Overcome an obstacle!

■ショートシナリオ


担当:しんや

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月15日〜09月20日

リプレイ公開日:2004年09月17日

●オープニング

 茹だるような暑い夏が終わり、世界には木枯らしが吹こうとする秋が訪れようとしていた。
 ノルマンの首都・パリにも其の傾向が見られ、徐々にではあるが、街路樹の葉が緑から茶へと変化している。
 其の街の大通りの一角に、多くの人が集まっていた。主に王国や商店街からの知らせが張り出される掲示板だが、今回は全く異なるものが大々的に張り出されていた。
『障害物レース開催!』
 住民の視線が注がれる掲示板に在る一枚の紙に、このように大きく記されている。片隅には、主催者である貴族の名前が刻印されていた。


○種目
・一種目:焼き立てノルマンパン五本大食い競争(「大食」のスキルがあれば有利/食べ終わったらグラウンドを一周する)
・二種目:ワイン一本早飲み競争(「飲酒量」のスキルがあれば有利/上記と同じ)
・三種目:読み書きテスト(「現代語万能」のスキルがあれば有利/上記と同じだが、正解しなければもう一度)
・四種目:競泳(「水泳」のスキルがあれば有利/グラウンド中央に仮設されたプールを百メートル泳ぐ)
・五種目:長距離走(「遠距離走」のスキルがあれば有利/貴族の敷地内の指定されたルート、四キロを走る)
・六種目(ラスト):魔法障害物レース(直接攻撃系ではない数々の魔法が荒れ狂うコースを一周する)

○賞金
・一位:2G、称号(最優秀選手のみ)
・二位:1G
・三位:0.5G

○注意事項(失格となる事柄)
・故意に相手の走行を妨害してはならない
・魔法などによるドーピング
・シフールの最高飛行高度は三メートルとする


 とある貴族の――酔狂な――アイディアによって実現したこのレースは、忽ち町の住民の注目を釘付けにした。娯楽に乏しい昨今、このようなお祭り騒ぎには目が無いのかもしれない。
「あちらからの要望で、ギルド側からも出場してもらいたいそうだ。現在の参加者も結構な面子らしい。どうだ、出てみないか?」
 今回の大会を知った冒険者に、ギルド員が参加を勧める。彼等の前に、何時もの依頼書ではなく参加用紙が差し出された。
「内容を見ても、危険は少ない。参加してみる価値はあると思うがな」

●今回の参加者

 ea1860 ミーファ・リリム(20歳・♀・ジプシー・シフール・イスパニア王国)
 ea4466 カアラ・ソリュード(32歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea5384 シャルク・ネネルザード(24歳・♀・レンジャー・ジャイアント・エジプト)
 ea5970 エリー・エル(44歳・♀・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea6151 ジョウ・エル(63歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea6800 リューディガー・シュタイン(36歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)

●リプレイ本文

●それでは張り切っていってみよう
──障害物レース会場
 吸い込まれそうな晴天。
 障害物レース会場には、大勢の観客と参加チームが集まっていた。
「それでは、第一回障害物レースを開始いたします。まずは今回の主催である‥‥」
 貴族の挨拶は長くなるのが基本。
 ということで省略。

 かくして、各チームの選手紹介が終ったところで、さっそく第一試合が開始された。

●第一種目
「それではっ。第一種目の『焼き立てノルマンパン五本大食い競争』を開始します。各選手はテーブルに付いてくださいっ」
 進行役の大声が会場に響く。
 参加選手であるチームAのドワーフ・ウッチーとチームBのジャイアント・伊集院がテーブルに付いた。
 そこには巨大なノルマンパンが5本並んでいる。
 そしてやってきました我等が『ミーファ・リリム(ea1860)』。
「し、しふーるだとぉ?」
「こんなお子様が参加するってかぁ? 笑わせてくれるぜ」
 ドワーフとジャイアント大爆笑。
「お子様じゃないのらー。ミーちゃんはがんばって二人に勝つのらー」
 ガッツポーズのミーちゃん。
「それでは、始めっ!!」
 合図の旗が降りおろされると同時に、ジャイアントとドワーフが次々とパンを食べはじめる。
 次々と千切っては口の中に放り込むドワーフと、手にしたパンをクシャッと丸めて口の中に放り込むジャイアント。
 その真ん中で、ミーファはちょこんとテーブルに座ると、モグモグと食べはじめた。
 さて、何処をどう見てもミーファの負けは決定。
 だが、ここでミーファに『御笑いの神様』が降臨した。
「フガフガ‥‥グハァ」
「ムグムグムグ‥‥ム、ムグッ!!」
 ドワーフの咽に渇いたパンが引っ掛かる。
 さらにジャイアントの方は、呑み込んだパンが咽に止まった。
 しかも水は用意して無いし。
「モグモグ‥‥美味しいのー。このパン、美味しいのー」
 マイペースのミーちゃん。
 そのままのんびりと食べているものの、横では窒息しそうになったドワーフとジャイアントがギブアップ宣言。
 かくしてミーちゃんの予想外の勝利となった模様。
「あれ? まだ残っているのらー。モグモグ」
 ミーちゃん、もう試合は終っているよ。

