシー・エルフ・イスパニア王国)
 ea7245 二階堂 ありす(35歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 eb1811 レイエス・サーク(27歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb1960 ラミエル・バーンシュタイン(28歳・♀・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 eb1961 アリオク・バーンシュタイン(28歳・♂・神聖騎士・人間・ロシア王国)
 eb2124 イケル・ブランカ(25歳・♂・ジプシー・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb2505 嵐山 蝗丸(37歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●サポート参加者

チャグ・カン(eb2016

●リプレイ本文

 雨が続いてぬかるんだ村に、ぬめったズゥンビがさ迷っている。墓守の小屋に隠れていて、逃げ遅れた子供たちがいる。
 子供たちを救い出し、亡者から村人の手に村を取り戻すために冒険者たちが向かった。
 キャメロットをあとにするとき、チャグ・カンがレイエス・サーク(eb1811)を見送りに来た。
「ゾンビに襲われてる村を助けに行くって本当だか? 俺も行ければ良かったんだが‥‥ちょっと忙しくて行けねぇだよ。でも、これを持っていくと良いだよ」
 チャグは、そう言って古い板切れをどっさりと手渡した。レイエスは腕を組んで、訊ねた。
「これは、どうすればいいのかな?」
「ぬかるんで足場が悪いと聞いただよ。これだけあれば、戦うぐらいのスペースは取れるんでねえか?」
「ありがとうチャグ!」
 そう言ってレイエスは、チャグの用意した板切れを持って村へ向かった。
 作戦は、2班に分かれて同時進行することになっている。
 ジャイアントの僧兵である一文字羅猛(ea0643)を先頭にした戦闘班と、エルフのジプシーであるシェリス・ファルナーヤ(ea0655)の救出班だ。
 その中でレイエスは、高い位置を把握しながらの全体把握の役目を担っていた。
 村までたどり着くと、さっそく全体図をつかもうとする。
「墓地はずいぶん奥にあるみたいだね。小屋も見えるよ。でも、うろついているズゥンビは点々としてる。広場は、村の入口から5軒目の先ぐらいにあるから、そこで迎え撃つのがいいかな」
 ハーフエルフのジプシーである、イケル・ブランカ(eb2124)も登ってきた。そして、テレスコープを発動する。墓守の小屋を見つめ、さらにその窓の奥の人影をうかがった。
「子供も見つけたぜ。必ず救い出そうじゃん」
 幼い頃に妹をズゥンビに殺されているイケルは、すこしシリアスにそうつぶやいた。
 また、愛する羅猛との子供の望めないシェリスも、危険を覚悟でうなずいた。
 このときのために槍を購入したイケルと、杖を持った二階堂ありす(ea7245)が、すこし距離を取りながら囮として先行する。
 ぬかるみの中に身を潜めたズゥンビを警戒して、持っている長柄の得物でずぶずぶ刺しながら前進した。ラミエル・バーンシュタイン(eb1960)とアリオク・バーンシュタイン(eb1961)の姉弟が、そのすぐあとからついていく。
 携帯していた重いスリングや石、マントをバックパックの中にしまった姉のラミエルは、一定距離ごとに、デティクトアンデットを発動した。
 足があって目に見えているズゥンビは、後続の羅猛が防戦しながらひきつけている。警戒しているのは、冒険者ギルドへ報告のあった半身のズゥンビだ。彼らは泥の中に潜みながら、こちらの足を取ろうと狙っている。
 何度目の魔法だったろうか、泥の下の気配を感じ取った。
「見つけました。ありすさん、あなたの傍です。右!」
「主よ、このうちの罪を許してや。アーメン(まことにそうでありますように)」
 そう言ってアリスは、スタッフで指示通りの場所をつんつんする。
 すると、突然腕が飛び出してきて、スタッフをつかみアリスの身体を引いた。
 警戒していた、アリオクが援護に飛び出す。
 足場が悪いため深追いはせず、ブラックホーリーに留めた。近くの屋根から、レイエスのスリングも飛んだ。イケルも傍に来て、槍を使う。
「大丈夫か、あんた」
 ズゥンビは集中攻撃で沈み、重心を崩してぬかるみにつんのめりそうになったありすも、危ういところでスタッフを突く。
「大丈夫や、せぇら様はいつでもうちらのこと見ていてくれるて」
