7人の酔っ払い

■ショートシナリオ


担当:鹿大志

対応レベル:1〜5lv

難易度:易しい

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月01日〜06月06日

リプレイ公開日:2005年06月11日

●オープニング

 キャメロットから数日の距離にある村で、古い地下室が見つかった。どうも、酒蔵のようだった。
 意地汚い酔っ払いが、なにか拾えないかと潜り込んだ。しかし、中にあったのは酒だけではなかったのである。
 潜り込んだ酔っ払いと同じように、酒を盗もうと忍び込んでそのまま生き埋めにされてしまった者たちが、酒蔵には潜んでいたのである。彼らはズゥンビとなって蘇り、酒びたりの日々を続けていた。
 アルコールにすっかり浸蝕されている体からは刺激臭が漂い、近づくだけで目はしばしばするし、臭いを嗅ごうものなら悪酔いしてしまいそうになる。
 村の賢い者が村中の酒を放り込むと、ズゥンビたちはそれらをしばしすすり(そして腹から床に零して)大人しくしている。しかし、それが無くなってしまった村人が危険にさらされるだろう。
 彼らが暮らし馴染んだ村での生活が今までどおり続けられるよう、冒険者の到着が期待されている。

●今回の参加者

 ea1303 マルティナ・ジェルジンスク(21歳・♀・レンジャー・シフール・フランク王国)
 ea5868 オリバー・ハンセン(34歳・♂・ウィザード・ドワーフ・フランク王国)
 eb2064 ミラ・ダイモス(30歳・♀・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb2435 ヴァレリア・ロスフィールド(31歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 eb2628 アザート・イヲ・マズナ(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・インドゥーラ国)

