Death to the demon who damages a village

■ショートシナリオ


担当:しんや

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 20 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月08日〜09月13日

リプレイ公開日:2004年09月16日

●オープニング

 力無き者は、力在る者に全てを奪われる。其れが弱肉強食であり、自然界に於ける絶対不定の掟だ。
 其れを建前として無用に人々を殺害し、物品を強奪する者たちが居る。オーガと総称される知的生命体が。
 ジ・アースにはヒューマンや、彼等と友好的なエルフ、ジャイアント、ドワーフ、パラ、シフールを代表するデミヒューマンが存在する。が、彼らとは違って明確な敵対関係を持つのが、オーガだ。
 彼等はジ・アースの至る所に棲息し、其の繁殖力は人間とほぼ大差ないほどだ。人間側としては、忌々しいことこの上ないだろう。
 其の中でホブゴブリンと呼ばれる上位戦闘種による襲撃の報が、とある農村から届けられた。

 先日の襲撃では死亡者が出るという最悪の結果は起きなかったが、次はそうとは限らない。其の為、ギルドによって彼等を駆逐して欲しいとのこと。
「『目には目を、歯に歯を』、だ。遠慮するなよ、確実に潰せ」
 ギルド員は目を細め、怜悧な言葉を冒険者たちに言った。戦闘に於いて情などは不要、ということなのだろう。
「其れと、今回は奴等の武器防具は買い取ってやる。追加報酬としてな」

●今回の参加者

 ea1747 荒巻 美影(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2031 キウイ・クレープ(30歳・♀・ファイター・ジャイアント・イスパニア王国)
 ea2179 アトス・ラフェール(29歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea4739 レティシア・ヴェリルレット(29歳・♂・レンジャー・エルフ・フランク王国)
 ea5808 李 風龍(30歳・♂・僧兵・人間・華仙教大国)
 ea6056 トパッシュ・ロイス(33歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea6128 五十嵐 ふう(28歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea6164 ラーゼル・クレイツ(33歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●8人の勇士
 つわもの達は全部で8人。中でも目立つのは、姉御肌のジャイアント戦士、女傑の浪人、そして小柄ながら手弱かな外見に猛獣のしなやかさを秘めた女性武闘家。迂闊な野郎が下心を持って近寄れば、火傷くらいで済みそうもない女傑達だ。
「ま、挨拶くらいはしとこうや」
 女三傑の内、キウイ・クレープ(ea2031)が場を仕切る。装飾の可愛い服に不似合いな貫禄を見せて、修羅場を潜ってきた男どもに目を運ぶ。
「あははは。俺って格闘からっきし駄目だから。もう基礎すらできてねぇから、そこんとこよろしく」
 黒衣のエルフ、レティシア・ヴェリルレット(ea4739)は、冒険者に似合わぬ細腕を示した。彼とて弓と毒のエキスパート。モンスター退治の専門家である。他にも、癒し手を兼ねる僧兵の李 風龍(ea5808)など、それぞれに癖のある勇士達だ。

 村に向かう道すがら、一行はギルドから渡された簡単な地図を元に、ゴブリン退治の計画が練ってゆく。自分達が負けるとは思わないが、村人に被害が出ては敵わない。
「毒矢を使うなら、馬は使わない方がいいな」
 トパッシュ・ロイス(ea6056)が話を承ける。馬の機動力と重量、そして高い足場を利用した攻撃は徒歩立ちを圧倒するが、混戦には向かない。また高い馬術も要求される。メンバーの技も、徒歩での闘いに通じていた。

 村に着くと、代表の者が出迎えた。
「何より、村人の安全確保が第一だ」
 トパッシュは最も頑丈な建物、すなわち 村の教会を指さす。石造りの構造は、火矢程度の攻撃を防いでくれるし、周囲に堀と掻き上げの土累を仮設すれば、ちょっとした砦としても機能するだろう。門を閉ざし、手頃な石を運び込めば。
「村の若者の中から、少し臆病な者を選んで貰えませんかしら?」
 五十嵐 ふう(ea6128)が村長に提案した。
「勇敢な者ではなく、臆病者ですか?」
 不思議に思う村長に、ふうはじろり。
「敵の接近を見張って貰いたいのよね。こんな時、勇敢な者は血気に逸って却って足手まといよ」
「は、それは早速」
「曇ってきたな‥‥」
 トパッシュは雲の流れを見て呟いた。