「願わくば、あの子供たちにもだ」
 防戦に徹している、羅猛が言葉を続ける。
 一同は、ついに広場に到着した。しかし、やはり足場の不利が否めない。
 その間、囮部隊と羅猛の間で、ずっと遊撃を担当していた、侍と名乗る嵐山蝗丸(eb2505)が活躍する。
「うちの家系は少し変った闘気を使うんです」
 そう言った蝗丸は、孤立しそうになる仲間の間を、まるで風のように行き来した。足場の悪さも知らないかのように、仲間を引きずり込もうとする腕の前に立っては、かわした。
「まるで死人憑きですね。刺突より斬撃が有効でしょうか?」
 そういうが早いか、近づいたズゥンビを蹴って距離を離し、刀を振り抜いて追い打ちした。
 やがて板が敷き渡り、そのうえに重量が心配されていた羅猛が立つ。
「さて、ようやく反撃開始だな。シェリス、ここは俺たちが引き受けた。子供たちを」
 他の者が残ってズゥンビたちを抑えている間、シェリスとラミエルは子供たちの一刻も早い安全確保のため、先へ急いだ。
 小屋が見える。その奥に子供の影を見つけたとき、子供もまたシェリスを見つけた。
 心配そうな顔を見た瞬間、すこし緊張が緩んだ。
「シェリスさん、いるわ。近い。すぐ前!」
 すぐにスタッフを繰り出すが、ズゥンビの腕がシェリスの足を捕まえていた。引きずられ、膝立ちの格好をさせてしまう。
 シェリスの苦境に、子供が泣きそうに目を見開いた。
 泥に飲まれる恐怖はあったが、シェリスは無理に笑顔を浮かべ、子供に向かい人差し指を立てて、静かにするようジェスチャーした。
 ラミエルは緊急事態と判断して、コアギュレイトを使い、半身ズゥンビの動きを止める。
 そしてクロスソードを抜き、突きかかる。
 シェリスと2人がかりで、半身ズゥンビを始末した。
 下半身は泥だらけでになってしまったが、シェリスは小屋へ入ると、すっかり涙目の子供を抱きしめ慰めた。
「よく頑張ったね」
 泣きやみ落ち着くのを待つと、保存食を分け与えて空腹を癒す。
 そして、安全を報せる仲間ののろしが上がるのを待った。
 戦闘班は健闘していた。しかし、いかんせん数が多い。そしてまた、耐久力が高くしぶとかった。
 まずレイエスから、スリングの支援か戦況の報告が入る。ほぼ同時に、蝗丸の刀が閃き、ズゥンビを足場から引き離す。
 次は羅猛、イケルがそれぞれのズゥンビの相手をする。
 羅猛はハンマーの重い一撃で、ズゥンビの四肢を打ち砕き、動けなくなったら頭を砕いてとどめをさした。
 イケルは、ここまでの防戦の鬱憤を晴らすように、穂先を突き出し、振り回した。
「わりぃがちょっと力入っているぜ」
 殺された妹のことが頭をよぎるたび、ますます苛烈に攻撃をする。
 ありすは仲間の様子に気をつかい、危なくなったらリカバーで回復させる。
 そして一呼吸遅れて、アリオクがブラックホーリーによる仲間の援護か、前衛が足りなくなればクルスソードを振り回して乱戦もいとわなかった。
 そしてついに、羅猛と蝗丸が2体、イケルとラミエルが一体ずつ射止めて、ズゥンビたちは姿を消した。
 疲労困憊していたが、最後の仕事が残っている。子供の救出に向かったシェリスたちに、のろしを上げて掃討が済んだことを報せなければいけない。
 火が焚かれ煙がたち始め、仲間の帰還が望まれる。
 そしてついに、子供を抱いたシェリスと、彼女を守るようにクルスソードを構えて随行する、ラミエルが戻ってきた。
 ラミエルは、泥だらけになった弟の顔を見て、珍しく微笑んだ。
「あとは隠れているズゥンビを私が見つけ出し、掃除を済ませば終わります」
「姉貴、すこし休ませてよ〜」
 がっくりと腰を下ろすアリオクとは逆に、親友のイケルは槍を杖に立ち上がる。
「やったろうじゃん。俺は準備できてるぜ」
 シェリスの抱いていた子供が、びっくりしたような顔で訊ねる。
「怖いのはいなくなるの? パパやママと一緒に、また村で暮らせるの?」
 羅猛は大きな手で子供の頭をなぜる。
「そうだ。全て元通りになる。みんなでまた暮らせるんだ」
 シェリスは腕の中の子を羅猛が撫でていてくれるのが、まるで家族になったような気がして幸せを感じた。
 ありすはこれを機会に、せえら様の布教を子供相手に始めていた。
 蝗丸は黙してさっきまでの戦いを振り返り、これからの技の研鑚の糧としていた。
 小休止を取った冒険者たちは、村に危険がないことを見て回り、ギルドへの報告を兼ねた帰途についた。
 そして子供へ約束した通り、村は平和を取り戻し、家族は再会を果たした。
 レイエスも、チャグへ感謝の言葉と冒険の物語を持って帰ったのであった。