●リプレイ本文

 発掘された酒蔵には、酔っ払いズゥンビが潜んでいた。いまは酒を献じて様子を見ているが、アルコールが切れたらどうなるかわからない。
 まことに酔漢は度し難い。
 ズゥンビの恐怖から村を開放するために、キャメロットから冒険者が旅立った。
 村に到着する前の晩、パーティーはマルティナ・ジェルジンスク(ea1303)のかいがいしさに感心する。
 調理はもちろん、繕い物までメンバーに問うて引き受ける面倒見の良さだ。小柄なシフールが飛び回っているだけでも座は明るくなるのに、マルティナの親切は、自然にみんなの笑顔を引き出した。
 食事が終わり就寝前、アザート・イヲ・マズナ(eb2628)は前夜と変えて、一人マントに包まり距離をとって眠ろうとした。
 星を見ていた‥‥と言うのは方便で、ハーフエルフであることに気を遣い、村が近くなったので、仲間を偏見に巻き込まないようにと考えたのだ。
 そこに、マルティナが飛んでくる。
「なにしてるんですか♪」
「え‥‥と」
 アザートは正直に言うわけにもいかず、星を見ているといいわけする。マルティナは素直に信じたらしく、アザートと同じ星を見る。
「ほんと、きれいですね♪」
 美しく輝いていた。
 アザートはこの事件が初仕事だったが、なんだかうまくやっていけるような気がした。
 冒険者は、村に入ると歓迎された。酒樽でズゥンビを外に引き寄せ、魔法で一網打尽にする作戦を話す。さらに火の魔法を使うので、村人は安全のために距離を取り、念を入れて消火活動の準備をするように依頼した。火の魔法も燃え移るものとそうでないものとがあるからだ。
 冒険者の作戦は村の賛同を受け、次に放り込む予定の酒樽一式を受け取る。村人たちは喜んで勧めに従い、酒蔵から離れていった。
 酒樽は、ズゥンビが潜む酒蔵の中ではなく、その入口に置かれる。冒険者たちは、建物の影で息を潜めていた。
 固唾を飲んで見守っていると、最初の1匹がのそりと這い出てくる。後ろから他のズゥンビも、のそのそとついてきた。
 神聖騎士のヴァレリア・ロスフィールド(eb2435)は、最初の一匹にコアギュレイトをかけた。
「亡者はあるべき場所へ。この望ましの大地は生ある者の栄え行く場所ですわよ」
 先頭のズゥンビが扉のところで固まったために、後続も詰まって団子になる。みんな飲み意地がはっているのか、先頭ズゥンビの異変も構わず押し合い圧し合いした。
 次はドワーフのウィザードであるオリバー・ハンセン(ea5868)が、酒樽を巻き込むようにファイヤーボムを放った。
 ビンゴ!
 全てのズゥンビを巻き込んで、火花が上がる。ヴァレリアとのチームワークで、ズゥンビ全体に先制の痛打を与えた。
 それでもズゥンビたちは、意地汚くまだ飲める酒は無いか、酒樽の周りへ這い出てくる。
 ジャイアントのナイトであるミラ・ダイモス(eb2064)はその様子に目を覆う。
「自分達の現状も知らず酒盛りとは、哀れです」
 気を取り直して、仲間にオーラパワーをかけた。
 ミラの支援を受け、アザートがライトハルバードを掲げ前線に立った。
 重い武器による一撃でズゥンビにダメージを与えるが、重さがわざわいしてか攻撃を捌く余裕がない。
 ヴァレリアは、続いてアザートへ群ろうとするズゥンビに、2度目のコアギュレイトをかけた。
「炎に灼かれて、己が罪を浄化なさいまし」
 オリバーは状況をよく観察し、2度めのファイヤーボムを放つことに決めた。
「ヴァレリアがいい位置で止めてくれたな。まだ、後ろ半分は巻き込めそうだ」
 再び火花が舞い、4体のズゥンビを焼き焦がした。
 ミラは発泡酒を見せびらかして、ズゥンビを呼び寄せる。
「お酒は此方ですよ、掛かって来なさい」
 アザートを囲んでいたズゥンビの内、2体がミラを向いた。近づいてくるあいだに、ミラは自分へオーラパワーを発動させる。
 安全のために距離をとったオリバーを除いて、乱戦が始まった。
 ヴァレリアはコアギュレイトをピュアリファイに切り替えて、ダメージを与えていく。
 マルティナもナイフを構え、ゾンビの周りをちくちく飛び回り、仲間が孤立しないよう翻弄した。
 アザートのライトハルバードがズゥンビの肉を飛ばし、ミラの自重を乗せたロングソードが、追い打ちのように内蔵をえぐる。ズゥンビはアンデッドのせいか(それとも酔っているせいかな)怯まないが、まだ欠損部の少ないズゥンビのほうが前に出てきてしまい、とどめをさせない。
 しかし、ヴァレリアのピュアリファイは届く。先制のファイヤーボムで弱っていたズゥンビは、それで動きを止めた。
 1体が沈み、動けるズゥンビは4体になる。これで数の面でのバランスが変わった。
 距離はとっているが、戦況を監視し続けるオリバーから声援が飛ぶ。
「焦げているほうから狙えるか? 早く数を減らせれば、反撃が減るだろう」
 ズゥンビの攻撃は、前衛でライトシールドを装備し、動きに余裕のあるミラが主に捌いている。しかし、攻撃が集中すると捌くので手一杯になり、思うように反撃へ移れない。
 ヴァレリアが心配する。
「わたくしは、コアギュレイトに戻ったほうがいいですか?」
「私はまだ平気です。それより、彼らを早く解放してあげてください」
「わかりました、でも、無理はしなでくださいね」
 ミラは酒を誇示してズゥンビの気を引き、ヴァレリアは心配しながらも、ピュアリファイでズゥンビを倒すことに専念した。
 アザードの傍では、マルティナが心配していた。
「ずいぶん重そうな武器ですけど、そろそろ疲れたんじゃありませんか?」
 マルティナに含みはなかったが、アザードはハーフエルフへの偏見に仲間を巻き込んでしまのではないかと、不安になった。
「大勢は決したみたいだ‥‥姿を消したほうがいいなら、指示に従う」
「いいえ、そうじゃなくて」
 マルティナは慌てて否定し、せめて戦闘に貢献して誠意を示そうとズゥンビに攻撃する。
 しかし、シフールの悲しさか牽制にはなっても、倒すためのダメージの蓄積には役に立たないようだ。
 逆に、アザードのライトハルバードの一閃は、ズゥンビの首を切り飛ばして、しぶといズゥンビの動きを止めた。
「が、頑張ってください。ただ私が、あなたを助けられるようなことはありませんか?」
 アザートは切り飛ばしたズゥンビの首と目が合い、悲しい気持ちになった。
「ズゥンビは、出来ることなら村のやつらには会わせたくない‥‥事前にこちらで葬るよう話せるかな」
「はい♪ では、聞いてきます♪」
 マルティナは飛んでいき、快諾を得て帰ってきた。
 パーティーはよいチームワークで、活動するズゥンビを倒していった。コアギュレイトで縛められたズゥンビも、続けて掃討する。
 確認した遺体は、7つだった。
 アザートはつぶやく。
「墓穴は7つで足りそうだな」
 言葉の示す意味に、マルティナが興奮する。
「消えた飲んだ暮れさんもどうかなったって決まったわけじゃないですから、助けにいましょう! 兵は神速を貴ぶです!」
 外へのおびき寄せが成功したので苦戦はなかったが、改めて中に行くには決意がいる。
 遺骸を火葬にしていたオリバーとミラは、顔を見合わせて相談する。
 念のため、ファイヤーボムによる酒への引火がないか見回っていたヴァレリアが確認を終え、相談に加わって結論を下した。
「残っていても1体です。みなさんと行けばなんとかなります。助けに行きましょう」
 全員一致で、救助へ向かった。
 悪臭を我慢して酒蔵に降りていく。覚悟はしていたが、臭いというものは理性だけでは処理しきれない、嫌悪感を催すものだ。
 パーティが吐き気を堪えて進んでいくと、高いびきが聞こえてきた。
 転がっている人間を見つけた。薄汚れている。顔が土気色だ。臭い‥‥といっても、鼻は酒蔵に入ってから、とうに使い物にならなくなっているが。
 アザードがライトハルバードの先でつんつんつつく、が、なんの反応もない。しかし泥酔者も、やはり反応はないだろう。
 悩んでいる内に、マルティナが近づいて起こそうとした。
 その途端、起き上がり叫び声をあげる。
「うう、もう飲めねぇよ〜」
 全員脱力した。
 もしかしたら、この男はズゥンビ騒ぎにすらも気づいていなかったのかもしれない。ズゥンビもズゥンビで、供給される酒を飲むのに忙しく、生者を見逃すとは大した酒好きだ。
 しかし何よりも、冒険者の迅速で的確な行動によって、紛れ込んだ酔っ払いは生きている内に、間違えられて殺されることも無く、無事に救い出された。
 村人たちの感謝と賞賛を背に受けて(当の酔っ払いはまだ夢うつつだったが)冒険者は帰途についた。