●守りも堅く立ち上がれ
 冒険者達が見守る中、堀とその土を積み上げた土累が見る間に作られて行く。事は命が懸かっているので皆真剣だ。扉には、内から一抱えもある閂が取り付けられ、さらに土嚢でバリケードを築く。万一扉を破ってゴブリン共が闖入したら、農具の大鎌や干草積みのフォークで、力自慢の男達が高い足場を利用してめった打ちに殴りつけ、女性や子供は石を投げつける手はずだ。その他の窓は板を打ち付け守りを固める。水や二度焼きのパン、そしてチーズを運び込み、少しの間だけなら籠城の覚悟。
「これなら、仮令私たちが全滅したとしても、御領主の来援まで身を護ることができるでしょう。尤も‥‥そんなことはあり得ませんが」
 アトス・ラフェール(ea2179)は周到な準備が整うのを見て、思い切った攻勢に出られると確信した。小細工は無用、正面から叩き潰すだけだ。

「早くこいこい、ホ〜ブゴ〜ブリン♪ ちょっとオーバキルしたって関係ないじゃん。よっしゃ、これで実験の準備はオールオッケー!」
 緊迫した空気に似合わない鼻歌を歌っているのはレティシアだ。
「あ、今毒を調えているんだぜ」
「ふーん。これはミュゲだね。こんなきれいな花が毒になるのかい?」
 キウイが興味深げに覗き込む。綺麗なバラには棘があるの典型が彼女ではあるが、そんなことは口が裂けても言えない。
「メインはトリカブトだ。猛毒だけどヒヨスも少し」
 脂の中に刻んだ根を入れて棒状の石で練り合わせる。そして、鏃にたっぷり塗りつける。ナイフで鋸状にギザギザに整えた如何にも痛そうな鏃の溝に、毒が定着する。

 こうして、準備は整えられた。

●倒せ! 倒せ! 倒せ!
 見張りからの報せに、冒険者達は配置に付いた。
「遠慮はするな──ギルドからもお達しは出たし、毒草、毒矢使い放題! 毒草師にとって、これくらい楽しい仕事もねぇよなぁ」
 物騒な薬剤師も居たもんである。そんなレティシアの目が細められる。今、殺しの時だ!
 放たれた矢は風を切り、ホブゴブリンの最初の1匹の喉笛に的中する。
 奇襲で狙い澄ました、鋭い一矢は毒の効果も相まってホブゴブリン血泡を吹かせた。そのまま絶命することは間違いない。
「じゃあ、次はもう一方の毒で、実験2スタート! あ、もうエンゲージしている。邪魔だなぁ、遠慮はするなって言ってたし、撃っちゃてもいいよね」
 そんな恐ろしいフレーズがあるとはつゆ知らず、荒巻 美影(ea1747)がホブゴブリン2匹と接敵した。
「荒巻 美影、参ります!」
 育ちの良さそうな顔立ちに似合ってか、守りを主体として、ナックルで受け止める。だが、かさにかかって、大振りの一打が斧の重みを加えて彼女を直撃する。受けきれないと踏んだ彼女は、羊の奥義、羊守防で全身の気を奮い立たせる。
 必殺の斧の一撃が決まったにも関わらず、無傷の彼女を見て驚愕するホブゴブリン。
「私の流派は守りに秀でた羊拳。そう簡単には打ち崩せません!」
「分かんないけど凄いホブゴブ!」
 と、敵は喚いているようだが、バルバルとした騒がしい声にしか聞こえない。
 そこへ、巨大な乙女、キウイがぬっと現れる。
「苦戦しているようだね」
「そんな事──」
「お姉さんに、まっかせなさい! と言いたい所だけど、あたいの獲物はホブゴブ戦士のみ。どうせ、戦うなら、あれだね。まあ、後衛もいるし雑魚相手に時間を潰してな」
「いいえ、すぐ行きます」
 その会話の隙をついたいやらしい一撃が迫る中、一条の銀光がそのホブゴブリンの足下に突き刺さる。
「おっと、外してしまいましたね」
「アトス!」
「美影さんの分の1体は私が担当します。キウィさんはホブゴブ戦士の足止めに。みんながノルマを片づけたら、向かいますので」
 とクルスソードを片手にアトスが斬りかかる。
「さあ、アベルの末裔よ。あなたの始祖が冒した罪と、あなた自身の罪を購うがいい」
 言って美影のフォローに入る。腕は美影と同等だが、数が増えたのが大きい。美影も安心して、奥義を使わずに拳の連打に入れる。
 内蔵をやられたのか、血を吐き出すホブゴブリン。
「村人の怒りはこの程度ではおさまりません!」
「さあ、受けて散れ! 聖なる母の加護を受けた剣の一撃を」
 ふたりの勝利は時間の問題であり、それは比較的容易く成し遂げられた。

