小さな遺跡

■ショートシナリオ


担当:深紅蒼

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月28日〜07月05日

リプレイ公開日:2005年07月06日

●オープニング

 パリから少しだけ離れた森の中に野原が開けており、そこにきれいな泉と小さな遺跡がありました。あんまり小さな遺跡なのでわざわざ訪れる者もなく、ひっそりと静かな遺跡です。ただ、道を急ぐ旅人などが野宿をするには、水もあり木々もあって格好の場所でありました。

 ある日、冒険者ギルドにこの遺跡を詳しく調査して欲しいという依頼がありました。依頼主はあるお金持ちの妻だそうです。名前は内緒です。彼女は若い時、親に許されない恋をしてその恋人と旅に出る計画を立てました。しかし、家を出るところで家人に見つかり足止めされ、恋人とはそれきりに会えなくなってしまいました。恋人はきっと街に居づらくなって、1人で旅立ってしまったのだろうと思っていたのだそうです。

 しかし、彼女は最近苦しんでいる恋人の夢を見るようになったのです。何度も何度もです。それで昔の事ですがどうにも気になってしまったのだそうです。かつて旅に出ようとした2人が待ち合わせをしたのが、この小さな遺跡の前でした。彼女はこの遺跡にきっと何かあるのだと思っています。けれど、自分の力では例え小さな遺跡でも到底調べることが出来ません。それで冒険者ギルドにこの依頼が寄せられたのです。

 慎重かつ大胆に、この小さな遺跡を調査してください。

●今回の参加者

 ea1556 ゼファン・トゥムル(22歳・♀・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea5947 ニュイ・ブランシュ(18歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb2703 風部 笑鬼(41歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 eb2844 ソニア・グリフィス(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb2902 ユラ・タイガーフィート(33歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 eb2926 シモン・シーアント(29歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●さぁ、突入
 小さな遺跡はいつもとかわらない。そして、とうとうここに探索の1歩が刻まれようとしていた。
『わーい、うちが一番乗りや〜』
 風の流れに乗るようにしてゼファン・トゥムル(ea1556)が内部にまず入っていった。木々の葉の色を映したかのような美しい碧の髪と羽をしたシフールだ。けれど、さすがにどんどん奥へ1人で行ってしまうような事はない。入ってすぐの少し開けた場所でヒラヒラをゆっくり旋回をしている。
『危険な罠があるかもしれない。注意しろよ』
 ニュイ・ブランシュ(ea5947)がゼファンに『シフール共通語』を使って話しかけた。エジプト出身のゼファンには『ゲルマン語』が通じない。それでエルフではあるが簡単な『シフール共通語』ならわかるニュイが通訳となったのだ。ニュイは長い髪を邪魔にならない様に編み、動きやすいようにしている。落ち着いていて上っ調子なところは見えない。それで年相応というよりは、ちょっと年輩に見えるのだが本人はそれを気にしている様だ。
『まずは予定通り皆で廻るからな‥‥笑鬼、まずは予定通りに皆でざっと遺跡内部を廻ってみるから』
 ニュイはゼファンに、そして半身をひねってすぐ後ろにいる風部笑鬼(eb2703)に向かって話した。笑鬼も『ゲルマン語』が通じない。やはりニュイが『ジャパン語』で通訳をすることになる。
『わかったべ。まぁなんとかなるべ、なぁ?』
 笑鬼は落ち着いた様子で笑った。そして、遺跡内部へと足を踏み入れる。中は薄暗かった。外からの光がほのかに差し込んでいるのか、真っ暗ではない。笑鬼はこういう場所が嫌いではなかった。人が足を踏み入れなさそうな場所を探索するのは嫌いではない。ワクワクするような気持ちを抑え、慎重にと心に何度も刻んでいく。
「でも、ここって誰も特に気に留めてない遺跡なのですよねって‥‥きゃあ!」
 遺跡の内部を見回していた筈のソニア・グリフィス(eb2844)がいきなり倒れた。
「罠か!?」
 風烈(ea1587)があたりに厳しい視線を向ける。危険だという話は聞かなかったが、罠が発動すればどこから攻撃があるかわからない。拳にはナックルが装着されていた。格闘戦用の武器だ。そうして構えているだけで、何やら烈の中の力を感じさせる。
「いや、ソニア様は何もないところでも器用につまづいたりする方です」
 シモン・シーアント(eb2926)はソニアが立っていた辺りを手で触って確認した。けれど、石ころ1つない。罠が発動するためのきっかけになりそうな物はない。
「罠ではなさそうです」
 シモンは烈に向かって言う。そして、立ち上がろうとしていたソニアに手を貸した。
「そうか、よかった」
 烈が構えを解く。
「‥‥なんでもないです、ごめんなさい」
 シモンの手を借り、あわててソニアが立ち上がった。綺麗な銀髪が乱れ、一瞬にして汚れている。
「少し暗いですからね。やはり灯りをつけておきましょう」
 ユラ・タイガーフィート(eb2902)は優しい笑顔をソニアに向け、持っていたランタンに灯をともした。明るい光がユラの金髪をキララと輝かせる。
『最初はどこから行くんや? はよせんと陽が暮れてしまうよ〜』
 ゼファンがクルクルと飛び回る。
「急げって言ってる‥‥笑鬼、今のは‥‥」
 ニュイが律儀に通訳をする。
『なんとなくわかったべ。気急いてるんだな〜』
 笑鬼は小さく頷いた。