〜ここまでのポイント
Aチーム  :0
Bチーム  :0
ミーちゃんズ:2

一位は2P加算
二位は1P加算
三位は0P加算
棄権は0P加算

●第二種目
「それでは引き続き、ワイン一本早飲み競争を行ないます。参加者はテーブルに付いてください」
 進行役の大声が会場に響く。
 そしてチームAの女性戦士・カオリンとチームBの男性ドワーフ・アッキィが席に付く。
 我等がチームは‥‥あれ。いない。
「ミーちゃんチームは参加者なしということで、不戦敗となりまーす」
 あら、残念。
 っていうか、『ミーちゃんチーム』って何?
 この試合、ドワーフの圧倒的勝利で幕を閉じる。

〜ここまでのポイント
Aチーム  :1
Bチーム  :2
ミーちゃんズ:2
 

●第三種目
「それではっ。三種目の『読み書きテスト』を介します。参加者はテーブルについてください」
 進行役の大声が会場に響く。
 チームAからはシフールのトーマス。チームBはエルフのアルフレッド。そして我等がミーちゃんズはジョウ・エル(ea6151)の出番である。
「運動とは、ちときついかのぉ。それにわしにはこの服は似合わん」
 ブツブツと文句を言っているものの、エリーが見ているので頑張るジョウ。
「お父さん、しっかり頑張ってぇん!!」
 最愛の娘エリーの応援となると、ジョウも負けてはいられない。
「それでは‥‥よーい、スターーートッ!!」
 一斉に全員が羊皮紙を開く。
「む、むむむ‥‥」
 さて、読み書きテストの問題に頭を悩ませるジョウ。
 思ったよりも難問が出ている。
 唯一楽勝で判ったのは、ラテン語の読み書き部分のみ。その他の部分で完全につっかかってしまった。
 その間にも、シフールがだんとつトップで既に最終コーナーも回っていた。
 そして‥‥。

「お父さん、必ず仇はとるからねっ!!」
 ジョウ、あえなく最下位。
「トホホ。格好の悪いところを見せてしまったわい」

〜ここまでのポイント
Aチーム  :3
Bチーム  :3
ミーちゃんズ:2

 そして、ここで前半の3種目が終了。
 一時休憩を挟んで、後半戦がスタートする。
 なお、この休憩時間にエリー・エル(ea5970)がワインとパンを手に持って、あちこちと走り回っていた模様。


●第四種目
「引き続き、競泳勝負にうつります。会場がこちらから移動しますので‥‥」
 進行役の指示に従って、一行は特設の遠泳コースへと移動。
 そして準備体操を行うと、選手はスタートラインに付いた。
 チームAからはエルフのイアン。チームBは同じくレンジャーのキタジマが参戦。
 我等がミーちゃんズは『シャルク・ネネルザード(ea5384)』が参加となった。
 全員が指定された泳ぎやすい服装『アンダーウェア改』を身につけている。
 男性はショートパンツ。
 女性は胸の部分を覆い隠す鮮やかなデザインの布とショートパンツという構成。
「おじいさん。貴方の無念、この私が晴らしてみせますっっっっ。どうぞ草葉の蔭で見守っていてください!!」
 絶叫するシャルク。
 ちなみに、エリはその言葉を聞いて卒倒。
「それではっ。よーーーい、スターーートッ」
 掛け声と同時に、一斉に3名がプールに飛込む。
──ザッバァァァン
 チームAとBの選手はスリムな体形の男性。それに対してシャルクは女性ということもあり、若干の水に対する抵抗が高い‥‥はず。
「おっとぉ、早い早い、ミーちゃんズのシャルク、これは早い!! なだらかな体形と力強いキック力で男性陣を近くに寄せ付けない。これはどうですか?」
「いやあ。彼女のスタイルは正に水泳に向いていますねぇ。実にいい形の『ひんぬー』です」
 ああ、それは言うてはならない。
──ブチッ
 あ、シャルクが切れた。
(解説‥‥ぷち殺す‥‥いや、ぶち殺す)
 そのまま一気にゴール。
 シャルク、ぶっ千切りでゴールしたのち、実況と解説の男性二人にドロップキック!!