 一方、ラーゼル・クレイツ(ea6164)は完全に遊んでいた。
 鎧の隙間を狙う精密な一打と、幻惑するような受けも避けもホブゴブリン程度には出来ない攻撃で浅手を負わせ、それを累積していく。
 鎧もその可動物である以上、どうしてもウィークポイントがある。そこを狙われてはもはやどうしようもない。尻尾を巻いて逃げに入る。
 そこへ背中から一撃を浴びせるラーゼルだが、まだホブゴブリンは死にきれず、レティシアの狙い澄ました鎧の隙間を縫う鏃が止めを刺す。
「あちゃ、毒が利いたのかな、実験結果は不明──と」
「物騒だな。俺に当たったらどうする気だ」
「心身の頑健さを期待。そういえば、解毒剤くらい造っておけばよかったな。尤もそっちは専門外だけど」

 かたや、五十嵐ふう(ea6128)はホブゴブリンに名乗りを挙げる。
「紅翼炎凱衆が一翼、紅き鮮血のふう! 見参!ってな!!
‥‥あ、知らないだって? これから有名になるんだよっ!」
「震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート! 刻むぜ血液のビート!! ホブゴブの死体を伝わるオーバードライブ、肉色の波紋疾走!」
 と、踊るように刀を振りかざし、相手の動きを止める急所にたたき込むと、つぎは膾斬りの番であった。
「そうだ、戦場とはここ! 死とはこれだ!!」
 戦いの高揚感に左の瞳が一層、不吉さを増すかのように虹色に輝いた。
「ゴブリンってこんなに強いのか!? くっ、もっとまじめに訓練に取り組んでいれば‥‥」
 と、嘆くナイトのトパッシュの背中を護る、僧兵の風龍はロングロッドを振りかざし、ホブゴブリン2匹と対峙していた。
 オーラを練る隙を伺い、風龍がロッドでホブゴブリン幸運にも1匹の足を掬い、2匹の連携を乱す。
 そこへ全身を桃色の光に被われたトバッシュが闘気の塊を倒れていない方にたたき込み、パワーバランスを崩す。
 相手も大振りできる隙がなくなったのを良いことに、トバッシュは負の闘気を送り込み、相手の動きを完全に自分未満に落とし込む。また、倒れた所へ、風龍がロッドをたたき込もうとするが、残念ながらいち早く立ち上がられ、残ったナックルでの一撃が決まるのみ。
 それでも、ふたりは着実にホブゴブリンを追い込んでいく、が風龍の背中に重い一打が浴びせられる。
 今までのホブゴブリンと比べても巨大な影。
 ホブゴブリン戦士である。
「よくもやったなホブゴブ! 戦士の怒りを受けるがいいホブゴブ」
 と、多分言っているであろう事は察しが付くが、物凄い形相で、喚きながら再び浴びせられる一打に美影が飛び込んで、ダメージを吸収する。
「技が未熟故に遅くなりました。すいません」
「おっと、相手は決まっているんだ、こっちを向け。こいつぁ、あたいが押さえる」
 とキウィが人差し指を立てて挑発する。
「ほう、ジャイアントごときがホブゴブ」
 彼の心の叫びは痛いほどよく判る。
「あたいを倒さない限り引く事も進む事で出来やしないんだよっ!! というのは嘘でな──逃げるんだよー!」
 一斉に村の方に駆け出す一団。
 当然、相手も追ってくる。
 レティシアも弓を射かけるが、盾で受け止められ、途方もない、とこのランクのモンスターでは思えるほどの速度で追いかけてくる。
 だが、動きが止まった。草を結んだ初歩的な罠に引っかかったのだ。
「姑息なホブゴブ!」
 多分、そう言っているのだろう。罵るような怒りの叫び。
「保険って奴さ。いい加減、あきらめなっ!!」
 キウィの長剣が深く重く突き立てられた。

 結果はなぶり殺しに近い勝利であった。これも、村人のことを気にせずに戦えるよう、周到に準備をしたおかげであろう。冒険者達は村人から夕食を振る舞われ、意気揚々と凱旋した。

(代筆:マレーア)