●そして、箱
 一行は全員でまず遺跡の中をざっと調査した。それから時間を定めて1つ1つの場所を丹念に捜索していく。多少の事故、事件、失敗、破壊などが偶発的に起こったりもしたが、依頼者や、その恋人にまつわるようなモノではなかった。
「やっぱりここだろうな」
 そして全員が遺跡の地下1階北側の部屋にいた。烈が壊れた扉の間から部屋を覗く。中には箱が置いてあるのが見えた。大中小、3つの箱だ。
『中に入っているものがわかるか?』
 ニュイはゼファンに『シフール共通語』で言った。
『『エックスレイビジョン』を使えばええんやね‥‥ちょっと待ってな』
 ゼファンは大きい箱に目を向ける。そして中ぐらいの箱、最後に小さな箱へと透視の目を向ける。
「どうですか?」
 シモンは尋ねる。この言葉はゼファンには通じないが、何を聞かれているのかは予想出来ることであった。
『どの箱にも人形みたいのがおるんや。それからちっこい装飾品みたいのがある』
「箱の中にはどれも人形と装飾品があるそうだ‥‥俺も見てみるか」
 ニュイは首をかしげた後、視線を部屋の中にある箱に向けた。『インフラビジョン』だ。
「‥‥赤くはない、ということは暖かい物ではないということだな」
「どうしましょうか? どなたに聞いてもこの遺跡が危険だというお話は聞けませんでしたけれど、この箱の中身については誰も知らない様でした」
 ソニアは事前に調べてきた事を皆に語った。不用意に転ばぬ様、今は朽ちかけた柱に手を添えている。
「私も危険だという話は聞きませんでした。だから安全だとは言えませんが、この箱に手を着けずに帰ることは出来ません‥‥開けましょう」
 ユラが毅然と言った。箱にも部屋にも取り立てて危険そうな文字が刻まれているわけでもない事は既に確認していた。。
「そうだな‥‥ニュイ。笑鬼に解錠を頼んでくれ」
「わかった」
 烈が言うと、すぐにニュイはその旨を笑鬼に伝える。
『わかったべ。おいらに任せておいてくれ。な〜に、大丈夫だ!』
 するりと滑る様に朽ちた扉をすり抜けると、笑鬼は部屋に入り大きな箱を開けた。
『‥‥木で出来た人形が入ってるだよ。それから‥‥枯れた花みたいのだ』
 笑鬼は次に中ぐらいの箱を開ける。やっぱりここにも木の人形、そしてボロボロの羊皮紙の様な物あった。古い地図らしいが触るだけで崩れてしまう。
『じゃこっちのちっこいのも開けてみるべ』
 何気なく笑鬼は最後の箱を開けた。ここにも小さな木の人形があった。しかし、人形は動きだし襲ってきた!

 小さな人形の一撃! 木で出来た小さな右手が手刀を笑鬼に繰り出す。笑鬼は体勢を崩してそれを交わす。木の人形の右手は床に激突して砕ける。木っ端が2,3個笑鬼に当たった。‥‥当然痛くない。
『うちが『ダズリングアーマー』を使う!』
 勇敢にゼファンが飛び出した。そして木の人形のすぐ近くで発動させる。
「ちょっと待て! みんな『ダズリン‥‥」
 ニュイの警告より早く、ゼファンは光輝き、その眩しさで皆の視界が真っ白になる。
「ま、魔法を‥‥炎の‥‥」
「ソニアさん! 私に捕まってください!」
 シモンがソニアに駆け寄る。しっかりと手を握り、ソニアを自分に引き寄せた。ユラと烈は一瞬前までの記憶を頼りに前へ出た。ユラは多少の怪我は覚悟の上であったし、仲間を守るために前に出るのは当然のことだと思っていた。
「‥‥あ」
 足に何かの手応えがあった。踏みつぶしてしまった‥‥そんな感触だ。ゆっくりと視界が戻ってくる。足の下にあるものに目を凝らす。
『おぉ。ユラさんのお手柄だべ〜』
 笑鬼はユラの靴の下で踏みつぶされた木の人形を見た。粉々であった。
「やったな」
 烈がユラにニヤリと笑う。
「‥‥ありがとう‥‥ございます」
 けれど、なんとなく素直に喜べないユラであった。

 小さい箱の中には粗末なペンダントが入っていた。石を磨いて丸くしたものを細い皮紐で縛ってあるだけのものだ。
「これを持って帰りましょうか」
 大切な何か‥‥の様な気がして、ソニアはそのペンダントを慎重に箱から出した。
 街に戻った一行は、報告と一緒にこのペンダントを依頼人へ渡るよう頼んだ。それが依頼人の恋人の物なのか、そして恋人がどうなったのかはわからない。それでも、遺跡調査は終わり、報酬が皆に分配された。