──しばらくお待ちください

 さて、とりあえずシャルクは仲間たちに連れられて控え室に向かった模様。
「放せ、あの解説、プールに叩き込む!!」
 遠くからシャルクの叫び声が聞こえてくる。
 まあ、そのまま彼女は最後の競技まで頭を冷やしてもらうということで。

〜ここまでのポイント
Aチーム  :3
Bチーム  :4
ミーちゃんズ:4


●第五種目
「それでは第五種目の長距離走を開始しますっ!! 選手はスタートラインに付いてください」
 ここでポイントを稼がなくては。
 エリー・エル、いよいよ出撃である。
 既にトラップは仕掛けてある。
 チームAとチームBの選手を酔わせ、パンを無理矢理食べさせるといった妨害工作もOK。
 そしてジョウも、エリーの仕掛けたトラップの解除完了。
 娘の後始末とは、ジョウも忙しい。
 チームAからは女性忍者のナオコ。チームBからは男性パラの宋(ソウ)が参戦。
 そしてエリーもスタートラインに付くと、ゆっくりと構える。
「よーーい、すたーーとっ!!」
 一斉に走りはじめる一行。
 実に全員がペース配分も考えた静かな走りである。
(こ、これは不味いわね。この二人、そうとうの手練れね)
 ええ。その通りです。
 途中の給水所での水分補給もせずに走りつづける一行。
 と、途中で宋選手のペースが落ちる。
 お腹を押さえているが、なんとか走りつづけている模様。
 宋選手を追い越してエリーは2位。
(あと少し‥‥なのに、どうして届かないの?)
 まあ、もう少しです。
 でも、トップでナオコ選手ゴーーール。
 エリーは2位で終った。
「ようやったのう」
 4人のジョウが集まってきてそう誉める。
 ちなみに3体はアッシュエージェンシー。
 それであちこちで応援しているのだから、エリーには堪らなく嬉しかったであろう。

〜ここまでのポイント
Aチーム  :5
Bチーム  :4
ミーちゃんズ:5


●第六種目
「いよいよハイライト。魔法障害物レースになります。選手はスタート地点に集まってください」
 ここにきて会場は一気に盛り上がる。
 ミーちゃんズとチームAはトップなら優勝。
 Bチームはトップでのみ優勝の可能性が残っている。
 ちなみにBチームトップの場合、Bチームと二位のチームによるサドンデスマッチを貴族が用意している模様。
「ふっ。待ちに待ってた出番が来たじゃん」
 トリを飾るのは『リューディガー・シュタイン(ea6800)』
 チームAはジャイアントファイターのムロップシ。チームBはシフールのアイが参戦。

 そして会場の彼方此方に魔法トラップが仕掛けられると、いよいよスタートである。
「それではっ、いちについてぇ。よーーーいっ、すたぁぁぁとっ!!」
 一斉に走りはじめる3名。
 応援合戦もさらに激しさを増す。
 最初のトラップは、前方に生えている綺麗な草。それがうねうねと動き回っている。
(げっ!! プラントコントロールじゃねーか)
 足元を掬われないように走っていくリューディガー。ジャイアントは気にせず踏破し、シフールは飛んでいく。
「ち、ちょっと待つじゃん。このトラップ不公平じゃないか?」
 いやいや。
 そして第二コーナー。
 前方から襲いかかるストーム!!
 いきなりシフール後方に吹っ飛ぶ!!
──ピキーーーン
 あ、リューディガー、なんか変なスイッチ入った模様。
「必殺、スリップストリーームじゃん」
 そう叫びながらジャイアントの真後ろに飛込むリューディガー。
 ジャイアントの体を楯に、そのままトラップを掻い潜る。
 そして一気に追い抜く!!
 第3コーナーはいきなり迷路。
 しかもミストフィールドで充満しているし。
 リューディガーがトップで飛込む。
 しかし、霧の迷宮は半端じゃない。
 迷路で、しかも先が見えない。
 直感のみを頼りに、リューディガー走った。
 一気に迷宮をくぐりぬけると、完全独走態勢。
 そして最終コーナーに差し掛かる。
「‥‥あれは何者じゃん?」
 コースの脇に、一定間隔で竪琴を構える女性達。
 リューディガーがコーナーに差しかった時、女性達は次々と唄い始める。
「ああ、いい歌声じゃん。レースなんて棄権して、このままここで聞いて‥‥」
 はい、メロディートラップでした。
 そのままリューディガーの速度が落ちる。
 後方からはジャイアントとシフールも追い付いてくる。
「こんな競争‥‥俺が負けても、皆、許してくれる筈じゃん‥‥みんな‥‥」
 そうつぶやいた時、リューディガーの脳裏に別の意識が走る。
(そう。負けても別にね賞金が入らないだけで‥‥賞金が‥‥賞金?)
──カッ!!
 突然リューディガーが加速。
「繋いでくれた他の奴らと賞金2Gのためにも、俺が負けるわけにゃいかねえんだよ」
 間もなくゴールのシフールに追い付き、そして一気に追い抜いたァァァァ。
「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉるっ」
 その掛け声少し違う。
 でも、リューディガー、温存していた体力を全開にしてトップ。二位はシフール。

〜ここまでのポイント
Aチーム  :5
Bチーム  :6
ミーちゃんズ:7


●そして
 全ての競技が終了した。
 総合優勝はミーちゃんズ。
 そして期待の最優秀選手はと言うと。
「今回の最優秀選手は『シャルク・ネネルザード』選手に決定しました」
 あの加速が票を集めたらしい。

 そして一行は、お互いの健闘を称えつつ、酒場での祝賀会へと移動していった。
 今度こそ、ワイン一気飲みが行われるのかもしれない。



〜Fin〜

(代筆:久条巧)